株式市場は推理推論の世界。
だったら帰納法と演繹法の違いを知っておくことも必要だ。
演繹法とは・・・。
一般論やルールに観察事項を加えて、必然的な結論を導く思考方法で三段論法とも言われる。
つまり,ルール(大前提)から結論を導く思考回路だ。
「好業績の企業の株は上昇する」
「A社の業績は良い」
「だからA社の株は上昇する」。
説得力のあるコメントとなる。
ただ演繹法の欠点は正しくなかったり適切ではない前提を用いてしまうと読み間違えること。
A社の業績は、前期は良くても今期がよくないとなると前提は崩れてしまうことになる。
一方で帰納法とは・・・。
多くの観察事項(事実)から類似点をまとめ上げることで結論を出すという論法。
言い換えるとさまざまな事実や事例から導き出される傾向をまとめあげて結論につなげる論理的推論方法だ。
「海外投資家の日本株保有比率は上昇している」。
「アンケートでは7割の海外投資家が株は上がると考えている」。
「日本株が上がってきたら買いたいと思う海外投資家全体の7割に及ぶ」。
これらを結合させると「海外投資家は日本株を買い続ける」という結論が導出されよう。
重要なのは多くの事例に共通することをまとめること。
しかし前提として選定した一般論や普遍的事実が偏っていると論理が破たんすることもある。
例えば「日本株が上がったら買いたい海外投資家は7割」。
しかし別の選択肢で「日本株が下がったら売りたい投資家は8割以上」というのを見逃していると、前提条件が崩れることになる。
これらの論理の違いを踏まえて、自分の相場観を養うことが求められるのは株式市場だ。
日曜の日経朝刊では「高層ビル建設ラッシュ」の見出し。
高さ200メートル(およそ40階)以上の「超高層ビル」が建設ラッシュ。
今年は世界で前年比6割増の約230棟が完成予定。
うち6割が中国だ。
多額な資金と長期の建設期間が必要な超高層ビルは経済の「遅行指標」の側面もあるという。
「適温経済で育ったカネ余りのピークアウト現象かもしれない」との声もある。
世界の完工棟見通しは2019年約170棟、2020年約80棟と急ブレーキ予想。
東証新館が1988年でバブルピークの1年前。
ドバイタワーでドバイショック。
上海タワーも株安につながっていた。
売り方には格好の材料になるのかも知れない。
マネックスの仮想通貨交換業者コインチェック完全子会社化の話。
「マネックスの経験と技術で補完。
2カ月程度で事業を全面再開し、いずれIPOを目指す」という方向だ。
株式市場は、一応好感し株価は上昇基調。
しかし脳裏に浮かぶのはアメリカの証券業社チャールズ・シュワブの歴史だろうか。
1999年にネット証券の営業企画兼広報担当に就く前に研究したことがある。
同社が行ったのは手数料の引き下げだった。
その先は手数料引下げ競争に疲弊した業者を買収。
アドバイス手数料を引き上げ、一人勝ちを収めるというシナリオを作ったことがある。
その後2006年にチャールズ・シュワブが行ったのは顧客への価値提供だった。
手数料を撤廃して、結果として取扱い顧客口座を増加。
2015年にはバンク・オブ・アメリカ・メリルを超える預かり資産となった。
背景にあったのは「顧客にとって価値があること」。
この方向性を持った野村はまだ苦戦しているというが、決着は見えない。
しかし、仮想通貨の取扱いが「顧客の価値」なのかどうかも不明だ。
ヤフーも大和も見送ったコインチェックの子会社化。
差別化にはつながるのだろうが、この先はまだ見えてこない。
「顧客に価値を提供。
顧客が望んで自社を選ぶ」。
この理想論が遠く思えるのは気の所為だろうか。
(櫻井)。
