NYダウは218ドル安、地政学リスクへの警戒

11日のNYダウ工業株30種平均は前日比218ドル55セント安の2万4189ドル45セントと3営業日ぶりに反落で終えた。
トランプ大統領がシリアへの軍事攻撃を示唆したほか、同国を支援するロシアとの関係悪化に言及し、地政学リスクが嫌気され、上値の重い展開が続いた。ダウ平均は前日までの続伸で470ドルあまり上昇しており、目先の利益を確保する目的の売りも出やすかった。
 
前日に大幅高となった航空機のボーイングや建機のキャタピラー、工業製品・事務用品のスリーエム(3M)など利益確定目的の売りが出たのも相場の重荷になった。3銘柄でダウ平均を78ドルあまり押し下げた。
 
トランプ大統領は11日朝、化学兵器使用の疑惑があるシリアに「ミサイルが来るぞ」とツイッターに投稿。シリアのアサド政権を支援しているロシアを批判し「我々とロシアとの関係はいま、冷戦期を含んでも最悪だ」と指摘した。地政学リスクへの警戒感から安全資産とされる米国債が買われ、長期金利が低下。利ざや悪化への懸念からゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど金融株が売られた。
 
一方、原油先物相場が3年4カ月ぶりの高値を付けたのを受け、石油大手のエクソンモービルやシェブロンが買われ相場を下支えした。個人情報の流用疑惑を巡りザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が2日目の議会証言に臨んだフェイスブック株が続伸したのも投資家心理の支えになった。ダウ平均の下げ幅は一時41ドルまで縮小した。
 
3月の消費者物価指数(CPI)は前月比で横ばいを見込んでいた市場予想に対して0.1%低下した。一方、エネルギー・食品を除くコア指数の伸び率は市場予想に一致。米連邦準備理事会(FRB)の公表した3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、物価上昇率が目標の2%に向け高まるとの自信を深めた参加者が多かったことがわかったが、相場の反応は限られた。
 
ナスダック総合指数は、同25.275ポイント安の7069.026で終えた。アマゾン・ドット・コムやアップル、アルファベット(グーグル)など主力株の一角が売られた。
 
セクター別では、エネルギーや消費者・サービスが上昇する一方で電気通信サービスや銀行が下落した。
 
個別では、音楽専門局「MTV」などを傘下に持つバイアコムとの統合案で、CEOと大株主が経営体制を巡って対立していると報じられたメディアのCBSが下落。四半期決算で1株利益が市場予想を下回った工業・建設向け製品の製造と卸売を手掛けるファステナルが急落。通信大手のスプリント(S)とTモバイル(TMUS)は、合併交渉の再開が報じられたものの、一部アナリストが司法省による承認獲得が困難であるとの見方を示し軟調推移した。
 
一方、筆頭株主である中国の複合企業、海航集団(HNAグループ)による株式の売り出し価格が10日終値を下回る73ドルに決まったと発表した米ホテルチェーン大手ヒルトン・ワールドワイドが大幅高。アナリストが目標株価を引き上げた動画配信のネットフリックスも買われた。アナリストが投資判断を引き上げた電子商取引大手のイーベイも高かった。
 
 
NYダウ工業株30種(ドル)
24,189.45-218.55
S&P500種
2,642.19-14.68
ナスダック
7,069.026-25.275
 
米10年債利回り(%)
2.779 -0.018
米2年債利回り(%)
2.307 -0.008
 
NY金(ドル/トロイオンス)
1,360.00+14.10
NY原油(ドル/バレル)
66.78-0.04
円・ドル
106.79 – 106.80-0.21
 
VIX指数は20.24と低下(前営業日20.47)。シリアを巡る中東情勢の緊迫感が高まり、NY勢参入前にVIX指数は21.66と大きく上昇した。
その後、安寄りしたダウ平均が下げ幅を縮小し、NASDAQは一時プラス圏に浮上などを受けて、売り戻しが優勢となったVIX指数は19.64までレンジの下限を広げた。
ダウ平均が引けにかけて200ドル超安になるとVIXも反発したが、昨日の終値付近では頭を抑えられた。
 


【シカゴ日本株先物概況】

シカゴ日経平均先物は反落した。
6月物は前日比195円安の2万1645円で引け、同日の大取終値を25円下回った。
11日朝にトランプ大統領がツイッターでシリアへの軍事行動を示唆し、地政学リスクを警戒する売りが出た。
朝方発表の3月の米消費者物価指数は前月比低下したが、コア指数は同上昇し、市場の反応は限られた。
この日の6月物安値は2万1565円、高値は2万1865円。
 
シカゴ日経225先物 (円建て)
21645 ( -25 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て)
21680 ( +10 )
( )は大阪取引所終値比

【欧州株式市場】

■イギリス・ロンドン株価指数
FTSE100 7257.14(-9.61)
FTSE100種総合株価指数は3営業日ぶりに反落した。前日10日の終値に比べ9.61ポイント安の7257.14で引けた。構成銘柄の約6割が下落した。
 
シリア情勢の緊迫を背景に、運用リスクを回避する動きから欧州各国の株式相場が下落し、英国株もつれ安となった。ただ、午後に一時上昇に転じる場面もあった。
 
個別では、シャイアーなど医薬品株が売られた。たばこのインペリアル・ブランズとブリティッシュ・アメリカン・タバコも下落した。飲料のコカ・コーラ・ヘレニック・ボトリングと、クルーズ運航のカーニバルの下げも目立った。
 
半面、テスコは7%超上昇した。通期利益が市場予想を上回ったことが好感された。上期に3年ぶりの配当を支払った後、通期配当支払いを決めたことも買い材料となった。同業のWMモリソン・スーパーマーケッツとセインズベリーも買われた。
 
 
 ■ドイツ・フランクフルト株価指数
DAX 12293.97(-103.35)
ドイツ株式指数(DAX)は3営業日ぶりに反落した。
終値は前日10日と比べて103.35ポイント安の12293.97だった。シリア情勢の先行き不透明感からリスク回避姿勢が広がり、欧州各国株式相場が売られた。
 
個別では、素材メーカーのコベストロとコメルツ銀行、ドイツ取引所が売られた。
一方で、ドイツテレコムは上昇した。同社傘下の米携帯電話TモバイルUSと米同業のスプリントが統合に向け交渉を再開したとの報道が買い材料となった。自動車のフォルクスワーゲンとドイツ銀行も上がった。

■フランス・パリ株価指数
CAC40 5277.94(-29.62)
 

株ちゃんofficial xはこちら!
目次