労働市場が軟化しているとの懸念が広がり、投資家は運用リスクを回避しようと株に売りを出した。相対的に安全な資産とされる米国債に買いが入ったことから長期金利は大幅に低下し、およそ7カ月ぶりの低水準を付ける場面があった。「恐怖指数」とも呼ばれる米株の変動性指数(VIX)は不安心理が高まった状態を示すとされる20を上回って23台に上昇。2023年3月以来の高水準を付けた。
米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げを開始するとの観測が一段と高まっている。「最低でも年内に3回の利下げが予想され、9月会合では0.5%の利下げも考えられる」(エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏)との声も聞かれる。一方で今後景気の減速感が強まり、FRBの政策が後手に回るとの警戒感も意識されている。
決算で業績や見通しがさえなかった個別銘柄にも売りが広がり、ダウ平均の重荷となった。1日夕発表の24年4〜6月期決算が最終赤字となり、人員削減の方針を示したインテルが26%安で終えた。決算が振るわなかったアマゾン・ドット・コムも8.7%安となった。「米景気の減速に加え、人工知能(AI)関連やハイテク企業の決算が期待以上の成長を示していないことも大きな懸念につながっている」との見方があった。
個別では、アメリカン・エキスプレスやウォルト・ディズニーなど消費関連株の下げが目立った。ゴールドマン・サックスも下げた。半面、ディフェンシブ株に買いが入り、ユナイテッドヘルス・グループやトラベラーズなどが上げた。
ナスダック総合株価指数は大幅に続落した。前日比417.981ポイント(2.43%)安の1万6776.164で終えた。エヌビディアやメタプラットフォームズなどが売られた。
【シカゴ日本株先物概況】
シカゴ日経225先物 (ドル建て)
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
2日のFTSE100種総合株価指数は続落し、前日比108.65ポイント(1.31%)安の8174.71で終えた。米経済の減速懸念をきっかけに世界的な株安となり、英国を含む欧州市場でも投資家心理が悪化した。前日比で下げて始まった後、英国時間午後に発表された7月の米雇用統計などが市場予想より弱い結果を示すとFTSE100種指数は下げ幅を広げた。
英バークレイズなど銀行株の下げが目立った。建機・産業機器レンタルのアシュテッド・グループといった資本財関連やエネルギー、資源株にも売りが優勢だった。半面、英GSKなどの製薬や日用品の関連株には買いが入った。
中型株で構成するFTSE250種株価指数は前日比2.9%安で終えた。
FTSEの構成銘柄では、資産運用大手インターメディエイト・キャピタル・グループ(7.13%安)や生命科学分野などの専門的商品・サービスを提供するディプロマ(6.99%安)、小売り大手JDスポーツ・ファッション(6.57%安)が大きく売られた。一方、インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG、4.66%高)や大衆医薬品のヘイリオン(2.74%高)が買われた。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
2日のドイツ株価指数(DAX)は続落し、前日比421.83ポイント(2.33%)安の1万7661.22で終えた。終値として2月下旬以来、約5カ月ぶりの安値となる。2日発表の7月の米雇用統計が市場予想より弱い内容だったことなどを受けて米経済の減速懸念が一段と強まり、投資家心理を冷やした。
個別では、電力大手RWEが7.85%安、エネルギー大手シーメンス・エナジーが7.46%安、通販大手ザランドは5.97%安となり、下げを主導。他方、分子診断大手キアゲンは1.58%高、化学品商社ブレンタークは1.17%高だった。
■フランス・パリ株価指数
フランスの株価指数CAC40は同1.6%安の7251.80と2023年11月下旬以来の安値で終えた。ソシエテ・ジェネラルやクレディ・アグリコルなど金融株が下げたほか、半導体や消費関連の銘柄に売りが出た。傘下の資産運用会社を仏BNPパリバに売却する方向で交渉に入ったと前日に公表した仏保険大手アクサの株価は上昇した。
世界的な株安のなかで投資家がリスク回避姿勢を強めた。ユーロ圏主要50社の株価指数の予想変動率を示し「欧州版の恐怖指数」とも呼ばれるVストックスは2日に一時24台と23年3月以来の高水準をつけた。
