29日午前の日経平均株価は続落し、午前終値は前日比65円85銭(0.17%)安の3万8789円52銭だった。
朝方に先物主導で買い優勢の場面もあったが続かず、日経平均3万9000円台近辺では戻り売りを浴び、急速に値を消す展開となった。前場取引後半には売り一巡から下げ渋る地合いとなったものの、戻し切れずマイナス圏で着地している。前日の米国株市場ではハイテク株中心に買われナスダック総合株価指数が最高値を更新したことや、外国為替市場で円安が進んだことなどはプラス材料ながら半導体関連などの上値は重かった。一方で国内長期金利の上昇が投資マインドを冷やしている。
国内金利が上昇し、高PBR(株価純資産倍率)銘柄を中心に、株式の相対的な割高感が意識され売りを促した。
29日午前の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年債利回りは前日比0.025%高い(価格は安い)1.060%と、2012年3月以来の高水準をつけた。リクルート、キッコマン、OLCなどPBRが高い銘柄に売りが膨らんだ。一方、収益改善への期待から三菱UFJや三井住友FG、SOMPOなどといった金融株は上昇が目立った。
28日の米ハイテク株高は日本株の下値を支えた。半導体大手エヌビディアが大幅高となり、東京市場ではアドテストやディスコ、レーザーテクに買いが入った。
日銀の安達誠司審議委員は29日午前、熊本県金融経済懇談会であいさつし、国内経済の回復に水を差すような「『拙速な利上げ』は絶対に避けなければならない」と述べた。ただ、日銀による将来的な追加利上げへの警戒感は変わらず、株式市場の反応は限られた。
長期金利の指標である新発10年物国債利回りは一時1.065%まで上昇するなど上昇基調は継続している。ただ、米10年債利回りも4.5%まで上昇したことで、日米金利差は3.4%ほどのままである。為替は1ドル157円20銭台と昨日よりは円安に振れているが、上値は重くなっている。日銀の安達誠司審議委員は、午前の熊本県金融経済懇談会で「(持続的・安定的な物価上昇)の達成確信までは緩和的な環境維持が重要」とハト派な発言を行ったが、国債購入に関しては「需給など総合的に勘案、段階的に減額」とも発言したことで、金利のじり高が継続する可能性もある。銀行株や保険株への刺激材料となりそうだが、後場の日経平均は様子見ムードが強まり、前日比マイナス圏での推移が続きそうだ。
東証株価指数(TOPIX)は反落した。前引けは7.45ポイント(0.27%)安の2761.05だった。JPXプライム150指数は続落し、6.26ポイント(0.52%)安の1207.68で前場を終えた。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で2兆2990億円、売買高は9億2634万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1105。値上がりは498、横ばいは46だった。
業種別では、海運業、ゴム製品、水産・農林業、陸運業、空運業などが下落した一方、保険業、鉱業、銀行業、その他製品、精密機器、石油・石炭製品などが上昇した。
個別銘柄では、25年度のROE目標を10%から9%に引き下げたことから三菱電機が下落したほか、ファストリ、トヨタ下げた。国内証券会社のネガティブなレポ―トが影響して帝人も売られた。また、三菱重は新しい中期計画発表も材料出尽くし感が先行し下落。京成電鉄、川崎重、日立造船、ダイキンが売られた。
一方、金利上昇などを材料に、SOMPOホールディングス、T&Dホールディングス、MS&AD、第一生命ホールディングスなど保険株が買われたほか、コンコルディア、しずおかフィナンシャルグループ、三菱UFJなど銀行株が上昇。コナミG、三越伊勢丹は上げた。また、一部国内証券会社のレポートを材料にソフトバンクグループ(SBG)も買われた。
