10日午前の日経平均株価は反落し、前引けは前日比351円57銭(1.23%)安の2万8271円58銭だった。前日の米株式相場が大幅に下落した流れを受け、足元で買われていた銘柄を中心に利益確定の売りが優勢だった。
前日の米株式市場で、NYダウ工業株30種平均が543ドル安となるなど主要株価指数は大幅安となり、NYダウ平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合指数の主要株価3指数が揃って200日移動平均線を終値で割り込んだ。今後は商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが加速する可能性もあり、米国株の動向には注意したい。
東京株式市場でも主力株は軒並み安となった。米国の一部金融機関が大規模な資金調達を発表したことなどをきっかけに株式市場で銀行など金融株が大きく下落した流れが波及し、三菱UFJなど銀行株や証券株、保険株の下げが目立った。
日経平均は最近の一方的な上昇で短期的な過熱感が強まっていたとあって、利益確定売りを急ぐ投資家が多かった。足元で買われていた鉄鋼や機械など低PBR(株価純資産倍率)のバリュー(割安)株も総じて売られた。
国会は10日午前、次の日銀総裁に植田和男氏を起用する人事案を承認した。副総裁に内田真一氏と氷見野良三氏をそれぞれ充てる人事案についても承認したが、株式市場では織り込み済みとして目立った反応はみられなかった。
前引け直後に日銀が金融政策決定会合の結果を発表し、現行の金融緩和政策の維持を決めた。発表直後に日経平均先物6月物が下げ渋り、円相場が弱含む場面があった。
寄り付きでは、日経平均の株価指数先物とオプション3月物の特別清算指数(SQ)算出に絡む現物株売買があった。
SQ値(概算)は2万8377円34銭だった。SQに絡んだ商いは金額ベースで、日経平均型が300億円程度の買い越しに対して、TOPIX型は2100億円程度の売り越しと推定される。こうした動きを背景に、NT倍率は先物中心限月で13.88倍に上昇し、一時13.94倍と25日移動平均線水準までのリバウンドを見せた。
相場のセンチメントが悪化する中、経済活動の正常化など内需主導による恩恵が期待され、中国人観光客の回復という最大のカタリスト(株価変動を誘発する材料)もまだ温存されているリオープン・インバウンド関連などが相対的な安心感から買われやすい状況が予想される。
東証株価指数(TOPIX)も反落した。前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で2兆3910億円、売買高は9億2706万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1602、値上がりは183、変わらずは50銘柄だった。
業種別株価指数(33業種)では銀行業、小売業、証券・商品先物取引業などが下落。上昇は海運業、パルプ・紙、ゴム製品のみ。
個別銘柄では、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなど銀行株が安く、レーザーテックやソフトバンクグループ、ファーストリテイリング、キーエンスが値を下げた。セブン&アイが大幅安。ソニーグループやトヨタ自動車も軟調だった。
今週強かった三井物産、丸紅の商社や、マツキヨココ、パンパシHD、共立メンテなどのインバウンド関連も大幅安。鎌倉新書は好決算も目先の出尽くし感から急落した。
半面、今期経常益の増益見通しが好感された菱洋エレクが大幅高。日本郵船や商船三井といった海運株が高く、凸版、大日本印刷が大幅高となり、積水ハウスやキヤノンが値を上げた。
