9日のNYダウ工業株30種平均は大幅に3日続落した。前週末比653ドル67セント(2.0%)安の3万2245ドル70セントで終え、3月8日以来となる年初来安値を更新した。
ダウ平均を含む主要3株価指数がいずれも年初来安値を更新した。ナスダック総合株価指数は3日続落し、前週末比521.414ポイント(4.3%)安の1万1623.248で終えた。S&P500種株価指数は前週末比132.10ポイント(3.2%)安の3991.24で終えた。終値で4000を下回ったのは2021年3月以来だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げが急速な景気悪化につながるとの懸念が引き続き地合いを弱めた。米長期金利が早朝に3.2%と2018年11月以来の水準に上昇したのも株売りを誘った。
この日はまた、厳格な新型コロナウイルス対策を導入した中国で景気が低迷し、エネルギー需要が減退するとの警戒感が広がり、原油相場が大幅に下落。これを眺めてエネルギー株が売り込まれた。
前週末発表の4月の米雇用統計は労働需給の逼迫と賃金上昇の高止まりを示した。今週は11日に4月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控える。市場予想では前年同期比では伸びが和らぐとみられているが高水準のインフレが続き、FRBの金融引き締め方針に変化はないとの見方が多い。急速な金融引き締めが米景気を冷やすとの懸念もくすぶり、市場心理の重荷だった。
海外の売り材料も重なった。9日発表の中国の4月の貿易統計で輸出の伸びが大幅に鈍化した。新型コロナウイルス感染拡大を抑制するための都市封鎖や行動制限が中国経済の足かせになり、世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱が続くとの見方が広がった。長期化するウクライナ戦争の欧州経済への悪影響を懸念する声もあった。
売りが売りを呼ぶ展開となる中、市場では「信用取引の買い方が追い証を払えず、強制的に売らざるを得ない状況になっている」との指摘があった。投資家心理を測る指標である米株の変動性指数(VIX)は前週末比15%ほど高い34台で終えた。
業績が中国や世界景気の影響を受けやすい銘柄の下げが目立った。中国売上高が多い航空機のボーイングが10%安と急落、建機のキャタピラーも4%安で終えた。米原油先物相場が大幅に下げ、石油のシェブロンは7%安となった。インフレが消費を抑えるとの見方から消費関連株も売られ、クレジットカードのビザは5%安、同業のアメリカン・エキスプレスは4%安となった。
早朝の長期金利上昇を嫌気し、高PER(株価収益率)のハイテク株も軒並み売られた。ソフトウエアのマイクロソフトと顧客情報管理のセールスフォースが4%安、スマートフォンのアップルは3%安となった。
ダウ平均の構成銘柄以外では半導体株への売りが目立ち、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は9%安となった。電気自動車のテスラも9%安、ネット通販のアマゾン・ドット・コムは5%安と下げが目立った。
NYダウ工業株30種(ドル)
32,245.70-653.67
S&P500種
3,991.24-132.10
ナスダック
11,623.248-521.414
FTウィルシャー5000
40,388.10-1,441.03
NY金(ドル/トロイオンス)
1,858.60-24.20
NY原油(ドル/バレル)
102.95-0.14
円・ドル
130.46 – 130.47-0.74
【シカゴ日本株先物概況】
9日のシカゴ日経平均先物は大幅に下落した。6月物は前週末比905円安の2万5980円で引け、9日の大取終値を410円下回った。9日の米株式市場では、連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の正常化を目指し緩和解除を開始したため、投資家によるリスク資産を軽減する動きが続き、寄り付き後、下落。中国のコロナによる都市封鎖も継続しサプライチェーン混乱も継続、加えて、FRBの急速な利上げにより景気後退入りへの懸念も強まり、引けにかけては下げ幅を拡大した。
インフレや都市封鎖による中国の景気低迷への警戒感から主要株価指数が軒並み続落し、日経平均先物に売りが波及した。
シカゴ日経225先物6月限 (円建て)
25980 ( -410 )
シカゴ日経225先物6月限 (ドル建て)
26005 ( -385 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
FTSE100 7216.58(-171.36)
9日のFTSE100種総合株価指数は大幅に続落し、前週末に比べ171.36ポイント(2.32%)安の7216.58で引けた。中国で新型コロナウイルス対応の厳しい行動規制が続くなか、同国の景気減速への懸念が強まっている。需要が減退するとの見方から商品相場が下落しており、資源やエネルギー株への売りが目立った。
FTSEの個別銘柄を見ると、チリ産銅大手アントファガスタが6.5%安、英鉱業大手アングロ・アメリカンが5.4%安、英・豪系資源大手リオ・ティントも4.6%安と資源株が軒並み軟調だった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
DAX 13380.67(-293.62)
9日のドイツ株価指数(DAX)は大幅に4日続落した。前週末に比べ293.62ポイント(2.15%)安の1万3380.67で終えた。米金融引き締め加速や、中国での新型コロナウイルス感染対応の厳しい行動制限が続いていることから、世界的に景気が減速するとの不安が強まった。個別では、ドイツ銀行が3.9%安だった。
