「寡黙」
前引けの日経平均株価は164円47銭高の21669円78銭と反発した。
英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の9時30分過ぎの報道。
「今日からワシントンで開催される米中閣僚級協議で両国の合意が近づいている」を好感。
投資家心理が改善し日本株相場を押し上げた格好。
ドル円が1ドル=111円台半ばで円安・ドル高に傾いたこともプラス。
2月の豪小売売上高や同月の豪貿易収支の黒字幅はいずれも市場予想を上回って着地。
中国で10時45分に発表された3月の財新非製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比で大幅に上昇。
これらも好材料視された。
香港ハンセン指数は7日続伸、上海総合指数は5日続伸になった場面もあった。
市場からは「一部の外資系証券経由で、米系のロングオンリーの買いが3日連続で入っている。
個別というよりバスケット買い。
4月は例年、外国人の買い越しが続いていたのでアノマリー通りに期待」という声も聞こえる。
日足陽線基準の寄り付きの21563円を終値で上回っているかがポイント。
東証1部の売買代金は1兆1103億円。
値上がり1231銘柄、値下がり826銘柄。
新高値104銘柄。新安値43銘柄。
10年国債利回りはマイナス0.05%。
ファーストリテの上場寄与度が90円、ファナックが同20円、東エレが同18円。
第一三共、ZOZOが下落。
その昔トレーディングルームで発した会話が1時間後にロンドン経由で戻ってきたこともあった。
そういう意味で情報は世界を駆け巡っている。
昨日の「金融機関の期初の売り」なんていうのもそんな印象だった。
誰かが発した言葉が姿を変えて市場を駆け巡る時代なんてもう去ったかと思っていたのだが・・・。
哲学者ヴィトゲンシュタインに「人は語り得ぬものについては沈黙を保たねばならぬ」という名言がある。
「論理哲学論考」という書に登場する言葉だ。
「語りうることと語りえないこと」との境界を明らかにするということ。
語りえないことに対して我々が唯一取れる態度は「沈黙する」ということ。
「無理に語ろうとすれば、その時点でナンセンス」というのが解釈だ。
しかし真実あるいは本物を知っている人はそれこそ「語り得ぬ」世界の人。
逆説的になるが、能弁な市場関係者は実は「真実に触れていない」と言うことが可能になることがある。
知らないからこそ語れる。
あるいは「知っていると無責任な人のコメントとのコントラストが大きくなる」。
寡黙な市場関係者は本当に知らなくて寡黙なのか。
あるいは知っていて寡黙なのか。
この線引きというのが必要になってくるに違いない。
「沈黙は金」という言葉は重い。
ヴィトゲンシュタインの別の言葉。
「ザラザラした大地にもどれ」。
そして「哲学におけるあなたの目的は何か。─ハエにハエとり壺からの出口を示してやること」。
深い。
市場関係者のコメントの聞こえ方を分類してみると・・・。
(1)株価上昇時の強気コメント→勇ましく、あるいは荒唐無稽に聞こえる
(2)株価上昇時の弱気コメント→臆病に、あるいは知的に聞こえる
(3)株価下落時の強気コメント→愚かしく聞こえる且つ縋りたいもの
(4)株価下落時の弱気コメント→賢げに聞こえる且つ聞きたくないもの
加えれば・・・。
(5)株価膠着時の強気コメント→根拠なく聞こえる
(6)株価膠着時の弱気コメント→投げやりに聞こえる
本当に市場が効率的であるならば、些細な材料に右往左往することもない。
本当に市場が無誤謬なら、株式市場で損をする人の多いことは説明できない。
「効率的市場の有効性」を信じていないから投資判断を間違える」と言われてしまうかも知れない。
金銭欲と物欲がどういう思考を行い、稟議書決済と比較パフォーマンスで出世欲を満たしたい機関投資家がどういう発想での運用を行うのか。
ここを認識することも結構大切だろう。
「相場川柳」をいくつか・・・。
「やっぱり」と思う相場に後悔し」。
上か下 でも当たらない 摩訶不思議
もうかった同じ服着てパソコンに
分析も、いざとなったら、思惑に
見送りを 決めたとたんに 乗り遅れ
趣味特技、高値掴みと底値売り
朝投げて、後場買い上がり2時に投げ
くれてやる、頭と尻尾がでかすぎる
是非欲しい明日の新聞あったなら
右肩を上げて兜町歩く癖
(櫻井)
