28日午前の日経平均株価は反発し、前週末比529円75銭(1.68%)高の3万2154円03銭で前場を終えた。
前週末の米国株市場でNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに切り返す展開をみせたことから市場のセンチメントが改善、日経平均は大幅反発して3万2000円台を回復した。先物主導ながら外国為替市場でドル高・円安が進行していることや、取引時間中に中国・上海株指数や香港ハンセン指数などが上昇していることも強気ムードを後押ししている。前週末に売られた半導体の値がさ株にアンワインドの動きが観測され、全体指数を押し上げた。
25日の国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容は「(金融引き締めに積極的な)タカ派寄り」との受け止めが多かったが、市場にとって大きな波乱とはならなかった。ファストリや東エレクなど値がさ株を中心に上昇した。
中国当局がきょうから株式取引の印紙税を引き下げるなどの株安対策を打ち出したことで上海総合指数や香港ハンセン指数が高く始まると、日本株にも株価指数先物主導の買いが強まり、上げ幅を500円超に拡大した。日経平均は前週末に600円超下げていたとあって、自律反発を見込んだ短期筋の買いが入りやすかった。
半面、東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を巡る日本と中国の関係悪化を懸念して百貨店や陸運、空運など幅広いインバウンド(訪日外国人)関連に売りが強まるなど個別や業種別では相場全体とはちぐはぐな動きも目立った。福島第1原発の処理水放出後、「中国では日本への団体旅行キャンセルの動きが出ている」などと一部メディアで伝わっている。日本側も外務省が27日、中国で抗議や嫌がらせが相次いでいるとして、中国への渡航や滞在を予定する邦人に注意を呼びかけた。
三越伊勢丹は一時6%近く下げた。JR東海、JR西日本、JR東日本、私鉄株がそろって下落したほか、日経平均の構成銘柄ではないが、パンパシHDも5%を超える下げとなった。市場では「中国では若年層の失業率が深刻な状況となるなど消費の先行きは楽観できず、インバウンドについても早期の大幅回復はそもそも見込みづらい」という指摘もある。
9月19、20日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の次回会合前には、8月消費者物価指数(CPI)の発表も控えている。CME Fedウォッチツールでは、9月の会合では80.5%の確率で利上げ休止の公算が大きいと見込まれているが、11月会合では0.25%利上げは51.1%、さらに0.5%の利上げは10.1%と、警戒感はくすぶっている。各種統計の結果次第では米長期金利がさらに上昇する可能性があるため、相場の本格的な復調はしばらく先になる可能性があるだろう
そのほか、8月24日に発表された最新週(8月14日~18日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を8週ぶりに売り越した。現物株の売り越し額は7415億円となった。一方、個人投資家は現物株を3558億円と2週ぶりの買い越し、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行も買い越しに転じた。海外投資家が大きく売り越しに転じたことは注目材料となろう。
後場の日経平均株価は引き続きじりじりと上げ幅を広げる展開となるか。買い手優位の状況が続くか注目しておきたいところ。
東証株価指数(TOPIX)が30.87ポイント高の2297.27は反発した。JPXプライム150指数は反発し、前引けは前週末比15.19ポイント(1.51%)高の1024.13だった。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆5589億円、売買高は5億7865万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は1475と、全体の約8割だった。値下がりは313、変わらずは46銘柄だった。
業種別株価指数(33業種)では、機械、石油・石炭製品、保険業の上昇が目立った。下落は空運業、小売業、陸運業の3業種だった。
個別では断トツの売買代金をこなすレーザーテックが大幅高に買われたほか、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソシオネクスト、ルネサスエレクトロニクスといった半導体関連の主力株が軒並み上昇した。ダイキン、キーエンス、三菱重工業、テルモなども買いが優勢。三菱UFJフィナンシャル・グループなどメガバンクも堅調。このほかメディカル・データ・ビジョンが値上がり率トップに買われた。
半面、Jフロント、大成建、日清粉Gが下落した。資生堂、日本航空、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスなどインバウンド関連に下げるものが目立っている。NSDが値下がり率トップに売り込まれた。
