5日のNYダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、前日比485ドル60セント高の4万3006ドル59セントで終えた。
高関税政策の先行きを見極めたいとの思惑から、ダウ、ナスダックともに序盤は売り買いが交錯した。マイナス圏に沈む場面もあったが、貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に準拠した自動車への関税賦課を1カ月猶予する米政権の方針を受け、景気減速に対する過度な警戒感が後退。自動車や金融などの銘柄に買いが膨らみ、相場が押し上げられた。
ダウ平均の上げ幅は一時600ドルを超えた。
ホワイトハウスのレビット大統領報道官は5日の記者会見で関税について「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)内の自動車は1カ月除外される」と話した。米自動車業界からの要請を受け、4月に予定する相互関税の実施まで免除する方針。ダウ平均の構成銘柄ではないが、5日はゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど自動車株の上昇が目立った。
トランプ米大統領は5日、カナダのトルドー首相と関税を巡って電話協議したことも明らかにした。一連の動きは貿易摩擦激化への過度な懸念の後退につながった。関税を巡る不透明感でダウ平均は前日までの2日間で1300ドルあまり下落し、前日には1月中旬以来の安値で終えていた。一部の銘柄は「売られすぎの水準となっており、押し目買いを誘っている」との見方があった。
米景況感の改善も市場心理の支えとなる面があった。米サプライマネジメント協会(ISM)が5日午前に発表した2月の非製造業(サービス業)景況感指数は53.5と前月の52.8から上昇し、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(52.9)を上回った。「米経済成長の下振れリスクに対する市場の懸念をいくぶん和らげた」との受け止めがあった。
一方、関税政策や米景気の先行きを巡る不透明感は根強く、米株式相場は下げる場面もあった。5日発表の2月のADP全米雇用リポートは非農業部門の雇用者数が前月比7万7000人増と、市場予想(14万8000人増)を大幅に下回った。労働市場の減速を示唆したと受け止められた。7日発表の2月の米雇用統計を見極めたい投資家も多かった。
ダウ平均の構成銘柄ではキャタピラーやボーイング、ゴールドマン・サックスの上昇が目立った。マイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、エヌビディアといったハイテク株も買われた。トラベラーズやアムジェンも高い。一方、シェブロンやIBMは下落した。
ナスダック総合株価指数も3営業日ぶりに反発した。前日比267.571ポイント(1.46%)高の1万8552.734(速報値)で終えた。前日は4カ月ぶりの安値で終えた後で、一部の主力株に押し目買いが入った。メタプラットフォームズやアルファベットが買われ、パランティア・テクノロジーズの上昇も目立った。ブロードコムやマイクロン・テクノロジーといった半導体株も買いが優勢だった。
【シカゴ日本株先物概況】
5日のシカゴ日経平均先物は上昇した。3月物は前日比740円高の3万7695円で終えた。この日はトランプ米政権による関税強化への懸念がいったん後退し、日米株式相場がともに上昇した。投資家心理が改善し、シカゴ市場の日経平均先物にも買いが活発となった。
シカゴ日経225先物 (円建て)
37695 ( +275 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て)
37700 ( +280 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
5日の英FTSE100種総合株価指数は前日比横ばい圏で終えた。終値は前日比3.16ポイント(0.03%)安の8755.84だった。ラトニック米商務長官が、発動済みのカナダとメキシコに対する25%の関税について緩和策を発表する考えを示したことが投資家心理を支え、同指数は前日終値を上回って推移する場面が目立った。だが米関税政策への警戒感は根強く、買いの勢いは続かなかった。
英長期金利の上昇を背景に、電力・ガス供給のナショナル・グリッドなど公益や不動産投資信託(REIT)といった金利動向に敏感な銘柄が下げ、指数の重荷となった。半面、銅やアルミニウムの先物相場上昇が資源株の買いを誘った。銀行に買いが優勢だった。
FTSEの構成銘柄では、水道大手セバーントレントが4.50%安、送電大手ナショナル・グリッドが3.95%安、大衆医薬品のヘイリオンが3.40%安と沈んだ。一方で、産銅大手アントファガスタが6.46%高、産金大手フレスニロが6.22%高となり、下げ幅も限定的だった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
5日のドイツ株価指数(DAX)は反発し、前日比754.22ポイント(3.37%)高の2万3081.03で終えた。ドイツで、防衛力強化などへ向けて債務抑制策を見直す方針が示された。拡張的な財政政策が同国の投資や経済を支えるとの見方から、投資家心理が強気に傾いた。
内需系の比率が高い中型株指数のMDAXは前日比6.15%上昇した。
個別では、セメント大手ハイデルベルク・マテリアルズが17.52%高と急騰。ドイツ銀行は12.36%高、コメルツ銀行は10.95%高と大幅に上昇した。他方、不動産大手ボノビアは7.66%安、通信大手ドイツテレコムは3.41%安と売られた。
■フランス・パリ株価指数
フランスの株価指数CAC40は反発し、前日比1.56%高で終えた。欧州鉄鋼大手アルセロール・ミタルが大幅に上昇したほか、防衛関連が上げた。他方、エネルギー大手の仏トタルエナジーズ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが下げた。
