20日のNYダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比286ドル89セント(0.85%)安の3万3127ドル28セントで終えた。中東の地政学リスクの高まりが引き続き相場の重荷となった。米長期金利の上昇は一服したものの、依然として高水準で推移していることも株売りを誘った。取引終了にかけて下げ幅を広げる展開だった。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエルの軍事衝突が続き、イスラエル軍がガザへの地上侵攻の準備を進める中、中東情勢が緊迫化。双方の戦闘が激しさを増し、紛争が中東の他の地域に波及する事態を懸念する声も出ている。
中東では、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が続いており、地上戦が近づいているとの見方もある。20日には、イスラエル国防省がレバノン国境近くの地域の住民に避難を命じたと報じられた。バイデン米大統領は同日、イスラエル支援などへの緊急予算を要請すると表明。中東の情勢悪化への警戒が続いた。
こうした中、週末の休日を控えてダウは朝方からリスク回避の売りが優勢な展開。この日は中東情勢以外の材料に乏しかったが、米長期金利高止まりへの警戒感も根強く、終日軟調な値動きが続いた。ダウの3日間の下落幅は計870ドルを超えた。
市場では「衝突が解決に近づかない限り、短期的に株買いに対する不安感はくすぶるだろう」との声が聞かれた。
米債券市場で長期金利は前日から低下(債券価格は上昇)し、4.9%台前半で推移した。前日夕には16年ぶりの5%台を付けていた。金利上昇はやや一服しているものの、依然として高い水準を維持しており、株式を買い戻す動きは広がらなかった。
米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測も相場の重荷だった。アトランタ連銀のボスティック総裁は20日の米CNBCの番組で、利下げは2024年後半以降になるとの見方を示した。クリーブランド連銀のメスター総裁は同日、年内の追加利上げが適切との見方を維持した。
個別では、顧客情報管理のセールスフォースや石油のシェブロン、スポーツ用品のナイキなどが売られた。朝に四半期決算を発表したクレジットカードのアメリカン・エキスプレスは5%安。一方、ドラッグストアのウォルグリーン・ブーツ・アライアンスや医薬品・医療機器のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)など、ディフェンシブ株の一角には買いが入った。アナリストが投資判断を引き上げた製薬のメルクも高かった。
ナスダック総合株価指数は4日続落した。前日比202.368ポイント(1.53%)安の1万2983.807とおよそ5カ月ぶり安値で終えた。電気自動車(EV)のテスラ、ネット通販のアマゾン・ドット・コムの下げが目立った。
【シカゴ日本株先物概況】
20日のシカゴ日経平均先物は下落した。12月物は前日比255円安の3万1060円で引けた。
中東情勢悪化に対する警戒感が広がる中、NYダウ工業株30種平均が3日続落した。日経平均先物にも売りが波及した。
シカゴ日経225先物12月限 (円建て) 31060 ( -160 )
シカゴ日経225先物12月限 (ドル建て) 31085 ( -135 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
20日のFTSE100種総合株価指数は3日続落した。前日に比べ97.39ポイント(1.29%)安の7402.14と、8月下旬以来およそ2カ月ぶりの安値で終えた。欧米の長期金利が高い水準での推移を続けていることが、投資家心理の重荷となった。銀行株が下落したほか、銅やアルミといった非鉄金属相場の下落を背景にスイス系のグレンコアや英豪リオティントといった資源大手の株も売られた。
英金融大手HSBCホールディングスは前日比3.9%安で終えた。カナダ銀大手のロイヤル・バンク・オブ・カナダによるHSBCのカナダ事業買収を巡り、カナダ保守党の党首が、競争という観点から同案件の実現に反対の意思を示したと一部メディアが報じた。
FTSEの構成銘柄では、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループが4.48%安、鉱業大手アングロ・アメリカンが4.41%安、有害生物管理会社レントキル・イニシャルが4.07%安だった。
一方、産金大手エンデバー・マイニングは4.39%高、医療機器のコンバテックは3.47%高、航空・防衛大手BAEシステムズは2.02%高となった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
20日のドイツ株価指数(DAX)は3日続落した。前日比246.76ポイント(1.64%)安の1万4798.47と、7カ月ぶりの安値を連日で更新した。欧米の長期金利が高い水準で推移していることや、中東情勢への警戒感などが重荷となった。エネルギー株や消費関連、IT(情報技術)を中心に幅広い業種で売りが優勢だった。 指数を構成する40銘柄のうち、33銘柄が下落した。金融機関による目標株価の引き下げが伝わった医療機器のザルトリウスは7%安となった。セメントなど建設資材を手掛けるハイデルベルク・マテリアルズも7%下げた。
個別では、セメント大手ハイデルベルクセメントと医療機器のザルトリウスが共に6.80%安と急落。エネルギー大手シーメンス・エナジーは3.33%安、ハノーバー再保険も2.80%安と売られた。
半面、ヘルスケア大手フレゼニウスは1.29%高、防衛大手ラインメタルは0.62%高、素材化学大手コベストロは0.57%高だった。
■フランス・パリ株価指数
フランスCAC40種指数は1.52%安(週間2.67%安)だった。
中東情勢の緊迫化を背景としたリスク回避の動きが進んだほか、金利の高止まりが景気を圧迫することへの懸念も引き続き株価の重しとなった。