1日のNYダウ工業株30種平均は反発し、前日比369ドル54セント(0.96%)高の3万8519ドル84セントで終え、1月30日に付けた過去最高値を更新した。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は前日、金融政策決定会合後の記者会見で3月の利下げに否定的な姿勢を表明。早期利下げ観測の後退で前日のダウは売り込まれて引けたが、この日午前のダウは翌日公表の雇用統計が待たれる中、底堅い値動きを維持した。
この日は米長期金利の低下を眺めてハイテク株が活発に買われ、取引中盤以降のダウは堅調な展開を保ち、この日の高値近辺で取引を終えた。引け後に明らかにされる巨大IT大手のアップル、アマゾン・ドット・コム、メタ(旧フェイスブック)の四半期決算が注目されている。
朝発表の米雇用指標が労働需給の緩和を示し、物価上昇が一段と沈静化するとの見方が広がった。米長期金利が低下し、一時約1カ月ぶりの低水準を付けたことも株買いを誘った。
1日発表の週間の米新規失業保険申請件数は22万4000件と、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(21万4000件)より多かった。2023年10〜12月期の米労働生産性では、企業の賃金負担を示す単位労働コストが7〜9月期に比べ年率0.5%上昇し、市場予想(1.1%上昇)を下回った。賃金の上昇圧力が緩み、インフレの鈍化につながるとの観測が広がった。
指標を受け、米債券市場では長期金利が低下した。一時は3.81%と23年12月下旬以来、およそ1カ月ぶりの低水準を付けた。高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に、株式の相対的な割高感が薄れたとみた買いが入りやすかった。
米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測の後退から、前日には売りが膨らんでいた。パウエル議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、インフレ率が目標の2%を上回っていることを念頭に3月の利下げに否定的な考えを示した。もっとも市場では「FOMCで特にサプライズはみられず、きょうは前日に下げた反動で買いが広がった」との見方があった。
1日の取引終了後には、スマートフォンのアップルやネット通販のアマゾン・ドット・コム、交流サイトのメタプラットフォームズといった大型ハイテク株の決算発表を控える。人工知能(AI)需要の加速を背景に業績期待も高く、決算を前に先回りした買いもみられた。
ダウ平均の構成銘柄ではないが、米地銀のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が11%安で終えた。商業用不動産向け融資で多額の引当金を計上し、前日朝発表の23年10〜12月期決算で市場予想に反して赤字に転落。1日には前日に続いて売りが膨らみ、他の金融機関や地銀株の重荷となった面があった。
ダウ平均の構成銘柄では、顧客情報管理のセールスフォースやソフトウエアのマイクロソフトが買われた。四半期決算が好感された製薬のメルクは5%弱高で終えた。半面、金融のJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスは売られた。四半期決算が振るわなかった機械のハネウェル・インターナショナルも安かった。
ナスダック総合株価指数は3日ぶりに反発した。前日比197.630ポイント(1.30%)高の1万5361.642で終えた。アマゾン・ドット・コムやメタプラットフォームズの上げが目立った。
【シカゴ日本株先物概況】
1日のシカゴ日経平均先物は上昇した。3月物は前日比245円高の3万6120円で終えた。
米労働市場の過熱感が和らいでいるとして同日の米長期金利が低下した。米株式相場が上昇し、日経平均先物にも買いが及んだ。
シカゴ日経225先物3月限 (円建て)
36120 ( +200 )
シカゴ日経225先物3月限 (ドル建て)
36150 ( +230 )
※( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
1日のFTSE100種総合株価指数は続落した。前日に比べ8.41ポイント(0.11%)安の7622.16で終えた。英イングランド銀行(中央銀行)が市場の想定ほど早期の利下げに前向きではないとの見方が、投資家心理の重荷となった。
英中銀は1日、政策金利を5.25%で据え置くと決めた。投票権を持つ9人のうち2人が、利上げが必要だとして政策金利の据え置きに反対した。
FTSEの構成銘柄では、オンライン食品販売大手オカド・グループが5.56%安と下落幅トップ。プライベート・エクイティ会社3i(スリーアイ)グループは5.16%安、通信大手BTは2.85%安と続いた。特殊化学品大手クローダ・インターナショナルが3.37%高、生命科学分野などの専門的商品・サービスを提供するディプロマが2.45%高だった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
1日のドイツ株価指数(DAX)は続落し、前日比44.72ポイント(0.26%)安の1万6859.04で終えた。前日公表した2024年12月期通期の営業利益見通しが市場予想を下回ったスポーツ用品のアディダスなど、一般消費財の関連銘柄に売りが出た。不動産や素材株にも売りが出た。半面、23年12月期通期の決算発表とあわせて株主還元を強化していく方針を示したドイツ銀行株には買いが集まった。
個別では、素材化学大手コベストロが2.71%安、製薬大手バイエルが2.16%安、スポーツ用品大手アディダスが2.08%安と売られた半面、医療機器のシーメンス・ヘルシニアーズが4.44%高、ドイツ銀行が2.96%高と買われた。
■フランス・パリ株価指数
フランスCAC40種指数は0.89%安だった。
低調な企業決算を背景に銀行株やヘルスケア関連株が低迷したことで、株価を押し下げた。
