26日のNYダウ工業株30種平均は3日ぶりに大幅反落した。前日比1008ドル38セント(3.0%)安の3万2283ドル40セントと、約1カ月ぶりの安値で終えた。下げ幅、下落率ともに今年3番目の大きさだった。
パウエル議長は米ワイオミング州ジャクソンホールで開催中のシンポジウムで講演し、インフレ高止まりに対処するために金融引き締めを続ける必要があると表明した。議長は、物価の安定を取り戻すには「景気抑制的な金融政策姿勢をしばらく維持する必要がある」と強調。引き締め継続に伴う景気悪化懸念が強まり、株式市場で売りが膨らんだ。週末を控えて次第に売りが強まり、株価は終盤にかけて下げ幅を拡大した。
株価はFRBが利上げペースを鈍化させるとの楽観論に支えられ、6月半ば以降に上昇基調をたどってきた。ただ、FRB高官のタカ派発言が相次いだことから先週以降は下落基調に転じ、この日の「タカ派寄り」(米エコノミスト)の議長講演が決定打になった格好だ。
この日発表された米経済指標はどちらかと言えば株価に追い風となる内容だったものの、議長講演に打ち消された。7月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比6.3%上昇と、3カ月ぶりに鈍化。ミシガン大発表の8月の景況感指数(確報値)は58.2と、暫定値の55.1から上方改定された。
市場では「高い政策金利の水準が、金融市場の想定よりも長く続くとのメッセージだ」と受け止められ、市場の一部で浮上していた早期の利下げ転換への期待が後退した。
パウエル議長は金融引き締めが「家計や企業に痛みをもたらす」とも説明。FRBは景気を犠牲にしてでも物価高を抑制するとの見方が強まり、幅広い銘柄が売られた。
ダウ平均を構成する全30銘柄が下落。工業製品・事務用品のスリーエム(3M)が10%安となるなど、景気敏感株の下落が目立った。当面は高い金利水準が続くとの見方から、金利が上昇すると相対的な割高感が意識されやすいハイテク株への売りも目立った。スマートフォンのアップルとソフトウエアのマイクロソフトはともに4%下げた。
26日は米国だけではなく、欧州中央銀行(ECB)が利上げペースを加速するとの観測が高まった。ロイター通信が9月の理事会で通常の3倍となる0.75%利上げを議論する可能性があると伝えた。ECBは7月に0.5%の利上げを実施した。欧米の中央銀行の金融引き締めが強化され、世界的に景気悪化が避けられなくなるとの懸念も、投資家心理の重荷となった。
投資家心理を測る指標となる米株の変動性指数(VIX)は上昇した。前日比17%ほど高い25台と、不安心理が高まった状態とされる20を明確に上回った。
ナスダック総合株価指数も3日ぶりに反落し、前日比497.555ポイント(3.9%)安の1万2141.710で終えた。約1カ月ぶりの安値。主力株が軒並み下げたなか、エヌビディアは9%安、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は6%安となるなど、半導体株の下げが目立った。
NYダウ工業株30種(ドル)
32,283.40-1,008.38
S&P500種
4,057.66-141.46
ナスダック
12,141.710-497.555
FTウィルシャー5000
41,361.36-1,435.80
NY金(ドル/トロイオンス)
1,749.80-21.60
NY原油(ドル/バレル)
92.97+0.4526日 16:59
円・ドル
137.51 – 137.53+1.04
【シカゴ日本株先物概況】
26日のシカゴ日経平均先物は下げた。9月物は前日比460円安の2万8220円で引け、26日の大取終値を390円下回った。
米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で26日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が講演し、インフレ抑制のための利上げ継続姿勢を示した。利上げによる景気悪化を警戒する売りが強まった。
シカゴ日経225先物9月限 (円建て)
28220 ( -390 )
シカゴ日経225先物9月限 (ドル建て)
28225 ( -385 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
26日のFTSE100種総合株価指数は反落した。前日に比べ52.43ポイント(0.70%)安の7427.31で引けた。英国で10月からエネルギー価格の上限が引き上げられる。エネルギーコストの一段の上昇やインフレの長期化観測から同国の景気後退の懸念が強まり、幅広い銘柄に売りが出た。
FTSEでは、指数構成銘柄の8割強が下落。インターコンチネンタル・ホテルズ・グループとオンライン食品販売大手オカド・グループは4.3%安、小売り大手JDスポーツファッションは3.7%安、情報サービス大手レレックスは3.4%安となった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
26日のドイツ株価指数(DAX)は3日ぶりに大幅に反落した。前日に比べ300.49ポイント(2.26%)安の1万2971.47と、7月18日以来の安値で終えた。欧米中銀の大幅な利上げ継続が世界的な景気悪化につながることを警戒した売りが強まった。欧州天然ガス価格が最高値を更新し、エネルギー危機への懸念が一段と高まったのも投資家心理を冷やした。
欧州中央銀行(ECB)が9月の理事会で、通常の3倍となる0.75%の利上げを議論する可能性があるとロイター通信が伝えた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が26日、米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、市場の一部に浮上していた早期の利下げ転換予想をけん制した。欧米中銀が、景気よりインフレを強く懸念していることが確認され、大幅な金融引き締めが継続するとの見方が改めて意識された。
■フランス・パリ株価指数
フランスCAC40種指数は1.68%安だった。
ドイツ経済の落ち込みが欧州全域に波及することへの懸念が広がり、株売りを誘った。また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がジャクソンホール会議での講演で、当面は金融引き締めを続ける方針を示したことも相場の重しとなった。
