「自律と挫折の相場像」

「自律と挫折の相場像」
 
週末の光景。
「評論家とか市場関係者の意見に左右されない。
相場を自分自身のシナリオで考える」。
などとたっぷり話したあとで質問に来られた高齢のご夫婦。
「海運株は配当取った方がよいでしょうか。取らない方が良いでしょうか」。
「何を目的に買ったのですか」と伺ってみると・・・。
「配当利回りが高いので」。
目的は明確だった。
ただ「海運株は配当落としたら上がらない、とかもう相場は終わりだ、
バルチック海運指数が下がっている、とかいう人が多いから心配で」。
株は買った瞬間から心配になるのは理解できる。
でも「いくらになったら売ろうと思ってかったのですか」には「特に決めてません」。
目的は明確だが目標は曖昧模糊。
その日「自分の相場観を信じましょう」と言ったことなど忘却の彼方。
他力本願的投資の典型的な事例だった。
「どうしたいのですか」には「わかりません」。
たぶんこういう投資家さんは多いのだろう。
これは「株を買っているのではなく株価を買っている」ケースでもあろう。
株価は日々移ろい、相場は刹那に変化するものではある。
しかし心理も日々移ろうもの。
その刹那の心理に惑わされていては相場で行きぬくのは難しい。
アレコレと移り気になることを俊敏と言えるかもしれないが、当初の目的を完遂することが愚直な投資。
最期に「配当を取ったらどうですか」といったら何か悄然として姿勢。
おそらく「売ってほかの銘柄に乗り換えたらどうですか」というような答で背中を押して欲しかったのかも知れない。
 
 
「ペイフォワード」に関しての言葉。

「★馬は死ぬ前に売ってしまうことだ。
人生のコツは、損失を次の人に回すこと」
(アメリカの詩人ロバート・フロスト)。
これが実は心でわかるが体でわからない話。
損を人に譲ったつもりが儲けを他人に差し上げることになることは多い。
もっとも次に買った人も心理は同様。
この反復が日々の相場変動の一要因でもある。
「★押し目の浅い相場は大相場」という格言もある。
昨今の相場はまさにそんな展開。
ただ押し目に遭遇した時の心理はたぶん「相場は終わったのかも知れない」という疑念。
強い心で押し目を買うことはなかなか出来ず、アレッという出遅れ感につながることも多い。
疑念と警戒は必要だがそれだけでは相場に乗れないもの。
皮肉に満ちているのは「追い証請求はブローカーが行う唯一の確実な助言」。
追証の発生は相場の読み違え。
それを改めて指し示してくれているのだが、これは認めたくない真理が勝るもの。
これも強い心で持ち株を切ることがなかなか出来ないもの。
そして「心動けば相場に曲がる」。
「まだ」も「もう」も通じない世界は多い。
「★両建ては損から外せ」というのは意外と正鵠。
試しに模擬売買で両建てをしてみる。
売って上がった株や買って下がった株を外してみる方がたぶんパフォーマンスは良い筈。
ところが往々にして買って上がった株や売って下がった株の方を先に手仕舞い。
残るのは「引かれ玉」ばかりになったときに捲土重来となる可能性は低いもの。
「株価はどうなるか?事実は何か?」。
これを問題にするのが株式市場。
しかしこれが問題ではないことが多い。
「株価について、人々がどう思っているか?」というのが最大の真理。
相場は心理の織り成す綾取りみたいなもの。
だから比較多数の心理を読んでその裏を行くことが勝利への早道。
性格の悪い人に向くのかもしれない。
因みに「投資家心理」とは・・・。
「誰かにヒアリングされることもなく勝手に冷え込んだり温まったりするもの。
 一般的には株価上昇基調では暖かく下落基調では冷めているとみなされることが多い」。
株価はブラウン運動のようなただの分子のランダムな運動。
しかし価格変動には法則性があるような気もする。
そこに「加速度」が付くから追いかけるのが難しくなるのかも知れない。
 
 

(櫻井)。

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