「知の冒険」

NY株式市場はあいかわらずマチマチの動き。
NYダウは7日連続で過去最高値を更新。
8日続伸は2月27日かけての12日続伸以来となる。
S&P500とNASDAQはハイテクセクター中心に下落。
アップルの1%安、アマゾンの0.9%安が足を引っ張った。
「節目を越えた後に数日間足踏みするのはよくあること」という楽観論。
あるいは「企業収益が株式市場を支え、消費者も後押し。今の米国はゴルディロックスだ」という声も聞こえる。
国債価格は上昇(利回りは約1週間ぶりの水準に低下)。
英中銀が政策金利を0.25%に据え置き経済成長率と賃金の伸び見通しを下方修正したことが材料視された。
また「ロシアの干渉疑惑を捜査しているモラー特別検察官がワシントンで大陪審を選定した」との報道。
あるいは7月の米ISM非製造業総合指数が53.9と、前月の57.4から低下。
昨年8月以来の低水準安全資産志向を助長した格好。
製造業受注は前月比3.0%増と2016年10月以来、8カ月ぶりの大幅なプラス。
市場予想の2.9%増を上回り3カ月ぶりの増加だったが見えないフリ。
雇用統計発表を控えドルは円、ユーロ、スイスフランに対して下落。
非農業者部門雇用者数の増加幅は6月の22.2万人より少ない18.3万人増の予想。
12月の利上げ確率は約44%。
 
 
木曜の日経平均は反落だったが値上がり銘柄数は986。
値下がり銘柄数の896を上回っていた。
「水曜が94円高、木曜が50円安。差し引き合計ではプラス」という見方もある。
月曜から木曜まで4日間の値幅が約130円。
これで騰落率1%未満は43日連続となり89年とタイ記録。
新高値は135と増加し18連続の3ケタ増だ。
「雇用統計を控え様子見姿勢」とか「アップル関連ハイテク株は落穂拾い」なんて揶揄も聞こえる。
しかし意外と強い指標だ。
ややこしいのは為替と株価の関係。
日本株とドル円の相関性は低下しているがそれでも円高は当面の日本株下落要因。
一方でドル安はNY株の上昇要因。
この面倒な方程式の解を見つけられないから動意薄なのだろう。
机上でしか物事を考えない向きが多いから業績の向上を信頼できず下期以降を疑う姿勢。
現場感覚を忘れた株式市場の面目躍如だ。
7月第4週の投資部門別株式売買動向で海外投資家は3週ぶりに売り越し。
売越額は1282億円(前週は861億円の買い越し)。
個人投資家は6週ぶりに買い越し。
買越額は529億円(前週は953億円の売り越し)。
信託銀行は7週ぶりに売り越しで売越額は79億円(前週は518億円の買い越し)。
先物は海外投資家は2週連続で売り越した。
売越額は1868億円(前週は2353億円の売り越し)。
証券会社の自己売買部門は4週連続で買い越しで買越額は1903億円(前週は1684億円の買い越し)。
個人は2週ぶりに売り越しで売越額は498億円。
225先物大証夜間取引終値は日中比60円安の19950円。
ドル円の109円台が足を引っ張り2万円割れ。
通過することだけに存在価値がある雇用統計を待つ姿勢の週末。
また騒いで忘れる週末の瞬間饗宴をただ待つのだろうか。
空売り比率は39.7%とかろうじて40%割れ継続。
売り叩く姿勢でもないということだろう。
引け後にはトヨタ自動車の決算発表。
「大事なのは雇用統計よりもこちら。
その内容と週明けの株価反応。それ次第で夏相場のスケールが決まってくる」というのは正しい意見だ。
ダウ輸送株指数の上昇は微かな期待感。
 
 
株式市場は、特に新興・中小型株市場は「知の冒険」あるいは「知的冒険」の場。
目の前を通り過ぎていく小さな材料に気がつくかどうか。
その材料を認識できる知識を持てるかどうか。
これが結構重要な要素だろう。
相場は森羅万象を織り込んでいるというのは頭で理解できても実際はどうだろう。
材料に勝手に優先順位を付けて見る癖は市場からは抜けない。
多くの材料があり過ぎて取捨選択に迷うほど。
だからこそ人の鑑識眼ではなく自分の頭と体で材料を吟味することが必要になってくる。
だから知の冒険と言って良いと思う。
例えば昨日の日経でも報道された「ICO」。
IPOならば目が行くかも知れないが、ICOだ。
「仮想通貨取引所を運営するテックビューロ(大阪市)は
新規仮想通貨公開(ICO=Initial Coin Offering)支援サービスを10月にも始める。
ICOでは企業が仮想通貨を発行して資金を調達する。
第1号として自らICOを実施し、東証2部上場のプレミアムウォーターホールディングスも利用を検討している。
上場企業のICO利用は初の試みとなる」。
今年1月から7月までのICOによる資金調達総額は1100億円以上。
アメリカは「今はICOブームの真っ只中」というのが現実。
でもその肌感覚が東京にはない。
遅れているのではなく、知らないだけだろう。
だからこそ起きていることを認知することが重要となる。
もっとも日本は「世界に先駆けて仮想通貨法(改正資金決済法)」を成立させた国。
テックビューロの発表した「COMSA」は3種類のパブリックブロックチェーンに対応する。
システム技術としてプライベートブロックチェーンを利用する。
日本の仮想通貨法による法的根拠を売り物とする。
対岸の出来事を素早く事らに持ってきて自分のものにするのはこの国の実は得意技。
だから勝てる部分がない訳ではないのだ。
テックビューロはICOの健全な発展を目指す会員制組織「ICO協議会」を設置する。
メタップスの佐藤航陽社長、インフォテリアの平野洋一郎社長、さくらインターネットの田中邦裕社長らが参加。
知るか知らないか、素材を料理できるかできないか。
基本でなく応用をどうするかが問われるのが株式市場でもある。
あるいはバイオの部分では今日の化学工業日報でのアンジェス。
「アンジェスは今秋にも日本初の遺伝子治療薬として肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療薬の
コラテジェンについて重虚血肢を適応として厚生労働省に申請する。
医師主導治験6例目の観察期間が8月1日に終了。
結果が良ければ申請に持ち込む」。
6例目をスタートした時点で、ここまでの未来予想図は描けたはず。
右往左往する必要はなかったのかも知れない。
もっともアチコチ乗り移る投資では、一つの銘柄を吟味することは無理。
イナゴ投資と恋人投資。
どちらが良いのかは微妙だが・・・。
 
もう一つ重要なのは翻訳力だろう。
外国語を日本語に直すことも一部ある。
しかし専門用語をフツーの言葉にしてものを考えないとほとんど意味不能の世界。
ITやバイオ、そして証券そのものでさえも理解不能の言葉や文章は多々ある。
そしてそのことにそれぞれの業界の人が気がついていない。
同じ仲間社会でだけ通じる言葉は他の世界では全く通じない。
それを翻訳することで理解力は遥かに向上するものだ。
例えば「ERP」。
Enterprise Resources Planning の略であり、「基幹系情報システム」のこと。
これでは何かがわからない。
企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用すること。
ここで3割位が見えてくる。
あるいは「QOL」。
Quality of lifeの略で「生活の質」、「生命の質」のこと。
これもわからない。
抗がん剤などの副作用を減らして、闘病生活を楽にすること。
これで4割くらい見えてくる。
 
 
NYダウは9ドル高の22026ドルと8日続伸。
7日連続で史上最高値を更新した。
NASDAQは22ポイント安の6340ポイントと続落。
S&P500は5ポイント安の2472ポイントと反落。
ダウ輸送株指数は27ポイント高の9202ポイント。
3市場の売買高は66億株。
CME円建ては大証比55円安の19955円。
ドル建ては大証比40ポイント安の19970ポイント。
225先物大証夜間取引は日中比60円安の19950円。
ドル円は109.99円。
10年国債利回りは2.238%。
非公式外資系5社動向は売り760万株、買い820万株。
金額ベースは売り越し(2日連続)。
売りは銀行・証券・鉄鋼・紙パ・その他製品・精密・電機セクターなど。
買いはサービス・建設・石油セクターなど。
売買交錯は機械・薬品セクターなど。
 
◇━━━ カタリスト ━━━◇
 
ヴィンクス(3784)・・・動兆
 
ヴィンクスに注目する。
同社は小売り・流通向けソフトを開発でイオン関連取引が柱。
国内小売業向けPOSなどソフト開発は堅調。
ITのエキスパートとして日本における流通革命をITで支えている。
 

(兜町カタリスト櫻井)

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