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[8095]アステナホールディングス

[10月24日更新]

日本エム・ディ・エムは売られ過ぎ感、24年3月期増益予想

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。24年3月期は日本および米国における症例数の増加などで増収増益予想としている。積極的な事業展開により円安のマイナス影響を吸収して収益改善基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、売られ過ぎ感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。なお10月30日に24年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指し、中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。

 23年3月期のセグメント別(調整前)業績は、日本国内の売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円、米国の売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。地域別・品目別売上高(売上控除前)は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、そして米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

 なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。

■新製品の開発・調達拡大

 新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。

 21年3月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月には米国ODEV社が米国THINK社と共同で、米国ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。

 22年7月には、米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。

 22年12月には米国ODEV社が、Materialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始した。

 23年3月には米国ODEV社が、人工関節置換手術に使用するNaviswiss社製の人工股関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Hip および人口膝関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Kneeを米国医療施設向けに導入すると発表した。Naviswiss Hipは24年3月期第1四半期に導入予定、Naviswiss Kneeは24年3月期後半に導入予定である。

 23年9月には、インフィックスおよび細胞応用技術研究所との販売提携契約締結を発表した。膝関節早期治療製品PRP−FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を23年11月(予定)に開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。

■サステナビリティの取り組み強化

 サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 22年12月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B−」評価として認定されたと発表している。

 なお23年7月には、FTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選出された。

■24年3月期増益予想

 24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比9.3%増の233億円、営業利益が23.5%増の25億円、経常利益が17.4%増の24億円、親会社株主帰属当期純利益が5.4%増の15億円としている。想定為替レートは1USドル=135円(23年3月期実績は1USドル=134.95円)としている。配当予想は23年3月期比1円増配の14円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は24.5%となる。

 重点施策として、日本市場では人工関節・脊椎固定器具分野の新製品の全国展開、大腿骨頚部転子部骨折治療分野の症例獲得、営業体制強化による顧客基盤の強化、人工股関節販売強化・手術支援システム継続運用、三井化学との共同開発、米国市場ではUHKAS(ODEV社主催)による顧客基盤の強化、West地区の営業体制強化、新製品の全国展開による販売強化、手術支援システム運用による人工関節販売強化、製造原価低減などを推進する。

 地域別・品目別売上高(売上控除前)の計画は、日本国内が7.8%増の135億80百万円(人工関節が11.0%増の52億60百万円、骨接合材料が4.1%増の45億円、脊椎固定器具が8.6%増の34億60百万円、その他(人工骨など)が1.5%増の3億60百万円、そして米国が11.7%増の100億円(人工関節が12.2%増の100億円)としている。自社製品比率は81.8%で1.2ポイント上昇の見込みとしている。

 第1四半期(4〜6月)は、売上高が前年同期比7.5%増の54億02百万円、営業利益が30.5%減の3億46百万円、経常利益が30.2%減の3億37百万円、親会社株主帰属四半期純利益が47.3%減の1億77百万円だった。

 売上面は獲得症例数が伸長して増収と順調だったが、利益面は為替の円安影響、国内における償還価格引き下げの影響、国内体制強化に伴う人件費の増加、米国売上増加に伴う支払手数料(コミッション・ロイヤリティ)の増加、研究開発費の増加、米国子会社ODEVにおいて隔年で主催している顧客向けセミナー開催などによる販促費の増加、円安に伴う米国での費用(円換算後)の増加などで減益だった。

 セグメント別(調整前)に見ると、日本国内は売上高が4.1%増の30億55百万円で営業利益が7.5%減の2億36百万円、米国は売上高が7.9%増の31億82百万円で営業利益が73.5%減の54百万円だった。なお米国の外部顧客向け売上高は、米ドルベースで4.8%増の16百万円米ドル、円換算後で12.1%増の23億47百万円だった。為替の換算レートは前年同期が1米ドル=129.50円、当期が1米ドル=138.11円だった。

 医療機器類の品目別・地域別売上高(円換算後)は、人工関節は日本が3.2%増の11億70百万円、米国が12.1%増の23億38百万円、骨接合材料(日本)はが8.1%増の10億38百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は0.7%減の8億21百万円だった。なお自社製品比率は前年同期と同じ80.1%だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期は減益だったが、積極的な事業展開により円安のマイナス影響を吸収して収益改善基調を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、売られ過ぎ感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。10月23日の終値は706円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円03銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS880円64銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約187億円である。情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[10月16日更新]

アステナホールディングスは23年11月期3Q累計大幅営業・経常増益、通期上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)は10月13日の取引時間終了後に23年11月期第3四半期累計連結業績を発表した。純利益は前期計上の固定資産売却益の剥落により減益だが、医薬品原料や機能性食品原料の好調などで全体として2桁増収、大幅営業・経常増益だった。通期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としているが。第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、モミ合いから上放れて基調転換した形だ。目先的な売りが一巡し、第3四半期累計業績を評価して上値を試す展開を期待したい。

■23年11月期3Q累計大幅営業・経常増益、通期上振れの可能性

 23年11月期第3四半期累計(22年12月〜23年8月)の連結業績は、売上高が前年同期比10.1%増の406億74百万円、営業利益が60.8%増の6億85百万円、経常利益が52.9%増の7億90百万円、親会社株主帰属四半期純利益が65.4%減の2億09百万円だった。

 純利益は前期計上の固定資産売却益(6億60百万円)の剥落により減益だが、医薬品原料や機能性食品原料の好調などで全体として2桁増収、大幅営業・経常増益だった。なお営業外費用では持分法投資損失が37百万円減少、特別損失では投資有価証券評価損2億19百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は、売上高(外部顧客への売上高)が6.8%増の118億47百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が62.6%減の63百万円だった。スペラネクサスにおける医薬品原料販売が新薬メーカー向け新規案件も寄与して好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は、売上高が21.1%増の126億51百万円で、営業利益が1億91百万円(前年同期は91百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が定期会員数減少で低調だったが、食品原料部門における機能性食品の需要増加や新規受注獲得、ファルマネット部門におけるインバウンド需要回復などが牽引した。

 医薬事業は、売上高が10.2%増の98億45百万円で、営業利益が25.6%増の4億88百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったことに加えて、同業他社の一部製品の販売中止に伴う代替需要としてゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などが伸長した。また、7月1日付で帝人ファーマより承継したボンアルファ・ボンアルファイも想定を上回った。コスト増と価格転嫁遅れで収益性が低下した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。なお、医療用医薬品の薬価制度では原価上昇分を即時に価格転嫁し得ないため、収益性が低下したとしている。

 化学品事業は、売上高が2.1%減の63億23百万円で、営業利益が48百万円の損失(同1億30百万円の損失)だった。コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進したが、微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だった。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が6百万円で営業利益が77百万円の損失(同28百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円、第3四半期は売上高が138億17百万円で営業利益が4億77百万円だった。営業利益は第1四半期をボトムとして回復基調である。

 通期連結業績予想は据え置いて、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高79%、営業利益95%、経常利益193%である。第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、モミ合いから上放れて基調転換した形だ。目先的な売りが一巡し、第3四半期累計業績を評価して上値を試す展開を期待したい。10月13日の終値は473円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1892倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約193億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[10月06日更新]

アステナホールディングスは上値試す、23年11月期減益予想だが下期回復基調

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし四半期別に見ると第1四半期がボトムとなった可能性があり、積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、ボックスレンジから上放れの形となっている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsuboを中心に展開し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコリスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。

 21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は、皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品部門、表面処理設備部門)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 新規事業戦略はSDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、25年11月期の目標値として売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%を掲げている。セグメント別目標は、ファインケミカル事業の売上高180.9億円(22年11月期146.3億円)で営業利益10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高141.4億円(同139.7億円)で営業利益3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高153.2億円(同117.5億円)で営業利益1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高114.0億円(同92.7億円)で営業利益5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが下期回復基調

 23年11月期の連結業績予想は売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.7%増の268億57百万円、営業利益が71.1%減の2億08百万円、経常利益が66.0%減の2億83百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億27百万円の損失(前年同期は9億32百万円の利益)だった。医薬品原料や健康食品原料の好調などで増収だが、原材料・エネルギーコスト上昇や人件費増加などの影響で減益だった。親会社株主帰属四半期純利益は赤字だった。特別利益で前年同期計上の固定資産売却益6億63百万円が剥落し、特別損失に投資有価証券評価損2億16百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.7%減の72億54百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が83百万円の損失(同4億73百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は売上高が22.4%増の88億12百万円で、営業利益が78百万円(同65百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が低調だったが、食品原料部門における新規受注獲得、化粧品原料部門やファルマネット部門における需要回復が寄与した。マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売も好調だった。

 医薬事業は売上高が8.5%増の63億83百万円で、営業利益が7.7%減の3億25百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったが、コスト増と価格転嫁遅れで収益性が低下した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が2.0%増の44億03百万円で、営業利益が81百万円の損失(同38百万円の損失)だった。微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だったが、コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が3百万円で営業利益が48百万円の損失(同18百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円だった。第2四半期は第1四半期比で大幅増収・営業増益となった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。また3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表している。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が52.1%、営業利益が28.9%、経常利益が69.0%だった。営業利益の進捗率が低水準だが、四半期別に見ると第2四半期は第1四半期比で営業増益だったため、第1四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度を一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施する。

■株価は上値試す

 株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、ボックスレンジから上放れた形となっている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。10月5日の終値は473円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1892倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約193億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
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