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[2932]STIフードホールディングス

[12月21日更新]

STIフードホールディングスは水産惣菜のパイオニア、22年12月期も収益拡大基調

 STIフードホールディングス<2932>(東2)は水産食品業界に「創る力」で変革を起こす水産惣菜のパイオニアである。水産原料に強い食品メーカーとして、水産原料素材の調達から製造・販売までを一貫して行う食品製造販売事業を展開している。21年12月期は大手コンビニ向けが好調に推移して大幅増収増益・増配予想としている。原材料高は販売価格適正化やフードロス削減などで吸収する見込みだ。積極的な事業展開で22年12月期も収益拡大基調だろう。株価は公募増資や地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■水産惣菜のパイオニア

 経営ビジョンに「海の幸を、人の幸へ」を掲げ、水産食品業界に「創る力」で変革を起こす水産惣菜のパイオニアである。水産原料に強い食品メーカーとして、水産原料素材の調達から製造・販売までを一貫して行う食品製造販売事業を展開している。

 20年12月期の製品別売上高構成比は、食品(コンビニエンスストア向け水産惣菜、水産原材料を使った缶詰・レトルト食品等)が80%、食材(コンビエンスストアのおにぎり・弁当・パスタ・サラダ等の具材に使用される水産食材をデイリー惣菜メーカー向けに販売)が17%だった。

 主要販売先の売上高構成比はセブンーイレブン・ジャパン向けが62%(セブンーイレブン・ジャパンが指定する販売先を含めると85%)だった。セブンプレミアム水産惣菜を中心に、全国のセブンーイレブン店舗(北海道を除く)に水産食品を提供している。

 M&Aも活用して製造拠点を拡充し、21年12月期第3四半期末時点でグループ国内製造拠点は、STIフード(千葉県船橋市)、STIデリカ(埼玉県白岡市)、STIエナック(福岡県糸島市)、STIサンヨー(静岡県焼津市、宮城県石巻市)、STIミヤギ(宮城県石巻市)が合計10拠点を展開している。さらに生産キャパシティ拡大に向けて近畿圏および首都圏で工場新設を計画している。海外は米国STIおよびSTIチリ(非連結子会社)が水産原料の検品・買付を行っている。米国では7―Eleven,Inc.との取引拡大に向けて生産拠点新設も検討する。

■独自技術によるユニークな水産食品の開発が強み

 強みとしては、一貫生産(調理)の工程において徹底した温度管理と解凍回数の削減によって「味」の品質向上を追求していること、独自技術によってユニークな水産食品を開発していること、素材を使い切る製品ポートフォリオによる徹底したフードロス対応で原材料コストを低減していることなどがある。

 リスク要因として、特定の取引先(セブンーイレブン・ジャパン)への依存度の高さがあるが、特許技術を含む独自の製造技術を駆使して生産されるため供給元が限られる製品であり、セブンーイレブン・ジャパンとはパートナーとして強固な取引関係を構築しているため、今後も安定的な取引の継続が見込まれるとしている。また世界的な魚食需要の高まりで主原料の水産素材の価格が高騰しているが、有力商社との共同調達や仕入先の分散に加えて、原材料の調達可能量を考慮して可能な範囲で製品構成の調整を図るなどの施策を実施している。

 なお同社の第3位株主は、極洋<1301>(21年12月期第2四半期末時点の自己株式除く発行済株式総数に対する所有割合9.09%)、およびセブンーイレブン・ジャパン(同9.09%)となっている。

■成長に向けて「創る力」を最大化

 成長に向けた基本方針には「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を掲げ、独自技術をベースとする「創る力」の最大化を目指し、重点施策として研究開発・新製品開発の強化、生産キャパシティの拡大、セブンーイレブン・ジャパンとの取引の更なる拡大、新たな販売チャネルの開拓を推進している。

 研究開発・新製品開発の強化では、新製法・技術へのチャレンジ(賞味期限をさらに延長する技術など)を加速するとともに、辻調グループ(辻調理師学校)との商品開発の深化を推進している。

 生産キャパシティの拡大では、売上の拡大とともに、販売機会損失の逓減や配送効率の向上などの効果も目指す。STIミヤギでは東北地区向けデイリー食品ラインの設置が完了した。近畿圏の新工場(仮称:大阪工場)に関しては候補地を1ヶ所に絞り込み、正式契約に向けて詳細を確認中である。首都圏の新工場に関してはSTIフードにおいて工場新設を準備中である。

 これらの施策によってグループ合計の生産キャパシティ(日産数)を、20年12月期末の54.5万食から、21年12月期末に62.0万食、22年12月期末に79.0万食、23年12月期末に96.5万食まで高める計画だ。

 セブンーイレブン・ジャパンとの取引の更なる拡大では、消費者ニーズに合致した新製品開発などによって拡販を目指す。セブンーイレブンホットメニュー第1弾として21年11月にはホットカップデリシリーズ「魚介と野菜のアヒージョ仕立て」を投入した。第2弾として21年12月には冬向け煮魚2商品を投入した。さらに第3弾として22年1月からカップサラダなど新規2〜3商品を投入予定である。

 またセブンーイレブンとの取引拡大の一環として、米国・アジア市場への進出も推進する方針だ。成長市場である北米では7―Eleven,Inc.との取引拡大によって新たな水産惣菜市場の創出を目指し、米国工場新設(M&A含む)の具体的検討を開始した。アジアではSTIエナック(福岡工場)から台湾、中国、韓国への輸出を開始した。さらに台湾セブンーイレブンとの商談が進展し、和食・焼魚として22年春販売開始(賞味期限の検証や試食を経て確定)予定としている。

 新たな販売チャネルの開拓では、セブンーイレブン以外の小売プレイヤーとの提携(健康食品通販会社との取引開始、KALDIブランド商品の共同開発深化と販売拡大など)や、魚好きの消費者のための自社ブランド製品(自宅のレンジで簡便に加温できる高品質の焼魚惣菜、店舗で扱えない大きさ・厚さの商品など)のEC展開を推進する方針だ。

 21年6月には自社オリジナルブランドとして、大ぶり・厚切り・レンジアップ焼魚シリーズ「ichibi(いちび)」のオンラインショップでの発売を開始した。今後は缶詰ブランド「STONE ROLLS」とともに、消費者ニーズに応えてラインナップ拡充を推進する。

 なお今後のM&Aに関しては、自社販売機能の強化に向けて、販社・物流会社の買収も視野に入れた戦略にシフトする方針としている。

 SDGs関連では、19年6月に持続可能な水産資源への取り組みとして、世界的水産機関であるMSC(海洋管理協議会)のMSC―CoC認証、およびASC(水産養殖管理協議会)のASC―CoC認証を取得している。また持続可能な原材料・製造への取り組み、フードロス削減への取り組み、温室効果ガスの排出削減への取り組みなど、調達・加工・流通・消費・廃棄までのすべてのバリューチェーンにおいて環境や社会への負荷を軽減し、事業を通じて社会的課題解決に取り組んでいる。

■21年12月期大幅増収増益予想、22年12月期も収益拡大基調

 21年12月期連結業績予想(8月10日に売上高を据え置き、利益を上方修正)は、売上高が20年12月期比12.7%増の260億円、営業利益が32.0%増の17億30百万円、経常利益が34.8%増の17億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が33.3%増の11億10百万円としている。配当予想(8月10日に期末10円上方修正)は、20年12月期比15円増配の55円(期末一括)としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比14.9%増の192億23百万円、営業利益が45.8%増の13億02百万円、経常利益が55.7%増の13億35百万円、親会社株主帰属四半期純利益が58.1%増の8億48百万円だった。

 大幅増収増益だった。売上面は、食品販売ではカップサラダなどチルド惣菜製品の販売が好調に推移し、食材販売ではコンビニエンスストアのおにぎり需要が回復傾向となった。コスト面では第3四半期に水産資源の価格上昇、コロナ禍によるベトナムのロックダウンなどサプライチェーンの停滞、一時的に調達先を国内に変更した影響などで原材料費が増加したが、原材料歩留まり率や生産性の向上に加えて、取引先とのフェアな価格交渉による販売価格適正化などでカバーした。累計ベースで見ると売上総利益率は1.9ポイント上昇して28.2%、販管費比率は0.5ポイント上昇して21.5%となった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が59億05百万円で営業利益が4億33百万円、第2四半期は売上高が65億03百万円で営業利益が5億07百万円、第3四半期は売上高が68億15百万円で営業利益が3億62百万円だった。第3四半期は原材料費増加が影響した。

 通期も大幅増収増益予想としている。売上面は引き続きセブンーイレブン向けが好調に推移する見込みだ。コスト面では、原材料費増加への対応策として、フェアな価格交渉による販売価格適正化やフードロス削減の更なる推進などでカバーする見込みとしている。またサプライチェーンの停滞についても、ベトナムではロックダウンが10月から徐々に緩和されて工場や港湾の稼働が平常化に向かっている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が75.3%、経常利益が77.6%、親会社株主帰属当期純利益が76.4%と概ね順調だった。通期ベースでも好業績が期待できるだろう。さらに内食・中食需要の増加も背景として、積極的な事業展開で22年12月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は年2回(毎年12月末、6月末)

 株主優待制度については21年11月9日付で制度拡充を発表した。従来の年1回から年2回に拡充し、毎年12月末日および6月末日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律に株主限定の自社商品3000円相当を贈呈(詳細は会社HP参照)する。21年12月末対象から開始する。

■株価は売られ過ぎ感

 なお21年10月に公募増資を行った。調達資金は近畿圏新工場建設、および財務基盤強化に向けた借入金返済に充当する。また公募増資と同時に、株式の流動性向上を目的として株式売出しも行った。将来的にプライム市場への移行を目指し、投資家層の拡大、流通株式比率などの形式基準の充足に取り組む方針だ。

 株価(20年9月東証2部に新規上場)は、公募増資や地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。12月20日の終値は2693円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS199円81銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の55円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS648円84銭で算出)は約4.2倍、時価総額は約155億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
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