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09月3週
【推移】

12日(月):
週末のNY株式は大幅続落。悪材料視されたのはボストン連銀のローゼングレン総裁のコメント。「利上げを長く待ち過ぎれば米経済が過熱する恐れがあり、金融安定をリスクにさらしかねない」。再び早期利上げ観測が台頭した格好。22%まで下落していた9月利上げの確率は一時38%まで上昇しその後は30%に低下。金利上昇確率が50%となるのは12月以降だか「騒いだり、慌てたり意味がわからない」という声もある。小売売上高や消費者マインド指数、鉱工業生産などの経済指標スケジュールが話題になるのだろう。

米10年国債利回りは約2カ月ぶりの高水準まで上昇した。「債券相場が大きく動けば、株価は圧迫される。投資家らはこうした急速な動きを好まない」という解釈が正しいのだろう。北朝鮮の核実験実施も下落要因視された。
先週の日経平均は円安一服でも週間で40円の上昇。「為替のネガティブ影響が限定的」という指摘も聞かれた。ただし週足では陰線。メジャーSQ通過に向けてのバトルが多少あったという印象。残念ながら終値でSQ値を上抜けなかったのは先月と一緒になった。

金曜の東証1部の売買代金は2兆1662億円。メジャーSQ当日なのに木曜の2兆1925億円を下回った。裁定買い残6000億円台ではSQは市場の中核ではないということなのだろう。駐スイス大使で前内閣参与の本田悦郎は「月内にも金融緩和を」のコメント。「ただ、マイナス金利政策の深掘りは量的緩和の限界を意識させやすくマイナス」とも。榊原経団連会長も「マイナス金利は企業の投資活性化などの期待があった。しかし今のところ大きな成果は出ていない」と。マイナス金利の総括的検証の外堀は埋まってきた印象。
日経平均株価は292円高の16672円と反落。第一生命、カナモト、鳥貴族が上昇。鉄、クミアイ化学が下落。

13日(火):
週明けのNYダウは4日ぶりに反発。239ドル高の18325ドルまで上昇した。もっとも週末は395ドル安だったから下落幅に対してはまだ156ドルほど足りない格好。NYダウは一時18000ドルの節目を割り込んだ。しかし終値で100日移動平均線(18088ドル)をキープ。なんとか踏ん張った印象。ボストン連銀のローゼングレン総裁の発言をきっかけに早期の利上げ観測が高まったのが週末。週明けはブレイナードFRB理事が講演で「予防的な利上げを迫られる状況ではない」と発言。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「現状の金融政策が適切だ」。早期利上げに消極的な姿勢だったことから利上げ観測が後退し株高に繋がったという構図。
小田原評定というか、堂々巡りというか。元の木阿弥で何も決まっていないのに解釈だけは先行して相場が動いている。

動き始めた永田町。国家戦略は投資戦略にも通じるに違いない。まずは規制改革推進会議と未来投資会議。安倍首相は述べた。「本日、新たに規制改革推進会議を発足させました。GDP600兆円経済を目指して岩盤規制改革に徹底的に取り組み、イノベーションが可能にする魅力的なビジネスを世界に先駆けて実現させます」。未来投資会議ではこう述べた。
「『未来投資会議』は、成長戦略の新たな司令塔です。国民生活の利便性を抜本的に高める。地方を主役に世界を目指す。新たな技術革新の芽を社会変革につなげるような産業構造に改革していく。今後『構造改革徹底推進会合』で主要分野の検討を深め、具体化していきます」。
日経平均株価は56円高の16729円と反発。東証1部の売買代金は1兆6666億円と低調。武田、高島屋が上昇。三菱UFJ、コマツが下落。

14日(水):
NYダウは258ドル安の18066ドル。S&P500は32ポイント安の2127ポイント。週初の上昇を消して週末水準まで下落。7月7日以来の安値水準となった。下落の一つの背景は原油先物価格の下落。国際エネルギー機関月報は「供給過剰状態が少なくとも2017年前半まで続く」と予想。原油安が長期化する可能性を示したことを嫌気してエネルギー関連セクターが下落。加えて目先の利上げ観測の後退で金融セクターが軟調展開となった。また世界的に金融緩和による景気刺激策が弱まるとの思惑から売りが膨らみ、欧州から米国にかけて国債とともに下げた」という解釈も聞かれる。ただドルは上昇。FRBによる年内利上げの可能性があらためて注目され、米国債利回りが上昇したことが背景とされる。

前日の京株式市場はマチマチの展開。日経平均は、かろうじてプラスだったがTOPIXはマイナス。前場段階で0.2%台前半のマイナスだったが、日銀がETFを733億円購入したのが特徴だった。ETF購入は3日連続。マイナス0.2%台前半でも買うという姿勢が垣間見られたということになる。世界的金利上昇の中で10年債利回りは再度マイナス0.01%まで上昇。

日経トップで「日銀が来週の金融政策決定会合でまとめる総括的な検証でマイナス金利深掘りを緩和策の軸に据え、マイナス金利のさらなる引き下げを検討する」と伝えられたがこちらもチグハグな動きに映る。「円安の可能性を高める米長期金利の上昇は米国市場の大型株の下げにつながり、全般的にリスク回避を強める要因。一方、金利上昇局面では小型株の優位性が高まる可能性が高い」という悩ましい局面。

日経1面は「日銀、マイナス金利軸に。総括検証、緩和強化を視野」。総括検証でのマイナス金利撤廃を予想する声もあるなかでのこの姿勢。貸出金利の低下などの効果が金融機関の収益悪化の副作用を上回っているという見解。事は金融機関だけの問題ではなく、マイナス金利が景気を良くしてきたかどうかだろう。このかい離が市場の低迷の背景とも思えてくる。そもそも「深掘り」という言葉が事を分かりにくくしているが、マイナス金利幅の拡大ということ。副作用でのショック死はなかろうが、慢性胃炎程度の副作用は当然起きている。金融機関だけを相手にものを考えては欲しくないもの。むしろコラム「大機小機」の指摘が正鵠を射るだろう。
自民党幹部のコメントは「今重要なのは成長戦略を進めること」。政府関係者のコメント。「金融緩和がすっと続くという相場観が投資や消費を急がない心理につながっている。金利に先高観が生まれれば企業も設備投資にお金を回すことを考える」。長期金利の上昇は国債の利払い負担増加。マイナス金利の拡大には金融機関の抵抗。限界集落の金融政策を凌駕する戦略が待たれているのは間違いない。
日経平均株価は114円安の16614円と反落。三井不、鹿島が上昇。りそな、サイバーコムが下落。

15日(木):
NY株式市場はダウ安NASDAQ高とマチマチの動き。NASDAQはアップルが年初来高値を付けたことでプラス圏となった。一方、原油先物価格の下落からエネルギー関連セクターが軟調でダウとS&Pは下落。「利上げへの警戒感も株価の重し」という声もまた聞かれる。「FRB当局者の発言に一貫性が見られず、次の利上げ時期を巡る思惑が交錯。指数が振り回される展開」という解釈。市場では米利上げの時期を探る動きが続いている。11月のFOMCは米大統領選挙の直前となることから12月のFOMCでの利上げの公算が大きいとの見方。だったら初めから右往左往する必要もないことになる。

日経朝刊では「裁定買い残7年ぶり低水準、売り残が18年ぶり逆転」の見出し。裁定残の重荷は全くなく、あまつさえ98年以来の売り残との逆転。マイナス金利の影響と日銀のETF組成の影響との指摘がある。長い目で見れば98年はその後2000年のITバブルに向かった時期でもあった。
米国金利上昇→NY株安:円安→東京株高。米金利据え置き→NY株高:円高→東京株安。この悩ましい連立方程式の間を買いは彷徨っている状況。どこかで米国金利上昇→NY株高:円高→東京株高という素晴らしいシチューエーションを迎える時はないものだろうか。

裁定買い残3385億円。メジャーSQということもあり前週比3529億円の減少となった。09年3月以来の低水準。裁定売り残は前4822億円。逆転は98年以来18年ぶり。「相場の先安観から先物が理論価格に比べて時に割安」というのが理由。しかしマイナス金利で10年国債利回りもマイナス。だったら理論的には先物の方が現物より安いのは自明の利。金融緩和の意味でのマイナス金利が裁定の場では明らかにマイナスに作用している。銀行の利益とかそんな問題ではなく市場の動きを封止していることになる。このバリアを取り除かなければ、永田町や霞が関の成長戦略も当然霞んでしまうだろう。

日銀がETFをこの水準で買っているから株価の下はないという議論がある。しかし日銀は上を買わない存在で下がれば買うだけ。大きく下げても買うのだから、16000円水準は日銀の死命線ではなかろう。間違った解釈での安心感は良くない。もっとも98年以来の裁定売り買い逆転は悪くはない。相場の邪魔をする物資が減ったということになる。そのうち「売ってもダメなら買ってみな」の論理が登場するかも知れない。
日経平均株価は209円安の16405円と続落。TOPIXは7日続落。アルプス、DeNAが上昇。地所、三井住友が下落。

16日(金):
先週のアイフォン7の発表で登場したのは日本のガラケーで好まれたお財布機能など。日本限定ではあるが、フェリカチップ搭載端末を販売する。
一つの背景は中国での販売減速。4〜6月の中国での売上は前年同期比33%減。米国11%減、欧州7%減のなかで日本は23%増。日本に焦点を当ててくるのは当然だろう。しかしモバイル決済対応や任天堂の新ゲーム「スーパーマリオラン」。これらは世界への日本標準の進出という見方もできる。
シンプルなデザインを好む日本人にアイフォンは向いているという指摘もある。言ってみれば携帯の盆栽がアイフォンでもあるのだろう。今後、携帯は集約と分散を繰り返し最終的には、それぞれの機能がまた独立するという声もある。
しかし、一時的には盆栽チックな携帯が世界で羽ばたく時期もあろう。ろうそくは消え際にひときわ大きく燃える。それは変化の前の大きな飛躍とでも言えるのだろう。「ガラパゴスからの復活の象徴はマーケットも一緒」という声も聞かれる。

「日銀がマイナス金利の深掘りしたら、市場は2月導入時と同様に円高・株安で応じるだろう」という不気味な声が市場では聞かれる。
日経平均株価は114円高の16519円と3日ぶりの反発。TDK、JDIが上昇。東急不、東レが下落。

(2) 欧米動向

NASDAQ(小型株)とS&P500(大型株)の相対指数(小型株/大型株)の比較。
2008年以降、右肩上がりが続いている、という指摘。
米株式市場の上昇が続く中で小型株が大型株よりも優位に展開してきたということ。
特に長期金利が上昇する局面では、相対指数は小型株優位に強く上昇するケースが多かった。
「利上げを意識して金利の上昇基調が続けば、
米国市場は昨年同様に小型株の優勢性が高まる公算が大きい」という声も。

利上げ利下げと玉虫色の思惑が渦巻いた格好。
「利上げをめぐる不透明感は高まっており投資家はどんなFRB当局者の発言にも確信が持てなくなっている」。
この姿勢でFOMC通過を待っているというのが妥当な評価だろう。
「相場水準を維持するには第3四半期の企業業績が相当上向き、FRBは緩和姿勢を取り、雇用と住宅指標の堅調が続く必要がある」。
こんな贅沢さは市場の自戒につながるのかも知れない。

基本シナリオとして、米GDPは2017年以降およそ2%のペースで継続的に拡大。
2021年には18.5兆ドルに達すると予想。
前提条件は民主党候補ヒラリー・クリントン氏が当選。
下院は共和党、上院は民主党がそれぞれ過半数を占めるねじれ議会となること。
現在の政策が継続される場合の試算である。
一方で、トランプ氏が大統領に就任し同氏が掲げる政策を実行に移した場合。
2019年の成長率はゼロ%水準。
GDP規模は17.5兆ドルに縮小するとの試算。
共和党候補ドナルド・トランプ氏が勝利した場合、
2021年の米経済規模は基本シナリオから1兆ドル下振れする可能性があるという。
トランプ氏の政策は保護主義的な通商政策や減税、不法移民の強制送還など。
仮に議会の反対もなく実行された場合、GDPは基本シナリオから5%押し下げられる。
そして世界経済の成長も阻害するだろうという分析。

(3)アジア・新興国動向
週間騰落率上位1位タイ2.34%、2位米国0.21%、3位インネシアマイナス0.27%。
下位25位イタリアマイナス5.62%、24位フランスマイナス3.54%、23位香港マイナス3.17%、
22位ドイツマイナス2.81%、19位日本マイナス2.63%。


【展望】

スケジュールを見てみると・・・

16日(金):米消費者物価、英国を除くEU首脳会議(スロバキア)、香港・マレーシア、メキシコ休場、任天堂ポケモンGOプラス発売
19日(月):敬老の日で休場、米NAHB住宅価格指数
20日(火):日銀金融政策決定会合(〜21日)、コンビニ売上高、BBレシオ、FOMC、住宅着工研修、国連総会一般演説
21日(水):黒田日銀総裁会見、貿易収支、訪日外国人客数、FRBイエレン議長会見
22日(木):秋分の日で休場、米中古住宅販売、CB景気先行指数
23日(金):全産業活動指数

大和のレポートは「もし日銀がTOPIXをもっと買った場合」。
サブは「TOPIXX型ETF買い入れ比率を引き上げた場合、
需給インパクトへの影響は」となっている。

日銀がETF買い入れ額の倍増を決定して1か月以上が経過。
現行の買い入れ方法において需給面での好インパクトが日経平均採用銘柄に偏重することを問題視。
9月の日銀金融政策決定会合で、その偏重解消を目的とした買い入れ方法の変更が行われるのでは?
との声が出始めている。
日銀の現行の買い入れルールに基づくと、日経連動型を54.3%、
TOPIX連動型を41.3%、JPX型を4.4%の割合で買い進めることになる。
結果として、日経平均の構成ウェイトが高い銘柄が需給面での恩恵を受けやすい公算となる。
実際に8月以降は好インパクト上位30銘柄がTOPIXをアウトパフォームする動きとなった。
日経平均への偏重を解消するため、TOPIX型への買い入れ比率を仮に6割まで引き上げた場合で試算。
需給インパクトこそ低下するが好インパクト上位銘柄の顔ぶれに変化はみられない。
結局、日銀による買入れが、これまで好インパクトを受けていた一部の銘柄から幅広い銘柄へ、
金額を薄く再分配することとなり、需給インパクトの偏重は劇的には解消されない公算となる。
結論は「よって、日銀の買い入れ比率変更の可能性は低く、
インパクト上位の高パフォーマンスが続くというのがメインシナリオ」。

◇日銀のETF買い入れによる好インパクト上位銘柄

ファーストリテ(9983)、アドバンテスト(6857)、ユニーFマート(8028)、コナミ(9766)、日立建機(6305)、コムシス(1721)、松井(8628)、太陽誘電(6976)、トレンド(4704)、東邦鉛(5707)、日清紡(3105)、TDK(6762)、NTTデータ(9613)、日産化(4021)、北越紀州(3865)、化薬(4272)、オークマ(6103)、三菱倉庫(9301)、ヤマハ(7951)、太平洋金(5541)、大日住友薬(4506)、東洋製缶(5901)、クレセゾン(8253)、テルモ(4543)、日東電工(6988)、京セラ(6971)、東エレ(8035)、千代建(6366)、日ハム(2282)、宝(2531)。

◆TOPIX型ETFの買い入れ比率が引き上げられた際の需給インパクト変化上位

中国工業(5974)、ダイトウボウ(3202)、TAC(4319)、インプレス(9479)、アルテック(9972)、早稲田アカ(4718)、オルトプラス(3672)、サンヨーホームズ(1420)、CVSベイ(2687)、APカンパニー(3175)。

◆日経平均採用銘柄のうち需給インパクト変化上位銘柄◆

みずほ(8411)、りそな(8308)、三菱UFJ(8306)、三井住友(8316)、ドコモ(9437)、双日(2768)、第一生命(8750)、鉄(5401)、関電(9503)、MMC(7211)、中部電(9502)、JFE(5411)、日立(6501)、東芝(6502)、三井住友トラ(8309)、神戸鋼(5406)、野村(8604)、ANA(9202)、JR東(9020)、T&D(8795)。

同じ株でも買う位置、売る位置でその風景は変わるもの。
だから「あの上昇株を買って損をした」なんてことは容易に起こるのだろう。
「株は安く買って高く売る」と言うのはFPさんなんかの好む常套句。
頭の中では誰でも理解していること。
「株は安くなったら買う」。
そういう投資家さんは沢山おられる。
ただ、安く買ったあとのさらなる下落と上昇までの時間の長さはなかなか我慢できないもの。
そして急騰して話題になった銘柄の下落を狙うことが多いように思える。
だから「安い」という下落幅は中途半端。
「確かに安いけど下落途中。ひと相場終わった後」みたいな格好になるのだろうか。
むしろ本音では「株は高くならないと買いたくない」。
あるいは「動いてなければ手を出したくない」なのかも知れない。
株価を追う投資ではこんなことが多いような気がする。
罫線が主役となった投資では致し方のないことなのかも知れません。
でも罫線は結果であり、多少は企業活動を反映しているとはいえ所詮グラフの世界。
株価だけでなく為替も石油もあるいはトウモロコシも一緒に見る不思議さが感じられる。
卵やキャベツやサンマの値段の先行きを罫線から占うこともできるような気がする。
企業の本質という株を追う投資であれば、株価の位置に一喜一憂することも減る。
株価を買っているのは株を買っているのと似て非なる行為。
この区分けというのは結構大切に思える。
大体株価というものは、車のギアチェンジのように動くもの。
今はほとんどオートマですからあまり感じませんが、最初はロー。
アクセルを目一杯踏み込んでもほとんど加速はしない。
そこでセカンドにギアチェンジして目一杯アクセルを踏めばようやく加速。
サードでさらに加速してトップへ。
アクセルを大して踏まなくてもそれなりのスピードで快適に走る。
株価に置き換えてみれば、多くの人はこのトップスピードで走っている車に乗りたがるもの。
でもトップですからスピードに限界がある。
いずれはサード・セカンドとギアダウンしてしまう。
出来れば止まっている車に乗りたいと脳の半分は理解しているもののもう半分の脳は「トップギア好き」。
このアンバランスは、いつかは解消されるのだろうか。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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