10月4週
【推移】

19日(月):
日経朝刊「エコノフォーカス」ではGDP600兆円のからくりが示されている。それはやはりルールの変更。内閣府が16年末に予定している計算方法の見直しだという。国連の「国民経済計算基準(SNS)」の基準が08年に見直された。アメリカ、EU、豪州はすでにこれを使用している。
因みにアメリカは13年に移行したが02年〜12年のGDPは3〜3.6%増加したという。日本の15年度の名目GDPは504兆円。しかし新基準では20兆円ほどかさ上げされるという計算。新基準は付加価値を生む投資がGDPに入ってくる。例えば、フェイスブックなどの書き込みは個人が行う作業だが実は経済効果はある。このあたりまで踏み込んでくれると経済指標も肌感覚と合致してくるのだろう。このままいけば2020年度に600兆円。夢ではなく大した努力もなしに容易に達成可能な数字。だったら東証1部時価総額700兆円だって遠くはなかろう。
だからという訳ではなかろうが、ノルウェー政府年金資金も東京のビルに投資をする方向。長期的に50〜80億ドルだから6000億〜9600億円。結構大きな数字の見通しである。理由は「グローバルなビジネスが集結し長い目で市場の成長が期待できる」。同基金はアジアではシンガポールと東京がターゲット。東京が世界金融都市になるという見果てぬ夢をシンガポールから取り戻したい気がする。そうすれば日経平均はきっと1989年の高値を奪還しているに違いない。ブラックマンデーの月曜日。特に意識する訳ではないが気にかかる。
日経平均株価は160円安の18131円と反落。東証1部の売買代金は1兆9952億円と2兆円割れ。戸田建、コーセーが上昇。旭化成、新日鉄が下落。

20日(火):
市場では先月から「18300円の壁」の声。確かに9月9日こそ勢いに乗って18770円まであったがその後は10月9日の18438円まで。妖怪ETFの日経レバの平均買い単価が18300円水準だから戻り売りがあろうという分析が聞かれる。でも18300円で買ったレバETFを持ち続けるものかどうか。結構疑問の残るところ。
日経平均株価の価格帯別売買単価を見れば4月以降は20400〜600円水準が最多売買価格帯。これは時間帯を年初からにしても一緒。確かに時間帯を8月中旬以降にすると18200円水準が最多売買価格帯。目先では壁になっているのかも知れまい。それにしても年初からの最多売買価格帯は20500円レベル。相場のチンタラモードと今年の傷の深さはここにある。年末に20500円を超えれば「良い年だった」になるのだろう。ただし最多売買価格帯が20500円水準だったということは、そこで売っていた人も多かったということ。増えた待機資金がどこで戻ってくるのかもささやかな希望につながる。相場は常に2面性を持った存在。それは買い手の視線と売り手の論理。だからこそ相場材料の解釈も、単品でなく複数で行わなければならないのが鉄則。でも現実には朝のNYで一番早く大きな声で言われたことの反芻だけが日常という相場。
ギリシャと中国とアメリカという3つの材料を同時に消化できなかった今年の夏が良い例だろう。2020年のGDP600兆円に期待するのか。足元の中国のGDP成長率鈍化を嘆くのか。あるいはアメリカの利上げをウリカイどちらに解釈するのか。いまのところこの連立多元方程式の解に出会えていないのが相場のアキレス腱でもある。
「中間決算で日本企業の今期2ケタ増益を見極めたい」。こんな声も聞かれる。いつも聞かれる「見極めたい」。そして見極めたと錯覚しても、またぞろ登場する「見極めたい」材料。そのくせ実態は、見極めるのではなく、見切り発車ばかりが株式市場。
日経平均株価は75円高の18207円と反発。東証1部の売買代金は1兆8235億円と低調。KDDI、トーカイが上昇。三井不、デジアーツが下落。

21日(水):
映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー2」で主人公のマーフィーとドクが30年後の未来へ飛んだ日。バック・トゥー・ザ・フューチャー記念日。
興味深かったのは日経朝刊の「大機小機」の「根拠なき市場の変動」。「今はチョットした統計数値にさまざまな理屈をつけて株価が乱高下している。金融政策のリアクションについてあれこれ理屈をつければどんなパターンも可能になる70年代は速報値に誤差の多いマネーサプライ動向に市場は敏感に反応した。どのような理屈でもひとたび市場で広く受け入れられればそれが標準となる」。これが効率的市場仮説に支配された市場の本質でもある。つまり、決して市場は効率的ではないということの裏返し。もしも市場が本当に効率的ならば株価は一直線に上昇下落しなければならない筈だろう。
日経朝刊では「欧州勢の株売越額最大」の見出し。いつ売ったのかといえば9月。欧州製の売り越し額は1兆8009億円と過去最大規模になったという。2010年6月の8446億円を抜いた。VWによるスズキ株の売却額約5000億円を差し引いても大きい。そしてオイルマネーの引き上げ観測も蒸し返されている。
欧州勢の売り越しは6月から4カ月連続だからそう見るのだろう。しかしこれは9月までの話。
10月第1週の海外投資家は9週ぶりに2102億円の買い越し。
信託は7週連続での買い越しで8月第4週から1兆1810億円買い。
個人は3308億円の売りで2週連続での売り越し。
クジラが買い続け、オイル・ペンションが買いに反転。イスラム暦の新年も効いているのかも知れない。10月21日が未来の日だった訳ではなかろうが、市場心理は陽転。水曜13時半からの上昇アノマリーに乗って18500円台をあっさり回復した。
鉄鋼セクターの上昇は中国懸念が薄らいだことの象徴だったのかも知れない。となると甦ったマイケル・J・フォックス効果などではなく、主役は英中の蜜月。
英国の7兆円の大盤振る舞いの背景が飴と鞭の2枚舌でなければよいのだろう。一方の中国人民銀行は約2兆円の資金を大手銀行に供給。8月以来の供給をポジと見るか、ネガと見るかで相場観は180度異なる。できれば前向きな供給と考えたいところ。
日経平均株価は347円高の18554円と続伸。9月9日の直近高値(18438円)を抜けた。終値ベースでも同日以来約1ヵ月半ぶりに18500円を回復。TOPIX8月31日(1537ポイント)以来の水準。新日鉄、安川電が上昇。アステラス、長谷工が下落。

22日(木):
先月までは水曜14時に発表されてインバウンド相場の原動力だった訪日外国人数。今月からは16時発表となり、場中相場材料ではなくなった。水曜に昨日発表された9月の訪日客数は前年同月比47%増の161万人。1月〜10月9日までの累計で1500万人を超え、既に昨年の1341万を抜いた。このままいけば今年は2000万人に届く勢い。そして消費も拡大し1〜9月の累計で前年同期比77%増の2兆5900億円。昨年の2兆円を既に上回り過去最高となった。
イギリスにインフラを売って7兆円。日本に来て買い物で数兆円。中国の構図はこんなところだろうか。日経朝刊の広告は「10月25日、羽田空港の中国路線拡大」。3都市へ毎日12便増便になるという。もはや不便な成田ではなく羽田が主役。その昔にはどうして成田の国際空港を思いついたのか不思議な思いがする。
30年もたってみれば世界に伍せない不便な空港を作ったのは不幸だった。今後は羽田飛行場がまた日本の玄関になることは間違いない。その羽田に関しては京急がカラー全面広告。「駅ナカ施設リニューアルでますます便利に!羽田も世界も京急で」。ウィングエアポート羽田がオープン。セブンイレブンに加え、マツキヨ、ラオックスの免税店舗が登場したという。ますます羽田が面白くなってきた。
日経平均採用銘柄のPERは14.98倍でEPSは1238円。EPSの低下は気にかかるところ。PBRは1.28倍、株式益回りは6.25%。配当利回りは1.53%で長期債利回りとのスプレッドは1.2%。
日経平均の25日移動平均は18011円でプラス3.01%のかい離。75日線は19214円でマイナス3.43%のかい離。200日線は19157円でマイナス3.15%のかい離。一目均衡の雲の下限は18742円で上限は19181円。
もう少しで雲の中に入る。「勝手雲」は10月21日に白くねじれた。やはりポイントの日、未来記念日だったのだろうか。
10月SQ値18137円も明確に上まわった。SQ値決定後の6日間は○○●●○●で3勝3敗。騰落レシオはいつの間にか123.19%まで上昇してきた。サイコロは8勝4敗で66.7%。松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス9.609%。買い方はマイナス9.509%と再逆転。
Quick調査の10月16日現在の信用評価損率はマイナス11.13%。裁定買い残は760億円増加して2丁2544億円。空売り比率は34.1%まで低下した。
日経平均株価は118円安の18435円と反落。東証1部の売買代金gは1兆9835億円と2兆円割れ。第一工業製薬、兼松日産が上昇。科研、富士フィルムが下落。

23日(金):
まずはココからスタートという金融相場の象徴はECB理事会後のドラギ総裁のコメント。「12月の理事会で緩和度合いを精査する」。これだけで追加金融緩和があるとするには無理がある。しかし「追加緩和について行動に移すことをいとわない」とくれば「今回協議した」とされる量的緩和の期間延長や銀行への預け入れ手数料拡大は行われるだろう。
来週は米FOMC、そして日銀金融政策決定会合など金融相場の主役が控えている。その露払いを演じたと考える向きは多いだろう。もっともECBの追加金融緩和の可能性の裏側にあるのは景気下振れリスク。欧州がラストランナーであることに変わりはない。しかし市場は金融相場での主役継続を求めているということだろう。
一方で金融相場を抜けだし、業績相場に移行しようとしているのがアメリカ。ECBの方向性を好感しながらも、市場の焦点は企業業績に向いてきている。まずは化学のダウ・ケミカルの第3四半期決算。純利益が12.9億9000万ドルで前年比50%超の増加。売上高は16%減の120.4億ドルだったが原材料価格の下落で利益率が改善した。
そしてハンバーガーのマクドナルド。第3四半期の世界既存店売上高は4%増で1年ぶりにプラス。米既存店売上高も2年ぶりに増加。「高成長市場」部門の既存店売上高は中国の好調を背景に8.9%増。第4四半期の既存店売上高もプラスとなる見通し。株価は7年ぶりの大幅高となり過去最高値を更新した。
そしてサウスウエスト航空の第3四半期決算は利益が市場予想を上回って着地。利益は前年同期比約78%増の5.84億ドドル。燃料費安を追い風に、営業利益率は20.3%だった。
薬品大手のイーライ・リリーも糖尿病、がん治療薬の販売が寄与し通期上方修正。一足早く業績相場の様相を呈し始めたかに見える。ただ、マックはジャンクフード、サウスウエストは中南部の格安航空。「アメリカの貧困」とは言わないが裕福感は感じられない。一部の富裕層に支えられた米景気が一般庶民にも及んできたと見るか。あるいは所詮マックやサウスウェストしか使えないと見るか。結構判断に苦しむところではある。
来週のFOMC、そして30日の日銀金融政策決定会合がECBのように市場迎合型になるのかどうか。ここが市場関係者の視点。自分の都合に合わせてくれればそれが正しかろうと誤答だろうと市場はいつも歓迎するもの。正義でなく欲望に支配された場所の宿命ではある。
日経平均株価は389円高の18825円と大幅反発。一時18900円台まで上昇した場面もあった。ファーストリテ、ディスコが上昇。中外薬・クラレが下落。

(2) 欧米動向
またですか?
というのはアメリカの債務上限のデフォルト観測。
国債発行枠の引き上げ問題である。
2013年10月にも一部の政府機関が閉鎖の憂き目にあった。
結局2014年2月に債務上限を2015年3月まで引き上げて落着した。
しかし今年3月に債務は上限に達し財務省は緊急措置を発動してしのいできた。
そしていよいよ手元資金は枯渇。
どう凌ぐのかの局面となってきた。
債務上限を上げれば済むという簡単なことが出来ないから困ったもの。
売り手の舌舐めずりが見えるような気がする。
というか、また茶番が起こるとすればばかばかしい限りである。
そんな凋落のアメリカをしり目に英中が蜜月チックな展開。
原発や高速鉄道で中国→英国へ約5兆円の発注の見通し。
人民元の国際化をちらつかせる中国。
人民元での決済まで視野に入っているという。
人民元の取引センターがロンドンになり、中国がかつてのように英国の意を受けるのだろうか。
そうすると基軸通貨ドルが脅かされ、ポンドの地位は改めて復活するかも知れない。
ユーロの原油決済の方向登場でユーロは凋落した。
しかしポンドに拘泥しユーロに不参加の英国の深謀遠慮はココだったのだろうか。
中東は英国の影の濃い場所。
原油安が英国の中東への支配権をさらに高める脇役としての中国。
大英帝国は眠っていないような印象である。
というかこの図式の解を求める方が愚かしくFOMC動向を見極めるよりも賢明に思える。
半期ごとに登場する為替報告書で「円はいくぶん割安」なんて噛みついている場合ではなかろう。

(3)アジア・新興国動向
中国の国家統計局が10月19日に発表した2015年7〜9月期の国内総生産(GDP)。
そもそも3週間で発表される数字を信じる方が悪いとも言えるのだが・・・。
物価の変動の影響をのぞいた実質成長率は前年同期比6.9%増で着地。
6%台となるのは、リーマン・ショック後の09年1〜3月期以来、6年半ぶり。
前期(4〜6月期)からは0.1ポイント下落。
事前予想は、6.8%だから大した違いはない着地。
1〜9月の累計の成長率は6.9%で15年の成長率目標7.0%を明確に下回った。
市場の解釈は面白い。
「世界的な金融危機以来の低成長で
一段の冷え込みを避けるために追加刺激策を講じる圧力が強まりそうだ」。
ああ言えばこう言う市場関係者は多い。

中国国家主席の習近平氏はバッキンガム宮殿に泊ると言うからすごい。
オズボーン外相のコメントは「両国関係は黄金時代に突入した」。
背景は「経済力をテコにした中国の存在感の高まり」。
そもそも英国は中国を一時支配下においた国。
1840年のアヘン戦争など中国は歴史の向こうに忘れることが出来たのだろうか。
香港や上海の租借という問題も消え去ったのだろうか。
というよりも、米と接近せず英になびく中国。
どうも世界の情勢をよく知っているという感じがする。
そもそも英国のかつての支配の概念は「その国の経済繁栄を搾取する」。
本来は内乱に乗じて進出するのが大国のやり方。
しかし日本が明治維新に際して内乱を起こさず平和裏に大政奉還となったのも多くは英国の導きチック。
だったら、今回も中国の経済を英国がうまく料理するということになるのだろうか。
地政学は歴史に学べば結構いろいろなことが今でも起きているような気がする。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
26日(月)米新築住宅販売、独IFO景況感、中国5回全体会議(5中全会〜29日)
27日(火)企業向けサービス指数、米FOMC(〜28日)、ケースシラー住宅指数、耐久財受注、英GDP
28日(水)商業動態統計
29日(木)鉱工業生産、東京モーターショー(〜11月8日)、米GDP、中古住宅販売
30日(金)日銀金融政策決定会合、日銀展望レポート、失業率、消費者物価指数、米個人所得、シカゴ購買部協会景気指数

「ゆうせい」がキーワードになってくるのだろうか。
昨日、一昨日の薄商いを見ると、反対売買もなく静かな船出という印象。
ポイントはパリバのレポートにあるように「郵政上場は国策」。
・・・国策であり、財政政策の一部であり、金融政策と密接不可分。
成長性とかROEとかはどうでもいい話。
復興財源に4兆円の貢献を行うまでは政府のもとで株高経営をする・・・。
覚えておきたいのは次のくだり。
「あらゆる面で親(日本郵政)の都合が子(ゆうちょ・かんぽ)の利益に優先。
親の親(政府)の都合が親(日本郵政)の利益に優先する」。
その原動力は株高経営だという指摘は心強い。
その親(日本郵政)は自社株取得枠を設定した。
上限は発行済株式数の50%の22.5億株、あるいは7309億円。
50%を取得すれば明らかに経営のフリーハンドが付与される。
だからこその親子上場だったという隠した尻尾が見えてきたような気がする。
そして次のポイントは12月29日終値ベースでのTOPIX組み入れ。
郵政3社での時価総額は14兆円程度になろうからトヨタの25兆円に次ぐ規模になる。
となると、市場での存在感は明らかに高まってくる。
そして「銀行業」や「サービス業」のTOPIX寄与度も拡大してこようか。
PER・PBR等の割安感、そして高配当利回り志向の投資家がホールドすれば需給は引き締まる筈。
もしも・・・。
この時価総額の大きい妖怪が上に動くと視界は開けようか。

来年の干支はサル。
「申酉さわぐ」だからボラ高くということだろうか。
因みに「猿相場」というのが存在するという。
#NAME?
猿の群れにバナナを放り投げると激しい争奪戦が始まるように、誰もが理性を捨てて株を買いまくる大相場。
だったらサル年は悪くない。
「猿のダーツ投げ」というのもある。
目隠しをしたサルに、新聞の相場欄めがけてダーツを投げさせ、命中した銘柄でポートフォリオを組む。
すると専門家が選んだポートフォリオと運用成果にさほど大差がないという。
しかもダーツ投げで「売買タイミング」を適当に決めても、運用結果はさして変わらない。
「銘柄が先か、タイミングか先か」なんている論理もサルを前にするとかき消されてしまうのである。
ダーツ投げで決めたほうが、人間の心理がない分儲かりやすいとまで言われることもある。
「安いときに買い、高いときに売る(マーケットタイマー)」というのが理想的な投資理論。
これがインデックス運用に勝てないということになる。
そうすると・・・。
サルにバカにされないような対峙が必要となる。

21日に10月9日高値18438円を抜いた日経平均株価。
9月9日の高値18770円も奪還できた。
2か月続いた9日高値は「月の10日にモノ買うな、月の20日にモノ売るな」の格言通り。
この先の山は8月23〜24日の19435円→19154円。
8月20〜21日の20033円→19737円。
この二つの窓を埋めるかどうかが課題になる。
このマド埋めを完了できれば8月11日の年初来高値20946円奪還期待も登場。
2013年は11月8日、昨年は10月17日を安値に年末まで走った。
今年は9月29日と前倒しになったと考えたいところ。

(兜町カタリスト 櫻井英明)

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