10月3週
【推移】

13日(火):
「1億総活躍」という言葉が登場してきた。具体的には2020年頃のGDP名目GDP600兆円。雇用拡大と賃金増で消費拡大を目指す方向。インバウンドもTPPも寄与するとの目論見だ。そして、出生率の1.8。加えて女性管理職比率を2020年に3割の目標。ここで問題になるのは子育てであり、施設の人間の拡充は望めよう。またシニアも同様。老人ホームの拡充とシニアの労働支援。こう考えると抜けているのは現役世代の男性。中核の働き手を無視して女性シニアを優遇しているという訳ではなかろうがそう映る。確かに女性の仕事能力は高いし、シニアの経験も大切である。しかしど真ん中の働き手を軽視するような傾向で良いのかどうか。結構微妙な印象。ただ法人税20%を2017年度からの方向もある。軽減税率も前向きに検討。もろもろの方向が見えてきて安倍内閣の支持率も反転上昇。まさに株価みたいな動きとなってきた。
気にかかるのがシャープ。産業革新機構が出資の検討を始めたという。バラバラに解体して売却するのかどかうか。もういい加減に引導を渡す時期でもあるのだろうか。時は秋というのが気にかかる。週末段階で日経平均株価は18438円で3分の1戻しは達成している。
10月SQ価は18137.50円で「幻」ではない。NTレシオは12.16で今年5月8日の最低水準12.20を下回った。これはファーストリテの下落の影響が多かったということだろう。日経平均株価の25日線からのかい離はプラス2.6%。騰落レシオは104.3%。サイコロは8勝4敗で66.7%。
松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス10.075%。買い方はマイナス9.635%と逆転しており好循環。10月2日時点の裁定買い残は15億円だけ増加し2兆723億円。空売り比率は33.9%まで低下(最大は9月29日43.4%)。日経平均採用銘柄のPERは14.83倍。
日経平均株価は203円安の18234円と反落。大林組、ライオンが上昇。ファーストリテ、三菱UFJが下落。

14日(水):
7日も続伸したNY株式。何か下げたい材料を探している蜘蛛の糸に引っかかったのが中国の輸入の減少。前年同期比20%減を見て中国の生産活動の低下を懸念した。しかし既に11カ月も前年同期を下回った数字がまだ反転しないだけ。今更どうのこうのという問題でもないだろう。1〜9月の自動車完成車と車台は25%減。
部品は16%減。9月の新車販売は2.1%増という現実とのかい離はたぶん現地生産の増大なのだろう。VWの375万円の車を150万円値引きしても売れないのはVWのせいだろう。もっとも鋼材18%減、工作機械21%減でありそればかりではないのかも知れない。あるいは鉄鉱石の輸入額は42%減、石炭は44%減。石油は40%減だが、これは価格下落の影響が大きいだろう。いずれにしてもいつ何かの材料にされる中国。前日の上海総合株価指数が5ポイント上昇していたのは何故なのかという素朴な疑問。ある意味相場解釈のショックアブソーバーのような存在は哀れでもある。
日経政治面では軽減税率の話。2017年4月に予定されている消費税10%への増税と同時の導入を検討するという。ただ、加わった解釈は「財務省が軽減税率導入に協力しなければ、消費増税再延期」の解釈。今回の消費増税は景気条項がなく、待ったなし。しかし権限税率導入を「同時」とすることで「間に合わなければ延期」の選択肢が増える。巧妙なレトリックというか戦略というか、これは結構な選択肢。2017年消費増税延期なら、財務省やIMFは歯ぎしりの世界だろうが、市場は歓迎。むしろ楽しみになってきた。というか、永田町は霞が関よりも賢く見えてくる。大体、プライマリバランス(基礎的財政収支)が言われて20年は経過している。それでも国家財政は破綻しないし、他国に迷惑をかけている訳でもない。国家破産の懸念ばかりが強調されるが、これは逆にオオカミ少年なのかも知れない。というか、民間企業がしっかりしていることの裏返しでもあろうか。
日経平均は火曜水曜で547円(3%)下落。10月2日以来の以来の18000円割れ。下への「幻」となっていた10月SQ値18137円も現実化。○○●で2勝1敗となった。ようやく浮上していた25日線17966円も割った。10月月足陽線基準17722円がかろうじて残っていたというところ。松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス9.030%。買い方はマイナス11.702%と再逆転。空売り比率は40.2%までまた上昇。日経平均採用銘柄のPERは14.40倍まで低下した。
日経平均株価hが343円安の17891円と続落。新日本科学、島忠が上昇。三井住友建、洋ゴムが下落。

15日(木):
需給に関して国内でクジラ期待感が登場しはじめた。国家公務員共済と地方公務員共済、そして私学事業団の3共済の運用資産は33兆円。そのうち日本株への買い増し期待は2兆円と結構大きい。また地方自治体の各種年金の合計は20兆円。これらが日本株比率25%を目指すクジラとなるのだろう。「1億総活躍=1億総投資」と揶揄する声も聞かれる。しかもITや人工知能の進化で人間の仕事は奪われるという未来観もある。しかし多くのことがAIやロボットに代替できても「儲けよう」という意識はコンピュータには無理だろう。そこが人間のいきる道でもあるのかも知れない。
外国人売りの継続という指摘もある。8月第2週からの8週間で外国人は日本株を現物で4兆26億円、先物で2兆9704億円売り越した。9月中間期末をはさんでの海外口座への資金還流の動きもあった。VWのスズキ株4600億円売却もあった。
しかし先物はいずれ還流するという見方も多い。加えれば日銀。9月末の長期国債の保有は257兆円、今後1年で償還を迎えるのは38.8兆円。償還分もまた国債を買う宿命にあるとするならば来年は今年よりも10兆円は多く買わなくてはならない。ということは、金融緩和をしなくても国債買い入れ額は10兆円増加することになる。これは国債でなくETFとなるとすごいことになる。サプライズならばそれくらいのことが欲しい。10月30日緩和観測だけではノーサプライズでしかなかろう。
日経平均株価は205円高の18096円と3日ぶりの反発。エーザイ・ヒトコムが上昇。サッポロ、郵船が下落。

16日(金):
ストラテジストの指摘は「マクロとミクロ、短期筋と長期筋」。マクロ的な材料で、日本株全体(先物や大型株のバスケット)を売り買いする外国人短期筋。
日本初ではなく海外発の悪材料が多いこともあって、様子見気分が強い。日銀の追加緩和を「ネタ」にした仕掛け売買があっても、それ以上の積極姿勢は見出しにくい。一方、ミクロ的な材料、つまり個別企業に着目する長期筋。マクロ的な金融政策には関心が薄い。こうした長期筋は、日本の企業収益が増益基調にあり、個別にはより魅力的な企業が多いことに注目している。引き続き日本の経営の変化(スチュワードシップコード、コーポレートガバナンスコードなどの効果)や、GPIFがJPX400をベンチマークにした投資、あるいはESG投資などを進める動きに、関心がある。
留任した塩崎厚労相氏はGPIFの株式投資は、株式相場全体の押し上げを狙ったものではなく、個別企業の新陳代謝をうながすものだ、と過去に発言しており、この点でも、マクロよりミクロに期待する長期投資家の日本株への投資安心感を醸成している。こうした短期筋対長期筋の図式は、まず短期筋が大型株を売買することでTOPIXが振り回され、大型株指数÷小型株指数の上下とTOPIXの動きが短期的には似ている点に表れる。
一方、大型株指数÷小型株指数の数値が低下傾向を強めている。これは最近の世界市場の波乱で、短期筋が日本株を投げたことと、長期筋が有望な小型株を、コツコツと拾っていることが表れている。
日経平均株価は194円高の18291円と続伸。住友不、クレセゾンが上昇。大成建、アインファーマが下落。

(2) 欧米動向
よく見てみれば本家本元のNY株式は半値戻しを達成している。
S&P500指数は5月の2130ポイントから8月の1867ポイントまで下落。
しかし2000ポイントはキープして半値戻り状態。
上に傾けば全値戻しとなり大統領選挙前年の株高アノマリーは達成可能となる。
米企業の業績懸念というのも聞かれる。
確かに7〜9月期のSP500採用銘柄は前年同期比4.5%の減益見通し。
09年7〜9月以来6年ぶりの悪い水準。
しかしこのうちエネルギーセクターが65%減益の見通し。
エネルギーを除くと3%程度の増益見通しとなる。
シェールの影がアメリカ企業の業績を悪く見せているということだろうか。

個別ではトヨタが2050年までにエンジンで走る自動車の販売ほぼゼロにする長期目標を発表した。
ハイブリッド車や燃料電池車の比率高めて新車の走行時のCo2排出量を9割減らすという。
自動車の開発競争の中心がエンジンから電池や制御ソフトなど「電化技術」に移行。
「産業構造にも影響も」という指摘も聞かれる。
エンジンで劣後した訳ではなくこの方向性を背景にマツダと提携したと考えればスッキリするのだろうか。
一方で東芝は地熱発電を拡大方向。
原発ではなくエネルギーはココにフォーカスするのだろう。
家電や半導体の東芝というより発電の方が社会的必要性は増加する。
面白いのはアメリカ原子力規制委員会の原発への姿勢。
沸騰水型軽水炉に「フィルタ付きベント装置」の設置義務付けを見送るという。
理由は「効果薄」。
例えコストがかかっても事故の際の排気設備は備えておいて欲しいというのが人情。
独仏スイスそして日本も備え付ける装置が必要ないという根拠は本当にあるのだろうか。
たぶんこれがアメリカの思考法なのだろう。

(3)アジア・新興国動向
中国政府はロンドンで人民元建ての国債発行する準備に入ったとの報道。
中国本土・香港以外の海外市場での発行は初めてのこと。
習近平指導部が進める元の国際化の一環。
当然ながらIMFの準備通貨採用への準備なのだろう。
たたロンドンというのがどうも気にかかる。
日経では「英国の支持を固める思惑」との解釈。
そういえば原油決済にユーロを使う方向が登場したら欧州は南欧中心におかしくなった。
ドルの基軸通貨の地位を脅かすことはある意味タブーと考えれば、当然人民元もそういう対象になろうか。
一方で支配国の経済を富ませて搾取してきたのが英国の歴史でもある。
基軸通貨はポンドからドルに移ったが、この英国の伝統的な海外戦略がまだ生きているのかどうか。
二元的外交戦略の得意さは天下一品の英国。
今後の動きには留意だろう。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

19日(月)BBレシオ、日銀支店長会議、中国7〜9月期GDP他経済指標
20日(火)コンビニ売上高、米住宅着工件数
21日(水)貿易収支、9月訪日外国人客
22日(木)米中古住宅販売、ECB理事会
23日(金)気象庁3か月予報、タイ休場

9月の公募投信の残高3兆5714億円減少し93兆円になった。
株価の下落による運用損が4兆5571億円だから9857億円の資金は入っている。
それでも4か月連続での運用損と残高の減少。
5月末の102兆円からは約10兆円の目減りとなった。
因みに8月の運用損は5超6718億円。
9月の運用損と合計すれば10兆円で計算は合う。
過去追いの数字ながら投資マインドを萎縮させる現象の一つではある。

その株安のなか日銀は14日にETFを336億円購入した。
月曜は見送りだったが、さすがに昨日の相場では動かないわけにはいかなかったというところ。
9月29日以来今月初めての買いだが先月の317億円より19億円増加した。
今年年初からの買い入れは2兆5241億円で残りは4759億円。
336億円ずつ買えばあと14回ということになる。
一方で妖怪が成長を一時止めたのはETFの日経レバ(1570)。
野村アセットは日経レバ、日経インバ、日経ダブルインバースの3本の新規設定を停止した。
妖怪と言える日経レバの純資産は一時8000億円を越えた。
過去3か月で約3倍の急成長。
相場のボラを高めていることが背景とされる。
となると次は日経JPX400レバ(1470)が主役になるのかも知れない。
因みに東証は「S&P/JPX G1V1指数」を開発。
11月から算出を開始するという。
資産価値や期待成長率に応じて構成比率を決めるという。
また過去10年増配銘柄指数なども登場するという。
行き詰ればルールを変えるという習慣が伝染してきたのだろうか。


(兜町カタリスト 櫻井英明)

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