08月1週
【推移】

3日(月):
日経1面の見出しは「上場企業の7割経常増益」。自動車や電機大手は北米販売と円安が追い風。小売りなど内需関連はイバウンドの爆買いの恩恵。たくましい日本企業がココにある。
地道に活動を続けてきた日本企業の4〜6月決算状況は全体の43%が通過。第1四半期売上高は前年同期比5.3%増、経常利益は同26.7%増、純利益は同26.5%増。一方通期見通しの売上高は前期比2.4%増、経常利益は同13.2%増、純利益は同18.9%増。まだ発表したのは約半分の企業ですが、全部が終わっても2ケタ増益の可能性は残る。保守的といわれる第1四半期だが悪い数字ではなさそうな気配。
タヌキ的に皮算用をすれば日経平均の3月月中平均値は19197円。もしもこのまま2割増益で着地できるのなら計算上は23036円。日々の企業の活動が「そのまま、そのまま」なら決して夢の数字ではなさげな気配。
日経平均株価は37円安の20548円と3日ぶりの反落。TOPIX、JPX400は続伸。TAC、日本調剤が上昇。トプコン、Klabが下落。

4日(火):
興味深かったのは日経朝刊の記事「米、石炭火力の規制強化。COP21主導権狙う。政府、温暖化でCo2削減」。米政府は石炭火力発電所から排出される二酸化炭素の量を2030年に05年比30%削減の方向。京都議定書には積極的でなかった米政府の変身には瞠目させられる。ただ綺麗ごとばかりで解釈しても良いのかは別の問題なのかも知れない。
シェールガス革命で米国産天然ガスのコストが下がったから推進するとの解釈。エネルギーや原子力発電とともにクリーンエネルギーにも投資を促進するという方向。だぶつきそうなシェールを消費するためには、格好のお題目になる。綺麗ごとと現実のかい離は何も今に始まったことではない。
なぜそうなるのか、背景は何なのか、誰がどう儲かることになるのか。ここを考えることは株式投資でも必要だが、結構難しいもの。本当にそうなのかどうかは時間の証明を待つしか無いようだ。次期民主党大統領候補のヒラリー氏は「意義ある一歩」。共和党の同候補ブッシュ氏は「無責任でやりすぎだ」。お互いの利害のベクトルが違うから、解釈も180度の違いとなる。
日経平均株価は27円安の20520円と続落。TOPIX、JPX400は5日続伸。TAC、オカモトが上昇。日機装、日清オイリオが下落。

5日(水):
日経では「世界の企業、資金調達急ぐ」の見出し。今年1〜7月の株式・社債での資金調達は世界で、240兆円で過去最高ベース株が5600億ドル、債券が1兆4000億ドル。特に北米企業の調達が目立っているという。「有利な条件での発行」と見られるが、これが企業の上場目的そのものである以上当然の行為。知名度を上げるために上場することもあろうが、上場の意義の大半は「資金調達」。株価が上昇してくれば当然、ファイナンスや時価発行増資は増える。これが上場企業の宿命でもあるからだ。それを目くじら立てて「1株利益の希薄化」などと騒ぐ方がおかしい。資金調達のできない市場など発行体にとっては上場する意味がないだろう。株が上がれば増資は増える。これが市場の常識であることは忘れてはいけないだろう。
国内でも設備投資は前年比13.9%増えて19兆2588億円との見通し。従来型の「維持・補修」が減って「新製品・製品の高度化対応」が増加。製造業が前期比24.2%増だがこれは1989年以来の高水準。電力・ガスや物流施設の投資意欲が旺盛となっている。インフラとインバウンドの両方の「イン」がキーワードだろうか。
前引けにかけて上昇幅を拡大し後場寄りが高値。大引けにかけて徐々に着陸角度で上昇幅を縮小。という展開。ただ、東証1部の売買代金はフツーの水曜日にもかかわらず3兆円超えの3兆1905億円。夏枯れどころではなく尋常ならざる売買エネルギーの拡大基調となった。トヨタやファーストリテが売られた一方で決算を受けた銘柄群の上昇もあった。
目についたのは建設、不動産セクターの上昇。「いよいよ総花的に資産が買われる」となるのだろうか。だとすると、1987→1989の再来になるのかどうかの試金石でもあろうか。まずは輸出関連、次が内需関連。そしてハイテク。この順番を市場が覚えているとしたら大したもの。
日経平均株価は93円高の20614円と3日ぶりに反発。日水、テルモが上昇。丸井、蛇の目が下落。

6日(木):
ギリシャは見えなくなった。中国も気にしなくなった。となると、やはり視点は否応なくアメリカに移行する。これはNY市場が一番嫌がることなのかも知れない。 利上げの有無や時期がアレコレ詮索されるが、気になるのは米財務省のコメント。「現在18兆ドルとなっている法定債務上限が引き上げられなければ、サイバー攻撃などによる不測の事態への備えが十分できなくなる。
債券市場への影響も避けられない」。2011年と13年には上限引き上げの合意が遅れ、デフォルトリスクが登場した記憶が残る。今年5月、財務省はサイバー攻撃や大規模な天災などで金融システムが混乱した場合に備え、現金残高を積み増す方針を発表。
次官補代理氏のコメント。「債務上限を引き上げない限り、財務省の現金残高は今後数カ月で1500億ドルを切る」。ドル紙幣を印刷すれば事足りる訳ではないようである。政や官がこんな準備をするということで考えられるのはサイバー攻撃での金融システム混乱の現実化の可能性が高いということだろうか。フツーに考えれば、また政府のお金が足りなくなるだけとも言えるが・・・。ただ足元企業業績は悪くない。
S&P500のハイテク・セクターの第2四半期利益は5.3%増との観測。7月1日時点の2.1%増から上振れた。「中国経済の減速がコモディティ関連株を中心に引き続きマイナス材料」。この解釈は隠れ蓑なのかも知れない。日経ではあちこちに最高益の見出しは見えるが「京急4〜6月最高益」。前利益は前年同期比32%増の44億円で過去最高。対通期進捗率は40%になった。
背景は羽田と直結した鉄道の好調。お台場のホテルの宿泊外国人は4割まで上昇。稼働率も平均9割になったという。ライオンが「訪日外国人向けに子供用歯ブラシが好調」。背景は日本製高級の歯ブラシを使わせたい親心の産物。足元の実態に市場はもっと自信を持ってしかるべきだろう。
日経平均株価は50円高の20664円と続伸。一時20817円まで上昇した。森永、明治が上昇。東芝テック、ゲンキーが下落。

7日(金):
日経1面では「百貨店、高額家電に力」の見出し。従来の宝飾品・美術品などに加え4Kテレビやオーディオ機器などにも対応する方向。背景は富裕層の取り込み。まずココから動き出す気配が出てきたということだろう。悪くはない。
日経平均株価の25日線は20395円で1.07%のプラスかい離。75日線は20230円で1.90%のプラスかい離。200日線は18665円で10.44%のプラスかい離。200日線は1日に約25円の上昇をしているので2万円まであと約55日。2か月チョットで2万円に乗せてくる。その時に10%のプラスかい離を維持していれば日経平均は2万2000円。10月初めが楽しみになってこようか。
登場するのが月のアノマリー。4月上昇→8月下落、4月下落→8月上昇(4月と8月は逆相関)。7月上昇→12月上昇、7月下落→12月下落(7月と12月は正相関)。4月上昇8月下落は、今年外れて、7月上昇10月上昇のアノマリーにはまって欲しいもの。裁定買い残は55億円だけ増加して2兆7434億円。4週連続増加だが指数との連動性は薄れたし裁定取引は主役の座を降りた格好。見えない影に怯える必要はなくなったことになろうか。新高値銘柄が180となっており静かにエネルギーを蓄積している印象。空売り比率は33.2%。これが30%を割り込んできたら日経平均21000円が見えるのだろう。
日経平均株価は60円高の20724円と3日続伸。TOPIX、JPX400は8日続伸。島津、フジシールが上昇。チムニー、富士ソフトが下落。

(2) 欧米動向
過去20年のNYダウの8月の平均騰落率はマイナス1.1%。
9月よりも悪いとの指摘。
1950年以降ではNYダウがマイナス0.1%。
S&P500がマイナス0.06%。
NASDAQがプラス0.2%。
ただ株高の大統領選前年だけだとそれぞれプラスとなるというのがミソだろうか。
1971年ニクソンショック、90年イランのクェート侵攻、97年アジア通貨危機。
98年LTCM崩壊、07年パリバショック。
イベントに事欠かなかった8月でもある。
そして3日新甫。
静かさは似合わないような気もする。
気温が1度上がると消費支出は月700億円増加するという。
あるいは日照時間が平年比30%増だとGDPは0.3%上がるという。
このまま日照りでいけば景気が良くなるのだろうか。
暑さ転じて市場衰退にはなって欲しくないもの。

一方で債券市場は「日米欧の債券に資金流入」。
日本の長期債利回りは一時0.385%と4%を割り込んだ。
世界経済の体温を示す商品市況は12年ぶりの低水準。
中国とアメリカの景気の悪さを懸念しての債券買いとの解釈。
年内にFRBの利上げ観測があるが、これは全く無視された格好でもある。
9月にも12月にも利上げができないFRBでは、イエレン議長の立場も妙になる。
アップルの下落でNYダウは下げている。
しかしひょっとすると利上げの延期でのレイムダックを見通しているのかも知れない。
そもそも・・・。
日銀が発表した7月のマネタリーベースは6月末比約6898億円増加。
325兆7375億円。
12ヵ月連続で過去最高を更新中。
06年に100兆円を割り込んでそのあとにリーマンショックを迎えたのが歴史だった。
それに比べればユルユルであることこの上ない。

(3)アジア・新興国動向
7月の中国の卸売物価は前年同期比5.4%下落。09年10月以来の大きさとなった。追加金融政策を求める声が聞かれる。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。

10日(月)景気ウォッチャー調査
11日(火)マネーストック、独ZEW景況感
12日(水)企業物価、米財政収支、中国経済指標
13日(木)機械受注、米小売売上高
14日(金)オプションSQ、米鉱工業生産、ミシガン大学消費者信頼感、独4〜6月GDP、ユーロ圏GDP

株式市場における日銀の存在が見逃せなくなってきた。
今年のETF買いは56回で1兆9653億円。
あと1兆円買う予定だ。
因みに日銀のETF保有額は時価で8.6兆円。
2000年代前半の銀行保有株買い取分も入れれば保有時価は10兆円。
日本株の2%を持っている計算になる。
ETFの保有額から逆算するとTDKの4%の株を保有していることになるとの指摘もある。
これだけ株を買う中央銀行というのも珍しい存在。
因みに2013年が1兆953億円、2014年が1兆2845億円。
そして今年が約2兆円。
昨年、一昨年で日経平均のPERを13倍→16倍にしたと計算すると押し上げ効果は約2500円。
今年は例年の3倍のETFを買うのだから2500×3=7500円。
年初の日経平均が17408円だったから17408+7500=24908円。
たやすく計算できる。
本石町バズーカ砲の存在が日本株を特殊な動きにしているのかも知れない。
もっともニッセイ基礎研究所の試算ではアベノミクススタート以来の企業業績は9割増。
日経平均押し上げ効果は9408円との計算。
やはり自助努力の産物という主因は否定できない。

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