12月2週
【推移】
8日(月):
大した話題にもならなくなった米雇用統計。非農業部門雇用者数は事前予想の23万人増を大幅に上回り31.1万人増で着地。
9月分は25.6万人増→27.1万人増。10月分は21.4万人増→24.3万人増に上方修正。
今年の雇用者数増は11月時点で265万人となり99年以来の水準。失業率は5.8%で横ばい。
早期利上げ観測も台頭し、ドル円は一時121円台まで売られた。
ガソリン安で9兆円程度の恩恵を受けた格好で米景気は個人消費中心に好調。
この構図は更に色濃く鳴ってきた印象。
一方で市場の指摘。「マネーが米国に集中する現象映すドル高局面は過去にもあった。
90年代のアジア危機、2000年代の世界金融危機。
いずれも発生前にはドル高局面を迎えていた。三度目の正直となるか、それとも同じ過ちを繰り返すか。世界は岐路を迎える」。とても賢く聞こえる。
日経平均は海外動向にビクともせず週末まで6連騰。連日で年初来高値を更新している。トヨタが年初来高値を更新、ファナックは上場来高値を更新。
ファナック高値で指数下落のアノマリーも消えた。
日経平均的には前安倍内閣時の高値2007年7月9日の18261円。日経平均構成銘柄30銘柄入れ替え前日の2000年4月12日の20833円。
さらにここを抜ければバブル崩壊後の戻り高値でもあった96年高値22666円。それよりも切望は東証1部の単純平均株価。317.72円だが323円を抜ければようやく年初来高値更新。
初めて儲かっているという実感が出る事態になるかも知れない。
松井証券信用評価損益率速報では売り方マイナス14.107%。
買い方マイナス4.182%。
株価の上昇テンポと歩調が合っておらず意外と売り方善戦の印象。空売り比率も30%台に乗せて来た。
買い方がどこかで圧倒的勝利の局面を迎えないとまだ接戦なのかも知れない。
7〜9月GDPは年率換算マイナス1.9%と減少幅拡大。
そうはうまく問屋がおろさなかった。
日経平均株価は15円高の17935円と7日続伸。とはいえ、日経平均は8月に9日続伸があったので、記録でもなんでもない。富士重工、カーバイドが上昇、サクサ、ゲンキーが下落。 東証2部株価指数は14日続伸。

9日(火):
ゴロ合わせのような見出しは日経商品面。「毛糸、24年ぶり高値」。
背景は原料の羊毛の出荷量が原産地のオーストラリアで減少していること。
加えて円安の進行。
国内の指標品種の卸売価格は10月から4%上昇して90年6月以来の水準になっているそうです。
来年の干支は「未(羊)」。そのヒツジ年を前にして、羊の話題というのは季節感たっぷりだが、ヒツジ年の相場にとってありがたいのか、どうなのかは微妙なところ。
羊毛が上昇しているのだから未年相場は高い、と読むのか。
円安進行毛糸価格上昇で、消費の現場での値上げラッシュが来ると読むのか。読み方によっては180度違う方向を向いてしまいそう。
因みに毛糸は過去5年で2倍の上昇。日経平均株価は過去2年で2倍の上昇だからたいしたことはないと考える方が良いのだろうか。兜町の格言は「未辛抱」。株価的には「売りを辛抱」と読み替えた方が良いという声も聞かれる。
日経平均株価は122円安の17813円と反落。キッコーマン、サントリーが上昇。トヨタ、マツダが下落。

10日(水):
洋の東西を問わずボラティリティが高まってきた相場。
原油が下落すれば利食いに走るからアップルが売られたという解釈もある。
あるいは、前日の上海の乱高下。駅の新聞売り場で業界紙が瞬間消滅するほどの人気での最高値圏という報道の直後。高値圏での乱高下は暴落の前触れなんて諺も甦る。
原油安、ルーブル安、ギリシャ問題、米金利早期上昇観測。ビル・グロス氏は「リスク資産の価格上昇はまもなく止まる。今後はリスク資産の比率を下げるべき」とのコメント。
あるいはドル換算日経平均の伸び悩み懸念との声も聞かれる。
95年2月を100とすると円建て日経平均の105に対してドル建ての日経平均は85。
その差20ポイントは6月の4ポイントから急拡大。97年4月が27ポイント、07年6月は23ポイントでその後株価下落と言う論調。
日経では「コマツと日立建機の来期、中国への依存度低下」の記事。
2016年3月期の対中国向け売上高はコマツ約7%、日立建機約10%。
コマツの中国向け売上げ比率は2011年3月期に21%だったからほぼ半減。
しかしたった21%程度で中国関連とする方が無理がある。因みに今期は1位日本(20%)、2位北米(17%)、中国は7位。コマツの売上げは日本が一番。イメージで銘柄を見てはいけない。
日経平均株価は40円安の17412円と続落。2週間ぶりの安値水準となった。スカイマーク、大チタが上昇。日エンター、コーセルが下落。

11日(木):
地域的悪材料は日銀が前日ETF購入を見送ったこと。
月曜は株価プラスでも買ったのに昨日は大幅安でも見送りという恣意的動き。
背景は玉切れとの指摘。
日銀がETF買い入れを始めた2010年12月からの買い入れ合計額は3兆7734億円。
2014年末の買い入れ目標額である3兆8000億円まで残り266億円と迫っていた。
このところの買い入れ額は374億円だったからもう買えないという解釈。前日の下げで買えなかったのは少し硬直的過ぎる。
日経平均株価は155円高の17257円と3日続落。ドル円は117円台。マーベラス、日立が上昇。トヨタ、ソニーが下落。

12日(金):
米原油先物は1バレル=60ドルを割り込んだ。供給過剰への懸念からの下落継続で5年ぶりの水準。半年に及ぶ下落局面で原油価格の水準はほぼ半値となった。
市場関係者は「底値はなお分からない」とのコメント。
作為的原油下落の印象は残る。
しかしこれだけ下がれば株で益出ししての合わせ切りは当然発生しているのだろう。
昨年から今年春にかけては「シェールがアメリカを救い再成長へ」の論調が多かった。そのうち日本企業による特損が相次いだ。挙句の果てには「原油安で貿易赤字縮小」の報道。
一方でエネルギー関連事業等に投資するMLPファンドが人気との報道。依然としてチグハグながらシェールはどうも胡散臭い。中国の7%成長への鈍化とかブラジル経済の軟調などを今度は持ち出すのだろうか。
日経平均株価は114円高の14371円と反発。鹿島、大成建が上昇、ガリバー、カナモトが下落。

(2) 欧米動向
「東証1部時価総額/GDP」の比率。
直近は107%まで行ったが、リーマンショック前の07年は108%だったという指摘。
悪材料を上げればキリがない。
ただ上海は5%以上の急落から少し戻した格好。
この姿から更に高値を追おうという意欲が感じられるのは気のせいではなかろう。
昨日の東証1部の売買代金は2兆3740億円。
28営業日連続で2兆円超。
年末でもまだエネルギーは衰えていない。
メジャーSQ週の荒れる筈の水曜日。

(3)アジア・新興国動向
中国は成長率を7%まで引き下げる方向。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
15日(月)日銀短観、首都圏新規マンション販売、米鉱工業生産、NY連銀製造業
16日(火)米FOMC(〜17日)、住宅着工件数、独ZEW景況感、中国HSBC製造業PMI
17日(水)貿易収支、11月訪日外国人、BBレシオ、リニア新幹線起工式、米経常収支、イエレンFRB議長会見
18日(木)日銀金融政策決定会合、米フィラデルフィア連銀景況感、EU首脳会議
19日(金)黒田日銀総裁会見、米メジャーSQ

昨年大納会高値は16320円(終値16291円)
9月月足陽線基準は15476円(9月1日終値)
10月陽線基準は16082円(10月1日終値)
11月陽線基準は16862円(11月4日終値)
12月陽線基準は17590円(12月1日終値)
10月SQ値は15296円。
11月SQ値は17549円。

最近、日本株を動かしているのは「ツーリスト投資家」という指摘。
特に一部のヘッジファンドなどは顧客が少なくいちいち説明義務がない。
日本株が良いと思えば刹那的に訪れて3泊4日。
金が良いと思えば刹那的に訪れて5泊5日。
ツーリストだから一箇所にとどまらないし、世界を相手にしている。
だからアチコチから悪材料は登場するが、継続しないのかも知れない。
所詮ツーリストならばいずれはツーリズムに操られた下落も消えようか。
付随して機関投資家における世代間抗争もあるという。
古い投資家は日本を良く知っているが若い投資家は不勉強な傾向があるという。
古い投資家は日本株バブルを知っていて日本株買いに期待感もある。
しかい若い投資家は少しでも株価が戻ると売りに走る傾向。
古い投資家はこの現状を憂うるが、実際には資金量は若い投資家の方が多いというのも現実。
これって欧米に限らず日本でも良く見る光景のような気がする。

そして長期投資家の投資シナリオの雛形はGPIFや日銀。
そして彼らのベンチマークはJPX400。
そのJPX400はROEを主指標としている。
だから雑誌や業界紙などでは「ROEの高い銘柄」の特集などが組まれる。
既にROEが高い銘柄がそれを維持することに賭ける事もアリだろう。
しかしむしろ低ROE銘柄のROEが向上する方が期待感が高い。
まさに逆転の投資シナリオで賛同したい。

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