09月第3週
【推移】

8日(月):
雇用統計通過。8月の米非農業部門雇用者数は14.2万人増で着地。市場予想の22.5万人増を下回った。失業率は6.1%で予想通りの着地。週平均労働時間は34.5時間で前月比変わらず。製造業残業時間は3.4時間で同変わらず。時間当たり賃金は24.54ドルで前月の24.47ドルより上昇。小売業のマイナスと人材派遣の増加が目だった。アナリストのコメントは「今年最小の雇用の伸びで、悪い意味でのサプライズ。本当にネガティブな内容だが、それにもかかわらず経済は改善を続けている。これは株式にとっては素晴らしい環境だ。イエレンFRB議長が時期尚早に引き金を引くことはないだろう。各国中銀はインフレ阻止よりもリセッション阻止に注意を払っており、これは株式にとって絶好の環境だ」。経済指標が悪くても金融緩和の続行や利上げの延期の方向性の方が好材料との解釈。どこか本筋を離れているが、それでも誰も異を唱えないのが市場。日経平均株価は36円高の15705円と3日ぶりの反発。ソフトバンク、市光工業が上昇、古河電池、Klabが下落。

9日(火):
米長期金利の上昇→米景気好調の裏返し→株高。これが常識的シナリオ。しかし米長期金利の上昇→金融引き締めへの布石→株安。これが、支配的なシナリオ。雇用統計が悪ければ、金融緩和が続き、利上げも遠のき株高。この異端のシナリオよりは常識的なシナリオを用いたいところ。日経平均の日足は陰線が5日連続で五陰連。日経平均株価は44円高の15749円と続伸。消費動向調査が下方修正されたことから上値は重い展開。九電工、東京個別が上昇。大和小田急、クックパッドが下落

10日(水):
前日の日経1面トップは「商社、物流インフラ整備」の記事。「大手商社が大型物流施設の開発を拡大する。インターネット通販などの普及に伴い大型の物流拠点の需要拡大に対応する。不動産・金融で豊富なノウハウを持つ商社が主導する格好との論調。伊藤忠が3年で1000億円、住商が500億円規模とされる。加えて商事が2000億円、物産が2000億円で合わせて5000億円規模との観測。 興味深いのは「複数の物件をまとめてREITに仕立て直し上場も想定」のくだり。東証に上場するREIT(46銘柄)が保有する物流関連の不動産は約1.2兆円。2年前の約5倍。住宅関連のREITなどと比較するとパフォーマンスの良さが目立っている。
日経マーケット面では「REIT指数5日続落」の見出し。「指数は8月末まで13年末比で9%上昇していた。同期間の日経平均株価(5%下落)と比べ堅調さが際立っていたが9月に入り軟調な動き。原因のひとつは長期金利とのスプレッドの差の縮小。多くの機関投資家は3%程度を目安にしているが、最近は3%を割り込む局面が増えた。 REITの平均分配金利回りは約3.4%。長期金利は0.5%だからスプレッドは2.9%。4月頃は3.2%もあったのだからこれは納得できる。二つ目は需給の悪化。オリックス不動産投資法人が最大204億円。日本リテールファンド投資法人が最大251億円の資金調達を発表。需給悪化懸念だという。持ち出されたのは投資会社のコメント。「増資が相次ぐと公募案件を購入するために保有銘柄を売る必要が生じる」。どうも無理矢理の見解のようにも思える。そもそも株とは違って公募増資の増加が需給悪化になるのかどうか。まさか「希薄化」なんて概念は持ち出さないだろう。チグハグなのは結論。
「足元では一服感が強まっているREIT相場だが中長期的には強気の意見がなお多い。オフィス空室率は低下傾向にあり、賃料も上昇を始めている」。ここまでは理解可能なシナリオ。「短期的には需給悪化要因の公募増資も調達した資金でREITが新たに物件を取得し、
収益を伸ばす場面では指数押し上げ要因となる」。この一文の言葉は整っているが意味不明。「REITが新たに物件を取得し収益を伸ばす場面」って何なのだろう。要はREITの新規資金が不動産を買うから不動産需給は好調。それが最終的にREIT指数の上昇につながるということを言いたいのかも知れない。公募=不動産価格上昇の可能性大。となると公募=需給悪化という構図は該当しないような気もする。株とREITをごちゃまぜにしているマスコミ関係者は多い。日経平均株価は39円高の15788円と3日続伸。今仙電機、モリタが上昇、ビッドアイル、コロプラが下落。

11日(木):
日銀がマイナス金利でも国債を買う姿勢を見せたことが大きいのだろう。断固として金融緩和はやりぬくという姿勢を好感した相場とも言える。だからこその円安傾向なのだろうが、気になるのはただ一つ。気紛れで移り気な市場関係者が、「通貨の売られる国の株価が上がるの」と疑念を持つこと。市場関係者が事の本質を離れてアレコレと言っているうちには害はない。しかし、事の本質や本源的価値に気が付くとややこしい気がする。興味深いのは金融庁の検査監督に関しての新方針。柱は「成長分野やベンチャー分野への融資の促進」。銀行に対して「将来性」を審査するように求めるという。しかし同じ紙面では「借りたお金をネット銀行に預ければ運用益が出ますよ」。 日本通信に対する銀行の融資セールストークが紹介されている。赤字の頃は冷たく、業績改善の手ごたえがあっても数字重視でお金を貸そうとしなかった銀行。2期連続の増収増益でいまや「借りてくれ」の嵐と言う。「銀行は晴れた日にしか傘を貸さない」という社長の言葉は永遠のテーマ。ひも付き融資などでたまに積極的になってみれば結局はバブル崩壊に遭遇。貸すこととリスクを取らなくなった銀行。言ってみれば牙を抜かれたトラみたいなものだが、金融庁の旗振りで買われるのかどうか。ここが試金石でもある。逆に言えば、後になって「あれが転換点」と遡れる事態なのかも知れない。日経平均株価は120円高の15909円と4日続伸。JPX400、TOPIXは年初来高値を更新。日産、ソニーが上昇。図書印、東洋精糖が下落。

12日(金):
9月12日金曜日。ということは、あの6年前の2008年と曜日が同じということ。6年前の日経1面トップは「米政府高官、異例の説明に」だった。あの時の解釈は、財務相や機関投資家へ米国債の信認性についての説明。しかし「異例の」という修飾語が付いていた。どう考えても15日に起きたリーマン破綻の説明だったのだろう。そこが読み取れれば当時の日経平均は12000円台。
リーマンショックでの打撃は少なかった筈、といつも痛恨が甦る。米国の9.11アメリカンスピリット発揚の日の相場のNYダウは小幅安での戻り。09年以来のマイナスとなった。昨年は135ドル、一昨年は69ドル高。少し変調の兆しなのかどうか。もっともNASDAQとS&P500はプラスなのでなんとも言えないところ。為替の107円台の背景は黒田日銀総裁のコメントとの解釈。昨日安倍主首相と会談後の「物価目標の達成に困難を来たせば、追加緩和だろうと何だろうと躊躇なく調整する」。傍証として触れられた「追加緩和」の文字を拡大解釈した格好での円安。08年9月以来だから、ここもリーマン越えとなるのかどうか。SQ値は15915,98円。今年1月の15784円を抜いて今年最高値。というか、アベノミクス開始以降の最高値。そして8月のSQ値は15036円だったからほぼ900円の上昇。前回メジャーSQ値14807円からは約1100円の上昇。SQ値は着実に上昇し始めた印象。日経平均株価は39円高の15948円と5日続伸。1月8日以来の水準まで戻してきた。東証1部の売買代金は3兆1194億円。富士重工、コマツが上昇。イーブック、新家工が下落。

(2) 欧米動向
アップル主導の相場がやってきた。
i−Phone6発表当日は下落だったが切り返し。
過去のi−Phone発表字のアップルの株価の推移。
1週間後の平均騰落率はプラス0.8%、
2週間後はプラス2.56%。
そして1ヵ月後はプラス1.56%。
昨年9月の5Sの時は1週間後がプラス1.16%、2週間後がプラス7.42%。
一昨年9月の5のときは1週間後がプラス」1.39%、2週間後がプラス4.82%。
07年9月の際、1週間後はプラス8.31%、1ヵ月後はマイナス7.42%だったが・・・。

話題になっているのはやはりアリババのIPO。
2.5兆円の資金吸収への懸念は残る。
過去の大型IPOでの動きは上場前10日下落、上場後10日上昇の構図。
12年5月のフェイスブック。
NYダウは上場前10日でマイナス4.9%、上場後10日でプラス0.19%。
10年11月のGM。
NYダウは上場前10日でマイナス2.3%、上場後10日でプラス0.67%。
08年3月のビザ。
NYダウは上場前10日でプラス0.9%、上場後10日でプラス4.58%。
因みにビザは過去最大の179億ドルの資金吸収だった。
今回のアリババはビザの資金吸収を抜いて250億ドル。
過去最大の時の株価は堅調となって欲しいところ。

先週株の投資判断をオーバーウェイトにしたのがゴールドマン。
7月に株式の投資判断を引き下げていたがアッサリと撤回。
欧州と日本株をオーバーウェイトとした。
日本株に関しては「長期的に収益やパフォーマンスを向上させる改革が可能。
バリエーションが魅力的」。
米株のアンダーウェイトとは対照的なコメント。

(3)アジア・新興国動向
今週はFOMC開催。米国金融緩和の終焉と金利上昇懸念から、新興国からの資金流出が昨今の話題。しかし、必ずしも米国の金融緩和効果で資金が新興国に向かった訳ではなかろう。この解釈の是正が今後必要となってこようか。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
15日(月)敬老の日で休場、米鉱工業生産、NY連銀製造業景況感
16日(火)首都圏新規マンション販売、米FOMC、独ZEW景況感、国連総会開会
17日(水)8月訪日外国人数、米消費者物価、イエレンFRB議長会見
18日(木)貿易収支、東京ゲームショー(〜21日、幕張メッセ)、米住宅着工件数 、スコットランド独立の住民投票
19日(金)企業活動指数、台湾の李登輝元総統が来日、舛添都知事訪韓(アジア大会)、CB景気先行指数

4〜6月の実質GDPは年率換算マイナス7.1%に下方修正。
駆け込み需要を先取りした1〜3月がプラス6.7%とはいえ、やはり悪化感は否めない。
それでも消費税を上げるのかどうか。
「見送り」とか「1%ずつ」なんて指摘も昨年と同じように聞かれる。
それでも昨年は聞く耳がなかった。
今年は聞くのかどうか。
ここが課題だろう。
既にTOPIX、JPX400は年初高値を更新した。
日経平均の出遅れが目立つが16000円台に乗せて、年初来高値を更新してくると、風景は相当変わってくるに違いない。

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