08月3週
推移
4日(月)
7月31日に東証1部の売買代金は21日ぶりに2兆円を突破した。8月1日は2兆1711億円。株価が上がるためには売買エネルギーの拡大が必要というのが定説。しかし、現実は株価が下落基調で売買エネルギーが高まっている。NY株式市場同様で、下落した週末の3市場の売買高は約72億株。平均が62億株程度であるから、海の向こうも売買エネルギーの拡大=株価の下落の構図。市場では「手掛かり材料が豊富となることで商いが増えやすくなる。これで市場エネルギーの増加が下値固めにつながる」。本当にそうなのかどうかが結構疑問となる。決算発表は佳境。週末から日経に載り始めた「4〜6月期決算集計状況」。全体の42.2%の発表が済んだ時点での状況。4〜6月の売上高は4.9%増、経常利益は8%増、純利益は15%増。通期は売上高3.5%増、経常利益4.1%増、純利益10.1%増。今のところ、一応2ケタ増益で悪くはない。日経平均株価は48円安の15474円と3日続落。テレ東、ハピネットが上昇、曙ブレーキ、TOAが下落。

5日(火)
日経平均は4日続落。終値ベースで8営業日ぶりに25日移動平均線(15386円)を割り込んだ。「直近では7月11日、18日、24日にも割れ込んだが、翌日には戻した」という声もある。とはいえ7月31日の高値は15759円。わずか5日で500円程度の下げとなった。10日連続で30%を下回っていたカラ売り比率も31%台まで上昇。「あと一歩が届かず」はしばしば遭遇するところだが、永遠の見果てぬ夢でもなかろう。 「手を伸ばせば届く目標」が少し遠のいただけ。ただ、なかなか届かないから、相場は隔靴掻痒感を伴ってくる。その一方でREITは最高値を更新。チグハグさは否めない。アレコレと外部材料に対しての評価は喧しい。NYではウクライナとロシアの緊張が蒸し返された。しかしアルゼンチンやポルトガルは消えた。人間が二つの痛みを同時に感じないように、相場も一つの痛みで解釈しようとするもの。 一番感じる痛みをデフォルメしてああでもない、こうでもないが日常茶飯事。リーマンショック以降に起こってきたのは、表面上の地政学的リスクによる下げではなかった。そして、財政破綻懸念でもなかった。米金融業界と規制機関とのバトルの行方に右往左往してきたように思えてならない。だとしたら、今回もNY株の調整の真の背景は、NY市場にある筈。それが、HFT規制なのか、どうなのかは定かではないが、所詮そんなもの。懸念された外部材料はいつも杞憂であった記憶が残る。騰落レシオは89.51%。売り方の信用期日は通過。日経VIは15.28で米VIX(恐怖)指数は16.87。週末のメジャーSQを安く通過させたい向きにとってはホッと一息の境地だろう。日経平均株価は154円安の15320円と4日続落。米久、カルビーが上昇。図研、ダイヘンが下落。

6日(水)
トヨタの第1四半期は7年ぶり最高益を更新。マブチは一転増益見通しになり配当を過去最高の予定。クボタ、ダイキン、文化シャッターが最高益を更新する。決算発表には「最高」ばかりが目立ってきた。全体の54.55の発表が終わった。4〜6月期の売上高は4.9%増、経常利益は7.3%増、純利益は11.7%増。通期は売上高3.2%増、経常利益3.3%増、純利益7.1%増。大企業2446社に対しての日経調査での設備投資動向は15%増。24年ぶりの高水準となった。維持・補修が全体の3割とはいえ、増えていることは事実。株価とのチグハグさは否めない。消費増税の影響が懸念される4〜6月のGDPの発表は来週水曜。2ケタ近い減少が予想されている。7〜9月の様子を見ながら来年の追加増税を決めるというのが永田町。もし回復しなければ追加増税見送り。どうしても追加増税するなら、なりふり構わぬ景気対策。この2者選択ならば、どちらに転んでも相場に悪影響は及ぼさない。ここも見えないフリだろうか。日経平均は5日続落で6月27日以来の水準まで下落。2日連続で25日線を下回った。昨日までの4日で487円の下落。前日までの5日で647円の下落。あと一歩で1月高値に手が届くところまで行ったが、届かないとこうなるケースは多い。 東証1部の新安値銘柄数(31)は新高値銘柄数(23)を上回った。これは5月21日以来、2ヵ月半ぶり。因みに日経平均は5月21日に13964円で底打ち。1795円上昇し7月31日の15759円で反落。75日線14931円がサポートにはなっているが、とりあえずは25日移動平均線15379円の復活が責務だろう。日経平均株価は160円安の15159円と5日続落。電子材料、バンナム、ハピネットが上昇。サニックス、太平金が下落。

7日(木)
ここ数ヶ月は「SQ当日の寄り付きを安値にその後反発」というのがセオリー。だとすると安部政権発足以来の6日続落も覚悟しながら、それ以降に期待というところか。ただ、今年のSQは2月の1.35円高を除いてすべて前日比マイナス。1月95円、3月386円、4月407円、5月58円、6月165円、7月132円。裁定の買い残は482億円増加して3兆479億円。空売り比率の31%依然情けない。ただ東証1部の騰落レシオは80.96%まで低下。こいつだけは裏切ることが少ないもの。過熱圏でのオーバーシュートはしばしば散見するが閑散圏では指標性が高い。ここ数日の「妖怪ウォッチ」ブーム。市場では「妖怪だけに真夏にピッタリのテーマとして投機筋の人気を集めそうだ」の声。 この洒落マインドを見ると、そう痛めつけられてもいない気がする。9月9日にアップルのi−Phone6が発表されるのではないかとの観測。i−Phone5sの発表は2013年9月10日、発売は20日(金)。i−Phone5の発表は2012年9月11日、発売は21日(金)。要は毎年9月上旬の火曜日に発表して中旬の金曜日に発売という動き。だったら、9月にはまたアップル関連の相場の可能性は高い。そして、i−Phone6については、相当進化するとの観測。アップル効果が再燃するかどうかは、夏の妖怪よりは楽しそうな気がする。日経平均採用銘柄のPERは14.59倍、PBRは1.25倍。東証2部採用銘柄のPERは14.90倍、PBRは0.89倍。これを割安感という市場関係者も多い。東証1部全銘柄の株式益回りは6.47%。前期基準の6.3%よりも良い。日経平均株価は72円高の15232円と6日ぶりに反発。明治HD、青木あすなろが上昇、マーベラス、DeNAが下落。

8日(金)
今朝の日経1面では「かんぽ生命、株投資拡大、4〜6月2300億円増」の見出し。国内株式への投資を拡大。今年度中にさらに1000億円程度積み増す可能性があるという。かんぽ生命の6月末の国内株式保有残高は約6500億円。3月末は4170億円だった。そう考えると4〜6月の2300億円の買いは大きい。そして、5月21日以降の信託経由の買い主体はやはりかんぽだった。憶測がようやく正体をキチンと現した格好。しかもかんぽ生命の総資産は約87兆円。かんぽ生命の国内株式試算は全体の1%にもならない。そして日本郵政の08年3月末の保有国内株式は約1兆8000億円。10年3月末にはわずか1000億円だった。株を買い増す主体としては、最高の存在でもある。そしてやはり「官製相場」の様相。「国策に逆らわず」はアベノミクス相場では大前提ということを再確認。成長戦略に相場が反応しなければ、年金と郵政での実需買い。政策に需要の創造が加わるのだから怖いものなし。これほど明確な相場主体はいない。「主役は誰ですか」という質問に対する答えは「国家です」。年金や郵政を駆使した株高演出の先にあるものは、きっと郵政のIPO。NTT以来の国策相場の到来の可能性は高い。折りしも、昨日「郵政の主幹事証券を10社選定」を決定。来年秋の上場に向けての壮大な相場が来ると決め撃ちしたい。となるとウクライナだとか、HFTの功罪だとか、ましてやSQに向けての売買などは目先の些事。踊ろうとしている誘惑には踊ることがアリかも知れない。「きっと壮大な相場がやって来る」と声も聞かれる。課題は消費税。しかし選択肢は2つ。一つは当然ながら、来年の追加引き上げ見送り。これをマーケットは好感する。もう一つは、追加引上げのためのなりふり構わぬ政策オンパレード。これもマーケットは好感する。どちらに転んでも好感シナリオというのは、曲解ではなかろう。ただ日経平均は450円超の下落。ドル/円は101円台後半まで円高トレンド。10年債利回りは一時0.505%と4月以来の低水準。背景はオバマ米大統領の発言。「イラクにいる米国人を守るため、限定的な空爆の実施を承認した」。その他にも政府高官のコメント。「現地の米国民や機関への脅威と認めれば、イラクのいかなる場所にも空爆を行う用意がある。これは(イラク北部のクルド人自治区の中心都市)アルビルにいる米国民、バグダッドの米国民や米大使館にも適用される。米国民や機関への脅威となる動きが、イラクのいかなる場所であっても、それらを保護する行動を取る準備がある」。一方でウクライナ軍はMiG─29型戦闘機がロシアとの国境から約100キロの地点にあるホルリフカ近辺で親ロシア派により撃墜されたとコメント。そしてマレーシア航空株は非公開化などの方向性を理由に売買停止。
因みに日経平均株価の400円以上の下落は5月7日の424円安以来。その前は3月14日の488円安。2月4日の489円安があった。因みに日経平均株価は後場寄り後も75日線14944円、200日線14956円を下回って推移。25日線からのマイナス5%乖離は14588円。「オバマショック」という表現がされるのであればやや物足らなさが残る。それでも「オバマショック」と呼ぶならば往時のバブル相場前のブラックマンデーに呼応すると考えたい。おまけのような話題は日銀金融政策決定会合。金融政策の現状維持を全員一致で決定した。マネタリーベースが年間約60〜70兆円に相当するペースで増加方向も不変。景気判断は「緩やかな回復を続けている」で据え置き。何の変化もないし、話題にもならない。そしてオプションSQの暫定値は15036.83円。7月の14084円を下回ったし、昨日の引け値からは196円安水準。久々に終値ベースで下にマイナスのSQ。ただし、6月のメジャーSQ値14807円を上回っている。ということは、SQトレンドは上向きであり下げは一時的と言う解釈もアリだろう。日経平均株価は454円安の14778円と続落。フジシール、蛇の目が上昇。ロート、鬼ゴムが下落。

(2) 欧米動向

興味深かったのは4日付けのフィナンシャルタイムズ電子版。
見出しは「日経観測が東京市場のホームアドバンテージに拍車」。
決算前の業績観測報道に対して「普通の国なら規制当局が文句を言うが、
日本は黙認か」」との記事。
考えようによっては、ホームアドバンテージに対する嫉みの表現。
ジャパンパッシングから時代は変わったとも読める。
少なくとも気にかけられるようになったと考えたいもの。
ただ・・・。
今朝の日経では「欧州取引所、株価指数で稼ぐ」の見出し。
「取引所ビジネスは資産運用との連携と睨んだ金融・情報産業の色彩が濃くなっている。

ドイツ取引所ではドイツ主要企業の現物株の売買手数料は1割以下。
企業調査のコストや手数料の低い指数に連動した運用が普及したことが背景。
個別株の売買には資金が向かいにくい」。
ホームアドバンテージへの文句と現物回避型の資金運用。
相反した事柄が同居しているのもマーケット。
ただ、欧米金融界で起こったことはいずれ東京にも伝播してきたのが歴史。
市場はさらに無機質化しつまらなくなるのだろうか。
とうか・・・。
合成の誤謬の結果である虚構の指数を売買することが資金運用。
ここがどうも腑に落ちない。

8月。
1896年以降のNYダウの月間騰落率は平均プラス1.13%で4番目。
1位7月(1.46%)、2位12月(1.43%)、3位4月(1,21%)。
5位1月(0.94%)、6位11月(0.94%)。
だったら悪くはないのだが、直近は13年マイナス4.44%、12年マイナス0.63%。
11年はマイナス4.36%、10年マイナス4.31%。
ここ4年はマイナスの月。
目先が勝つか歴史が勝つかの葛藤の月でもある。
過去数年の8月に話題になったのはジャクソンホール。
ホールがある訳ではない。
カンザスシティ連銀がワイオミング州で開催する年次経済シンポジウムの場所のこと。

今年は22〜24日頃に開催と目されている。
今年のテーマは「労働市場の力学の再評価」。
よくわからないが、25日が新月だから何らかのリアクションはありそうな気配。

(3)アジア・新興国動向

中国市場の堅調さはロシアからの資金逃避の結果という指摘も聞かれる。世界中がリスクオフになっているのに独歩高と言うのは結構奇異な話に聞こえる。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・

11日(月)マネーストック、消費動向調査、タイ休場
12日(火)企業物価指数、米財政収支、3年国債入札、独ZEW景況感
13日(水)4〜6月GDP、米小売売上高、10年国債入札、中国各種経済統計
14日(木)機械受注、首都圏マンション販売、米輸入物価、30年国債入札、ユーロ圏4〜6月GDP、ドイツ4〜6月GDP
15日(金)終戦記念日、米鉱工業生産、生産者物価、ミシガン大学消費者信頼感、NY連銀製造業景気指数、インド・韓国休場

NYはおそらく地政学リスクを表看板にした金利上昇リスクが株安要因。
しかし米国はたぶんインフレからデフレに向かう国。
逆にデフレからインフレに向かおうとする日本とは勢いが違うという指摘も聞かれる。

世界に先駆けて成熟国で適度なインフレを目指そうとする国はどう映るのだろうか。
そして地政学リスクは米国にとってはリスクでも、どうも東京にとってはそうでもない気配。
みんなが騒ぐから、こちらも騒ぐというのでは節操がないし、スマートでない。
相場でよく起きるのは事実と解釈のすれ違い。
多くの場合、解釈を重視して事実は軽視される。
しかし、本来、解釈は他力本願的且つ責任逃避的いい加減さの賜物。
大事にしたいのは、事実とその延長線上にある着実なシナリオ。
荒唐無稽とも言えるネガシナリオに縛られると、また行方を見誤るのではなかろうか。

「リーマンショックは買いだった」というのが、今の感想。
ガス抜き、玉整理のためのホイッスルが鳴ったなら・・・。
炎のような投資家になるべきだったというのが経験則。
ブラックマンデーのように万が一オバマショックが訪れるのならそれは千載一遇の好機。
そういう解釈はないからこそ、解釈を重視しない姿勢が大切になるのだろう。



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