[8132]シナネンホールディングス
[09月27日更新]
シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループの持株会社である。第3次中期経営計画では成長戦略として事業ポートフォリオ変革や資本効率改善などを掲げている。9月26日には全国のミライフで、クレジット購入によってCO2排出量を実質ゼロとする「ミライフカーボンニュートラルLPガス」の販売を開始した。24年3月期は大幅増益予想としている。電力事業の価格改定効果によって下期に大幅な収益回復を見込んでいる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏だ。そして05年の高値に接近している。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。
■グローバル総合エネルギーサービス企業グループ
脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループの持株会社である。事業区分はエネルギー関連のエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)、および非エネルギー事業としている。国内LPガス流通事業者として国内3位規模である。
23年3月期は、BtoC事業の売上高(外部顧客への売上高)が販売単価の上昇で22年3月期比11.3%増の814億19百万円だが営業利益(全社費用等調整前)が電力調達コストの上昇で85.5%減の1億50百万円、BtoB事業の売上高が販売単価の上昇で22.0%増の2412億51百万円だが営業利益が電力調達コストの上昇で3億46百万円の赤字(22年3月期は5億73百万円の黒字)だった。非エネルギー事業は自転車事業やシェアサイクル事業の拡大で売上高が6.9%増の193億54百万円、営業利益が4.3倍の8億56百万円だった。なおLPガス・灯油販売は冬場が需要期となるため、収益は下期(特に第4四半期)に偏重する季節特性がある。
■BtoC事業
BtoC事業(エネルギー卸・小売周辺事業)は主に子会社のミライフ、ミライフ西日本、およびミライフ東日本が、家庭向け・小売事業者向けLPガスなど各種燃料の卸売・小売事業、リフォーム・ガス器具販売などの家庭向けエネルギー周辺事業、家庭向け電力販売事業、都市ガス供給事業、LPガス保安および配送事業などを行っている。
■BtoB事業
BtoB事業(エネルギーソリューション事業)は主に子会社のシナネンが、大口需要家向け石油製品・LPガスなど各種燃料卸売事業、ガソリンスタンド運営事業、電源開発および法人向け電力販売事業、太陽光発電システム販売および周辺サービス事業、省エネソリューション事業、住宅関連設備事業、国内外での再生可能エネルギー事業を行っている。マイクロ風車関連事業は21年3月末にさいたま市で実証実験を開始し、22年3月期下期には積雪地帯の北海道札幌市など多様な環境での実証実験を開始している。
23年1月には、オフサイトコーポレートPPAの仕組みを活用し、子会社のシナネンが新設する太陽光発電所で調達する再生エネルギー由来の電力を、東京アライドコーヒーロースターズの横浜焙煎サイトに提供することで合意した。温室効果ガス排出量の削減効果(非化石証書含む)は年間約1334トンとなる見込みだ。23年5月には、オフサイトコーポレートPPAの仕組みを活用し、子会社シナネンが新設する太陽光発電所で調達する再生可能エネルギー由来の電力をグローブライドの本社および東京工場に供給すると発表した。温室効果ガス排出量の削減効果(非化石証書含む)は年間約3600トンとなる見込みだ。
■非エネルギーおよび海外事業
非エネルギー・海外事業は、シナネンモビリティPLUSのシェアサイクル「ダイチャリ」事業、シナネンサイクルの自転車販売事業(小売店舗「ダイシャリン」および卸売事業)、シナネンエコワークの環境・廃棄物処理リサイクル事業(木質系チップ等)、シナネンゼオミックの抗菌事業(銀系無機抗菌剤ゼオライト製造・販売)、ミノスのITシステム事業(国内LPガス・電力小売事業者向け顧客管理システム)、および建物維持管理事業(首都圏・中京圏を主な事業エリアとするビル・病院・集合住宅等の維持・管理・清掃サービス等)などを展開している。23年10月には建物維持管理事業4社(タカラビルメン、インデス、ガスシステム、サンフィール)を統合して総合建物メンテナンス会社シナネンアクシアを設立する。
なお、韓国における大型陸上風力発電事業(ファスンプロジェクト)については、子会社のDONG BOK ENERGY(ドンボクエナジー)社を通じて21年度下期中の商業運転開始を目指していたが、許認可取得が当初計画から遅れたため、商業運転開始時期を未定に変更(21年10月8日付リリース)した。その後、22年12月に建設予定地の都市計画条例が改訂され、陸上風力発電設備設置範囲が厳格化されたため、計画および開発が著しく困難になったと判断し、23年3月期第3四半期にDONG BOK ENERGYが保有する固定資産の減損処理を行った。今後は事業の売却可能性を含めて関係各所との折衝を進める方針としている。また、ブラジルにおけるバイオマス事業については撤退を決定したが、新たなバイオマス事業への展開を検討している。
シェアサイクル「ダイチャリ」事業は、OpenStreetが提供するシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」を活用して、シナネンモビリティPLUSが首都圏1都3県および大阪府を中心に展開している。23年3月末時点でステーション数は全国3100ヶ所超、設置自転車数は1万台超に達し、国内有数の規模となっている。そして、23年3月期第4四半期の利用者数は前年同期比38.7%増加、利用回数は24.4%増加と拡大している。
■創業100周年の28年3月期にROE8%以上を目指す
第3次中期経営計画(24年3月期〜28年3月期)では目標数値に、創業100周年となる28年3月期ROE8%以上、経常利益100億円を掲げている。株主還元については、配当性向30%を目安に、1株当たり年間配当75円を下限とした安定配当を維持し、中期的には配当性向40%への引き上げを目指す。また非財務目標としては、脱炭素社会に対応した事業構造への転換、社員の市場価値の向上を掲げている。
成長に向けた基本戦略としては事業ポートフォリオの変革、資本効率の改善、風土改革・働き方改革のさらなる推進、人財育成の推進や人財適正配置の実現、業務効率化・標準化による生産性向上、グループ経営体制の強化を推進する。既存事業のオーガニック成長に加えて、M&Aも活用して脱炭素社会に寄与する新規事業(再生可能エネルギー、廃棄物資源化、環境負荷が低い新燃料製造・供給、住宅・建物の脱炭素化)でさらなる成長・収益性向上を図る方針だ。
事業ポートフォリオ転換では、電気・環境ソリューション事業やライフクリエイト事業を中心に成長領域を特定して経営資源を集中投下する。成長性や収益性の低い事業の撤退・売却を推進する一方で、第3次中期経営計画期間中に新規事業の創出・利益化を実現する。28年3月期までの事業ポートフォリオ変革投資は500億円規模の計画としている。
BtoC事業では、エネルギー事業における顧客数の拡大や、住まいと暮らし事業における高付加価値サービスの拡充などにより、高収益化を推進する。さらに新規事業創出プロジェクトによって事業領域拡大を目指す。
BtoB事業では、石油中心から電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへのポートフォリオ転換を目指し、バイオマス燃料・水素・アンモニア等の販売事業およびEV蓄電池事業の開発、海外における再生可能エネルギー事業展開なども推進する。
非エネルギー事業は、建物維持管理事業では、事業会社4社の統合(23年10月予定)によるワンストップサービス実現で、安定収益の確保および利益率の向上を目指す。シェアサイクル事業では、高収益エリアでのステーション開拓を中心に収益力向上を図るとともに、新たなモビリティサービス事業の開発などにより新たな収益源の創出を目指す。
23年6月には、EVのワイヤレス充電システムを開発・販売する米国WiTricityと、日本市場での協力関係に関する基本合意書締結を発表した。子会社シナネンがWiTricity製品の日本国内への輸入から一般向けへの販売業務を目指すほか、グループ会社のリソースを活用して既存EV車両へのレシーバーの設置、ウォールボックスおよび送電パッドを兼ね備えた充電所の設置・普及なども推進する。
なお、第3次中期経営計画の期間中にセグメント区分を石油・ガス事業、ライフクリエイト事業、電気・環境ソリューション事業に変更し、28年3月期の売上総利益構成比の目標は石油・ガス事業53%、ライフクリエイト事業33%、電気・環境ソリューション事業14%(23年3月期実績は石油・ガス事業69%、ライフクリエイト事業29%、電気・環境ソリューション事業2%)としている。
■サステナビリティ経営
サステナビリティ経営関連では、22年5月にサステナビリティ基本方針を策定してサステナビリティ推進委員会を設置した。22年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明し、賛同企業・団体などで構成されるTCFDコンソーシアムに参画した。22年7月には環境保全活動・社会貢献活動の一環として、一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団と事業別スポンサー契約を締結し、森林整備事業の支援を開始した。
23年3月には「シナネンホールディングス統合報告書2022」がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の国内株式運用機関が選ぶ「改善度の高い統合報告書」に選出された。また、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。23年4月には働き方改革の一環として、副業制度、70歳までの再雇用制度、育児休業中の学習支援、自己都合退職者再雇用制度(アルムナイ制度)、治療と仕事の両立支援という5つの人事制度を新たに導入した。
23年5月には、慶應義塾大学大学院・未来社会共創イノベーション研究室、一般社団法人諏訪広域脱炭素イノベーション協会(長野県諏訪市)と、カーボンニュートラル・ウエルビーイングによる地域価値向上に向けた協業に関する基本合意書を締結した。23年8月にはデジタルリテラシー協議会が定義したデジタル人材育成への取り組み方針に賛同を表明し、同協議会の賛同企業に登録された。
■24年3月期大幅増益予想
24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比5.2%増の3600億円、営業利益が123.2%増の20億円、経常利益が87.3%増の23億円、親会社株主帰属当期純利益が171.5%増の13億円としている。配当予想は23年3月期と同額の75円(期末一括)としている。予想配当性向は63.0%となる。
原油価格高騰が一服して小幅増収となり、引き続きIT関連投資を含む支払手数料や人件費が増加するが、電力事業やLPガス事業の料金改定などで大幅増益予想としている。電力事業については期初より価格改定を実施し、下期の大幅な収益回復を見込んでいる。
なお営業利益11.1億円増益の内訳は、BtoC事業+5.1億円(ガス+8億円、電力+3億円、人件費等増加▲2億円、物流関係費等増加▲3億円)、BtoB事業+6.6億円(電力+21億円、石油▲8億円、人件費等増加▲2億円、物流関係費等増加▲3億円)、非エネルギー事業+0.8億円、その他・調整額▲1.5億円としている。親会社株主帰属当期純利益については、前期計上の韓国大型風力発電事業関連の減損損失一巡も寄与する。第3次中期経営計画では創業100周年の28年3月期の目標にROE8%以上、経常利益100億円を掲げている。
第1四半期は売上高が前年同期比0.3%増の713億93百万円、営業利益が7億18百万円の損失(前年同期は50百万円の損失)、経常利益が4億79百万円の損失(同3億25百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が3億61百万円の損失(同16億40百万円の利益)だった。
石油類と電力の販売数量増加などで小幅増収だが、前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことに加え、電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失が拡大した。なお特別利益では前期計上の固定資産売却益22億51百万円が剥落した。
エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は、売上高(外部顧客への売上高)が4.7%減の152億17百万円、営業利益(全社費用等調整前)が3億16百万円(前年同期は1億37百万円の損失)だった。売上面は、主力のLPガス・灯油販売の販売数量が前年並みだったが、電力事業において取引条件見直しに伴って一部顧客の離脱があった影響で減収だった。利益面はLPガス販売において前期に実施した価格改定効果などで増益だった。
エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は、売上高が0.9%増の509億47百万円、営業利益が11億76百万円の損失(同93百万円の利益)だった。売上面は電力事業における大口顧客獲得などにより小幅増収だが、利益面は前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことに加え、電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失だった。
非エネルギー事業は売上高が10.9%増の51億72百万円、営業利益が2.2倍の2億70百万円だった。自転車事業(シナネンサイクル)は前期後半から実施した価格改定や大手法人向けコンテナ販売などで増収増益だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)はシェアサイクルサービス「ダイチャリ」の拠点開発などで増収だが、前期の一過性収益の剥落で減益だった。23年6月末時点のステーション数は3200ヶ所超、設置自転車数は1万台超の規模となった。環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)は主力の「木くずリサイクル」が伸長したが、新たな環境関連事業の開発に向けた投資により、全体として前年並みだった。抗菌事業(シナネンゼオミック)は中国の景気低迷に起因する需要減少で減収減益だった。システム事業(ミノス)はLPガス基幹業務システムが安定的に推移して増収増益だった。建物維持管理事業(タカラビルメンなど)は施設運営業務が好調に推移して増収増益だった。なお建物維持管理事業を手掛けるグループ4社を23年10月に統合する。
通期の大幅増益予想は据え置いている。第1四半期は営業損失が拡大したが、期初より進めている電力事業の価格改定効果により、下期に大幅な収益回復を見込んでいる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は年初来高値圏だ。そして05年の高値に接近している。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。9月26日の終値は4115円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS119円22銭で算出)は約35倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4902円63銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約537億円である。(
情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
[09月04日更新]
シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループの持株会社である。第3次中期経営計画では成長戦略として事業ポートフォリオ変革や資本効率改善などを掲げている。24年3月期は大幅増益予想としている。第1四半期は電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したが、期初より進めている電力事業の価格改定効果により、下期に大幅な収益回復を見込んでいる。積極的な事業展開により、通期ベースでは収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。そして05年の高値にも接近している。1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■グローバル総合エネルギーサービス企業グループ
脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループの持株会社である。事業区分はエネルギー関連のエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)、および非エネルギー事業としている。国内LPガス流通事業者として国内3位規模である。
23年3月期は、BtoC事業の売上高(外部顧客への売上高)が販売単価の上昇で22年3月期比11.3%増の814億19百万円だが営業利益(全社費用等調整前)が電力調達コストの上昇で85.5%減の1億50百万円、BtoB事業の売上高が販売単価の上昇で22.0%増の2412億51百万円だが営業利益が電力調達コストの上昇で3億46百万円の赤字(22年3月期は5億73百万円の黒字)だった。非エネルギー事業は自転車事業やシェアサイクル事業の拡大で売上高が6.9%増の193億54百万円、営業利益が4.3倍の8億56百万円だった。なおLPガス・灯油販売は冬場が需要期となるため、収益は下期(特に第4四半期)に偏重する季節特性がある。
■BtoC事業
BtoC事業(エネルギー卸・小売周辺事業)は主に子会社のミライフ、ミライフ西日本、およびミライフ東日本が、家庭向け・小売事業者向けLPガスなど各種燃料の卸売・小売事業、リフォーム・ガス器具販売などの家庭向けエネルギー周辺事業、家庭向け電力販売事業、都市ガス供給事業、LPガス保安および配送事業などを行っている。
■BtoB事業
BtoB事業(エネルギーソリューション事業)は主に子会社のシナネンが、大口需要家向け石油製品・LPガスなど各種燃料卸売事業、ガソリンスタンド運営事業、電源開発および法人向け電力販売事業、太陽光発電システム販売および周辺サービス事業、省エネソリューション事業、住宅関連設備事業、国内外での再生可能エネルギー事業を行っている。マイクロ風車関連事業は21年3月末にさいたま市で実証実験を開始し、22年3月期下期には積雪地帯の北海道札幌市など多様な環境での実証実験を開始している。
23年1月には、オフサイトコーポレートPPAの仕組みを活用し、子会社のシナネンが新設する太陽光発電所で調達する再生エネルギー由来の電力を、東京アライドコーヒーロースターズの横浜焙煎サイトに提供することで合意した。温室効果ガス排出量の削減効果(非化石証書含む)は年間約1334トンとなる見込みだ。23年5月には、オフサイトコーポレートPPAの仕組みを活用し、子会社シナネンが新設する太陽光発電所で調達する再生可能エネルギー由来の電力をグローブライドの本社および東京工場に供給すると発表した。温室効果ガス排出量の削減効果(非化石証書含む)は年間約3600トンとなる見込みだ。
■非エネルギーおよび海外事業
非エネルギー・海外事業は、シナネンモビリティPLUSのシェアサイクル「ダイチャリ」事業、シナネンサイクルの自転車販売事業(小売店舗「ダイシャリン」および卸売事業)、シナネンエコワークの環境・廃棄物処理リサイクル事業(木質系チップ等)、シナネンゼオミックの抗菌事業(銀系無機抗菌剤ゼオライト製造・販売)、ミノスのITシステム事業(国内LPガス・電力小売事業者向け顧客管理システム)、および建物維持管理事業(首都圏・中京圏を主な事業エリアとするビル・病院・集合住宅等の維持・管理・清掃サービス等)などを展開している。23年10月には建物維持管理事業4社(タカラビルメン、インデス、ガスシステム、サンフィール)を統合して総合建物メンテナンス会社シナネンアクシアを設立する。
なお、韓国における大型陸上風力発電事業(ファスンプロジェクト)については、子会社のDONG BOK ENERGY(ドンボクエナジー)社を通じて21年度下期中の商業運転開始を目指していたが、許認可取得が当初計画から遅れたため、商業運転開始時期を未定に変更(21年10月8日付リリース)した。その後、22年12月に建設予定地の都市計画条例が改訂され、陸上風力発電設備設置範囲が厳格化されたため、計画および開発が著しく困難になったと判断し、23年3月期第3四半期にDONG BOK ENERGYが保有する固定資産の減損処理を行った。今後は事業の売却可能性を含めて関係各所との折衝を進める方針としている。また、ブラジルにおけるバイオマス事業については撤退を決定したが、新たなバイオマス事業への展開を検討している。
シェアサイクル「ダイチャリ」事業は、OpenStreetが提供するシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」を活用して、シナネンモビリティPLUSが首都圏1都3県および大阪府を中心に展開している。23年3月末時点でステーション数は全国3100ヶ所超、設置自転車数は1万台超に達し、国内有数の規模となっている。そして、23年3月期第4四半期の利用者数は前年同期比38.7%増加、利用回数は24.4%増加と拡大している。
23年8月には小売店舗「ダイシャリン」の一部店舗において、日本初登場となる電動アシスト自転車「Gmigo One」の取り扱いを開始した。
■創業100周年の28年3月期にROE8%以上を目指す
23年5月に策定した第3次中期経営計画(24年3月期〜28年3月期)では、経営目標数値に創業100周年となる28年3月期ROE8%以上、経常利益100億円を掲げた。株主還元については、配当性向30%を目安に、1株当たり年間配当75円を下限とした安定配当を維持し、中期的には配当性向40%への引き上げを目指す。また非財務目標としては、脱炭素社会に対応した事業構造への転換、社員の市場価値の向上を掲げている。
成長に向けた基本戦略としては事業ポートフォリオの変革、資本効率の改善、風土改革・働き方改革のさらなる推進、人財育成の推進や人財適正配置の実現、業務効率化・標準化による生産性向上、グループ経営体制の強化を推進する。既存事業のオーガニック成長に加えて、M&Aも活用して脱炭素社会に寄与する新規事業(再生可能エネルギー、廃棄物資源化、環境負荷が低い新燃料製造・供給、住宅・建物の脱炭素化)でさらなる成長・収益性向上を図る方針だ。
事業ポートフォリオ転換では、電気・環境ソリューション事業やライフクリエイト事業を中心に成長領域を特定して経営資源を集中投下する。成長性や収益性の低い事業の撤退・売却を推進する一方で、第3次中期経営計画期間中に新規事業の創出・利益化を実現する。28年3月期までの事業ポートフォリオ変革投資は500億円規模の計画としている。
BtoC事業では、エネルギー事業における顧客数の拡大や、住まいと暮らし事業における高付加価値サービスの拡充などにより、高収益化を推進する。さらに新規事業創出プロジェクトによって事業領域拡大を目指す。
BtoB事業では、石油中心から電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへのポートフォリオ転換を目指し、バイオマス燃料・水素・アンモニア等の販売事業およびEV蓄電池事業の開発、海外における再生可能エネルギー事業展開なども推進する。
非エネルギー事業は、建物維持管理事業では、事業会社4社の統合(23年10月予定)によるワンストップサービス実現で、安定収益の確保および利益率の向上を目指す。シェアサイクル事業では、高収益エリアでのステーション開拓を中心に収益力向上を図るとともに、新たなモビリティサービス事業の開発などにより新たな収益源の創出を目指す。
23年6月には、EVのワイヤレス充電システムを開発・販売する米国WiTricityと、日本市場での協力関係に関する基本合意書締結を発表した。子会社シナネンがWiTricity製品の日本国内への輸入から一般向けへの販売業務を目指すほか、グループ会社のリソースを活用して既存EV車両へのレシーバーの設置、ウォールボックスおよび送電パッドを兼ね備えた充電所の設置・普及なども推進する。
なお、第3次中期経営計画の期間中にセグメント区分を石油・ガス事業、ライフクリエイト事業、電気・環境ソリューション事業に変更し、28年3月期の売上総利益構成比の目標は石油・ガス事業53%、ライフクリエイト事業33%、電気・環境ソリューション事業14%(23年3月期実績は石油・ガス事業69%、ライフクリエイト事業29%、電気・環境ソリューション事業2%)としている。
■サステナビリティ経営
サステナビリティ経営関連では、22年5月にサステナビリティ基本方針を策定してサステナビリティ推進委員会を設置した。22年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明し、賛同企業・団体などで構成されるTCFDコンソーシアムに参画した。22年7月には環境保全活動・社会貢献活動の一環として、一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団と事業別スポンサー契約を締結し、森林整備事業の支援を開始した。
23年3月には「シナネンホールディングス統合報告書2022」がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の国内株式運用機関が選ぶ「改善度の高い統合報告書」に選出された。また、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。23年4月には働き方改革の一環として、副業制度、70歳までの再雇用制度、育児休業中の学習支援、自己都合退職者再雇用制度(アルムナイ制度)、治療と仕事の両立支援という5つの人事制度を新たに導入した。
23年5月には、慶應義塾大学大学院・未来社会共創イノベーション研究室、一般社団法人諏訪広域脱炭素イノベーション協会(長野県諏訪市)と、カーボンニュートラル・ウエルビーイングによる地域価値向上に向けた協業に関する基本合意書を締結した。
23年8月にはデジタルリテラシー協議会が定義したデジタル人材育成への取り組み方針に賛同を表明し、同協議会の賛同企業に登録された。
■24年3月期大幅増益予想
24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比5.2%増の3600億円、営業利益が123.2%増の20億円、経常利益が87.3%増の23億円、親会社株主帰属当期純利益が171.5%増の13億円としている。配当予想は23年3月期と同額の75円(期末一括)としている。予想配当性向は63.0%となる。
原油価格高騰が一服して小幅増収となり、引き続きIT関連投資を含む支払手数料や人件費が増加するが、電力事業やLPガス事業の料金改定などで大幅増益予想としている。電力事業については期初より価格改定を実施し、下期の大幅な収益回復を見込んでいる。
なお営業利益11.1億円増益の内訳は、BtoC事業+5.1億円(ガス+8億円、電力+3億円、人件費等増加▲2億円、物流関係費等増加▲3億円)、BtoB事業+6.6億円(電力+21億円、石油▲8億円、人件費等増加▲2億円、物流関係費等増加▲3億円)、非エネルギー事業+0.8億円、その他・調整額▲1.5億円としている。親会社株主帰属当期純利益については、前期計上の韓国大型風力発電事業関連の減損損失一巡も寄与する。第3次中期経営計画では創業100周年の28年3月期の目標にROE8%以上、経常利益100億円を掲げている。
第1四半期は売上高が前年同期比0.3%増の713億93百万円、営業利益が7億18百万円の損失(前年同期は50百万円の損失)、経常利益が4億79百万円の損失(同3億25百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が3億61百万円の損失(同16億40百万円の利益)だった。
石油類と電力の販売数量増加などで小幅増収だが、前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことに加え、電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失が拡大した。なお特別利益では前期計上の固定資産売却益22億51百万円が剥落した。
エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は、売上高(外部顧客への売上高)が4.7%減の152億17百万円、営業利益(全社費用等調整前)が3億16百万円(前年同期は1億37百万円の損失)だった。売上面は、主力のLPガス・灯油販売の販売数量が前年並みだったが、電力事業において取引条件見直しに伴って一部顧客の離脱があった影響で減収だった。利益面はLPガス販売において前期に実施した価格改定効果などで増益だった。
エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は、売上高が0.9%増の509億47百万円、営業利益が11億76百万円の損失(同93百万円の利益)だった。売上面は電力事業における大口顧客獲得などにより小幅増収だが、利益面は前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことに加え、電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失だった。
非エネルギー事業は売上高が10.9%増の51億72百万円、営業利益が2.2倍の2億70百万円だった。自転車事業(シナネンサイクル)は前期後半から実施した価格改定や大手法人向けコンテナ販売などで増収増益だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)はシェアサイクルサービス「ダイチャリ」の拠点開発などで増収だが、前期の一過性収益の剥落で減益だった。23年6月末時点のステーション数は3200ヶ所超、設置自転車数は1万台超の規模となった。環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)は主力の「木くずリサイクル」が伸長したが、新たな環境関連事業の開発に向けた投資により、全体として前年並みだった。抗菌事業(シナネンゼオミック)は中国の景気低迷に起因する需要減少で減収減益だった。システム事業(ミノス)はLPガス基幹業務システムが安定的に推移して増収増益だった。建物維持管理事業(タカラビルメンなど)は施設運営業務が好調に推移して増収増益だった。なお建物維持管理事業を手掛けるグループ4社を23年10月に統合する。
通期の大幅増益予想は据え置いている。第1四半期は営業損失が拡大したが、期初より進めている電力事業の価格改定効果により、下期に大幅な収益回復を見込んでいる。積極的な事業展開により、通期ベースでは収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は年初来高値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。そして05年の高値にも接近している。1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。9月1日の終値は4060円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS119円22銭で算出)は約34倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4902円63銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約530億円である。 (
情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
[08月21日更新]
シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループの持株会社である。第3次中期経営計画では成長戦略として事業ポートフォリオ変革や資本効率改善などを掲げている。8月10日にはデジタルリテラシー協議会が定義したデジタル人材育成への取り組み方針に賛同を表明し、同協議会の賛同企業に登録されたと発表している。24年3月期第1四半期は電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失が拡大した。ただし通期の大幅増益予想を据え置いた。電力事業の価格改定効果により、下期に大幅な収益回復を見込んでいる。積極的な事業展開により通期ベースでの収益拡大を期待したい。株価は年初来高値圏だ。第1四半期業績に対する反応は限定的だった。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■グローバル総合エネルギーサービス企業グループ
脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループの持株会社である。事業区分はエネルギー関連のエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)、および非エネルギー事業としている。国内LPガス流通事業者として国内3位規模である。
23年3月期は、BtoC事業の売上高(外部顧客への売上高)が販売単価の上昇で22年3月期比11.3%増の814億19百万円だが営業利益(全社費用等調整前)が電力調達コストの上昇で85.5%減の1億50百万円、BtoB事業の売上高が販売単価の上昇で22.0%増の2412億51百万円だが営業利益が電力調達コストの上昇で3億46百万円の赤字(22年3月期は5億73百万円の黒字)だった。非エネルギー事業は自転車事業やシェアサイクル事業の拡大で売上高が6.9%増の193億54百万円、営業利益が4.3倍の8億56百万円だった。なおLPガス・灯油販売は冬場が需要期となるため、収益は下期(特に第4四半期)に偏重する季節特性がある。
■BtoC事業
BtoC事業(エネルギー卸・小売周辺事業)は主に子会社のミライフ、ミライフ西日本、およびミライフ東日本が、家庭向け・小売事業者向けLPガスなど各種燃料の卸売・小売事業、リフォーム・ガス器具販売などの家庭向けエネルギー周辺事業、家庭向け電力販売事業、都市ガス供給事業、LPガス保安および配送事業などを行っている。
■BtoB事業
BtoB事業(エネルギーソリューション事業)は主に子会社のシナネンが、大口需要家向け石油製品・LPガスなど各種燃料卸売事業、ガソリンスタンド運営事業、電源開発および法人向け電力販売事業、太陽光発電システム販売および周辺サービス事業、省エネソリューション事業、住宅関連設備事業、国内外での再生可能エネルギー事業を行っている。マイクロ風車関連事業は21年3月末にさいたま市で実証実験を開始し、22年3月期下期には積雪地帯の北海道札幌市など多様な環境での実証実験を開始している。
23年1月には、オフサイトコーポレートPPAの仕組みを活用し、子会社のシナネンが新設する太陽光発電所で調達する再生エネルギー由来の電力を、東京アライドコーヒーロースターズの横浜焙煎サイトに提供することで合意した。温室効果ガス排出量の削減効果(非化石証書含む)は年間約1334トンとなる見込みだ。23年5月には、オフサイトコーポレートPPAの仕組みを活用し、子会社シナネンが新設する太陽光発電所で調達する再生可能エネルギー由来の電力をグローブライドの本社および東京工場に供給すると発表した。温室効果ガス排出量の削減効果(非化石証書含む)は年間約3600トンとなる見込みだ。
■非エネルギーおよび海外事業
非エネルギー・海外事業は、シナネンモビリティPLUSのシェアサイクル「ダイチャリ」事業、シナネンサイクルの自転車販売事業(小売店舗「ダイシャリン」および卸売事業)、シナネンエコワークの環境・廃棄物処理リサイクル事業(木質系チップ等)、シナネンゼオミックの抗菌事業(銀系無機抗菌剤ゼオライト製造・販売)、ミノスのITシステム事業(国内LPガス・電力小売事業者向け顧客管理システム)、および建物維持管理事業(首都圏・中京圏を主な事業エリアとするビル・病院・集合住宅等の維持・管理・清掃サービス等)などを展開している。23年10月には建物維持管理事業4社(タカラビルメン、インデス、ガスシステム、サンフィール)を統合して総合建物メンテナンス会社シナネンアクシアを設立する。
なお、韓国における大型陸上風力発電事業(ファスンプロジェクト)については、子会社のDONG BOK ENERGY(ドンボクエナジー)社を通じて21年度下期中の商業運転開始を目指していたが、許認可取得が当初計画から遅れたため、商業運転開始時期を未定に変更(21年10月8日付リリース)した。その後、22年12月に建設予定地の都市計画条例が改訂され、陸上風力発電設備設置範囲が厳格化されたため、計画および開発が著しく困難になったと判断し、23年3月期第3四半期にDONG BOK ENERGYが保有する固定資産の減損処理を行った。今後は事業の売却可能性を含めて関係各所との折衝を進める方針としている。また、ブラジルにおけるバイオマス事業については撤退を決定したが、新たなバイオマス事業への展開を検討している。
シェアサイクル「ダイチャリ」事業は、OpenStreetが提供するシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」を活用して、シナネンモビリティPLUSが首都圏1都3県および大阪府を中心に展開している。23年3月末時点でステーション数は全国3100ヶ所超、設置自転車数は1万台超に達し、国内有数の規模となっている。そして、23年3月期第4四半期の利用者数は前年同期比38.7%増加、利用回数は24.4%増加と拡大している。
■創業100周年の28年3月期にROE8%以上を目指す
23年5月に策定した第3次中期経営計画(24年3月期〜28年3月期)では、経営目標数値に創業100周年となる28年3月期ROE8%以上、経常利益100億円を掲げた。株主還元については、配当性向30%を目安に、1株当たり年間配当75円を下限とした安定配当を維持し、中期的には配当性向40%への引き上げを目指す。また非財務目標としては、脱炭素社会に対応した事業構造への転換、社員の市場価値の向上を掲げている。
成長に向けた基本戦略としては事業ポートフォリオの変革、資本効率の改善、風土改革・働き方改革のさらなる推進、人財育成の推進や人財適正配置の実現、業務効率化・標準化による生産性向上、グループ経営体制の強化を推進する。既存事業のオーガニック成長に加えて、M&Aも活用して脱炭素社会に寄与する新規事業(再生可能エネルギー、廃棄物資源化、環境負荷が低い新燃料製造・供給、住宅・建物の脱炭素化)でさらなる成長・収益性向上を図る方針だ。
事業ポートフォリオ転換では、電気・環境ソリューション事業やライフクリエイト事業を中心に成長領域を特定して経営資源を集中投下する。成長性や収益性の低い事業の撤退・売却を推進する一方で、第3次中期経営計画期間中に新規事業の創出・利益化を実現する。28年3月期までの事業ポートフォリオ変革投資は500億円規模の計画としている。
BtoC事業では、エネルギー事業における顧客数の拡大や、住まいと暮らし事業における高付加価値サービスの拡充などにより、高収益化を推進する。さらに新規事業創出プロジェクトによって事業領域拡大を目指す。
BtoB事業では、石油中心から電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへのポートフォリオ転換を目指し、バイオマス燃料・水素・アンモニア等の販売事業およびEV蓄電池事業の開発、海外における再生可能エネルギー事業展開なども推進する。
非エネルギー事業は、建物維持管理事業では、事業会社4社の統合(23年10月予定)によるワンストップサービス実現で、安定収益の確保および利益率の向上を目指す。シェアサイクル事業では、高収益エリアでのステーション開拓を中心に収益力向上を図るとともに、新たなモビリティサービス事業の開発などにより新たな収益源の創出を目指す。
23年6月には、EVのワイヤレス充電システムを開発・販売する米国WiTricityと、日本市場での協力関係に関する基本合意書締結を発表した。子会社シナネンがWiTricity製品の日本国内への輸入から一般向けへの販売業務を目指すほか、グループ会社のリソースを活用して既存EV車両へのレシーバーの設置、ウォールボックスおよび送電パッドを兼ね備えた充電所の設置・普及なども推進する。
なお、第3次中期経営計画の期間中にセグメント区分を石油・ガス事業、ライフクリエイト事業、電気・環境ソリューション事業に変更し、28年3月期の売上総利益構成比の目標は石油・ガス事業53%、ライフクリエイト事業33%、電気・環境ソリューション事業14%(23年3月期実績は石油・ガス事業69%、ライフクリエイト事業29%、電気・環境ソリューション事業2%)としている。
■サステナビリティ経営
サステナビリティ経営関連では、22年5月にサステナビリティ基本方針を策定してサステナビリティ推進委員会を設置した。22年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明し、賛同企業・団体などで構成されるTCFDコンソーシアムに参画した。22年7月には環境保全活動・社会貢献活動の一環として、一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団と事業別スポンサー契約を締結し、森林整備事業の支援を開始した。
23年3月には「シナネンホールディングス統合報告書2022」がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の国内株式運用機関が選ぶ「改善度の高い統合報告書」に選出された。また、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。23年4月には働き方改革の一環として、副業制度、70歳までの再雇用制度、育児休業中の学習支援、自己都合退職者再雇用制度(アルムナイ制度)、治療と仕事の両立支援という5つの人事制度を新たに導入した。
23年5月には、慶應義塾大学大学院・未来社会共創イノベーション研究室、一般社団法人諏訪広域脱炭素イノベーション協会(長野県諏訪市)と、カーボンニュートラル・ウエルビーイングによる地域価値向上に向けた協業に関する基本合意書を締結した。
8月10日にはデジタルリテラシー協議会が定義したデジタル人材育成への取り組み方針に賛同を表明し、同協議会の賛同企業に登録されたと発表している。
■24年3月期1Q営業損失拡大だが通期大幅増益予想据え置き
24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比5.2%増の3600億円、営業利益が123.2%増の20億円、経常利益が87.3%増の23億円、親会社株主帰属当期純利益が171.5%増の13億円としている。配当予想は23年3月期と同額の75円(期末一括)としている。予想配当性向は63.0%となる。
原油価格高騰が一服して小幅増収となり、引き続きIT関連投資を含む支払手数料や人件費が増加するが、電力事業やLPガス事業の料金改定などで大幅増益予想としている。電力事業については期初より価格改定を実施し、下期の大幅な収益回復を見込んでいる。
なお営業利益11.1億円増益の内訳は、BtoC事業+5.1億円(ガス+8億円、電力+3億円、人件費等増加▲2億円、物流関係費等増加▲3億円)、BtoB事業+6.6億円(電力+21億円、石油▲8億円、人件費等増加▲2億円、物流関係費等増加▲3億円)、非エネルギー事業+0.8億円、その他・調整額▲1.5億円としている。親会社株主帰属当期純利益については、前期計上の韓国大型風力発電事業関連の減損損失一巡も寄与する。第3次中期経営計画では創業100周年の28年3月期の目標にROE8%以上、経常利益100億円を掲げている。
第1四半期は売上高が前年同期比0.3%増の713億93百万円、営業利益が7億18百万円の損失(前年同期は50百万円の損失)、経常利益が4億79百万円の損失(同3億25百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が3億61百万円の損失(同16億40百万円の利益)だった。
石油類と電力の販売数量増加などで小幅増収だが、前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことに加え、電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失が拡大した。なお特別利益では前期計上の固定資産売却益22億51百万円が剥落した。
エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は、売上高(外部顧客への売上高)が4.7%減の152億17百万円、営業利益(全社費用等調整前)が3億16百万円(前年同期は1億37百万円の損失)だった。売上面は、主力のLPガス・灯油販売の販売数量が前年並みだったが、電力事業において取引条件見直しに伴って一部顧客の離脱があった影響で減収だった。利益面はLPガス販売において前期に実施した価格改定効果などで増益だった。
エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は、売上高が0.9%増の509億47百万円、営業利益が11億76百万円の損失(同93百万円の利益)だった。売上面は電力事業における大口顧客獲得などにより小幅増収だが、利益面は前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことに加え、電力事業において調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」が発生したことなどにより営業損失だった。
非エネルギー事業は売上高が10.9%増の51億72百万円、営業利益が2.2倍の2億70百万円だった。自転車事業(シナネンサイクル)は前期後半から実施した価格改定や大手法人向けコンテナ販売などで増収増益だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)はシェアサイクルサービス「ダイチャリ」の拠点開発などで増収だが、前期の一過性収益の剥落で減益だった。23年6月末時点のステーション数は3200ヶ所超、設置自転車数は1万台超の規模となった。環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)は主力の「木くずリサイクル」が伸長したが、新たな環境関連事業の開発に向けた投資により、全体として前年並みだった。抗菌事業(シナネンゼオミック)は中国の景気低迷に起因する需要減少で減収減益だった。システム事業(ミノス)はLPガス基幹業務システムが安定的に推移して増収増益だった。建物維持管理事業(タカラビルメンなど)は施設運営業務が好調に推移して増収増益だった。なお建物維持管理事業を手掛けるグループ4社を23年10月に統合する。
通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期は営業損失が拡大したが、期初より進めている電力事業の価格改定効果により、下期に大幅な収益回復を見込んでいる。積極的な事業展開により通期ベースでの収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は年初来高値圏だ。第1四半期業績に対する反応は限定的だった。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。8月18日の終値は4035円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS119円22銭で算出)は約34倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4902円63銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約526億円である。 (
情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
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