[4521]科研製薬
[05月31日更新]
科研製薬<4521>(東証プライム)の22年3月期連結業績は、研究開発費の増加や特別損失の計上などで減益だった。23年3月期は、研究開発費の増加などで営業・経常減益、特別損失の一巡で最終増益予想としている。なお5月11日に自己株式取得(上限35万株・15億円、取得期間22年5月12日〜22年12月28日)を発表した。また5月12日には長期経営計画2031の策定、5月16日にはブランドロゴおよびコーポレートサイトの刷新を発表した。
■医療用医薬品・医療機器メーカー
医薬品・医療機器、農業薬品などの薬業、および文京グリーンコート関連などの不動産賃貸事業を展開している。
主要医薬品・医療機器は、外用爪白癬治療剤のクレナフィン、関節機能改善剤のアルツ、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラストスプレー、排尿障害改善剤のエブランチル、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロックゲル、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。
M&A・アライアンス関連では、21年1月にブロックチェーン技術を活用したデータプラットフォーム事業で医療・ヘルスケア領域に展開するジーネックス(マネックスグループの関係会社)に出資して業務提携した。21年12月にはバイオベンチャーのARTham社(横浜市)を買収して連結子会社化した。
■開発パイプライン
22年3月期末時点の開発パイプラインの状況は、熱傷焼痂除去剤KMW−1(メディウンド社から導入、海外での製品名NexoBrid)が承認申請中、アタマジラミ症を適応症とするKAR(アーバー社から導入、海外での製品名Sklice)が第3相、難治性脈管奇形を適応症とするART―001(アーサム セラピューティクス社の開発品)が第2相、水疱生類天疱瘡を適応症とするART―648(アーサム セラピューティクス社の開発品)が第2相、原発性掌蹠多汗症を適応症とするBBI−4000(原発性腋窩多汗症治療剤エクロックの適用拡大)が第1相、固形がんを適応症とするKP−483(がん免疫療法、自社創薬品)が第1相、アトピー性皮膚炎を適応症とする多重異性抗体医薬候補物質NM26−2198(ニューマブ セラピューティクス社との共同開発)が第1相準備中である。
なお、爪白癬を適応症として開発していた抗真菌剤KP−607(自社創薬)については、第2相臨床試験の結果、治療効果を認めたものの、クレナフィンを明らかに上回る有効性を引き出すには至らないと判断し、爪白癬を適応症とする開発は、開発パイプラインから取り下げることとした。今後の本剤の開発については、適応変更も含めて検討する。
また、レナバサム(新規の経口低分子化合物、コーバス社から導入)については、コーバス社による全身性強皮症と皮膚筋炎の第3相試験が終了したが、主要評価項目未達だった。今後の開発はコーバス社と協議のうえ最終決定するが、現時点では今後について未定のため、開発パイプラインから取り下げた。
■23年3月期営業・経常減益、最終増益予想
22年3月期連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年3月期比1.4%増の760億34百万円、営業利益が4.1%減の170億64百万円、経常利益が3.7%減の175億42百万円、親会社株主帰属当期純利益が28.8%減の95億49百万円だった。なお収益認識会計基準適用による影響額としては、従来方法に比べて売上高が11億54百万円減少、売上原価が11億42百万円減少している。配当は21年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)とした。
売上面では、外用爪白癬治療剤クレナフィンが減少したが、原発性腋窩多汗症治療剤エクロックゲルやジェネリック医薬品が増加し、不動産事業も堅調に推移して増収だった。利益面は、研究開発費の増加(25.0%増の84億20百万円)などで減益だった。なお特別損失にコーバス社から導入した全身性強皮症および皮膚筋炎治療剤レナバサムに関する減損損失29億94百万円を計上した。
主要医薬品・医療機器の売上高(単体)は、クレナフィンが3.9%減の184億49百万円、アルツが0.2%減の188億53百万円、セプラフィルムが2.6%減の84億33百万円、フィブラストスプレーが0.7%減の27億69百万円、エブランチルが0.9%増の19億36百万円、エクロックゲルが5.6倍の9億50百万円、リグロスが18.0%増の8億60百万円、ヘルニコアが6.5%増の3億81百万円、ジェネリック医薬品が4.0%増の88億31百万円だった。
セグメント別に見ると、薬業(医薬品・医療機器、農業薬品)は売上高が1.4%増の736億23百万円で、利益(営業利益)が4.0%減の157億10百万円だった。不動産事業は売上高が1.9%増の24億10百万円で、利益が関西支店建て替えに伴う費用発生で4.5%減の13億53百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高184億53百万円で営業利益44億21百万円、第2四半期は売上高191億35百万円で営業利益46億15百万円、第3四半期は売上高201億20百万円で営業利益48億53百万円、第4四半期は売上高183億26百万円で営業利益31億75百万円だった。
23年3月期連結業績予想は、売上高が22年3月期比0.5%増の764億円、営業利益が12.1%減の150億円、経常利益が11.6%減の155億円、親会社株主帰属当期純利益が25.7%増の120億円としている。配当予想は22年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)としている。
売上高が微増にとどまり、研究開発費の増加(23.5%増の104億円)などで営業・経常減益予想としている。親会社株主帰属当期純利益は特別損失の一巡で増益予想としている。
主要医薬品・医療機器の売上高計画(単体)はクレナフィンが1.9%減の181億円、アルツが7.2%減の175億円、セプラフィルムが5.5%増の89億円、フィブラストスプレーが1.1%増の28億円、エブランチルが3.3%増の20億円、エクロックゲルが2.1倍の20億円、リグロスが16.3%増の10億円、ヘルニコアが5.0%増の4億円、ジェネリック医薬品が7.6%増の95億円としている。
■長期経営計画2031
5月12日に2023年3月期から10か年の長期経営計画2031を発表した。
画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命に貢献し続ける企業、皮膚科・整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業を目指し、長期的課題を見据えた戦略として、研究開発では上市確度の向上、パイプラインの拡充、新規ニーズおよび海外展開への対応、新規分野へのチャレンジ、海外展開では海外展開品の充実、海外自社開発体制の整備、生産・海外自社販売体制の整備、農業事業では北米や新市場での伸長、EU市場への参入・拡大、日本国内での使用促進を推進する。また、経営基盤強化に向けて、プロフェッショナルとして新たな挑戦・変革を追求し続ける人材の育成、データとデジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成、患者さんファーストのための製品価値最大化を推進する。
業績目標としては32年3月期の売上高1000億円、営業利益285億円、ROE10%以上、海外売上高比率30%以上を掲げている。研究開発では10年間で8品目上市するためのパイプライン確保、毎年1品目以上の開発導入品あるいは販売提携品の確保を目指す。海外展開では医薬品の海外売上高比率25%以上を目指す。農業事業では、微生物由来の天然物質農薬ポリオキシンを中心に、農薬事業全体で売上高100億円を目指す方針としている。(
情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[2月24日更新]
[決算情報]
科研製薬<4521>(東1)は整形外科、皮膚科、外科などの領域を主力とする医薬品メーカーである。16年3月期第3四半期累計は大幅増益だった。通期会社予想を据え置いたが第3四半期累計が高進捗率であり、外用爪白癬治療剤クレナフィンが牽引して再増額余地があるだろう。株価は地合い悪化も影響して安値圏でのモミ合いだが、積極的な株主還元姿勢も評価材料であり、調整が一巡して出直り展開だろう。
■整形外科、皮膚科、外科領域を得意とする医薬品メーカー
整形外科、皮膚科、外科といった領域を得意として、農業薬品や飼料添加物なども展開する医薬品メーカーである。
医薬品・医療機器では、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤アルツを主力として、外用爪白癬治療剤クレナフィン、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、高脂血症治療剤リピディル、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーなどを展開し、ジェネリック医薬品も急拡大している。
日本初の外用爪白癬治療剤クレナフィン(一般名エフィナコナゾール)については、日本では当社が14年7月に製造販売承認を取得し、14年9月に販売開始した。海外ではカナダのバリアント社が13年10月にカナダで承認を取得、14年6月に米国で承認を取得した。
なおグループ経営の効率化を図るため、全額出資の連結子会社である科研不動産サービスを16年3月31日付で吸収合併する予定である。
■歯周組織再生剤の製造販売承認を申請
歯周組織再生剤「KCB−1D」(一般名:トラフェルミン、遺伝子組換え)は15年10月に製造販売承認を申請した。組換え型ヒトbFGFを有効成分とする歯科用薬剤で16年中の承認見込みとしている。国内には歯周組織の再生を効能とする医療用医薬品がなく「KCB−1D」は初めての歯周組織再生剤として歯周炎治療の新たな選択肢となることが期待される。
潰瘍性大腸炎を適応症とする「KAG−308」(旭硝子<5201>と共同開発の経口プロスタグランジン製剤)は15年9月に第2相臨床試験を開始した。
15年3月には、米ブリッケル・バイオテック社が米国において原発性局所多汗症を対象に開発している「BBI−4000」(外用抗コリン剤)の独占的ライセンス実施許諾および共同開発に関する契約を締結し、日本とアジア主要国における独占的な開発・販売・製造の権利を取得した。現在、第1相臨床試験を実施中である。
なお関節機能改善剤アルツの腱・靱帯付着部症の適応追加「SI−657」(生化学工業と共同開発)については、2月2日に開発中止を発表した。第3相臨床試験結果において期待していた有効性を明確には見いだせなかった。
■外用爪白癬治療剤クレナフィンが15年3月期第3四半期から寄与
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月〜6月)214億64百万円、第2四半期(7月〜9月)227億68百万円、第3四半期(10月〜12月)269億23百万円、第4四半期(1月〜3月)227億34百万円で、営業利益は第1四半期40億85百万円、第2四半期47億21百万円、第3四半期78億05百万円、第4四半期40億20百万円だった。
第3四半期はカナダのバリアント社向けが寄与した。また15年3月期は13期連続の増配で配当性向は40.6%だった。ROEは14年3月期比2.2ポイント上昇して16.7%、自己資本比率は同3.0ポイント上昇して67.0%となった。
■16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益
2月5日に発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月〜12月)連結業績は、売上高が前年同期比20.1%増の854億31百万円となり、営業利益が同78.7%増の296億89百万円、経常利益が同81.6%増の299億19百万円、純利益が同2.1倍の201億34百万円だった。
14年9月発売の外用爪白癬治療剤クレナフィンの収益寄与が本格化して大幅増収増益だった。主力の関節機能改善剤アルツや、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、ジェネリック医薬品なども堅調に推移した。
売上総利益は同32.8%増加し、売上総利益率は57.6%で同5.5ポイント上昇した。販管費比率は22.9%で同5.8ポイント低下した。第3四半期累計では研究開発費が減少(同8.6%減の43億92百万円)した。また特別損失では前期計上した固定資産売却損11億87百万円、長期前払費用償却5億25百万円が一巡した。
セグメント別に見ると、薬業は売上高が同20.7%増の836億74百万円、営業利益が同83.1%増の283億88百万円だった。海外売上高は80億65百万円だった。不動産事業(文京グリーンコート関連の賃貸料)は売上高が同4.0%減の17億56百万円、営業利益が同17.9%増の13億円だった。
主要医薬品および医療機器別の売上高(単体ベース)は、関節機能改善剤アルツが同1.4%増の242億50百万円、外用爪白癬治療剤クレナフィンが同3.8倍の153億85百万円、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルムが同3.4%増の87億11百万円、高脂血症治療剤リピディルが同4.0%増の34億95百万円、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーが同3.8%増の27億23百万円、ジェネリック医薬品合計が同8.0%増の102億37百万円、カナダ・バリアント社向けJublia関連(原体売上、製剤売上、ロイヤリティ収入およびマイルストーン収入)が同2.1倍の49億86百万円だった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月〜6月)276億33百万円、第2四半期(7月〜9月)273億40百万円、第3四半期(10月〜12月)304億58百万円、営業利益は第1四半期92億34百万円、第2四半期92億09百万円、第3四半期112億46百万円だった。
■16年3月期通期も大幅増益予想で再増額余地
今期(16年3月期)通期の連結業績予想については前回予想(10月27日に増額修正)を据え置いて、売上高が前期比14.9%増の1079億円、営業利益が同56.1%増の322億円、経常利益が同58.9%増の324億円、そして純利益が同58.4%増の192億円としている。
配当予想(10月27日に増額修正)は第2四半期末34円、期末78円(=普通配当68円+記念配当10円)としている。15年10月1日付の株式併合(2株を1株に併合)後に換算すると、年間146円(第2四半期末68円、期末78円)となる。前期の年間59円を株式併合後に換算した年間118円に対して実質的に28円増配で14期連続増配となる。また予想配当性向は31.5%となる。
医薬品・医療機器の売上高計画は、関節機能改善剤アルツが同1.1%増の306億円、外用爪白癬治療剤クレナフィンが同2.7倍の185億円、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルムが同3.8%増の112億円、高脂血症治療剤リピディルが同5.2%増の46億円、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーが同2.5%増の36億円、ジェネリック医薬品合計が同7.4%増の133億円、カナダ・バリアント社向けJublia関連は同68.8%増の56億円としている。
外用爪白癬治療剤クレナフィンの収益寄与が本格化して大幅増益予想だ。販管費は同1.0%増の288億円で、このうち研究開発費は同9.0%増の83億円の計画である。研究開発費の発生が一部来期(17年3月期)にズレ込む見込みとなったため、販管費は期初計画の322億円から34億円、研究開発費は期初計画の113億円から30億円減額している。なお科研不動産サービスを吸収合併することに伴う法人税等調整額25億68百万円(繰延税金資産取り崩し)を織り込んでいる。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が79.2%、営業利益が92.2%、経常利益が92.4%、純利益が104.9%と高水準である。4月の薬価改定を控えて売上高への影響が予想されること、パイプライン充実に向けた研究開発費の発生が見込まれること、科研不動産サービスを吸収合併することに伴って3月に法人税等調整額25億68百万円(繰延税金資産取り崩し)の計上を予定していることから、通期会社予想を据え置いたが、外用爪白癬治療剤クレナフィンが牽引して通期会社予想は再増額の余地があるだろう。
■株価は調整一巡して出直り
なお15年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更するとともに、中長期的な株価変動等を考慮しつつ投資単位を適切な水準に調整することを目的として15年10月1日付で2株を1株に併合した。
株価の動きを見ると、外用爪白癬治療剤クレナフィンの競合品に対する警戒感で上場来高値圏から急反落し、その後は7000円〜9000円近辺のレンジでモミ合う展開だ。地合い悪化の影響で2月12日に6370円まで調整する場面があったが、素早く切り返して7000円台に戻している。
2月19日の終値7140円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS463円70銭で算出)は15〜16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想を株式併合後に換算した年間146円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式併合を考慮した連結BPS1861円12銭で算出)は3.8倍近辺である。時価総額は約3459億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、15年1月の昨年来安値水準5000円近辺まで下押す動きは見られず、2月の直近安値から切り返す動きだ。積極的な株主還元姿勢も評価材料であり、調整が一巡して出直り展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
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