「働き方改革」が注目を集める中、厚生労働省が9月に、労働基準関係法令に違反し、企業名を公表した企業数が520社(累計525件)だった。
(当初発表されたのが5月で、社数が332社。8月に発表されたときには401社。)
大手企業の労基関係法違反は、知名度も高いだけに注目を集めやすいが、違反企業の実態は中小・零細企業が大多数を占めているのが実態。
メディアではなかなか報道されない中小企業の事例も含めて、いわゆるブラック企業でどのようなことが行われているのがリストでわかる。
また、売上高で見ると、380社では、10億円未満が260社(同68.4%)と7割にのぼる一方、100億円以上は31社(同8.1%)と1割未満にとどまる。
2017年5月でも、売上高10億円未満の構成比は67.2%で、中小・零細企業が占める比率に変化はないようだ。
2017年11月27日、ブラック企業の頂点を決める「ブラック企業大賞2017」にノミネートされた9社が発表された。
ノミネートされたのは、裁判や行政処分などで問題があると明らかになった企業だという。
2016年度は、投票の結果「電通」が不名誉なブラック企業大賞を受賞している。
残念なことに9社中、6社が上場会社という状況だ。
「仕事があるだけありがたいと思え」というマインドが変わらないのだろうか。
従業員の流出を防げず、先々は、人手不足倒産を余儀なくされることも考えられる。
上場企業
↓
株主価値の増大による株主への利益還元
↓
短期的な業績拡大
↓
従業員に長時間労働を強いる。
という流れなのだろうか。
■ノミネート企業
ゼリア新薬工業(4559)
いなげや(8182)
パナソニック(6752)
大成建設(1801)、
三信建設工業(1984)
大和ハウス工業(1925)
ヤマトホールディングス(9064)/ヤマト運輸
新潟市民病院
NHK(日本放送協会)
引越社グループ(「アリさんマークの引越社」として全国展開)
候補にノミネートされた上場企業は、会社のイメージ悪化につながり、何倍ものダメージとなるだろう。
株価への影響も少なからず生じるだろう。
【選定理由】
■ゼリア新薬工業株式会社
2013年5月、新人研修中に男性社員が自殺。2015年に労災認定を受けた。
研修中に「強い心理的負荷」を受け、精神疾患を発症した。
■株式会社いなげや
2014年6月、スーパーの店舗チーフだった社員が倒れ、亡くなった。2016年6月に労災認定された。代理人によると、時間外労働は96時間におよび、サービス残業も行われていたという。
■パナソニック株式会社
2016年6月にパナソニックデバイスソリューション事業部の富山工場に勤務する40代男性社員が自殺。2017年2月に過労自殺と認定された。2016年5月の残業時間は100時間越えだった。
■新潟市民病院
2016年1月、女性研修医(当時37)が自殺。月251時間も残業。2017年5月に過労自殺として労災認定。
■日本放送協会(NHK)
2013年7月、当時31歳だった女性記者がうっ血性心不全で死亡。2014年に過労が原因として労災認定された。時間外労働は月159時間に及んだ。
■株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西(アリさんマークの引越社)
営業職だった男性社員をシュレッダー係に配転や懲戒解雇を言い渡し、「罪状」として顔写真を張り出すなどした。都労委は、これらは労組に入ったことをきっかけにしたもので、会社の行為は「不当労働行為」と認定された。
■大成建設株式会社・三信建設工業株式会社
「新国立競技場」の工事で、三信建設工業の新人男性社員(当時23)が2017年3月に自殺し、10月に労災認定された。自殺前の時間外労働は190時間。元請けの大成建設も、行政指導された。
■大和ハウス工業株式会社
埼玉西支社の営業職だった20代男性に違法な時間外労働があったとして、2017年6月に労基署から是正勧告を受けた。2015年5月には109時間の時間外労働をしており、2016年5月に退職を余儀なくされた。
■ヤマト運輸株式会社
2016年12月、神奈川平河町支店のセールスドライバーへの残業代未払いで是正勧告を受けた。2017年5月にはパート従業員の勤務時間改ざんと賃金未払いがあったとして、西宮支店が是正勧告を受けた。また、17年9月には博多北支店のセールスドライバーに月102時間の違法残業をさせていたとして、法人と幹部社員が労働基準法違反の疑いで書類送検されている。
過去のブラック企業大賞受賞企業
過去のブラック企業大賞企業は以下の企業。
第1回(2012年)東京電力株式会社
第2回(2013年)ワタミフードサービス株式会社
*大賞とWEB投票賞のダブル受賞
第3回(2014年)株式会社ヤマダ電機
*大賞とWEB投票賞のダブル受賞
第4回(2015年)株式会社セブンイレブンジャパン
第5回(2016年)株式会社電通