一昔は「結婚や出産を機に専業主婦になる」というライフコースが多かった。
ここ数年で増えてきたのが、働き続ける女性だろう。
しかし、現状では、女性が働くようになったからといって、家での家事労働時間や育児時間が減ったわけではない。仕事をしながら「家事も育児も介護も」やることは山のようにあるからだ。
厚生労働省によると共働き世帯数は2017年に1188万世帯と6年連続で増えている。
そんな働く女性の消費のキーワードは、「時短」
働きながら、育児や家事を日々こなしている女性のほうが時短ニーズはより切実だからだ。
おいしいものをより早く食べたい。
共働き世帯の増加に伴って家事の時間を短くしたい需要が高まっており、調理など家事の時間を短くする「時短」需要を狙って食品メーカーなどが生産増強に乗り出している。
ライフスタイルの変化を受け、白物家電各社は家事の負担を減らすことのできる“時短”をうたった製品を続々と市場に投入しており、売れ行きも好調だ。新しい家電が家庭内での働き方改革の切り札になるかもしれないと言う。
日立製作所<6501>の高級オーブンレンジの魅力といえば、なんといっても独自の「Wスキャン」機能。最近のオーブンレンジは食材を入れて「あたため」や「解凍」ボタンを押せば、自動的に最適な時間だけ食材を加熱する自動加熱機能が搭載されている。
「Wスキャン」は、冷凍したご飯や冷蔵庫で保存した食品を温める際にも時短効果を発揮する。食品の重さと初期温度、温度変化をスキャンして加熱する。分量に合わせて火加減をオーブンレンジが調整する。さらに人数や分量の設定が不要なため、一般的な同様の製品に比べて調理の手間を省けるのが特徴だ。
日立の家電品HP 特長:Wスキャンより
18年で発売20周年を迎えた
三菱電機<6503>のIHクッキングヒーターの現在の製品は、鍋の中身を自動でかき混ぜる「対流煮込み加熱〈プラス〉」機能を搭載。
自動で加熱と停止を繰り返し、かき混ぜ効果のある交互対流を発生させる。そのため具材にうま味をしみ込ませつつ、煮くずれや焦げつきを抑制できる。カレーを作る際などに、かき混ぜる手間を省けるそうだ。
共働き夫婦の増加などを背景に調理が短時間で済む「時短」食品群も進化している。
日清製粉グループ本社<2002>は、従来の早ゆでマカロニは2〜4分かかっていたが、
80秒でゆで上がるマカロニを発売した。
日清製粉HP 早ゆでパスタより
味の素<2802>が中華料理用の「クックドゥ」を発売したのは78年。
マーボー豆腐や酢豚といった本格的料理が、肉や野菜にクックドゥを加えるだけで完成する。「プロの味付けを家庭で手軽に」と新しい食習慣となった。2011年以降、和食や洋食メニューをはじめバリエーションも増え、昨年の売り上げは発売当初の5倍以上に上る。
東洋水産<2875>は、電子レンジで温めて食べるパック米飯の生産能力を1.5倍に引き上げる。子会社のフクシマフーズの工場にパック米飯の生産ラインを新設する。投資額は約90億円で、2019年夏の稼働を予定。
主力ブランド「マルちゃん」をあしらった白飯や赤飯などの生産を増やす。パック米飯は電子レンジで2分ほど温めれば食べられる利便性が受けて、市場規模は拡大傾向だ。
「サトウのごはん」で有名な
サトウ食品工業<2923>も、需要の伸びを見込み、各社は増産に乗り出している。来年春に新工場を建設し生産量を2割強増やすそうだ。
食品だけでなく、日用品でも時短消費を狙った人気商品がある。
花王<4452>は、食器用洗剤「キュキュット クリア泡スプレー」は、2016年10月1日に発売した。食器洗いの手間を省きたい働く女性の人気を集めている。
食器に直接スプレーして、そのまま水で洗い流すだけで油汚れを落とせるのが特徴。
発売後半年の販売本数は計画比2倍の420万本。食器用洗剤では今年最大のヒット商品となっている。
「女性の所得が増え、さらに女性が消費を増やす」という好循環が生まれるだろう。
女性の社会進出に伴う共働き世帯の増加や高齢者の増加で、手間のかからないこれらの商品へのニーズはさらに高まるとみられており、関連する企業は、これからも目が離せないだろう。