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【市況】5日続落878ドル安、米中対立の激化懸念 |
10日のNYダウ工業株30種平均は大幅に5日続落し、前日比878ドル82セント安の4万5479ドル60セントで終えた。約1カ月ぶりの安値を付け、下げ幅は4月下旬以来の大きさだった。中国がレアアース(希土類)の輸出規制を打ち出したことなどをめぐり、トランプ米大統領が10日に不満を示し、対中関税引き上げを示唆した。米中関係悪化への警戒が広がった。
トランプ米大統領はこの日自身のSNSに、中国が9日に発表したレアアース(希土類)関連の輸出規制強化を批判し、中国製品に対する関税を大幅に引き上げることを検討していると投稿した。
さらにトランプ氏は、韓国で今月末開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、習近平国家主席と会談するとこれまで説明していたが、「今では実施する理由がないようだ」と不満をあらわにした。両国の通商関係の悪化が危惧される中、株価は大幅に下げた。
この日はこれまで相場をけん引してきた半導体関連などハイテク大手も軟調だった。エヌビディアやアマゾンは5%近く下げた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版は10日、中国政府がエヌビディア製の人工知能(AI)半導体の輸入を巡り、税関検査を強化していると報じた。
日系証券筋は「米中対立が嫌気されたほか、高値警戒感を背景にした売りも出た」と指摘。来週から米主要企業の決算発表が本格化するが、堅調な内容であれば株価を下支えすると予想した。
10日には中国当局が半導体のクアルコムのイスラエル企業の買収が独占禁止法に違反した疑いがあるとして調査を始めたことが明らかになっていた。
米連邦政府機関の一部閉鎖が10日目に入った。閉鎖が長期化し、米景気への悪影響が強まることも懸念された。ボート米行政管理予算局(OMB)局長は10日にX(旧ツイッター)で政府閉鎖を機に実施すると予告していた一部職員の解雇が始まったと明らかにした。
週末だったこともあり、引けにかけて下げ幅を拡大し、この日の安値圏で終えた。ダウ平均の日中の値幅は1100ドルを超えた。市場の不安心理を映し「恐怖指数」とも呼ばれる米国株の変動性指数(VIX)は21.66と不安が高まった状態とされる20を上回り、6月中旬以来の高水準となった。
ダウ平均は午前には280ドルあまり上昇した。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待などが相場を支えた。週間では1278ドル下げ、下落幅は約2カ月ぶりの大きさだった。
ダウ平均の構成銘柄はアマゾン・ドット・コムとエヌビディアが5%近く、ナイキが4%下げた。ユナイテッドヘルス・グループやIBM、アップルも売られた。一方、コカ・コーラやマクドナルドなどのディフェンシブ株の一角は買われた。
ナスダック総合株価指数は大幅続落した。前日比820.196ポイント(3.56%)安の2万2204.430で終えた。下落率は4月以来の大きさだった。クアルコムが7%超下げた。アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)やブロードコム、マイクロン・テクノロジー、半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)といった半導体関連株の下げも大きかった。
テスラも5%下げた。中国ネット通販のアリババ集団など中国企業の米預託証券(ADR)の下げも目立った。
10日のシカゴ日経平均先物は大幅に下落した。12月物は前日比2695円安の4万5965円で終えた。日本では公明党が自民党との連立政権から離脱する方針を示し、政治を巡る不透明感が意識された。米中対立への警戒感も加わり、日本株先物に売りが膨らんだ。
シカゴ日経225先物 (円建て)
45965 ( -1655 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て)
46090 ( -1530 )
( )は大阪取引所終値比
10日の英FTSE100種総合株価指数は続落し、前日比81.93ポイント(0.86%)安の9427.47で終えた。対中関税の方針などに言及したトランプ米大統領のSNSへの投稿をきっかけに、投資家が運用リスクを回避する姿勢を強め、株式に売りが増えた。
米関税政策への警戒感が再燃し、国際商品市場では原油のほか銅、アルミニウムといった非鉄金属の先物に売りが膨らんだ。FTSE100種指数への寄与度が大きい英シェルなど石油や、スイスのグレンコアを含む資源・素材の関連銘柄が下げた。製薬や防衛・航空関連にも売りが優勢だった。一方で英ユニリーバなど日用品やたばこ株、公益に買いが優勢となった。
FTSEの構成銘柄では、賭け屋大手エンテインが3.96%安、包装資材大手モンディが3.53%安、資源大手グレンコアが3.16%安と下げを主導。一方、自動車保険のアドミラル・グループは1.74%高、たばこ大手インペリアル・ブランズは1.58%高、日用品・食品大手ユニリーバは1.45%高となった。
10日のドイツ株価指数(DAX)は4日ぶりに反落し、前日比369.79ポイント(1.50%)安の2万4241.46で終えた。対中関税などに言及したトランプ米大統領のSNSへの投稿をきっかけに投資家が運用リスクを回避する姿勢を強め、リスク資産とされる株式には売りが増えた。
DAXが前日まで連日で最高値を更新するなど、足元で相場水準が切り上がっていたため、週末入りを前に目先の利益確定を目的とした売りも出やすかった。トランプ氏の投稿をきっかけに、半導体大手インフィニオンテクノロジーズが急速に下げ幅を広げた。
ソフトウエアの独SAPや独ラインメタルなど防衛関連のほかヘルスケア、化学の関連銘柄が売られた。DAXを構成する40銘柄のうち、前日比で上昇したのは不動産大手ボノビアを含め3銘柄にとどまった。
個別では、化学品商社ブレンタークが4.97%安、半導体大手インフィニオン・テクノロジーズが3.50%安、航空機エンジン大手MTUエアロ・エンジンズが3.44%安と売りが目立った。半面、不動産大手ボノビアは1.04%高、日用品大手ヘンケルは0.09%高、自動車大手メルセデス・ベンツは0.06%高で取引を終えた。