
朝方に1000円を超えて下落し、取引時間中としては2024年9月17日以来、およそ半年ぶりに心理的節目の3万6000円を下回る場面があった。
前場はリスク回避ムード一色に染まっていた。前日の米国株市場で米経済失速への懸念が高まり、NYダウ、ナスダック総合株価指数ともに急落、ナスダック指数の下落率は4%に達した。この流れを東京株式市場も引き継ぐ格好となった。加えて足もと急速にドル安・円高が進み、輸出セクターを中心に逆風環境が強く意識された。日経平均は1000円超の下落で一時3万6000円台を割り込む水準まで急落したが、前場取引中盤を境に戻り足に転じた。後場は押し目買いや空売り筋の買い戻しを誘発し、ほぼ一貫して下げ幅を縮小。大引けは3万6000円台後半まで水準を戻し、この日の高値で着地している。売買代金は5兆4000億円台と膨らみ、2月28日以来となる高水準だった。
トランプ米大統領は9日放送の米FOXニュースのインタビューで景気後退入りの可能性を明確に否定しなかった。10日の米株式市場では政権が短期的に景気に配慮した政策を打ち出さず、関税政策などが米景気を下押しするとの警戒感から、ハイテク株を中心に株売りが広がった。内閣府が取引開始前に発表した2024年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値が、速報値から市場予想よりも大きく下方修正されたことも投資家心理の重荷となった。東京市場では半導体や電機などを中心に、朝方は東証プライム市場の値下がり銘柄数が全体の9割を超える、全面安の様相となった。
売り一巡後は下げ渋った。日経平均が一時的に心理的節目の3万6000円を下回ったことで、自律反発を見込んだ押し目買いが入りやすかった。日本時間11日午前に下落していた米株価指数先物が午後に入り、上昇に転じたことも相場の支えとなった。市場関係者は「14日にメジャーSQ(特別清算指数)の算出を控え、思惑的な買いが入っている可能性はある」との見方を示したほか、「年始に株式の持ち高を落としていた国内の機関投資家からの買いが入った」との声があった。
週末に控えるメジャーSQを目前に先物業者はロールオーバーが中心となり、短期筋による仕掛け的な売買においては追随する動きは限られると考えられる。米国市場の動向に大きく振らされやすい状況ではあるが、ひとまず3万6000円割れで目先底が意識されてきた感はある。徐々に押し目を拾う動きのほか、配当志向の物色なども意識されてきそうである。