前日の米株式市場では、NYダウは反落しハイテク株も軟調だった。ただ、為替が円安に振れたこともあり、寄り付きの日経平均株価は値を上げてスタートした。今日は日銀の植田和男総裁が衆参両院の閉会中審査に出席するほか、今晩にはジャクソンホール会議でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演を予定していることから神経質な値動きとなり、買い一巡後は売りに押され前場はマイナス圏で取引を終えた。後場に入ると買い直され、日経平均株価は再びプラス圏に浮上した。
午後に参院財政金融委員会に出席した日銀の植田総裁が金融政策に関して「内田真一副総裁との間で違いはない」と発言。今月の相場急落後にハト派姿勢を示した内田副総裁と同スタンスであることを示したことから市場には安心感が広がった。パウエルFRB議長の講演を控え、大引けにかけては様子見姿勢も強まった。
ザラ場高値と終値はともに、暴落した5日以降の最高値となった。ローソク足は4本連続陽線で終了。高値、安値、終値がそろって切り上げを続ける「赤三兵」を示現して買い意欲の強さを窺わせた。一目均衡表では転換線が上昇を続けたほか、弱気シグナルが縮小し、順調な地合い改善を裏付ける形となった。25日移動平均線との乖離率は2.84%と買われ過ぎラインの5%まで余裕を残し、東証プライム市場の騰落レシオ(25日ベース)は101.84%と中立圏中央の100%近傍にあることから、過熱感は薄いとみられる。
市場では「8月初旬の急落局面で、ロング(買い持ち)ポジションを大幅に縮小していたヘッジファンドなどの先物買いも入り、相場を押し上げた」との見方もあった。
ただ、積極的に上値を追う動きは乏しく、日経平均の上昇幅は限られた。前日の米株式市場でハイテク株の下落が目立ち、値がさの東エレクやアドテストなど半導体関連株のパフォーマンスに響いた。
日本時間今晩にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を控え、米国の金融政策の動向を見極めたいとの雰囲気も広がった。東証プライムの売買代金は概算で3兆4008億円と4日連続で4兆円を下回り、7月22日以来の低水準となった。
さて、東京株式市場は日銀総裁の発言で一時気迷い気味の相場となったが、市場の先高期待は相変わらずで押し目買い有利の流れを最終的には保っている。米国の利下げ、日銀の利上げ見送りは当面の相場の既定路線。現状はその織り込み期間で下げ余地は乏しいだろう。もっとも、日経平均は3万8000円台という節目の多いゾーンに入っており、上げ方のペースは緩やかになりそうだ。