朝方はやや売り優勢で日経平均は下落してスタートしたものの、その後は切り返す展開となった。前日の米国株市場でNYダウやナスダック総合株価指数が揃って上昇、米長期金利の上昇は警戒されるが、中東の地政学リスクに対する過度な不安心理の後退などもあって買いが優勢だった。東京株式市場でもこの流れを引き継ぐ形となった。外国為替市場では朝方は1ドル=153円台と円安水準でもみ合い、半導体など輸出主力株にはポジティブに作用した。株式需給面では政局不安で先に空売りが入っていた分の買い戻しが利いている。
値上がり銘柄数は全体の77%を占め、業種別騰落でも33業種中30業種が上昇するという買い意欲の強い地合いだった。ただ、全体売買代金はきょうも今一つ盛り上がらず、10営業日連続で4兆円を下回った。
27日投開票の衆院選挙で自民党と公明党の連立与党が大きく議席を減らした。日本の政治の不透明感が高まるとみて前週末までに株価指数先物を売り持ちしていた海外投機筋が、イベント通過で買い戻しを入れる動きがこの日も続いた。28日の米長期金利の上昇(債券価格は下落)を背景に利ざや改善の期待から銀行など金融株が強含み、投資家心理の改善を受けた買いも入った。
衆院選挙では連立与党の議席数が過半数に届かなかった。自民党と公明党は特別国会での首相指名選挙で勝つため、国民民主党などとの連携を模索している。国民民主の玉木雄一郎代表は29日、自民、公明両党や他の野党との連携について「政策ごとに良いものには協力し、駄目なものには駄目だと言う」と述べ、予算案や重要法案といった案件ごとに与野党が協力する「パーシャル(部分)連合」の可能性を否定しなかった。石破茂首相などから党首会談を求められれば「何を決めていくかによるが、拒否するものではない」と語った。
国民民主は現役世代への支援を中心に訴え、今回の衆院選で大きく議席数を増やした。
市場関係者は「国民民主が掲げた減税や社会保険料の軽減など『手取りを増やす』政策が国民から一定の支持を集めたとあって、来年夏の参議院選に向け自民党も同様の政策を打ち出すとの期待が高まっている」と指摘。同時に「衆院選で与党の議席が過半数を割り込むなかで金融所得課税などの株式相場に逆風となるような施策を打つ可能性が小さくなった」と話す。