きょうの東京株式市場は半導体など主力株中心にリスク回避ムードが強かった。前日の米国株市場では主要株価指数が高安まちまちの展開で、過度な不安心理が後退したが、外国為替市場で急速に円高方向に傾いたことが嫌気される形で輸出関連株に売りがかさんだ。今週末に発表される8月の米雇用統計を前に買い向かう動きは限定的なものにとどまった。特に、半導体主力株が下げ止まらず全体相場の足を引っ張り、日経平均は朝方に700円近い下落をみせる場面もあった。一方、食料品や倉庫、鉄道、建設といった内需株には高い銘柄も目立った。業種別では33業種中、15業種が上昇している。また、中小型株が相対的に強さを発揮し、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数は拮抗している。売買代金は前日の水準には届かなかったものの4兆円台に乗せている。
前日の米市場ではエヌビディアが下落し、東京株式市場でも東エレクトロンやアドバンテストなどに売りが出た。7月の米雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数が市場予想を下回り、米景気減速への警戒感も引き続き重荷となった。市場が米景気動向に神経質となっているなか、今後も雇用統計(6日)など重要指標の発表が相次ぐとあって、持ち高調整の売りが出やすくなっているとの見方があった。
5日の石川県金融経済懇談会で日銀の高田創審議委員は、7月の追加利上げを踏まえても金融環境は緩和的で、賃上げなどの持続性が確認されていけば「その都度、もう一段のギアシフトを進める」と語った。今後も段階的に利上げを進める必要があるとの考えを示したと受け止められ、株式相場の重荷となった面があった。
厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計(速報)で、物価変動の影響を除いた実質賃金の前年同月と比べた伸び率は2カ月連続のプラスとなった。個人消費の回復期待から小売株の一角は上昇したが、市場では「実質賃金のプラス基調は日銀が利上げに動きやすくなるため、株式にとってマイナス要因となる側面も意識されたようだ」との声が聞かれた。
米景気後退懸念が再び意識されるなかでは、押し目を拾う動きにもなりづらい状況と言えよう。米国では8月のADP雇用統計や8月のISM非製造業景況指数が発表される。市場予想を大きく下回れば、6日の雇用統計を前に再び値動きの荒い展開になる可能性もありそうだ。明日も米雇用統計待ちのなかで積極的な売買は手控えられやすく、短期的な値幅取り狙いの商いにとどまりそうだ。