前日の米株式市場では、NYダウが346ドル高と続伸。米国の景気減速に対する警戒感が後退したことが好感された。
米国株が上昇した流れを受け、東京株式市場も値を上げて始まった。半導体関連など値がさハイテク株が買われ、日経平均株価は一時、400円近い上昇となった。
昼休みの時間帯に、安倍晋三元首相が奈良市内での演説中に銃撃され、心肺停止状態と伝わり、先物に売りが広がったことを受け、急速に伸び悩んだ。指数連動型ETF(上場投資信託)の分配金捻出売りも観測され、大引け間際には2万6510円53銭(同20円00銭高)まで押し戻された。
「安倍氏は現職の総理ではないが、依然として政治的な力は強い」(市場関係者)との見方が出ており、今後の影響に関しては「消化難の材料」との声が出ていた。10日の参院選を控え、不透明要因が膨らむなか、いったん売りを出す動きが膨らんだ。
7日発表の米雇用指標が堅調な内容だったとの受け止めなどから、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めによる米景気減速への過度な懸念は和らいだ。中国が景気対策として多額のインフラ投資に動くとの観測も投資家心理を支えた。
なお、この日算出の日経平均先物ミニ・オプション7月限SQ(特別清算指数)値は2万6659円58銭。
決算を迎える上場投資信託(ETF)の分配金を捻出する目的の売りも出て、日経平均は大引けにかけて上げ幅を一段と縮小した。
市場からは「安倍氏銃撃事件の初期反応は先物主体で大きく変動したが、SQ通過とともに指数連動型ETFの分配金捻出売りを終えれば、需給面でアク抜けとなる。ただ、今晩の米6月雇用統計、来週の米6月消費者物価など重要経済指標を控えており、結果にらみの展開に変わりはない」との声が聞かれた。