「常在戦場」の政局イベントの転び方次第で「まさか」の選挙関連株に材料株人気が浮上の展開も
「まさか」と思うのが常識だろう。だいたいスケールが違い過ぎる。5000万件と125万件である。5000万件は、2007年に社会・政治問題化したいわゆる「消えた年金記録」で、この旧社会保険庁のずさんな管理への批判が高まったことや閣僚の不祥事も重なり、第一次安倍内閣は、2007年7月の参議院選挙で大敗し、その後、安倍首相は退陣、2009年の衆議院選挙での大敗・政権交代の伏線となった。対して125万件は、今年6月早々にハッカー攻撃によって日本年金機構から流出したことが明らかになった個人情報で、ここでも前身の旧社会保険庁と同様の年金機構の情報管理の甘さ、対応の不手際振りが槍玉に上がった。
当然、国会でも野党の追及の舌鋒が鋭くなり、折から衆議院厚生労働委員会で審議中の労働者派遣法改正案を巡る攻防は激化した。ただ怒号が飛び交う中、同委員会の審議は進み、来週にも同委員会で採決され衆議院で可決される政治スケジュールとなっているようである。民主・共産の野党は、125万件の年金情報流出をあの5000万件の「消えた年金」に並ぶ政治争点としたようではあるが、どだいこの件数が1ケタ違い、しかも外部からのハッカー攻撃で、攻撃対象が広範囲の政府関係機関にまで及ぶということであれば、野党の目論見通りに運ぶとは考えるのは少し無理がありそうだ。
しかしである。今通常国会は、6月24日の会期末を迎える最終盤でもう一つの重要法案の安全保障関連法案の審議が難航している。発端は、衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人まで含めて3人の憲法学者が、揃って集団的自衛権の行使は憲法違反であると主張したことにある。安倍首相は、今年4〜5月に訪米した米国で安全保障関連法案を今夏に成立させると見得を切ってきており、今後の同法案の審議次第では空手形に終わる可能性も出てきた。今国会の会期を8月末まで延長し、遺漏なきを期すとしているようだが、この安全保障法案については、やや手違いも起こっていることが、メディアの観測報道となっている。橋下徹大阪市長が、「大阪都構想」の住民投票で破れ、政治家引退を表明したことから、維新の党の協力が不透明化したというのである。しかも、今年8月の終戦記念日には、世界から注目されている戦後70年の首相談話の発表も控えている。
そこで政治にはまったく門外漢、ズブの素人ながら、当コラムの冒頭の「まさか」の政局イベントがあるのではないかと愚考したのである。首相でありながら委員会で、目の前で質問に立つ野党議員に不規則発言を飛ばして、結局、謝罪した安倍首相の政治手法なら大いにあると読んだのである。現に昨年11月に表明して12月14日に実施した衆議院解散・総選挙では、野党の不意を打ち、自民・公明の与党で3分の2以上の議席を獲得する圧勝をしている。この総選挙は、相次ぐ女性閣僚の辞任に対応、あの第1次安倍内閣のつまずきの再現とならないようにするリスク回避策とも観測されており、となれば、今回の「流出した年金情報」でも早手回しに中央・強行突破を図ることもないとはいえないはずだ。
しかもその先には、来年夏の参議院選挙が控えている。参議院選挙で、現在の衆議院と同様に3分の2以上の議席を獲得すれば、憲法改正の発議が可能となる。国民投票に漕ぎつけて憲法改正が実現すれば、安全保障法案が合憲か違憲か国会論争する必要もなくなる。自民党は、この7月にも参議院選挙の第1次候補者を決定する予定と伝えられており、野党の民主党も、来年7月の参議院選挙が、衆・参同時選挙になる可能性もあるとして準備を進めるように指示したと報道されている。
今週の全般相場は、FRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)や日銀の金融政策決定会議、ギリシャの金融支援問題のカギを握るユーロ圏財務省会合などの重要イベントに振り回されて不安定な動きが続くと懸念されている。その上に「一寸先は闇」、「常在戦場」といわれる国内政局で、6月17日の党首討論などで与野党の攻防がさらに激化、熱い夏となるとしたら、材料株セクターとして「まさか」の選挙関連銘柄をマークしておくことも案外、有効になるかもしれないのである。
(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
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