【経済羅針盤】
経済成長の終焉――中国の米国債売却の背景に「バブル崩壊」
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■中国がアメリカ国債を減らして保有額トップの座を降りた原因とは
アメリカ国債にちょっとした異変が起こっている。

中国が、アメリカ国債では最大の買い手として君臨していたが、その座から降りた。日本が再び買い手としてトップになった。

このほどアメリカ財務省が国際資本統計で、今年2月のアメリカ国債の国別保有額を発表した。

それによると日本のアメリカ国債保有額は1兆2244億ドル、中国のそれは1兆2237億ドル――。ほんのわずかだが、日本が中国をアメリカ国債の保有額で抜いた。

メディアは、「日本が中国を追い抜いてアメリカ国債保有で世界一になった」、と報道している。メディアは、「世界一」というフレーズが付くと、無条件で見出しに使うところがある。

それはともかく識者からは、アメリカには「国際緊急経済権限法」があり、それが中国のアメリカ国債保有を縮小に向かわせているのではないか、という見方が出されている。

アメリカは、安全保障面で危機に直面したら、大統領が保有国のアメリカ国債を無効にできる――。一種の部分的な「デフォルト(債務不履行)」だが、その事態を中国が嫌って、アメリカ国債を売っているという推測である。

■中国はリーマンショックの2008年にアメリカ国債保有で「世界一」に

中国が、アメリカ国債保有額で日本を追い抜いたのは2008年のことだ。いわゆるリーマンショックが勃発した時期で、世界経済における中国のプレゼンス(存在感)が一挙に高まった時期である。

中国は、安い労働力を武器に「世界の工場」となり、消費財輸出で外貨を稼ぎ、その運用先としてアメリカ国債を購入した。

しかし、中国はリーマンショックで世界経済が未曾有のリセッションに陥ると、国内インフラ投資に膨大なカネを注ぎ込んだ。世界経済は、中国の「大判振る舞い」に救われる格好となった。

いわば、世界経済の「ホワイトナイト」(白馬の騎士)になった。ほんの一時的にではあったが・・・。

中国の国内インフラが遅れていたのは事実だが、国や地方政府のお墨付きであり、乱脈な土木建設投資が横行――。これはいわばれっきとした「官製バブル」にほかならないもので、不動産、建設、そして金融などで巨大すぎる「バブル」を膨らませた。

この「大判振る舞い」により中国はGDPで日本を大きく抜き去り、世界2位に躍進したわけである。「バブル」もGDPのうちであり、とりあえず中身は問われない――。

■中国のアメリカ国債売りに「国際緊急経済権限法」を持ち出すのは穿ち過ぎ

中国のアメリカ国債の売りに対して、いま「国際緊急経済権限法」を持ち出す必要はないのでないか。

もし、「国際緊急経済権限法」が要因であるなら、もっと盛大に、そしてもっと膨大にアメリカ国債を売却しているはずである。アメリカ国債が、大暴落するぐらいの一気の売りになっていないと文脈がつながない。

むしろ、中国経済がピークを打ち、おカネがアメリカ国債に従来ほど廻せる余裕がなくなっていると見たほうが自然であるに違いない。追加金融緩和など必死のテコ入れを図っているのは経済の高い成長が難しくなっているためだ。

一時の世界経済の「ホワイトナイト」は、それが因となり仇となり「ブラックナイト」になろうとしている。

中国はいまAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立を急ぎ、アジア諸国のインフラ投資に経済成長の活路を求めようとしている。これは中国が高い経済成長の維持・継続に手詰まり感を強めていることが背景にある。

だが、中国のこうした道筋は、日本の「バブル」、そして「バブル崩壊」の過程とあまりに似ている――。

■消費財輸出から生産財輸出に活路を求めるのは日本の「バブル」と酷似

日本の「バブル」は、自動車、家電などの耐久消費財で稼いだ貿易収支が「原資」となり、銀行など金融機関に貯め込まれた。1980年代後半、この資金が不動産、株式投資などに膨大に流れ込み、巨大な「バブル」を膨張させた。

1991年には不動産に対する融資規制が厳しくなった。「バブル崩壊」が始まったが、1990年代前半は「アジアの時代」が騒がれ、日本はそこに活路を求めた。

アジア諸国が勃興し、このインフラ投資すなわち道路、港湾など整備、工場建設などが活発化した。日本は、三菱重工などを先頭にして生産財を輸出して「バブル崩壊」をしのぐ動きをとった。

しかし、1997年に「アジア通貨危機」が起こった。アジア諸国の通貨が軒並みに紙切れ同然となり、アジア諸国の生産財需要は一挙に雲散霧消した。

日本では、その1997年の後半に銀行、証券会社の大型倒産が表面化し、不動産などの企業が軒並みに窮地に追い込まれた。そして、2000年代前半には、「金融恐慌」というか、金融の大再編に追い込まれた。いわば「バブル崩壊」が全面化し、にっちもさっちもいかない状態になった。

どうやら、中国はその同じ道筋をたどろうとしているようにみえる・・・。

(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)

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