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世界経済を覆うデフレと「出口戦略」
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■薄氷の上に立つ世界経済

いま世界は束の間の平和といったところか。あるいは平和といっても、薄氷の上のそれといえるかもしれない。

 EU(欧州連合)は、ギリシャ財政危機をとりあえず回避するため4ヶ月の金融支援継続を行うことになった。

 ただし、ギリシャの財政緊縮化を厳格に求めるドイツなどと、そのスピードを緩めてくれというギリシャとの根本的な対立が解決していない。

 ギリシャとしては、財政緊縮化をいたずらに続けるだけでは「デフレ地獄」から抜け出せない――。EUの根底で、危機の火種は依然としてくすぶっている。

 中国は、不動産・住宅バブルの崩壊が表面化――。高成長経済の軌道を描き続けるのは困難になっている。経済の高成長が止まれば、「シャドーバンキング」などの破綻が懸念されることになりかねない。

 日本は日本で、デフレをいまだ脱しきれていない。

 アベノミクスによって2度の金融量的質的緩和がなされた。円安、そして2014年9月までの1バーレル=110ドルといった原油価格高騰、と「インフレ誘発要因」の揃い踏みとなった。だが、それでも「デフレ克服」にはいたらず、インフレの気配はほとんど見えない。

■アメリカ=雇用好転、だが利上げには単純には踏み込めない

 アメリカはひとり雇用が好転しており、失業率が5・5%と「完全雇用」に近い状態になっている。

 だが、雇用好転=失業率の低下は、利上げ、ドルの「独歩高」を呼ぶという懸念を惹起する。NY株価は、雇用統計が発表されると300ドル超という大幅下落を演じた――。

 雇用の強さは本来ならアメリカの景気の強さを示すもので、株価大幅上昇となるような材料である。だが、NY株価はその正反対の動きとなっている。

 失業率は極限まで低下した。ただし、賃金上昇や物価上昇への本格波及はまだ見えていない。そこまで行けば、年央にも利上げ実施ということになるが、そう単純にはいかない。

 経済のグローバル化や原油価格低迷もあり、ここでもインフレの進展にはつながっていかないという見方がある。

 アメリカは、利上げという「出口戦略」の取り扱いに戸惑うというか、「出口」の前で行ったり戻ったりの状態を繰り返すのではないか。

■今年後半にも3度目の金融量的質的緩和を発動か

 日本は、おそらく、再びのデフレ懸念に陥るのではないか。

 アベノミクスの要請で賃上げはなされるにしても、大企業の正社員にとどまる。

 企業としては貯め込んだ内部留保(=利益剰余金)を取り崩すまでもない。期間利益で賃上げが行われる。

 だが、契約社員、派遣社員たちの非正規社員に賃上げの恩恵や波及はない。
日本の資本主義にそこまでの麗しい善意があると思うのは、少し求めすぎに違いない。消費購買力は強化されない。「デフレ克服」が順調に進むとは思えない。

 アベノミクスは、地方分権を含む「規制改革」に踏み込む気概を見せていない。経済は、息切れ状態に落ち込む可能性を見ておくべきである。目標としているインフレどころか、デフレ懸念が再燃しかねない――。

 結局、早ければ今年後半にも日銀は3度目の金融量的質的緩和を発動することになるのではないか。

 「不況下の株高」――株式市場には大きな恩恵となる。だが、それはデフレ克服の手詰まりを意味するものになりかねない。

(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
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