「どうする家計」で生活防衛・節約志向の「3R」関連株に大手を振るってのSDGs投資も一法
NHKの大河ドラマのタイトル風に表現すれば、「どうする東彦」だろうか?日本銀行の黒田東彦総裁が、「前門の虎 後門の狼」と攻められているようにみえるからだ。前門には、今年1月の東京都区部の消費者物価が、前年同月比4.3%上昇と続伸し、41年8カ月ぶりの高水準になったことが控えている。後門には、異次元金融緩和策の修正を提案したIMF(国際通貨基金)が待ち構えている。異次元緩和策の副作用が、問題視されているのである。しかも、これにどう対処するか残された時間は、黒田総裁の任期満了の4月8日まであとわずか2カ月ちょっとしかない。
10年前の2013年4月4日に新任早々の黒田総裁により決定された異次元金融緩和策は、「長めの金利や資産価格のプレミアムに働きかけ市場・経済主体の期待を抜本的に転換させ15年近く続いているデフレからの脱却に導く」として、物価安定目標を2%とした。バブル経済崩壊後の「失われた20年」で日本の隅々にまで横溢していた生活防衛意識や節約志向のデフレマインドをインフレマインドに転換させ、消費ブームや設備投資景気などを喚起しさせようとしたのである。
今年1月の4.3%の消費者物価上昇率は、もちろんこの物価安定目標2%を十二分にクリアしている。しかしこれは、黒田総裁からみれば「悪い物価上昇」だろう。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な感染爆発)によるサプライチェーン途絶やロシアのウクライナへの軍事侵攻による地政学リスクで資源・穀物価格が急騰したコストプッシュインフレによる物価上昇で、賃金が上がって消費マインドが回復して物価が上昇に転じるデマンドプル・インフレでないからである。
しかもこの物価上昇に拍車を掛けているのが、日米の金利格差拡大を背景にした円安・ドル高による輸入物価指数の上昇である。これを反転させるためにも異次元金融緩和策の出口戦略は不可避として、為替市場では海外勢を中心に円買い・ドル売りを仕掛けられた。為替相場は一時、1ドル=127円台との円高・ドル安となった。さらに間の悪いことに、前週には電力2社が相次ぎ電気料金の値上げを申請した。テレビのニュースでは、山形県のオール電化した家庭の1カ月の電気料金が10万円を超えたと報道されたが、家計はまさに火の車である。
こうなると家計も、同じく「どうする家計」と決断を迫られることになる。「失われた20年」のトラウマが甦り、またまた生活防衛意識、節約志向の出番となることは想像に難くない。株式市場では、すでにこれを先取りしたような動きが出ている。昨年年末から今年年初に掛けて業績を上方修正した銘柄が特異的に多いセクターがあってやや動意付いたののである。再利用(リユース)、再資源化(リサイクル)、ごみ減量化(リデュース)の「3R」関連株がそれで、その「R」の対象がブランド品、自動車、マンションなど多彩なのである。
この生活防衛意識・節約志向は、マイナーではなくメジャーな経済行動である。実は「3R」は、国際公約のSDGs(持続可能な開発目標)達成のためのサーキュラーエコノミー(循環型経済、CE)の一角に位置付けられ、CE推進による経済効果は、全世界で540兆円に達するとも観測されているのである。令和版の「3R」は、これに「もったいない」のゲーム感覚が加わる。「3R」株の業績の上方修正は、一過性のものでなく、成長産業化の前触れかもしれないのである。いまホットな話題となっている食品ロス関連株を含め、「3R」関連株への大手を振るってのSDGs投資も一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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