「掉尾の一振」株は変異ウイルス関連株?逆なら「越年」作戦は業績上方修正プラス1の金融株が候補
師走相場のキャッチコピーは、まず「掉尾の一振」で、次いで「株券を枕に越年」となる。「掉尾の一振」では、餅つき相場での餅代・ミルク代稼ぎの一発勝負に賭け、押し詰まると今度は「株券を枕に越年」として目を新年相場に絞って強気の買い持ち株に期待を膨らませる。時として「掉尾の一振」の目論見が、「掉尾の三振」と空砲に終わり、「株券を枕に越年」が、「引かれ玉を枕に越年」と事志と異なり枕の下が気になって飛んでもない初夢を見ることも起こる。
足元の2021年師走相場も、「掉尾の一振」か「掉尾の三振」かははなはだ微妙である。というのも、前週末26日に南アフリカで確認された新型コロナウイルス感染症の新たな変異ウイルス「オミクロン型」を警戒して世界同時株安となったからだ。ワクチン効果が低下すると伝えられ、日経平均株価は、747円安と急落してフシ目の2万9000円を割った。
その後オープンした前週末の欧州市場、米国市場でも連鎖安は止まらず、とくに米国市場では、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が、905ドル安と急続落して今年最大の下落幅となった。原油価格も、早くも欧米各国が取った渡航制限措置による原油需給の緩和懸念で1バーレル=68ドルと続落し、長期金利も、安全資産の債券買いで1.47%へ急低下した。
ただその急落相場のなかでも逆行高する銘柄はあり、米国市場では動画配信のネットフリックスやビデオ会議システムのズーム、さらにファイザーやモデルナのワクチン株が急伸した。それに先立つ東京市場でも、AI(人工知能)関連のFRONTEO<2158>(東マ)がストップ高し、東証2部市場では防疫関連のマスクの川本産業<3604>(東2)と防護服のアゼアス<3161>(東2)が、同市場の値上がり率ランキングのそれぞれ第1位、第3位にランクインした。
となると取り敢えず「掉尾の一振」銘柄は、国内外とも「オミクロン型」関連株にトライすることになりそうだ。防疫関連株、巣ごもり消費関連株のリバイバル相場である。問題は、この逆が起こるかどうかに掛かる。「オミクロン型」の正体が明らかになってワクチン効果が確認され、欧米各国の渡航制限も徐々に緩和されるケースである。米国のファイザーやドイツのビオンテックは、2週間以内に既存ワクチンの効果が確認可能と発表したと伝えられている。
この逆転ケースでは原油価格は反転し、米国の長期金利も上昇、再び円安・ドル高も進行することにならないとも限らない。現に長期金利に関しては、前週末の米国市場で長期金利も低下したにもかかわらず、FRB(米連邦準備制度理事会)の2022年の政策金利引き上げが、従来予想の2回から3回に増加し、引き上げ時期も前倒しされるとの観測が伝えられた。となると焦点は、12月14日〜15日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)だろう。バイデン大統領が決定したパウエル議長再任の政治メッセージを含め、読み解くヒントを与えてくれることになる。
ここで米長期金利が再び上昇すると仮定すれば、「株券を枕に越年」の候補株に利ザヤ拡大、運用環境も好転を享受する銀行株、保険株などの金融株が浮上するはずである。すでに3月期決算会社の金融株には、9月中間期業績の発表時に3月通期業績の上方修正に踏み切った銘柄も続出している。そこで今週の当特集では、この業績を修正済みの金融株を地銀株も含めて取り上げることとした。「オミクロン型」の感染動向を横目で睨みつつ、為替相場と米国の長期金利の動向をウオッチしていれば、アプローチのタイミングも、「株券を枕に越年」か「引かれ玉を枕に越年」かも自ずと明らかになりそうである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)