【どう見るこの相場】新年度相場は「木」から「森」への


 
新年度相場は「木」から「森」へのボトムアップ・シナリオでまず小型不動産株に打診買い余地
 
 
4月、新年度である。しかし初日の1日は、東証の市場区分再編前の最終売買日にもかかわらず、餞相場も惜別の暇もなく厳しいスタートとなった。寄り付き前に発表された今年3月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数が、7四半期ぶりに悪化し、日経平均株価は、前日の米国株の大幅続落も重なって一時、421円安と大幅続落し、大引けに掛けやや下げ幅を縮めたものの、155円安の2万7665円と3日続落した。
 
 外部環境は、やはりアゲインストであった。ロシアがウクライナへ軍事侵攻した地政学リスクも、ロシアが進める停戦協議は、部隊を再配置し攻撃を再開するための時間稼ぎとの疑いを強め、長期化が懸念されていた。新型コロナウイルス感染症も、「第6波」収束を受け3月22日に「まん延等防止重点措置」が解除されたばかりなのに、早くも新規感染者数がリバウンドし「第7波」への警戒感を強めた。日銀の「指し値オペ」による円安・ドル高の進行、輸入資源価格高、企業コスト上昇、家計圧迫は、岸田首相が指示した緊急の物価高対策で吸収できるかまだ未知数である。
 
 これでは新年度入りとともに、「有事」トレンドが「平時」モードへ切り替わることは期待しずらい。ということは、目先筋中心にリスクオン・リスクオフが忙しく交錯する日替わりメニューが、中長期投資家の新規マネーが流入してファンダメンタルズ重視のマーケットに転換する相場シナリオの実現には時間が掛かるということでもある。しかしである。ここは「木」を見るか「森」を見るかの分岐点であると捉えることもできるのではないか?個別銘柄(木)ごとの小さな変化からボトムアップして相場全体(森)のトレンドを推し量る投資スタンスへの示唆である。そこで今週の当特集は、この「木」銘柄を重視することにした。「木」銘柄の急動意は、不動産株の浮上を先取りしているようにも見え、これにフォーカスするのである。
 
 「木」銘柄とは、スター・マイカ・ホールディングス<2975>(東証プライム)である。同社株は、3月31日に今2022年11月期業績を上方修正し、連続最高利益を伸ばし、配当も増配することからストップ高するとともに東証1部値上がり率ランキングのトップに躍り出た。と同時にこの株価急騰が、同業他社にも波及し、新高値更新銘柄は同社株を含めて12銘柄に達し、値上がり率ランキングの上位にランクインする銘柄も続出したのである。
 
 スター・マイカの業績上方修正は、新築マンションの価格が高騰し高止まりするなか、中古マンションを買い取り、リフォームして販売するリノベーションマンションの販売価格が相対的に割安となって好調に販売戸数を伸ばしていることによるもので、実需に裏付けされた上方修正要因となっている。この実需系銘柄では、「ウイズ・コロナ」の在宅勤務・リモートワーク拡大の「巣ごもり」需要で戸建て住宅の販売戸数を拡大させたハウスビルダー株が代表となった。しかし1日に高値を更新した銘柄には、不動産へのオルタナティブ投資(代替投資)を強めている海外のフアンド筋や富裕層、ハイサラリー層、サラリーマン投資家向けに仲介業務やコンサルティング、情報提供する不動産テック企業も含まれている。そしてこの2つの不動産株に共通するのは、投資採算的に割安ということである。
 
 また日銀の「指し値オペ」のよる金利上昇抑制は、不動産投資の資金調達コストを低位で安定させる追い風となるばかりか、同時に日米の金利差拡大により円安・ドル高が進み、海外投資家向けに日本の不動産価格の価格優位性を鮮明化する効果も発揮する。まさに「木」から「森」へボトムアップする道筋を示してくれるかもしれないのである。主力の不動産株よりもまず小型の不動産株中心に先回り、打診買いするのに一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)


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