■「マッチ」のインバウンド株に「ポンプ」効果の防疫関連株を加えた2本足打法に一考余地
例えてみれば、これはまるで「マッチ・ポンプ」ではないか。第2次岸田政権が、前のめりで進めているインバウンド需要喚起策と、13日に発表した新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行対策との関係である。インバウンド喚起策では、水際対策の緩和から始まって、入国制限の撤廃、屋外でのマスク着用の廃止など外国人観光客の呼び込みにあの手この手を繰り出す「マッチ」で、爆買いを再燃させようとしている。
一方、同時流行対策では、同時流行時のピークには1日75万人の患者が発生する可能性があり、感染急増時の医療体制を維持し、高齢者らを重症化リスクから守ることを目指すとしている。しかし行動制限なしでインバウンド需要喚起策に「全国旅行支援」が加われば、前週末にテレビ報道されたように土・日曜日の観光地は大賑わいをみせ、その分だけ内外の観光客同士や地域住民との接触機会は増えて感染リスクも高まるだけに、インバウンド熱を抑制させる「ポンプ」効果を内包することにもなる。
それで思い出すのが、あの2020年初頭の新型コロナウイルス感染症の感染が、国内で初確認されて以降の第1波である。すでにその前年末に中国・武漢市での正体不明の肺炎の集団感染が確認されていたにもかかわらず、折からの年明けの春節に向け入国制限をせず中国からの外国人観光客が北海道などに大挙来日し、感染拡大の引き金になりその後のパンデミック(世界的な感染爆発)につながったことは記憶に新しい。
もちろん当時と異なり、2年余にわたる感染対策の学習効果を積み上げ、ワクチンや治療薬も万全で、医療機関にもアメとムチで対応を督励済みである。さらに為替相場が、34年ぶりに1ドル=148円台まで円安・ドル高となっていることも追い風で、敢えて円安防衛策には口先介入にとどめているのも、5兆円目標のインバウンド需要のためのビナイン・ネグレクト(不作為)ではないかと勘繰られる要素もある。この素人考えが当たらずとも遠からずになるとすれは、岸田内閣の経済対策は、目下編成中の総合経済対策より与野党の政治争点にはなり難いインバウンド需要喚起策の即効性に軸足を置く一本足打法ということになる。
問題は、想定を上回る感染拡大の際の「ポンプ」効果で、いわば「マッチ」が不着火となるケースである。厚生労働省は、すでに季節性インフルエンザが、北半球のオーストラリアでは例年より数カ月早く流行が確認されたと警告し、今年10月からワクチン接種を進めるべく体制を整えている。今冬の季節性インフルエンザの供給量は、3521万本と見込み、前々年比14.2%減となった前年度の2867万本から大幅増となり過去最高の供給本数とする。また前週10月13日付けの日本経済新聞では、厚生労働省がコロナとインフルエンザの同時検査キットを3500回〜4000万回分確保する増産を内外の製薬大手に要請したとも報道された。
ということで今週の当特集は、インバウンド関連株の一本足打法に加え、二本足打法として新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時感染に関連する防疫関連株にフォーカスすることとした。きょう週明けは、前週末14日に急騰しサプライズとなった主力のハイテク株、値がさ株が、その後の7日の米国ダウ工業株30種平均(NYダウ)の403ドル安の急反落で先行き警戒感が強まり、一方で逆に14日に急落したインバウンド株がリバウンドする可能性もあるなか、ワクチン関連株のほか検査キット関連株、厚生労働省の同時流行対策で再脚光のオンライン診療株などに広くサバイバルを期待する2本足打法も、一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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