【どう見るこの相場】インフレヘッジの生活・資産防衛相場
インフレヘッジの生活・資産防衛相場へリサイクル株、リユース株に搦め手投資
日米の中央銀行の金融政策が、真逆となった。FRB(米連邦準備制度理事会)は、今年6月14日〜15日開催のFOMC(公開市場委員会)で政策金利を通常の3倍となる0.75%引き上げ、7月のFOMCでも0.5%か0.75%の引き上げを示唆し、インフレ抑制に向け金融引き締め策を加速させ、リセッション(景気後退)を招くハードランディングをも厭わないタカ派政策を鮮明化させた。対して日銀は、6月16日〜17日の金融政策決定会合で異次元金融緩和策を継続する現状維持を決定した。
この日米の違いは、もちろんインフレ度合いの差が影響しているのだろう。米国の今年5月の消費者物価指数(CPI)は、8・6%上昇と40年5カ月ぶりの高い伸びとなった。日本のCPIも、今年4月に7年1カ月ぶりの高い伸びとなったが、上昇率は2.1%と米国に比べればなお低位にある。日銀の黒田東彦総裁は、決定会合後の記者会見で「金融を引き締めるとさらに景気の下押し圧力になる」と背景説明をした。
しかし、この違いにはもっと別の力学が働いているのではないかというのが、今回の当コラムの問題意識である。日米の政治状況が違うのである。日本は、7月10日に参議院選挙の投開票日を迎える。対して米国は、今年11月に中間選挙が控えている。中央銀行の金融政策は、もちろん政府から独立し自主性が担保されているが、選挙情勢の有利、不利が中央銀行の金融政策に暗黙の政治圧力になっているのではないかとあてずっぽうながら推測したくなった。
日本では、岸田内閣の内閣支持率が、高位に張り付く一方、野党が、互いに足を引っ張り合い、野党の与党化も続いて埋没状態となっており、この敵失からも岸田首相が建前上、目標としている与党全体での過半数確保はまず間違いなさそうだ。黒田総裁は、後に誤解を与えたと撤回し謝罪したが、値上げラッシュに対して「家計の値上げ許容度は高まっている」と発言しており、物価上昇に対してそれぐらい余裕のある距離感を保っていたことを窺わせる。
対して米国では、上院・下院の議席数とも民主党と共和党とが拮抗し、インフレ問題の去就によっては11月の中間選挙に大きく響く可能性がある。仮にバイデン政権の死命を制することになったら大問題で、パウエルFRB議長に掛かる緊張感は、相当なもののはずだ。FOMCはこの先、7月、9月、11月、12月と開催予定だが、中間選挙までに何としてもインフレを抑え込まなくてはならないプレッシャーが働く。
毎度毎度、当コラムは前口上が長くなって恐縮だが、さてここから本題である。輸入物価高をプッシュする円安を放置する日銀の金融政策の現状維持や黒田総裁の口ぶりでは、インフレ対応は、あくまで家計や投資家の許容度次第、自助努力、自己責任ということになりそうだ。となれば、あの恐ろしい「失われた20年」と同様の生活防衛・資産防衛策である。低価格志向、節約志向のリバイバルは避けられない。関連銘柄には、ファーストファッション株、ディスカウントストア株、SPA(製造小売り)株、100円ショップ株、さらには物々交換のフリマアプリのメルカリ<4385>(東証プライム)などが再浮上するはずだ。
しかし、ファーストファッションの代表株のファーストリテイリング<9983>(東証プライム)は、秋冬物の一部商品の値上げを明らかにし、家具のSPAのニトリホールディングス<9843>(東証プライム)は、円安がビジネスモデルの障害となり、ディスカウントストアの神戸物産<3038>(東証プライム)も、円安がマイナスに作用するとみられ、100円ショップ株は、月次売上高の伸びがすでに鈍化しており、これからも万全の生活防衛株の輝きを発揮し続けてくれるかは保証の限りではない。
そこでも搦め手銘柄として注目したいのが、当コラムで以前も取り上げたリサイクル・リユースの2R関連株である。長期金利が上昇し為替相場も乱高下が懸念されているなか、無国籍通貨とされる金のリサイクル関連株のほか、ブランド品、自動車・オートバイ、マンション・戸建て住宅まで幅広い銘柄に生活防衛・資産防衛株人気が再燃し、インフレヘッジ相場が展開されることを期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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