《マーケットストラテジーメモ》12月2週

【推移】

3日(月):
週末のNY株式市場は小幅安の展開。「トランプ大統領とロシアとの不透明な関係を巡る疑惑捜査に翻弄された」という声が聞こえる。
一方で共和党のマコネル上院院内総務が税制改革法案の上院通過に必要な票数を確保したと表明。これを受けて株価は下落幅を縮小したという点もある。株価が過去最高値水準にあることからさまざまな観測に過度に反応したという面もあろう。

週間ベースではNYダウは2.9%高、2週続伸。NASDAQは0.6%安、3週ぶり反落。S&P500は1.5%高、2週続伸。11月月間ではNYダウは3.8%高、8カ月続伸(累計15.9%上昇)。NASDAQは2.2%高、5カ月続伸(同11.9%上昇)。S&P500は2.8%高、8カ月続伸(同12.1%上昇)。

10年国債利回りは2.315%と、前日の2.415%から大幅に低下(価格は上昇)。ドルは下落。フリン氏と税制改革の綱引きというところ。ISM製造業景気指数は58.2で着地。前月の58.7から低下した。市場予想は58.4。もっとも2004年5月以来の高水準をつけた9月の数値を小幅に下回るレベル。50を超えていれば製造業の拡大という解釈で良いだろう。「月の初日高」は18ヶ月連続。

「東京エレクトロンや安川電機などに大きく売られる動きが見られた。しかし日経平均が大幅安どころか上昇で終えたのは驚きの動き」という声が聞こえる。11月9日に乱高下。6日続落で上昇一服が鮮明となったかに見えた。
しかし伏兵のように銀行株が上昇しての3日続伸。「悪材料に対しては相当耐性がついている」との見方だ。終値ベースの年初来高値22937円への挑戦権を持っているという印象だ。

日経平均は週間では約268円(1.2%)の上昇。週足は2週連続で陽線。TOPIXは0.9%高で2週続伸。東証マザーズ指数は0.5%高、2週続伸。
日経ジャスダック平均は0.9%高、2週続伸。東証2部指数は0.2%高、2週続伸。11月月間では、日経平均株価は3.2%高。TOPIX1.5%高。ともに2カ月ぶりの反発。東証マザーズ指数は2.9%高、3カ月続伸(累計6.0%上昇)。日経ジャスダック平均は2.6%高、7カ月続伸(同27.8%上昇)。東証2部指数は2.2%安、7カ月ぶり反落。
日経平均は3ケタの下落となったスーパームーンの週初。
週末NY市場の荒い動きを敷衍したかのような形となったが、所詮小ぶりの動きだ。25日線(22482円)のサポートは効いているのだろう。前場のTOPIXは1.6ポイント(0.09%)安だったので日銀もETF買い出動できず。「週明け月曜日は4連敗」という記録だけが残った。日経平均株価は111円安の22707円と4日ぶりの反落。ロシアや北朝鮮の警戒から売り物優勢となった。
メジャーSQを控えた荒い動きとも言える。東証一部の売買代金は2兆4096億円。東証一部の値上がり銘柄数は645、値下がりは1314。ソニー、ファーストリテイリングが上昇。キーエンス、ファナック、任天堂が下落。

5日(火):
週明けのNYダウは2日ぶりにザラバと終値ベースの過去最高値を更新した。背景は年内の税制改革実現への期待感。法人税率引き下げの収益押し上げ効果が相対的に大きい銀行や小売などのセクターが上昇をけん引した。ただ皮肉なことに実効税率の低いIT関連銘柄は売られたという構図。
NYダウの上昇幅は一時300ドルを超える場魔面もあったがその後は伸び悩み。マージャーマンデーは健在。今週は「21世紀フォックスの一部事業の買収協議を再開した」と伝わったウォルト・ディズニーが5%近く上昇。1銘柄でダウ平均を34ドルあまり押し上げた。上昇寄与度トップはボーイングで45ドルほど指数を押し上げた。
年末商戦の好調からメーシーズなど小売りセクターも堅調。
一方でNASDAQ総合株価指数とS&P500は続落。大納会の打鐘ゲストは囲碁棋士7冠の井山裕太氏。この解釈は結構難しい。

火曜の日経平均は続落。前日のNY市場はハイテク株が下げる一方でNYダウは史上最高値を更新。一方でシカゴ225先物は25日線ギリギリまで売られていた。「
前場で下値を確認し25日線や22500円を割り込まなかったのは強い動きであった」という見方だ。実際日足は陽線だった。「海運株と鉄鋼株の頑強さが光った一日。超値がさの東京エレクトロンやキーエンスが調整局面を抜け出せない」という声が聞こえる。三菱UFJとファーストリテの10日続伸。キーエンスの7日続落というのが当面の相場の結果となっている。

空売り比率は39.5%まで低下した。12月1日現在の信用買い残は813億円増加(6週連続増加)し2兆9886億円。約1年11ヶ月ぶりの水準まで積み上がった。信用売り残は343億円減少(2週間ぶり)し1兆154億円。

気になるのは日経平均のPERが14.9倍でEPSが1517円まで低下したこと。11月17日の1534円がずいぶん高く見えてきた印象。日経平均株価は84円安の226222円と続落。ただTOPIXは反発、JPX日経400も反発でまちの動き。ハイテク売りのディフェンシブ買いはNYの写真相場となった。東証一部の売買代金は2兆6899億円。東証一部の値上がり銘柄数は1055、値下がりは905銘柄。セコム、ファーストリテイリング、花王、鉄が上昇、東エレ、リクルート、任天堂が下落。

6日(水):
NY株式市場は下落。S&P500は3営業日続落。3日続落は8月初旬以来で年初来の上昇率は17%まで縮小した。もっとも「税制改革が成立し、20%の法人税が実現するというセンチメントは続いている。減税によりS&P500採用企業の2018年収益はさらに9%伸びる見通し」という声も聞こえる。ウォルト・ディズニーや住宅大手のトール・ブラザースの下落が響いたとの解釈。

債券市場では、税制改革法案の議会通過見通しから短期債利回りが上昇。2年債利回りは2008年10月以来、3年債利回りは2009年6月以来の水準まで上昇した。為替市場も税制改革法案を巡り楽観的な見方からドルは上昇。10月の貿易収支の赤字額は前月比8.6%増の487億3100万ドル。金額ベースで1月以来9カ月ぶりの高水準での着地。市場予想の475億ドルを上回る赤字となった。「原油の値上がりに伴い輸入額が増えた」という指摘がある。ISM非製造業総合指数(NMI)は57.4と、前月の60.1から低下。7月以来の低水準となった。

水曜の日経平均は今年最大の下落幅。前引けが▲202円、大引けが▲445円。年初来最大の下落幅を伴って下放れとなった。3月22日が414円安、昨年11月9日が919円安。いずれも水曜だったことは記憶にとどめておきたい。

市場関係者の分析。
(1)トランプ大統領がエルサレムをイスラエル首都として認定する方針を表明。
(2)日銀・政井審議委員が「現在の金融緩和政策の効果と副作用をきめ細かく見ていくことが必要」と発言。
(3)LME銅市況が中国需要の減退懸念で急落。
しかし実態はメジャーSQ前の荒れる水曜日特有の動きだったのだろう。

日経平均株価は445円安の22177円と3日続落。下落幅を500円以上に拡大した場面もあった。終値ベースでは今年最大の下落幅で3月22日水曜の414円を超えた。昨年11月9日水曜の919円安以来の下落幅となった。
TOPIXも反落。NY株安を受けた格好で売り物優勢の展開。昼の間にトランプ大統領のエルサレムを首都容認発言が伝わり一段安の動き。日銀政井審議委員の「金融緩和の副作用を懸念」との発言もネガティブに受け取られた。

日経平均が25日線を下回ったのは11月9日以来のこと。「売り材料はどれも説得力には欠ける。下落が目だったのは前日まで10営業日連続で上昇してきた三菱 UFJフィナンシャル・グループなどの金融株をはじめ、信越化学工業や安川電機など今回の株高局面で利幅の厚い銘柄ばかり」という見方もある。「メジャーSQ算出を控え、一気に売りを膨らませるヘッジファンドもあったようだ」という声も聞こえる。

7日(木):
NY株式市場はマチマチの動き。NYダウは続落、S&P500は3月以来の4日続落。NASDAQは4日ぶりの反発。混迷の背景は税制改革法案の行方。精製燃料在庫が予想外に急増していた原油価格の2%超の下落も悪材料視された。
一方でこのところ売られていたハイテクセクターは買い戻しの動き。マイクロソフト、フェイスブック、アルファベット(グーグル)は1%超の上昇となった。
ADP全米米雇用レポートで民間部門雇用者数は19万人増。市場予想は18.5万人増だった。「製造業部門が統計開始以来少なくとも15年ぶりの大幅な増加。しかし全体の伸びは10月から鈍化した」との見方。「雇用は業種、企業の規模を問わず幅広く増加しており、労働市場は活況を呈している」という声が聞こえる。
日本時間金曜夜発表予定の雇用統計は民間部門雇用者数が19万人増と、10月の25.5万人増から鈍化。失業率は横ばいで4.1%の見通し。トランプ米大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認めると正式に発表。世界各国から批判の声が高まっておりは米国債に買いが入る要因となった。「米政府機関閉鎖の可能性。加えてトランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定。長期の地政学リスクへの懸念を背景に、投資資金が円に流れた」という見方もある
裁定買い残は1612億円増加し3兆387億円と3兆円台乗せ。裁定売り残は585億円増加の4202億円。3兆円に積み上がった買い残のメジャーSQ前の解消売りというのが一番シックリする。

イヤな材料は一般週刊誌の株特集。「初心者でも火傷しない、暴落に負けない。『最強株』60銘柄リスト」。安易な見出しだが、週刊誌の株特集は株安サイン。
今回は違って欲しいところ。エルサレムなんて行ったことも見たこともない人がエルサレムを語る滑稽さに似ている。世界の株価が動く大きな理由は金利の動向。そして金融機関と金融規制当局のバトルの方向。ココを忘れて、北朝鮮だ、ベネズエラだなんて見えないことを憶測すると見間違える。

日経平均株価は320円高の22498円4日ぶりの反発。前日の下落の7割程度を戻した。基本は自立反発との解釈。香港株の上昇も支援材料となった。ただし25日線22531円は抜けず上値を抑えられた格好。東証一部の売買代金は2兆8073億円。東証一部の値上がり銘柄数は1716と全体の8割。値下がりは269。東エレ、ファナック、旭化成が上昇。楽天、中部電力が下落。

1日(金):
NY株式は週末の雇用統計を控えて小動き。長期債利回りは上昇した。米国の家計資産は7〜9月に増加し、過去最高を更新した。株式相場の急伸や不動産価値の上昇が寄与した。住宅ローンの借り入れは年率2.7%増。この他、自動車や学資ローンなどの消費者信用残高は4.9%増。

ゴ―ルドマンのレポートは「平均的バリュエーションは1900年以来でもっとも高い水準」と指摘。「株と債券、クレジットが同時に高くなる状況はめったにない、楽しいことには必ず終わりがやってくる。弱気相場がやってくるだろう」というのが結論。
ある意味での免罪符なのかも知れない。

水曜は445円安で木曜は320円高。この2日間では結局、何が理由か不明ならが120円近く下げて、25日線を下に抜けて22500円も割り込んだ。
一方で、マザーズ指数や日経ジャスダック平均、東証2部指数などは、水曜の下落以上の上昇。指数でなく個別という年末特有の減少かも知れない。

11月第5週の海外投資家は3週連続で売り越し。売越額は1973億円。信託銀行は2週ぶりに売り越し。売越額は304億円。個人は2週連続の売り越しで売越額は672億円。先物動向では海外投資家は4週連続で売り越し。売越額は908億円。現物株と合わせると2876億円の売り越し。証券会社の自己売買部門が4週連続で買い越し、買越額は11億円。個人は3週ぶりの買い越しで、買越額は680億円。8月第1週の937億円)以来の高水準となった。

日経平均株価は323円05銭高の22811円08銭と大幅続伸。メジャーSQを無難に通過したことで、需給面での警戒感が後退。日本の7〜9月期GDP2次速報値の上方修正も好感された。トランプ米大統領が1月にインフラ投資計画の詳細を発表すると伝わったことも好材料となった。
ドル/円が113円台と円安基調を維持したことも追い風となりSQ値22590円66銭を上回る水準で推移。「幻のSQ」とならなかった。

東証1部の売買代金は3兆7465億円。東証1部の値上がり銘柄数は1405と、全体の69%。値下がりは543銘柄。TOPIXは続伸。終値は1800ポイント台を回復し、11月 9日以来、約1カ月ぶりの高値水準を回復した。大王紙、王子、三井不、HOYA、キーエンスが上昇。任天堂、KDDI、ファナックが下落。

(2) 欧米動向
グーグルの親会社アルファベットの実効法人税率は21.1%。
アップルはで26.1%。
主力ハイテク企業の多くはそれほど税金を支払っていない状況が浮き彫りになった。
「税制改革法案の一本化の過程でつまずく可能性は高く、株高は行き過ぎ」という指摘もみられる。
ゴールドマンのリポートで「FAANG銘柄を大型投資信託がアンダーウエイトにしていた」と指摘していたことも悪材料視された。

EUが公表した租税回避地の「ブラックリスト」。
パナマやマカオなどに並んで韓国も入っているのは意外感。
「課税逃れ対策に非協力的」というのが判断基準だという。
「グレーリスト」は47カ国だという。
お金を閉じ込めると、経済が萎縮するが、これも致し方ないという流れなのだろう。


(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち16指数が上昇。
上位1位トルコ週間騰落率4.21%、2位イタリア3.02%、3位ドイツ2.27%、
4位フィリピン1.97%、5位フランス1.55%、14位米国0.40%。 し
下位25位南アフリカ▲2.30%、24位ベトナム▲2.10%、23位台湾▲1.90%、
22位香港▲1.49%、21位ロシア▲1.22%、17位日本▲0.03%。


【展望】
スケジュールを見てみると・・・
11日(月):法人企業景気予測調査、マネーストック
12日(火):企業物価指数、第三次産業活動指数、今年の漢字発表、米FOMC、生産者物価、財政収支、独ZEW景況感、気候変動サミット(パリ)
13日(水):機械受注、米消費者物価、イエレン議長記者会見、
14日(木):首都圏マンション販売、米小売売上高、ECB定例理事会、中国鉱工業生産等
15日(金):日銀短観、米NY連銀製造業景気指数、鉱工業生産


日経MJ2017年ヒット番付の東の横綱はアマゾン・エフェクト。
西の横綱は任天堂ゲーム機。
安室奈美恵やAIスピーカーが大関。
銀座SIX、ソソタウン、しわ取り化粧品、睡眠負債商品が三役。
西の前頭は「株高」となった。
これは結構意外感。
「株高」がヒットということはトレンディということ。
なんか王政復古の感がする。

「申酉騒ぐ」から「戌笑う」。
日経平均は11月末まで3610円(18.9%)の上昇。
23000円で20%上昇。
1950年移行、5回の酉年の上昇率は平均15%だからそれを上回っている。
来年は戌年。
日経平均の勝率は80%。
亥年、酉年と同率。
申年の83%についで2位。
06年」6.9%、94年13.2%の上昇だった。
82年は4.4%、58年は40.5%だった。
70年は▲15.8%だがこれだけが下落した例。
戌は笑いそうな気配。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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