《マーケットストラテジーメモ》11月3週
【推移】
13日(月):
週末のNY株式市場はNYダウとS&P500が下落。「法人税減税の行方を巡る不透明感が圧迫した」との解釈。インテルとアップルの下げが指数の下落要因となった。週間ベースではNYダウは0.5%安。NASDAQは0.2%安。S&P500は0.2%安。各指数とも9週ぶりに反落した。国債利回りは昇。2年債利回りが9年ぶり高水準。
ドル円は113円台半ばで推移し週間では0.5%安となった。1月の米ミシガン大消費者信頼感指数は97.8で着地。荒い動きとなった前週の日経平均。「25日線から8%近くプラスかい離となれば一度は反落」という声も聞こえる。1996年6月につけたバブル崩壊後の高値22666円。史上最高値38915円からその後の最安値7054円までの下げの半値戻し水準は22985円。注目の節目を上回ったことは瞠目するべきだろう。「9 月8日の安値19239円から11月9日の高値23382円まで、2カ月で4000円強上昇。
ここまでの動きは非常に強い」という指摘も正しかろう。「9月8日の安値19239円から11月9日の高値23382円まで、2カ月で4000円強上昇。ここまでの動きは非常に強い」という声が聞こえる。
週間ベースでは、日経平均株価は0.6%高、9週続伸(累計3406.6円 17.7%上昇)。TOPIXは0.4%高、9週続伸(同 206.9ポイント 13.0%上昇)。東証マザーズ指数は1.0%高、3週続伸(同 5.4%上昇)。日経ジャスダック平は0.2%安、3週ぶり反落。東証2部指数は2.5 %安、3週ぶり反落。
経済産業省は上場バイベンチャーの安定経営策を検討するという。上場廃止基準の緩和や投資資金呼び込みの具体策を提言するという。これは結構ジワジワの朗報。日経平均は4日続落。2時半過ぎからの断続的な売り物から結局安値引け。
週末のSQ値22531円を粘ってキープしていたのが一気に崩れた格好となった。CTA(商品系の海外投資顧問)の仕掛け売り継続との観測もみられる。気になるのは売買代金の低下。11日ぶりに3兆円を割れこんだ。商いが増して反転相場に向かうか、閑散相場に逆戻りでの軟調相場かの別れ道になろうか。「225先物の9月8日安値(19080円)からの上昇幅(4350円)の23.6%%押しの22403円を下回った。次のメドは同38.2%押しの21768円」という空疎な予測も登場した。
25日線からのかい離はプラス2.6%(前日プラス4.2%、前々日プラス6.7%)まで低下。サイコロは7勝5敗で58.3%。奇妙なことに空売り比率も39.4%と3日ぶりに40%割れ。ココがけっこう重要ポイントかも知れない。そして日経平均採用銘柄のPERは14.79倍と15倍割れ。EPSは1513円まで増加した。
日経平均株価は300円安の22380円銭と4日続落。10月31日以来の安値水準となった。4日続落するのは8月下旬以来。下落幅が300円を超えるのは3月22日以来。3ケタの下落は9月8日以来。「前週の急ピッチな上昇からの調整が続いた」との解釈。
14時半から投信の解約売り観測があり、下落幅を拡大しての安値引け。「中長期的な相場の先高観は根強いが目先は上値が重くなりそう」という見方だ。TOPIXも安値引けで3日続落。東証1部の売買代金は2兆7962億円。3兆円を下回るのは11日ぶり。11月に入って初めて3兆円を下回った。
東証1部の値下がり銘柄数は1 377と全体の68%。値上がりは594銘柄。資生堂、ユニチャーム、JXTG、任天堂、NTT、トヨタが上昇。大和ハウス、三井不、東レ、HOYA、新日鉄住金、ファストリ、野村、花王が下落。
14日(火):
週明けのNYダウは一時80ドル超下落した場面もあったが3日ぶりの小幅反発。税制改革案の先行き不透明感やGEが減配を発表するなど悪材料もあり上値は重い展開。ただ出遅れセクターへの押し目買いがやや優勢だったとの解釈。「相場の材料となるような主要な経済指標の発表がなく、個別銘柄の材料に基づく売買中心」との声が聞こえる。
日経平均は5日続落。わずか98銭安でもマイナスであることに変わりはない。もっともTOPIXなど他の指数はマイナス。値上がり銘柄数は値下がり銘柄数の半分以下。新高値も99と100銘柄を割れた。体感は明らかにマイナスだ。「企業の決算発表一巡から内外機関投資家や個人などの短期売買の手じまい売りが優勢」という分析もある。「前場に買い戻して買い乗せた玉外し」と簡単に考えた方が良いかも知れない。
マーケットは人が考えるほど賢くはないものだ。1円以下の値幅での前日比マイナスは今年2回目。前回は10月31日(火曜)の6銭安。翌日は踏みが入って408円高(水曜)だった。16連騰が始まった9月29日の前日も6.83円安と小幅なマイナス。「陰極まれば陽に通ず」という楽観論も聞かれた。
5日続落は6月と8月についで今年3回目。「8月の5日続落は火曜で終わって水曜は反発した」という何の根拠もない楽観論もある。騰落レシオは112.96%と過熱感は薄れている。サイコロは6勝6敗で50%。25日線(21893円)からの乖離はプラス2.2%まで低下した。空売り比率は41.0%と再度40%台。日経平均採用銘柄のPERは14.77倍でEPSは1514.23円と微増。
日経平均株価は99銭安の22380円と小幅に続落。5日続落は8月16日以来。一時150円超上昇する場面もあったが結局は退け際の売り物に押された格好。東証一部の売買代金は2兆9865億円。値下がり銘柄数1338で全体の6割。値上がりは662銘柄。京セラ、任天堂。日東電工、信越化学、東エレが上昇。楽天、東ガス、ソフトバンクが下落。
15日(水):
NY株式市場は小幅反落。原油先物価格の下落でエネルギー関連セクターが軟調。業績悪化で減配を発表したGEが続落した。10月の卸売物価指数(PPI)は前月比0.4%上昇し、市場予想の0.1%上昇を上回って着地。前年同月比は2.8%上昇で2012年2月以来の大幅な伸びとなった。
11月10日時点の信用買い残は1008億円増刊の2兆7896億円。3週連続の増加だ。売り残は前週比382億円減少し1兆454億円。2週連続減少。4〜9月期決算は全体の99.6%が通過したが今期純利益は17。1%増の見通しで悪くない。
日経朝刊1面の「上場企業3年ぶり増収」も記憶に残しておきたいところ。株式益回りは6.07%、10年国債利回りは0.05%。どちらが有利かは一目瞭然だ。7〜9月期のGDP速報値は前期比0.3%増、年率換算では1.4%増で着地。プラスは7四半期連続。7四半期連続は16年ぶり。市場予想は前期比0.4%増、年率では1.5%増だった。名目GDP成長率は前期比0.6%増、年率2.5%増。名目は2四半期連続でプラスだった。個人消費は0.5%減と7四半期ぶりにマイナス。天候不順で衣料品などへの支出が低迷したとの解釈。設備投資は0.2%増と4四半期連続プラス。
日経平均は今年初の6日続落。6日続落は2016年5月8日以来のこと。TOPIXは5日続落。TOPIXは25日線(1756ポイント)を割れ込んだ。東証1部の値下がり銘柄数は1901で全体の93%に達した。「ちょっとしたショック安」とも言えよう。先物で売り叩く動きが後場の大引け近くになって一段と強まり売買代金も3.7兆億円と拡大した。日経平均は6日間で902円下落。ただ「値幅調整は進んだ」という見方も多い。日中安値が22004円で節目の22000円や25日線(21941円)に接近。「9月8日安値19239円から11月9日高値23382円までの上昇幅が4143円。3分の1押し水準が22001円。ここは反転ポイント」という声も聞こえる。
コールオプショのヘッジとしてのプットの売りが22000円水準。「ここを下回るとヘッジのコール売りが解消される」という指摘もある。25日線からの乖離はプラス0.4%まで低下。
騰落レシオは101.15%。サイコロは5勝7敗で41.7%。あまり気にされないが、NTレシオは12.63(今年最大は12.65)まで拡大している。
松井証券信用評価損益率速報で売り方は▲13.604%(11月2日▲15.855%)。買い方▲6.070%(前日▲3.952%)。マザーズ銘柄ネットストック信用評価損益率で売り方▲2.99%(前日▲2.77%)。9月7日が0.06%で株価は反転したがほぼ届いたとも考えられる。買い方▲14.14%(前日▲12.31%。11月10日現在のQuick調査の信用評価損率は▲8.80%と3週ぶりに悪化した。
日経平均株価は351円安の22028円と6日続落。6日続落は2016年5月6日以来、1年半ぶりで今年最長の連続記録を更新。下落幅は3月22日以来、8カ月ぶりの大きさだった。「相場の変動を嫌った海外ヘッジファンドの売りが膨らんだ」という声がある。「実際はHFTなどの規制強化の方向を嫌気した」という解釈の方がシックリする。もっともオプションのヘッジ解消ラインとされる22000円攻防戦は続いている印象だ。
東証1部の売買代金は3兆7703億円と、3日ぶりに3兆円を超えた。東証1部の値下がり銘柄数は1901と全体の93%とほぼ全面安。値上がりは120銘柄。第一生命、昭和電工、大塚HD、資生 堂が上昇。任天堂、オリ、トヨタが下落。
16日(木):
NY株式市場は続落。ハイテク、エネルギー関連セクターが下落の牽引役。週間石油在庫統計で、原油在庫とガソリン在庫の予想外の増加が示され原油先物は4日続落。
エクソンモービルやシュルンベルジェなどが安値に沈んだ。
S&P500の下落寄与度が一番大きかったのはハイテセクター。「今年最も好調だったたけに利益確定の売りが見られる」との見方がある。
消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除くコア指数の伸びが前月比0.2%。前年同月比1.8%で着地。前月の0.1%、1.7%から拡大した。小売売上高は前月比プラス0.2%と増加。市場予想は「横ばい」だった。9月分は1.6%増から1.9%増へ上方修正。「インフレ圧力が再びかかり始めている兆候。来年は計4回の利上げがある可能性がある」。そんな声も聞かれる。ただ税制改革法案の通過がなければドルの上値が重くなる可能性もある。
裁定買い残は前週比873億円減少の2兆8246億円。5週ぶりの減少となった。裁定売り残は前週比612億円増加し3890億円。空売り比率は43.2%で今年の最大値45.2%に近づいている。
日経平均採用銘柄のPERは14.45倍まで低下。一方でEPSは1524円と更に増加した。大きな流れでみればようやく切り上げた「22000〜25000円」のレンジ。これが「20000円〜22000円」のレンジに切り下げるかどうかの瀬戸際。買い方の踏ん張りどころでもある。得心したのは今朝の日経朝刊スクランブル。見出しは「機械よりも人が価値生む、強まる高PBR銘柄買い」。
米国のFAANG銘柄は上昇し、NY市場のPBRは約3倍。これに対して日本は1.3倍。「設備を持たない企業、ものをつくらない企業の株価が上昇している」。前日の大幅安でも下落幅が小さかったのが高PBR銘柄だったという。
経産省がまとめた「伊藤レポート2.0」は「無形資産が収益を生み出すことへの期待」と指摘。「生産性を高める原動力は機械よりも人になった」。学問チックなことは滅多に市場では役立たないことが多いがこれは違った。木曜の日経平均は大幅高で7日ぶりの反発。「日足では、きれいに25日線まで調整を入れて切り返す格好。大幅高で週間上昇の可能性も出てきた。先週末の終値は22681円」という声も聞こえる。
うまい具合に「45日ルール越え」での反発はイリュージョンの世界を印象付けるのにピッタリという印象。
11月第2週の海外投資家は7週連続で買い越し。買越額は670億円。個人は9週連続で売り越し。売越額は1315億円。信託銀行は5週ぶりに買い越し、買越額は117億円。事業法人は2週ぶりに売り越した。売越額は199億円。先物は海外投資家が6週ぶりに売り越し。売越額は959億円。前週は1575億円の買い越し だった。現物株と合わせると288億円の売り越しになる。先物については証券会社の自己売買部門は9週ぶり買い越しで、買越額は2155億円。前週は3555億円の売り越し。個人は3週連続で買い越し、買越額は246億円。「日経平均のローソク足チャートが素晴らしい」と市場関係者。ほぼ安値で始まった「寄付き坊主」の大陽線。
大引けは前日の始値を上回っているから「抱き線」となる。明らかに反転シグナル。定石では買い転換である。
日経平均株価は322円高の2235円と7日ぶりの反発。朝方に心理的節目の2万2000円を下回ったが、下値水準とみられていた25日移動平均近辺で下げ渋ったため、高値警戒感を背景とした水準調整が一巡したとの解釈。「市場環境が好転する材料が出たわけではなく、多くの海外の長期投資家は積極的な売買を手控えていた」との声も聞こえる。東証1部の売買代金は概3兆8239億円。売東証1部の値上がり銘柄数は1518で全体の約7割。値下がりは438銘柄。任天堂、資生堂、SMC、ファストリ、ソフトバンク、KDDIが上昇。国際石開帝石、マツダ、コマツが下落。
17日(金):
市場関係者のコメントに遅行性が感じられるのは気の所為だろうか。上昇基調がしばらく続いても途中までは弱気が多数派。それまでの下落基調マインドが抜けないのだろう。日経平均の目標を1000円ずつ押し上げてきた滑稽さも今は昔。
心機一転「目標3万円」と唱えた途端に上昇継続が終了して下落基調。でも、そこまでの延長線上での強気継続。数週間の遅行性は致し方ないのかもしれないが、どうも現実追従型からは逃れられない傾向だ。
このところの市場の興味は「45日ルール」。昨年は消えたがまた復活してきた。「毎年、10〜11月は突っ込む場面がある。外国人投資家が牛耳っているマーケット。年内最後のヘッジファンドの換金売りが出る季節。「15日を大過なく通過すれば『45日前ルール』なるものも気にしなくてよくなる」。本当に45日なのかどうかというのも疑問。「買ったら売るのだし、売ったら買うのが相場」。この自明の理がなかなか体感した気にならないから相場は難しい。
日経平均株価は45円高の22396円と小幅続伸。一時上げ幅が400円を超える場面もあった。1週間ぶりに22700円台に乗せたが円高・ドル安のトレンドを嫌気した売り物が優勢となり午後に下落に転じる場面があった。日中値幅は438円。「上下に振れすぎ、個人投資家は買いを入れづらい」という声も聞こえる。
週間では284円62銭の下落。10週ぶりの下落となった。東証1部の売買代金は3兆5245円。東証1部の値上がり銘柄数は1005と全体の49%。値下がりは950銘柄。東エレク、ソニー、パナソニック、東京海上、アサヒ、ブリヂストン、ファストリ、クボタが上昇。SOM PO、ヤマトHD、住友不、東ガスが下落。
(2) 欧米動向
米国最大規模の年金基金のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)。
株式への投資配分を50%→34%程度まで減らす方向。
債券の配分を増やすことを検討しているという報道は需給懸念となろう。
同基金保有株の時価総額は715億ドル(約8兆円)。
個別ではアップル、マイクロソフト、アマゾンなどが多い。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの11月のファンドマネジャー調査ではキャッシュ比率が4.4%。
2013年10月以来約4年ぶりの低水準となった。
株価水準が「割高」と答えた割合は48%と過去最高。
ヘッジファンドの株式投資の度合いが11年ぶりの高水準。
一部の市場関係者は「根拠なき熱狂の兆しが見える」という指摘した。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち8指数が上昇。
上位1位ベトナム週間騰落率2.59%、2位ブラジル1.76%、3位タイ1.19%、
4位南アフリカ0.91%、5位スイス0.54%、9位米国▲0.27% 。
下位25位トルコ▲2.49%、24位ロシア▲2.10%、23位イタリア▲2.07%、
22位フィリピン▲1.45%、20位日本▲1.25%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
20日(月):貿易統計、米CB景気先行指数
21日(火):全産業活動指数、米中古住宅販売、シカゴ連銀全米活動指数
22日(水):米耐久財受注、FOMC議事録
23日(木):勤労感謝の日で休場、米感謝祭で休場
24日(金):米ブラックフライデー、独Ifo景況感
10月のMRF残高は13兆1774億円。
過去最高を更新した。
日経朝刊の見出しは「個人の待機資金、株高で最高」。
10月の株式投信の解約額は4兆4845億円と過去2番目の大きさ。
一部はマイナス金利での運用なので運用会社は損をするという悪弊もある。
しかし13兆円がほぼキャッシュ。
世界の機関投資家はフル運用でキャッシュ比率が最低水準なのに好対照だ。
興味深い歴史は米大恐慌の際の教訓。
「投機から投資へと参加者の意識に変化が起きた。
経済成長が株高をもたらし、株高が家計を潤し、個人消費の拡大が経済を押し上げた。
1945年から2017年までのNYダウの時価総額は102倍になった。
同期間の米国の家計の株式保有額も3400億ドル→35兆ドルと102倍になった」。
東証時価総額の世界株式に占める比率は9月末で7.0%。
過去10年平均の7.2%を下回った。
「だからこその日本株」という声もある。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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