03月3週
【推移】

13日(月):
週末のNY株式市場は小幅続伸。2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は23.5万人増で着地。市場予想の19万人増を上回ったことからFOMCでの利上げ確率は85%→92%まで上昇。米経済の好調な推移は好感された。
もっとも、特にポジティブサプライズという訳でもなく、影響は限定的。時間当たり平均賃金は前月比0.2%上昇と市場予想の0.3%を下回ったことはややネガ材料。
一方で下院の歳入、エネルギー・商業の両委員会がオバマケア改廃法案を承認。ヘルスケア関連セクターの足を引っ張った。

週足ではNYダウが0.5%、NASDAQが0.2%、S&P500が0.4%下落。WTI原油先物はバレル48ドルまで下落。「ヘッジファンドが手じまい売り」と解釈された。原油相場の弱気シグナル点滅は懸念材料視される。
週末の日経平均は意外感を伴っての19600円台回復。昨年来高値を更新した。「大きく上げてその後はしぼんでの繰り返し」という指摘もあるが。強い動きとなってきた。木曜に148だった新高値銘柄数は250まで増加した。週間では約135円の上昇。週足では3週連続で陽線となった。

日経ジャスダック平均株価は21日続伸。東証マザーズ指数も昨年6月以来の高値を更新した。興味深いのは市場関係者のコメント。「課題はFOMCの利上げ。『年内4回の利上げ』を匂わせるのか『あとは年末』と言うのか。あるいは『次の利上げも近い将来』と言うのか。これで展開が大きく違うのではないか」。いずれにしても利上げトレンドは変わらず時間軸が違うだけ。その時間軸で相場は多少左右されるかも知れないが結果は一緒だろう。トレンド変化ならば重大だろうが、技術的な問題にしか過ぎない。しかしそれしか材料がなければ大きく話題にする傾向。このレトリックに術に嵌ってはいけないだろう。必要なのは小手先ではなく王道だ。

週明けの日経平均は小幅に3日続伸。連日の高値更新となったが売買エネルギーは低水準。日経ジャスダック平均の連騰記録は残念ながら21で止まった。「中小型株から主力大型株に資金が移ったような印象」という声も聞かれる。13日から日経中小型株指数算出が始まったが、こういうイベントは相場の転機となることもままあること。
新興市場は15日からIPOラッシュ。昨年も3月はIPOラッシュで需給悪化が懸念されたが、昨年3月のマザーズ指数は月間で21.7%の大幅上昇(日経平均は4.6%上昇)。新たなヒーロー登場に期待する向きも多く、この流れは今年も継続しそうな気配だ。日経平均株価は29円高の19633円と3日続伸。連日の昨年来高値更新となった。東証一部の売買代金は1兆7724億円と低調。リクルート、ハウス、丸井が上昇。アドバンテスト、第一生命が下落。

14日(火):
週明けのNY株式はまちまちの展開。NYダウは3日ぶりに小反落。一方NASDAQは4日続伸。S&P500は3日続伸。「ヘルスケア」や「生活必需品」など3業種が下落。「素材」や「公益事業」セクターが上昇。
月曜のM&A案件に反応する部分もあったが、原油先物価格の続落が重石となりほぼ週末水準での推移。
ダウの下落はインテルの2%下落が影響した。「15日にかけて米東部で大型の積雪があるとの予報も投資心理の後退の一因」との声も聞こえる。10年国債利回りは一時2.6%を上回る水準まで上昇(債券価格は下落)。2014年9月18日以来、2年6カ月ぶりの高水準となった。FOMC待ちの状況ながら債券利回りは上昇した。金は10日ぶりに反発。フィラデルフィア証券取引所の半導体株指数(SOX)は6日続伸し52週(過去1年)高値を更新した。半導体関連株への投資継続がうかがわれ米国でも第4次産業革命路線は歩まれている印象。

4日続伸とはならずまた3日続伸の壁で跳ね返された日経平均株価。日中値幅37円では闘う姿勢ではなかったということになろう。日経朝刊でも指摘されているが先導株比率が49.8%と今年2番目の水準。方向感のなさが東芝など一部銘柄への商い集中となったということ。近くて遠い2万円を切望しながらも足踏みは継続している。
日経平均株価は24円安の19609円と4日ぶりの反落。「連日で昨年来高値を更新していたこともあり、目先の利益を確定する目的の売りが優勢」との指摘が聞こえる。東証1部の売買代金は1兆7814億円と相変わらず低調。東芝が乱高下の末に上昇。三菱重、SOMPO、東京海上が上昇。コンコルディ、パナソニック、三井不、菱地所、KDDI、NTTドコモが下落。

15日(水):
NY株式市場は下落の展開。原油安でエネルギーセクターが軟調。米北東部の大雪による結構で空運セクターも下落。なによりNYの雪が投資心理を減退させ3市場の売買高は62億株と低下した。
吹雪による非常事態宣言も出され米独首脳会談も延期となった。オバマケア改革案が進めば2018年末までに1400万人が保険を失うとの観測から病院や保険セクターも軟調だった。原油安はインフレに向けた障害との解釈から国債利回りはやや低下(価格は上昇)。FRBの利上げを見越した格好は継続。ただ15日のオランダ下院選を控えた欧州の政治リスク要因から安全資産としての側面を持つドルは上昇した。

トランプ米大統領はサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子とホワイトハウスで会談。「サウジによる対米投資が会談の主要議題の1つ」という声も聞かれる。会談にはペンス副大統領、クシュナー大統領上級顧問、プリーバス首席補佐官、バノン首席戦略官・上級顧問が同席。
国王は日本へ、副皇太子は米国へとサウジの動きが際立っている。「大発会から50日目。3日続伸が4回。4日続落が2回。3日続落が2回。年初来の星取りは24勝26敗」という指摘も聞こえる。強気論は「信用売り残は9554億円でトランプラシー開始の昨年11月の3割増加」。あるいは「4月は外国人買いの特異月。07年からの10年外国人は4月は平均1兆円規模の買い越し。日経平均は7勝3敗」など。

水曜の魔力も薄れ昨日の日経平均は続落。売買代金は1兆6771億円と今年2番目の低さだった。日経平均株価は32円安の19577円と続落。FOMC待ちの買い手控えモードでの薄商いとなった。ツルハ、郵船、トヨタ、三井住友が上昇。東芝、九電、三菱ケミカルが下落。

16日(木):
NY株式市場は急反発の展開。FOMCが想定通り昨年12月以来の追加利上げ決定で通過。FF金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ0.75〜1%となった。イエレンFRB議長の会見コメント。「米経済は過去数カ月、まさに想定通りの進展を遂げた。経済が現在乗っている軌道に一定の自信がある」。
ただFRBは将来の利上げペースが加速するとの兆候は示さなかった。年内利上げの可能性はあと2回となり緩やかな利上げペースは株式市場では好感された格好。

FRB当局者の経済見通しは、前回12月からほぼ変わらず。2017年の成長率は2.1%で据え置き。長期金利見通しの中央値は3.0%。年末時点の失業率予想は変わらずの4.5%、2019年を通じて同水準にとどまると見込まれた。コアインフレ率は1.9%と、前回の1.8%からやや引き上げられた。
FOMCの結果を受けて株価は上昇幅拡大。一方、国債利回りは大幅低下。ドルは急落。年内3回の利上げ確率は50%以上、年4回利上げの確率は約25%。6月13〜14日のFOMCで利上げが行われる確率は49%と14日時点の53%から低下した。9月利上げ確率は76%、12月は55%。「市場では次回利上げが9月とみる向きが強まっている」との声がある。 株式市場では原油先物相場が1週間超ぶりに上昇したことでエネルギーセクターが上昇。週末の先物決済を控えて3市場の売買高は約78億株と増加。

市場が気にしていたオランダの下院選挙は与党勝利。これでフランスのルペン候補当選の可能性も後退。日経朝刊のキーワードは「ぶり」。「帰ってきたぶり企業、最高益」で登場したのは11年ぶりに最高益を更新するレック。「長い苦境を脱し、出世魚の如く成長した」企業の一つとされる。
あるいは「株式市場でもぶり企業続出」。こちらはニチレイが1990年以来27年ぶりの高値を付けたことが紹介されている。

日経平均、TOPIXともに3日ぶりに反発した。「わずか12円高だが、貴重な12円高」という声が聞こえる。
朝方は円高を嫌気した格好で120円超の下落。午後に日銀金融政策決定会合で現状維持が伝わったあとはプラス転換した。FOMCは0.25%の利上げ、オランダ総選挙は与党勝利、日銀金融政策は変更なし。加えて中国では全人代が波乱なく閉幕。外部材料にサプライズはなかった。ドル建て日経平均は2.35ポイント高の173.03。昨年来高値(3月2日の172.24)を更新した。
日経平均株価は12円高の19590円と小幅反発FOMCやオランダの選挙を波乱なく通過したことを好感した格好。押し目買いが散見されたとの解釈も聞こえる。東証一部の売買代金は2兆1590億円と増加。コマツ、ソフトバンク、ドコモ、キャノンが上昇。東芝、ファーストリテが下落。

17日(金):
NY株式市場はマチマチ。2月の住宅着工件数は前月比3%増の年率129万戸。市場予想の126万戸を上回った。11日までの週の新規失業保険申請件数は前週比2000件減の24.1万件と市場予想とほぼ一致で着地。新規申請件数、30万件以下は好調な数字。106週連続でこの水準を下回っており1970年に記録して以来の長さ。

国債利回りは反転上昇。「米債は前日買われ過ぎた感があり一部で利益を確定させる動きが出た可能性がある」という指摘がある。トランプ米大統領は2018会計年度(17年10月〜18年9月)の予算案概要を提示した。国防費は増額。メキシコ国境沿いの壁建設費用を計上。一方他の予算は大きく削減するものが多い。環境保護局予算を約31%(26億ドル)削減。
国務省や他の国際プログラム予算を28%(109億ドル)削減する方向。CO2削減を目指す「クリーン・パワー・プラン」への資金拠出はストップする意向。ただ予算骨子には1兆ドルのインフラ整備関連費用は含まれていない。ロンドンFT100は取引時間中の過去最高値を更新。

3月第2週の投資部門別株式売買動向では海外投資家4週連続で売り越した。売越額は986億円。6週連続で売り越し。売越額は255億円。個人も3週連続も売り越しで売越額は975億円。買っているのは証券自己売買という歪な需給は期末特有の要因ではある。

日経平均株価は68円安の19521円と小幅反落。3連休控えと森友学園問題への警戒感からの手控えモード。東証1部の売買代金は2兆4595億円と売買エネルギーはさほど低下しなかった。国民金融資産が初めて1800兆円に乗せたのは明るい話題だろうか。
東証1部の値上がり銘柄742、値下がり銘柄1116で新高値は118銘柄、新安値は2銘柄だった。日経ジャスダック平均、東証マザーズ総合も反落した。任天堂、東芝、ファナック、コマツが上昇。トヨタ、ソフトバンク、アステラス、重工が下落。



(2) 欧米動向

日経ヴェリタスの特集は「企業VSトランプ」。
特に注目したいのは「法人減税で6800億円増益効果も」の部分。
「追い風として期待集めるのが大幅な法人減税。
野村証券試算では法人税率が10ポイント下がると、日本企業の純利益を1%程度押し上げる効果。
現状の35%→20%に引き下げを目指す共和党案なら1.5%押し上げ効果。
35%→15%に引き下げるトランプ案になれば2%の押し上げ効果。
上場企業の純利益(34兆円)で計算すると約6800億円の増益効果が期待できるという。
トランプ政策の明るさも登場してきた。

アメリカのS&P500も採用銘柄の時価総額の基準を引き上げると言う。
従来は53億ドルだったのが61億ドルになる。
17日の大引けでの入れ替えになるという。
株価はまだ上がるというサインと読めなくもない。

週末の米雇用統計で気になったのは23.5万人増ではなかった。
建設業での増加幅は2006年2月以来11年ぶりの大きさ。
リーマン後遺症は消えまた不動産バブルのトレンドが出てきたのかも知れない。

米3月FOMCは想定通り利上げで通過。
しかし今年の利上げの可能性があと2回となったことからドル円は113円台半ばまでの円高トレンド。
「勝手に想像して勝手に着地」みたいな格好となった。
フツーに考えれば、利上げ=米景気好調。
あと2回の利上げ=2回だろうと3回だろうと基本スタンスは不変。
にもかかわらず局所を捉えてドル売りに走る短期筋の思考法が優先されたという印象。
いずれどこかで是正はされるのだろう。
「QE3を止めたら株が下がる、利上げをしたら株は下がる」と言っていた市場筋の声。
それに反して株は上昇したのがここ数年の現実。
小手先の解釈は間違うことが多いものだ。
「年4回でないからドル安円高」というような為替かぶれチックな表面的発想には縛られない方が良かろう。
シカゴ225先物終値は大証比85円安の19365円。
現物にすれば19500円レベル。
25日移動平均19361円からはプラスかい離継続。
3月メジャーSQ値19434円はまだ下回っておらすSQ後4連勝。
松井証券信用評価損率速報で買い方はマイナス4.528%と悪化したがこれ新興市場の下落が背景だろう。
Quick調査の信用評価損率はマイナス5.19%まで改善。
空売り比率は35.1%と安定的。
3月10日時点の裁定買い残は1182億円減少し1兆7250億円。
需給的に過熱感は薄い。
決算対策の売りは既に終了。
借株の返済を含めた買い戻し、期末権利配当取りの動きに期待感はある。
下値はせいぜい3月SQ値程度の限定的な動きと見たい。

今回のFOMCでの勝利者はトランプというと変だろうか。
FOMCは0.25%の利上げで通過。
これは予想通りであり景気が良いからこそ利上げで来た。
しかし年内の利上げの可能性はあと2回。
2018年は3度で据え置かれた。
このペースだと金利は2019年末まで中立水準には戻らない見通し。
異常な利上げではなく、フツーのペースでの利上げ。
勝手に年4回と予想していた債券市場で金利は下落。
しかも刹那的にはドル安トレンド。
でも株価は大幅高で過去最高値圏。
歪んだものの見方をする為替や債券市場の関係者よりは株式市場の方が単純にモノを見ている印象。
金利はさほど上がらず、株価は上昇しかもドル安。
トランプ大統領がニンマリしたようの思うのは気のせいだろうか。
16日に公表予定の2018会計年度の予算教書。
国務省の予算が最大31%、対外支援関連予算は28%それぞれ削減されるとの見通しが登場した。
米ニューヨーク・タイムズ紙の報道。
議会関係者の話として「国務省予算に28%、環境保護局に31%の支出削減を求める内容」と。
何かアメリカの勝ちのような気がしてくる。


(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち22指数が上昇。
上位1位ロシア週間騰落率5.30%、2位ポーランド4.41%、3位韓国3.21%、
4位メキシコ3.17%、5位香港3.15%。
下位25位ブラジル▲0.72%、24位日本▲0.42%、23位ベトナム▲0.23%、
22位米国0.06%、21位スイス0.33%。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

21日(火):米経常収支
22日(水):貿易統計、全産業活動指数、米中古住宅販売
23日(木):米新築住宅販売
24日(金):米耐久材受注

【3月】
24日(金)変化日
26日(日)欧州サマータイム開始、香港特別行政区長官選挙
28日(火)3月権利付き最終日
30日(木)変化日

大和のレポートは「日経平均が1月に前年高値を更新した年は、まず4月頃の高値に期待」。
面白いアノマリーである。

日経平均が1月中に前年の高値を更新した場合。
1980年以降ではその年の4月頃にかけて1月の高値を一段と更新する動きとなっている。
少なくとも1年以内の高値を更新したことで上値の需給が軽くなる。
そして株式市場の季節性が良いタイミングを迎える。
だから株価が上値を追う動きが強まったと考えられる。
このような年の4月高値については、1月高値に対する上昇率が平均で+9.3%。
特に大きく上昇した3回(2013年、1987年、1986年)を除いて計算しても平均で+5.5%。
これを今年に当てはめると・・・。
1月の日経平均高値19594円(1月4日終値ベース)に対して、
20671円(プラス5.5%)〜21416円(プラス9.3%)程度の高値が4月頃に期待できる。

JPX日経中小型指数の発表が月曜からスタートした。
同時に日経ジャスダック平均の連騰が止まったと言うのはご愛嬌だろうか。
因みにこの指数は時価総額が上位20%の大型株は除外。
逆に時価総額100億円以下の銘柄も除外している。
過去1年の売買代金合計が150億円以下の銘柄も除外。
そして選ばれた200銘柄で構成されている。
2016年8月末が10000。
この間日経平均の上昇率は3%で中小型株指数の上昇率は6%。
間違いなくアウトパフォームしている。
除外されるのは赤字継続や上場3年未満の企業や売買代金の薄い銘柄。
流動性を保った中小型株と言う意味ではわかりやすい。
因みに構成銘柄で年初からの上昇が目立った銘柄は以下のようなもの。

ワコム(6727)、ペッパー(3053)、レーサム(8890)、アンリツ(6754)、フルスピード(2159)、ラック(3857)、JUKI(6440)、SHOEI(7839)、JAC(2124)、レーザテック(6920)など。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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