01月2週
【推移】
10日(火):
週末のNYダウは反発。一時19999.63ドルまで上昇し市場最高値を更新。2万ドルの大台まであと1ドルまで迫る場面もあった。S&P総合500も反発。NASDAQは4日続伸でともに過去最高値を更新。
12月の非農業部門雇用者数は15.6万増で着地。市場予想の17.8万人増に届かなかったが10・11月分は1.9万人の上方修正。好材料視されたのは 時間当たり平均賃金。前月比0.4%(0.10ドル)増。前年同月比では2.9%増となり2009年6月以来の大きさ。失業率は4.7%と、9年ぶりの低水準だった前月の4.6%から小幅上昇。背景は労働人口の参加とされた。
2016年に米経済は216万人の雇用を創出。月間ベースは平均18万人増だった。週間ベースではNYダウは1.0%、NASDAQが2.6%、S&P500が1.7%の上昇。週末の日経平均はファーストリテの月次の悪化の影響もあり下落。ただ値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回っておりそれほどネガではない展開。
一方で「トランプ氏がツイッターでトヨタのメキシコ工場生産を批判。「つぶやき」に翻弄された1日」という声も聞こえる。日経平均は週間では339円の上昇。週足は陽線。週間ベースで日経平均株価は1.8%高で2週ぶりに反発した。
12月30日時点の裁定買い残は前週比1260億円増加し2兆612億円。ようやく戦闘態勢になった水準。月曜日経「景気指標」の「キーワードは実質金利」。「日本の長期金利(10年国債利回り)は日銀がゼロ%程度に誘導。消費者物価の前年比上昇率(生鮮食品等を除く)は直近の16年11月がマイナス0.4%。差し引き実質長期金利はプラス0.4%程度。円安・株高などを背景に消費者物価に上昇圧力がかかりこの水準が2017年には下がる可能性がある」という。「仮に実質金利が大幅に下がるのなら円売りは継続。株価にさらに上昇圧力がかかることがあるかも知れない」というのが論旨。
「17年の焦点は円安などが続き実質金利が本当に下がるのかどうか」だという。学問的にはしごく首肯できる論旨ではある。
日経平均株価は152円安の19301円と3日続落。東証1部の売買代金は2兆5992億円。ソフトバンク、大塚HD、光村印刷が上昇。トヨタ、キーエンス、ファーストリテが下落。
11日(水):
NY市場は小動き。トランプ氏の記者会見を控えて「何が飛び出すか予測不能で動けず」との解釈。一時上昇したものの午後失速というのは昨日の東京の写真みたいなものだろう。NYダウは続落。NASDAQは連日の高値更新とマチマチの動き。
象徴的なのはS&P500指数が前日比変わらずの2268.90で終わったこと。500銘柄で構成される指数がセント単位まで変わらずというのは僥倖なのか作為的なのかは不明。滅多にないことではある。S&P500の「変わらず」は当然ながら上下どちらかの方向へ向かうすくみと考えられよう。
ロンドンFT1007価指数は12月22日以降11日続伸し連日の過去最高値更新。3日続落で合計152円安の東京株式市場。ドル円の115円台を嫌気したとの解釈も聞こえる。
しかしミニとはいえSQ週の荒れと考えた方が良いかも知れない。
業界紙チックに掲載された日経1面の「航空機に日本の新素材」。「日本初の新素材」はテーマとしては期待感がある。課題は実用化までの時間軸と高コスト。この時間軸を市場が許容できるのかどうかが問われる。「知ったら終い」と言うが、「知ってから始まる」こともある。この「人よりも早く知りたい」という切迫観念が投資パフォーマンスを悪くしている気がしないでもない。スピードを競えば機械には負ける。記憶力も判断力も負けるかもしれない。でも時間をかけた勝負ではまだヒトは優位に立っていよう。「知ったら終い」は逃げの投資。「知ってから始まる」は知恵の投資に他ならない。
日経平均株価は63円高の19364円と4日ぶりの反発。東証1部の売買代金は2兆1801億円。カーボン、トヨタ、ソフトバンクが上昇。DLE、PCI、ベクトルが下落。
12日(木):
NY株式は一応上昇。ここ数日の様子見材料とされたトランプ次期米大統領の記者会見は具体的な経済成長促進策が示されず通過。ただ医薬品の批判的なコメントがあったためにセクターは下落。
一方、原油先物価格の反発を受けたエネルギー関連やハイテク関連セクターは上昇。NASDAQ総合株価指数は7日続伸。5日連続で過去最高値を更新した。通過したトランプ氏記者会見。結論は「市場はがっかり。市場が多少非現実的な期待をしていた」という声に集約できるだろう。その結果債券は買われ、ドルは売られた。会見前にドル円は116.85円まで買われていた。
会見後は一時1カ月ぶり安値の114.26円まで急落した。トランプ氏が財政出動や米企業の海外利益還流促進などにまったく言及しなかったことが理由。FT100株価指数は12日続伸で市場最高値更新中。
日経朝刊「スクランブル」の指摘。「外資系証券経由で断続的に入るTOPIX先物買い」が海外長期マネーのしわざ。ソニーの強さはその証拠だとされている。また「ここ数年で、円が安くなる時、イールドカーブがスティープ化する時、銀行株がアウトパフォームする時はいつも、相場が好調だった。今はその3つが全てそろっている」という指摘もある。
日経朝刊では「銀行預金伸び最高」の見出し。12月末の手形と小切手を除いた実質預金は前年同月比6.1%増の694兆円だった。増加率は02年3月末の6.0%を越えて過去最高。貸出金は478兆円だから、それこそ銀行に金余りが起きている。これは成長の限界の壁の一つなのだろう。
ITバブル崩壊後の2002年を越える伸び率。現金が溜まって使わない世界。そして貸し出しもまだ控える世界。これで経済が円滑に回るとは到底考えられない。この萎縮心理が解き放たれるのはおそらく日経平均が2万5000円を越えてきたときだろう。
消費者信頼感は前月比2.2ポイント上昇し43.1。13年3か月ぶりの高水準となった。「資産価値への意識改善が好影響」との声が聞こえる。株式市場は景気経済心理に一役かっているということ。FXとは違うという一面でもあろうか。
そして公的年金の運用益は10〜12月期に10兆700億円になったとの試算。4半期運用益としては過去最高だという。外国債でも1.4兆円の利益だというが国内債券は5700億円の運用損。株式運用比率の上昇にアレコレ文句をつけた向きもあったが、今度は何と言うのだろう。
正式の発表は3月3日の予定。日経平均株価は229円安の19134円と反落。下落幅は一時300円に迫る場面もあった。外国為替市場での円相場の上昇で利益確定の売りが優勢の展開。
日経平均の25日移動平均を終値で下回ったのは、米大統領の結果が判明した2016年11月9日以来、約2カ月ぶり。東証1部の売買代金は2兆3761億円。東証1部の値下がり銘柄数は1600と全体の約8割を占めた。イオン、JX、東エレク、ソニー、ダイキンが上昇。アステラス、小野薬、東芝、楽天が下落。
13日(金):
NYダウは反落。前日のトランプ氏記者会見に対する懸念を改めて材料視した格好。加えて決算発表前の自社株買い禁止期間入りの影響もあるとの解釈。JPモルガンなど金融セクターが足を引っ張った。一方前日大きく下落したヘルスケア関連は反発。7日続伸していたNASDAQ総合指数も反落。もっともVIX(恐怖指数は11.39とまだ低水準。
ロンドンFT100は13日続伸。著名投資家ジョージ・ソロス氏。昨年11月の米大統領選でのトランプ氏勝利後の相場で0億ドル近い損失を出したという。一方、ソロス氏の片腕だったスタンレー・ドラッケンミラー氏は儲けたという。ソロス氏は昨年11月まで株式市場に対して慎重な姿勢。トランプ氏の勝利直後にはさらに警戒を強めたという。この結果、損失が10億ドル近くに膨らんだが、昨年末には方針を転換。損失の拡大を回避したという。ソロス氏も損をする訳で、相場には絶対の強者はいないという証拠にもなるだろう。
ファーストリテとセブンアイの買い気配で9時8分まで引っ張られた1月SQ値。19182.28円で着地。12月メジャーSQ値18867円からは315円上の水準。12月は前月比1271円上の水準だったからやや見劣りする。あとはこれが幻にならず、来週金曜まで上回っていることが重要になる。
13日の金曜日のSQは無事通過。日経平均株価は152円高の19287円と反発。「幻のSQ値」とはならず来週以降の展開に期待を持たせる展開となった。「円高一服を受けた自律反発狙いの買いと企業業績の拡大を期待した押し目買い」との声が聞かれる。
東証1部の売買代金は2兆2566億円。東証1部の値上がり銘柄数は1211。セブン&アイ、ファストリ、タカタ、ソフトバンク、トヨタ、ファナックが上昇。任天堂、西武HD、新日鉄住金、住友鉱が下落。
(2) 欧米動向
見習いたいのはNYSE。
米国市場で取引されている全ての株式について、年末までに同取引所の立会取引所で売買可能にすると発表した。
NASDAQ上場銘柄やETFなど速度がさほど重要ではない手段を提供するのが狙い。
現在NYSEでは3166銘柄の立会取引が可能となっている。
取引所は、立ち会いブローカーを通じて取引できる銘柄数を8600に拡大するという。
過去数十年で株取引は電子化の方向に進行。
大半の立会取引所が閉鎖され、完全電子取引に移行している。
一方でこの速度重視の姿勢が不公平な取引環境の創出につながっているとの指摘もある。
背景はともあれ、やはりスピードを競うのではなく相場観を競う市場の方が望ましい気がする。
兜町だって、インバウンドの一環としての立ち会い復活を考えても良い筈。
人が集まってこその市場である以上、目に見える形での人の集まりが求められている。
昨年から起きているのは「マイケル・フィッシュの瞬間」。
1987年に英BBCの気象予報士は巨大ハリケーンの襲来を予測できなかったのだという。
「ハリケーンは来ない」と予測した数時間後にハリケーンは英国を直撃。
大きな被害をもたらしたのだという。
その87年のハリケーンは過去300年間で英国南東部を襲った嵐の中で最もひどいもの。
ハリケーンがイングランドへ近づいていた87年10月15日。
BBC局の昼のテレビ放送で、天気予報を担当していたフィッシュ氏。
「先ほど、嵐を気にする女性からBBCへ問い合わせの電話がありました。
心配は不要です。
嵐は来ていません」と到来を否定。
その数時間後、ひどいハリケーンがイングランド南東部を襲った。
1500万本の木がなぎ倒され被害額は15億ポンド以上。
このためフィッシュ氏は長い間、人々の嘲笑に耐える日々を送った。
その後のフィッシュ氏のコメント。
「間違いは誰にでもある。
87年のハリケーンについてビル・ジャイルスが、『チャンネル諸島をさっと通り抜ける程度だろう』と言ったように」。
ビル・ジャイルス氏とは当時に気象予報士長を務めていた人物だという。
いずれ「ビル・ジャイルスの瞬間」とでも言われるのだろうか。
(3)アジア・新興国動向
週末の日経朝刊では「拡大を続けてきた中国の貿易が変調」との見出し。
中国税関総署が発表した2016年の貿易統計でドルベースの輸出、輸入ともに前年水準を下回った。
貿易総額は2年連続減。
「中国は輸出拠点としての競争力が陰る一方で米国に対する貿易黒字が高水準で推移。
トランプ次期米政権とのあつれきが増す恐れがある」との解釈。
米中間の貿易摩擦が強まることは確かに懸念材料ではある。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
16日(月):機械受注、企業物価指数、さくらレポート、IMF世界経済見通し、キング牧師の日でNY休場
17日(火):世界経済フォーラム、米NY連銀製造業景気指数、独ZEW景況感
18日(水):米鉱工業生産、消費者物価指数、NAHB住宅価格指数
19日(木):首都圏マンション販売、米住宅着工、フィラデルフィア連銀製造業景況感、ECB理事会
20日(金):コンビニ売上高、米大統領就任式、中国10〜12月GDP、経済指標
一方で日経ヴェリタスの特集は「ESG投資の号砲 動き出す巨鯨マネー、市場を変える」。
ESGを重視し、企業を選別する投資に関心は高まる。
背景にあるのは「投資先の事業活動が気候変動や社会の不安定化をもたらせば、
結局は投資家自身に不利益が跳ね返る」との認識。
日本株の時価総額の6%に当たる30兆円を保有する巨鯨も動き出す。
年金積立金管理運用独立法人は3月めどにESGを取り入れた日本株指数を選定。
夏までに投資始めという。
市場を大きく変える潜在力を持つESG投資を、日本も避けて通れなくなってきている。
仏ナティクシス・グローバル・アセット・マネジメントの2015年の調査。
世界の660のの機関投資家に聞いている。
5割はESG投資を「潜在的な超過収益の実現手段になり得る」と位置づけているという。
実際に投資リターンが改善したとの回答は26%。
成果を測るんが難しいとの答えは5割超だった。
一方で「きれいごとにもお金を動かす力は秘められている」という声もある。
学問チックな論争になり果てそうだが、本当にESGが効くのかどうか。
結果論だけではないのかどうか。
成果が図れないだけに、ESGを標榜してビジネスチャンスにする専門家は結構多いだろう。
以下はMSCIによるによる「ESG格付け」。
有効な格付けなのか不毛な格付けなのかは微妙だが・・・。
いずれにしてもあまり面白い銘柄群は抽出されないのだろう。
この感覚のズレが相場の不毛の原因なのかも知れない。
【総合評価の上位と下位】
↓
上位:日立造船(7004)、積水化学(4204)、大阪ガス(9532)、
イビデン(4062)、ダイキン(6367)。
下位:三菱自(7211)、SMC(6273)、スズキ(7269)。
【環境】の上位
ベネッセH(9783)、HOYA(7741)、アサツーDK(9747)、オリンパス(7733)、シスメックス(6689)。
【社会】の上位
昭和シェル(5002)、大和ハウス(1925)、コクヨ(7984)、コマツ(6301)。
【企業統治】の上位
ケネディクス・オフィス投資法(8972)、日本光電(6849)、明治(2269)、荏原(6361)、ダイフク(6383)。
切ったり張ったり、売ったり買ったり。
そんな修羅場でもある証券市場の宿命なんて青臭いことを考えてみると・・・。
「産業資本の長期安定的調達と国民金融資産の健全な育成」。
これは証券取引法の精神。
「投資家を保護して、国民経済の健全な発展に資することをターゲット」。
これは金融商品取引法の精神。
「利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上
貯蓄から投資に向けての市場機能の確保
及び金融・資本市場の国際化への対応を図る」。
つまり視点は産業資本というよりも投資家保護と国際化。
ここに市場の違和感があるような気がしないでもない。
証券市場の宿命みたいなものを考えれば当然「株価の上昇」がすべての問題を解決してくれる。
しかし、株価の上昇なんて視点でなく投資家保護あるいはグローバリズムへの迎合が法の論点。
企業が資金を調達できて投資家は資産の増加で潤うのが理想の姿勢。
あくまで理想だが、このウィンウィンの関係を築くような仕組みが求められている。
ただ実態はディスクロに汲々とし、日々の株価動向に一喜一憂。
本来、株式投資は時間と成長を買うもの。
もっとも売りと買いは両輪だから、一方的ではないのは当然。
しかし少なくとも退場と衰退を売る場所ではなかろう。
「今日の下げを見ると心配です」。
「今日の上げを見るといつ下がるのかと心配です」。
挙句の果ては「気をつけましょう。注意しましょう」。
だったら最初から株式市場に近づかなければ良いだろう。
不安と懸念を増長するような相場観測ばかりで市場が成長する訳はない。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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