12月5週
【推移】
26日(月):
週末のNY株式市場は薄商いの中の反発。節目の2万ドルの大台を前に足踏みしているがNYダウは7週連続の上昇。週間ではNYダウが0.5%、S&P500が0.2%、NASDAQが0.5%上昇。もっともクリスマス直前の週末だったことから3市場の売買高は40億株まで減少した。
11月の新築一戸建て住宅の販売戸数は4カ月ぶりの高水準。ミシガン大学消費者信頼感指数もトランプ次期大統領の政策への期待感から2004年1月以来の高水準。半日立ち合いで月曜は休場の債券市場で10年国債利回りは2.54%と反応薄。WTI原油先物はバレル53.02ドルで1年5か月ぶりの高値水準となった。
NYダウの2万ドルはクリスマスプレゼントとしては到来しなかったが、それでも19933ドル。新年のプレゼントまで待つのか、あるいは週明けにお目にかかれるのか。いずれにしてもニューノーマルが示現するに違いない。
週末3連休前の日経平均は小幅に下落。「トランプ選挙後の11月10日の1092円高が今回の相場のスタート。11月11日から12月22日まで29営業日。21勝8敗で勝率7割超。3ケタ上昇は12日、3ケタ下落は1日だけ」という指摘がある。日経平均株価は週間26円高で7週続伸。週足も7週連続陽線。12月SQ値18867円、月足陽線基準18513円、年足陽線基準18450円ははるか下。
アベノミクススタート後、日経平均株価が1万円台に乗せたのは2012年12月19日水曜日。「終わりよければすべて良し」の年になるかどうか。重要な週のスタート。金曜日経朝刊も「数字が語る行く年来る年」。最終回は「7323億円」だった。
7月20日にポケモンGO人気を背景に任天堂が記録した過去最高の1日の売買代金。記憶に残る数字だった。興味深いのはその任天堂の直近のPER。21日時点で57倍。株価が5万円になるとPERは120倍まで跳ね上がるという。コロケーション取引の活発化や株価の上場が投資マインドを活性化させるのは周知の事実。
しかし山より大きなイノシシはいない。普遍的PERが49倍だとするならば、それ以上は警戒水域と考えることも必要かも知れない。ただ株価の上昇はこんな常識を忘れさせて、どこまでも上がり続けるという錯覚を惹起するから厄介でもある。
週明けの日経平均株価は31円03銭安の19396円と3日続落。高値警戒感と海外市場の休場を控えて買い手控えモード。日経平均の日中値幅は約47円。2014年9月1日の37円以来2年3カ月ぶりの小ささだった。
東証1部の売買代金は1兆6302億円。こちらは10月24日の1兆5658億円以来2カ月ぶりの低水準だった。ドル円が117円台前半で推移し輸出関連は売り優勢の展開。TOPIXも3日続落。塩野義、アステラス、大塚HD、任天堂が上昇。トヨタ、富士重工、商事、物産、住友鉱、国際帝石が下落。東証2部指数は反発。
27日(火):
今年の日本株。最大の買い手は日銀だったとの報。ETF購入額は4.3兆円超。昨年に比べ4割増。「外国人投資家の売りを吸収した」ことになる。今年1月から先々週までの累計売買では、外国人が3.5兆円売り越した。一方GPIFの売買を含む信託銀行が約3.5兆円買い。4.3兆円は信託銀行の3.5兆円と上回り「今年最大の買い手」だった。しかも取得価格ベースのETF保有額は11兆円。しかし三菱UFJ国際投信の試算では時価は14兆円。含み益は約3兆円。アレコレ批判されることもないだろう。
ここでも勝てば官軍の論理は通じるに違いない。
戦後初の年初6日続落の年でも大納会最高値の可能性の年。市場は「気がかりなのは年初の動向。1月大発会で日経平均株価は過去3年連続下落。特に16年は、中国経済の減速懸念で大発会としては過去2番目の下げ幅。「年初の波乱」への警戒感も聞かれるようになってきた。
市場には「来年1〜3月までは政策への『希望』は『恐れ』を上回る」(ゴールドマン・サックス)との見方。「出遅れ組の新たな買いと利益確定を狙う投資家とがせめぎ合う展開が続」との指摘。あと大納会まで4日立ち合い。世間様の御用納めとは関係ない日々が続く。
大引けの日経平均株価は6円42銭高の1万9403円06銭と4営業日ぶりに反発。売り物優勢でマイナス展開からスタートしたもののすぐに反転。上昇幅は一時80円を超えた場面もあった。東証2部株価指数は5155.59と続伸。
2006年4月10日(5161.82)以来10年8か月ぶりの高値を更新した。ただTOPIXは4日続落。東証1部の売買代金は概算で1兆8354億円と低調。小野薬、スズキ、ダイキン、東エレが上昇。東芝、三菱電、地所が下落。
28日(水):
クリスマス休暇明けのNY株式市場は小幅続伸。S&P/ケース・シラー住宅価格指数の主要20都市住宅価格動向指数は前年同月比5.1%上昇。コンファレンス・ボードの消費者信頼感指数は113.7。前月の109.4から上昇し、2001年8月以来約15年ぶりの高水準となった。これらの経済指標を好感したとの解釈。それでもNYダウで11ドル、S&Pで5ポイントでは動意薄。2万ドルという目標を達成したくないのか、あるいはご馳走は最後のマインドなのか。いずれにしてあとわずかで手が届くところで足踏みは続いている。もっともNASDAQは過去最高値を更新。
3市場の売買高は41億株と低調。過去20日平均の70億株を大幅に下回った。「年内は薄商いのなかで高値模索」という声が聞こえる。「高値圏における短期筋による空中戦を見守る展開」という声が聞こえる。「12月1日高値から12月5日安値までの下げ幅の3倍返しは19784円。昨年12月に日銀が金融政策の補完措置を発表した時の日経平均は19869円。この水準でのもみ合い」という指摘もある。
日経平均採用銘柄のPERは16.44倍。EPSが1180.23円まで上昇してきたことが救いになろうか。受け渡しベースでは新年。東証2部指数が10年8カ月ぶりの高値を更新した。権利配当落ちで実質新年相場だったが、日経平均は結局マイナス(TOPIXはプラス)。ただ東証1部の値上がり銘柄1411と値下がり474銘柄の約3倍。「いびつな相場」という解釈。
日経平均株価は権利配当落ち分の約27円を残念ながら埋められなかった。逆にそれを勘案すれば実質プラスとも・・・。東証1部の売買代金は1兆5592億円と前日から2763億円減少。今年最低となった。「昨年12月28日以来の低水準はよくある師走風景。昨年はそれでも日経平均が100円幅での上昇だった」という声が聞かれる。
個別では東芝のストップ安とシャープの年初来高値更新で時価総額が逆転した。NY株式も軟調でシカゴ225先物の終値は大証日中比105円安の19325円。「上がりきれなければ下落」のセオリーは日米共にやってきた格好となった。残念ならが年内2万円への期待感は薄らいだ。しかし月足陽線基準は18513円、12月メジャーSQ値18867円、昨年終値19033円はクリアした水準。25日線からはプラス2.8%かい離。空売り比率は34.1%まで低下。
日経平均採用銘柄のEPSは1882円まで復活した。22日時点の裁定買い残2週連続で増加。前週比248億円増の1兆9352億円。4月28日時点以来約8カ月ぶりの高水準。約2兆円を高水準と見るか、ようやく戻ったと見るかで相場観は全く違うことになる。東証マザーズ、日経ジャスダック平均と東証2部指数は3日続伸している。
大引けの日経平均株価は1円34銭安の19401円72銭と小幅に反落。権利配当落ち分27円弱を埋めることはできなかった。「市場参加者が少なく、積極的な売買も手控えられた」との解釈。東証1部の売買代金は1兆5592億円。2015年12月28日以来1年ぶりの低水準。JPX日経400とTOPIXは5日ぶりに小幅に反発。
キーエンス、三菱電が、日立工が上昇。東芝、三菱UFJ、みずほが下落。
29日(木):
NY株式は薄商いのなかの反落。「NYダウは2万ドル乗せにまた失敗した」との声が聞かれる。S&P500は10月11日以来の下落幅。日経マーケット面では「チャートに強気サイン、リズムや環境、95年に酷似」の見出し。「日経平均は4〜6月に23000円をつけ、96年高値(22666円)を抜く」との分析。
理由は罫線的に今年の相場が95年に似ていること。だから17年は96年型相場の写真。すると95年V字型相場は96年6月のバブル崩壊後の戻り高値になった型をなぞる可能性。その根拠は26週線が52週線を今月上抜いたこと。
アベノミクス第2幕になる可能性も指摘されている。これってこの2か月間セミナーなどで話していたことと一緒。誰もが考えることは同じなのだろうか。
もっともどんな予測も多くは「誰もが先行きの不透明さを感じている」。あるいは「市場がトランプ相場のユーフォリアから目覚めるのは時間の問題」。
最近アチコチで目にするのが「信用乗数」とか「貨幣乗数」という言葉。マネーストックがマネタリーベースの何倍かを示す比率のこと。信用乗数=マネーストック÷マネタリーベースで表される。一般的に預金準備率や現金・預金比率(企業や家計が持つ預金に対する現金の比率)が上昇すると信用乗数は低下する。
仮に信用乗数がほぼ一定であればマネタリーベースをもとにマネーストックが中央銀行によりコントロールできることになる。因みにマネーストックは1273兆円。2014年1月以来2年10か月ぶりの伸びとなった。
背景は「株式投資に備える個人の資金の積み上がり」とされる。信用乗数は低下が続いたが春ころからやや低下が鈍化してきた。
長期的変化の入口になったのかも知れない。大引けの日経平均株価は256円安の1万9145円と続落。一時前日比で300円を超す下げとなり、1万9100円を割り込んだ。その後買い戻されて1万9100円台前半で推移した。
市場からは「後場寄りに出ていた日銀によるETF買い期待もしぼんでしまい、米国株安や円高を背景に年末年始の休暇前に利益を確定しておこうという動きが出ている」との声。反対に長期金利は3週間ぶりに0.045%に低下した。ドル円が116円台前半で推移したことも悪材料視された。東証1部の売買代金は2兆796億円と2兆円超え。例年とは異なる動きとなっている。大塚HD、JT、大東建託、任天堂が上昇。東芝、りそな、JFEが下落。
30日(金):
NY株式市場は小幅続落。「年末を迎えたポジション調整。市場は次の展開を模索中」との観測。特に金融セクターが下落した。一方で公益セクターが上昇。大統領選挙後の上昇セクターが売られ出遅れセクターが好調というのはアンワインドの動きでもあろう。ブラジルやロシアの株の上昇率が高かった2016年も終焉。意外なところに伏兵がいたものである。
引け際の売り方の猛攻で結局年末3日続落とはなったものの19033円は下回らず。5年連続高を途切れさせたくないという強い意思と懐疑派の抵抗が感じられる大納会だった。
19114.37円は「行く、いいよ皆」は悪くない語呂合わせだろう。大納会大引けの日経平均株価は30円77銭安の1万9114円37銭と3日続落した。後場は上昇に転じ大引け10分前までは前日比プラスだったが引けに再度マイナスに転じた。
ただ昨年末終値(1万9033円71銭)は上回り、5年連続の上昇。バブル崩壊後では最長の続伸記録となる。
5年連続の上昇は1978〜89年の12年連続以来で、バブル崩壊後では最長。年間では昨年末終値(1万9033円71銭)と比べ80円66銭上昇。年末の水準としては1996年(1万9351円35銭)以来、20年ぶりの高水準だった。
東証1部の売買代金は1兆7125億円。三菱UFJ、みずほF G、東芝が上昇。ファストリ、ホンダ、マツダが下落。
(2) 欧米動向
楽天のレポートは「新年に警戒したいABCDEリスク」。
「市場平均が52週安値(終値)から2割上昇した段階で「強気相場入りした」とみなされる。
日経平均6月24日の14952円から約30%上昇。
米ダウ平均は2月11日の15660ドルから約28%上昇。
日米とも強気相場入りしている」。
そして「2017年のABCDEリスク」
A=Amerisan Yield(米金利の上昇加速)
B=BoJ Tapering(日銀の早期出口戦略)
C=China Risk(中国危機の再燃)
D=Donald Trump(トランプ大統領の暴走)
E=Election in EU(EU諸国での選挙不安)
(3)アジア・新興国動向
レイムダックと化した筈の米オバマ大統領のロシア外交官35人追放。
シリアでの和平停戦をアメリカ抜きで行われたことへの怨嗟なのか。
あるいは盗聴などの影響で民主党が選挙で敗れたことに対する仕返しなのか。
前政権と新政権のギクシャクさは年明けも続くのだろう。
そして収賄摘発に躍起になっている中国の成長率は6.4%に低下するとの見通し。
地政学は複雑に動いている。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
【1月】
1日(祝)介護休業の対象拡大、「うるう秒」挿入、中国製造業PMI
3日(祝)米ISM製造業、建設支出
4日(水)大発会
5日(木)マネタリーベース、米ADP雇用レポート、ISM非製造業景況指数
6日(金)米雇用統計、貿易収支
9日(月)水星順行開始
10日(火)株高の日L、変化日
13日(金)SQ
14日(土)最も上昇しやすいとされている日
16日(月)世界未来エネルギーサミット(〜19日アブダビ)、株安の日L
NY市場休場(キング牧師の日)
17日(火)株高の日L、世界経済フォーラム(ダボス会議)(〜20日)
19日(木)株高の日L、ECB理事会
20日(金)株安の日L、米大統領就任式、変化日
24日(火)株高の日L
25日(水)株高の日L
26日(木)大幅安の日L
27日(金)中国春節休み(〜2/3頃)、変化日
29日(日)株高の日L
30日(月) 株安の日L、日銀金融政策決定会合・経済物価展望レポート(〜31日)
31日(火)FOMC(〜2月1日)
以下はびっくり予想アレコレ。
★みずほ総合研究所の「とんでも予想2017年」
(1)日本は大型減税、トランプ・ホテル誘致
(2)米国で株高、長期金利3.5%超まで上昇
(3)米国が中国に急接近
(4)日銀が物価上昇に妥協
(5)日本政府は財政拡大、日銀はヘリマネ
(6)欧州が右傾化
(7)英国はEU離脱を撤回
(8)北朝鮮難民がアジアに
(9)2017年経済危機
(10)世界の異常気象で景気後退
★サクソバンク証券の「2017年大胆予測」
(1)中国のGDP成長率が8%上昇し、上海総合株価指数はが5000に達する
(2)日銀の轍を踏むFRB:米10年国債は1.5%に
(3)ハイイールド債のデフォルト率が25%を超える
(4)イギリスがEU離脱を撤回
(5)銅が迎える冬の時代
(6)仮想通貨の人気に伴ってビットコインが大幅に上昇
(7)アメリカの医療改革が業界に混乱をもたらす
(8)トランプ氏の勝利にもかかわらずメキシコ・ペソが急騰(特に対カナダ・ドル)
(9)イタリアの銀行が株式資産において最高のパフォーマンス
(10)EU債による成長刺激
★野村證券の「10大『グレイ・スワン』リスク」
(1)ロシアの軍事行動リスク
(2)米国の生産性の急上昇
(3)中国人民元の変動相場制導入
(4)英EU離脱からの離脱
(5)新興市場の資本規制
(6)日本のインフレ率急上昇
(7)清算機関の危機
(8)トランプ氏とFRBの対立
(9)アベノミクスの頓挫
(10)現金の時代の終わり
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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