10月4週
【推移】
24日(月):
週末のNY株式市場はNYダウとS&Pは小幅続落。NASDAQは小幅上昇とマチマチの動き。週間ではダウは0.04%、S&Pが0.40%、ナスダックは0.80%の上昇。「決算発表時期に入り、企業増益への回帰が示される一方で、ドルの強い上昇も見られる。ドル高や業績動向には注視する必要がある」という抽象的なコメントに代表される週末だった。
日経平均は10カ月ぶりに52週線を上回った。日足の200日線回復とともに、大きな転換点を示唆するものだろう。SQ通過後の1週間。10月SQ値16741円に対しては終値ベースで6勝。9月SQ値17011年に対して終値ベースで2勝。明らかに水準は変えてきた。
土曜日経朝刊では「国際協力銀、ロシア銀に単独融資」の見出し。地政学の変化の兆しは、日本の地政学的重要性の復活感。株式市場に日差しをもたらしてくれそうな気配。日曜日経は「水道・企業参入後押し」。インフラ整備への期待感は高めだろう。
日経平均の日中値幅は前場55円、結局82円。東証1部の売買代金は今年2番目の薄さ。閑散に売りなしとみるか。今年最少の売買代金は5月30日でその後株価は下落したのが歴史と思い出すか。別れ道なのかも知れない。
日経平均株価は49円高の17234円と小幅に反発。日銀によるETF買いの観測が浮上。堅調展開を継続させた印象。ボリンジャーバンドのプラス2σ(17257円)が上値を抑えたとの指摘もある。
本格的決算発表時期を控え商いは低調。東証1部の売買代金は1兆5658億円と5月30日の1兆5604億円に次いで今年2番目の低水準だった。売買代金上位10位がすべてマイナスでも日経平均は前日比プラスというちぐはぐな展開は方向性の欠如の裏返しと見るか。あるいは主力銘柄中心の225先物 手配と見るか。結構微妙なところ。旭化成、アステラス、大成建が上昇。任天堂、住友鉱、ソフトバンクが下落。
25日(火):
日本電産が決算発表。ドル円の見通しを105円→100円に修正しながら利益見通しは上方修正。配当見通しも引き上げた。「期待感がなかっただけ期待感」なんて声も聞こえる。塩野義は増額修正。サプライズは少ないが着実に決算をこなして来ている印象。
月曜日経朝刊の「経済指標」。単なる数字の羅列にしか過ぎないかが浮かび上がるものはある筈。気がつくのは生産指数集積回路。1年ぶりに8月は前年比プラス12.3とプラ転。広告扱い高は8月9月とプラス。粗鋼生産の軟調や個人所得の伸びのなさ。あるいは百貨店売上高や新車販売台数の低下。個人の消費指標は悪いが新たな萌芽も見られる。
JR九州上場日は無事通過。日経平均は4月25日以来半年ぶりの水準まで上昇した。円高にもめげず増益だった日電産、円高の影響で3割減益観測のマツダにスバル。いずれも力強い上昇を見せたところが市場心理の綾なのだろう。
上昇中の75日移動平均が下降中の200日移動平均線を上抜いた。200日線はあと2週間くらいで上向いてくる見通し。そうなると相場の強さは際立って来ようか。
騰落レシオの146%はその先陣的指標と考えるが、一応限界水準近く。
日経では「統合報告書、320社が発行」の記事。財務情報とともに経営戦略や社会貢献など非財務情報までまとめた統合報告書。宝印刷の調べでは昨年末より4割増の320社になるという。言われて久しいお題目のようなE・S・G投資だが、ようやく根付いてきそうな気配。もっとも住友鉱は3年かけてつくったというから準備も大変な労作ばかり。いっそのこと四半期決算なんかやめてこちらに注力する方が投資家づくりには役立つかも知れない。
日経平均株価は130円高の17365円と続伸。JR九州が公開価格を上回ったことも心理的追い風。ただ東証一部の売買代金は2兆1160億円。JR九州の2736億円を引けば2兆円割れ。ファーストリテ、ファナック、日電産が上昇。IHI、鉄が下落。
26日(水):
NY株式市場は反落。たまたま決算スケジュールの組み合わせと巡り合わせが悪かった一日。S&P500採用銘柄の第3四半期の利益は前年比1.7%増。
既に決算発表した150社の75.3%は市場予想を上回った。長期平均の63.5%よりも高い数値というのが現実。
日経朝刊では「2020年末の日経平均は4万円」という勇ましい声も聞かれ始めた。
マイナス金利導入以降継続していた外国人売りにも変化の兆し。「確認しようのない海外での懸念はあれこれ数えられる。
それよりは足元の変化を感じ取るべき」という指摘もある明るいのは「大型IPO後は上昇」のアノマリー。
今年7月のLINE上場。日経平均は上場前日から翌週末まで1%上昇。1か月後は2%上昇。昨年11月の日本郵政。日経平均は上場前日から翌週末まで5%上昇。1か月後は3%上昇。JR九州の場合は昨年の日本郵政パターンを望みたいところ。
前場のTOPIXは0.08%下落。市場の思惑通りに日銀はETFを707億円買い。結局日経平均は後場プラス転換し高値引けとなった。値上がり銘柄数1286。年初来高値更新銘柄110。騰落レシオは145.21%。商い薄が懸念されているが売り物薄の裏返しと考えればさほど悪くはない展開だろう。日経平均に続きTOPIXも5月の戻り高値(1379.8)を抜いてきた。
TOPIXの出遅れ修正の背景は日銀のETF買い期待が大きい。
日経平均株価は26円高の17391円と3日続伸。日銀によるETF買いの思惑から後場はプラス転換した。需給を表す75日移動平均線が、景気を表すとされる200日移動平均線を下から突き抜けたことも支援材料。日電産、プリマ、三井不動が上昇。JR九州、鋳鉄管が下落。
27日(木):
裁定売残は2週連続で減少。前週比94億円減の7130億円。買残が売残を上回り通常の状況に戻った。Quick調査の信用評価損率はマイナス10.85%。「ここからマイナス5%くらいまでが一番おいしいところ」と言う声も聞かれる。日経朝刊では「悩める空売り投資家」という見出し。
「16年は世界各国市場で同時並行的に空売りが機能しなくなってきている」との指摘。好材料が悪材料を駆逐した訳ではないが低金利からの運用多様化の影響もあるだろう。
日銀の金融レポート別冊の指摘。「米金利2%上昇なら日本の株価2割弱下落」という見方。国内金融機関のストレステストの想定で示されている。米金利上昇、外貨調達コストが0.5%上昇すると海外経済の実質GDPは減速。国内GDPもマイナスになるという試算。米長期金利が2%上昇すると、2017年度の実質GDPはマイナス成長。
日本の株価は2割程度下落することも加えられている。しかし、2017年度に米金利が2%上昇する可能性は触れられていない。不思議なレポートに映るし、本当にそうなるのか見届けてみたい気がする。
計算を合わせた天秤のように日経証券面では「米利上げに限界説」の見出し。8年目に入った米景気回復。来年は利上げなしに終わる可能性も指摘されている。となると、円高進行。利上げでも株安、利上げ見送りでも株安のシナリオ。どちらかが間違っている。
4日ぶりに反落した日経平均株価。今週は3勝1敗で17000円台固め。「下がらないという事実。売り込む材料も乏しい。個別企業決算が全体の下げ要因となっていない。マーケットの不透明感は相当減少」という指摘もある。騰落レシオは144.69%と高水準を維持しているが東証1部の売買代金は2兆円割れ。みずほHDの売買高も8334万株と1億を割れており過熱感など全くない。陽炎のような警戒感も聞こえてはこない上場。
三井不動の11日続伸など個別集中は継続した相場のようだ。同社株の記録は2012年末の12連騰。市場筋の指摘。「2012年12月12日からの12日続伸はアベノミクスのスタート時。夢よ、もう一度」。下落したとはいえ、昨日の日経平均の日足は実体が10円幅の極小線。外国人の3週連続買い越しは半年ぶり。需給・罫線ともに悪くはない。
日経平均株価は55円安の17336円と4日ぶりの反落。高値への警戒感からの売り物優勢。任天堂、野村、日電産が上昇。LINE、キャノンが下落。
28日(金):
「決算はここ6四半期で最も好調。しかし3カ月間にわたり小康状態にある株式相場を動かすには至っていない。アルコアの決算発表後、15日間に発表された業績はアナリスト予想を平均6%近く上回った。でもS&P500ほとんど動いていない。
値動きは2015年第1四半期以降で最小」。これが正直な感想だろう。「S&P500は3日以上の連続高を5週間実現せず。このままいけば月間ベースで3カ月連続の下落で1月以来の大幅安。PERは18倍と2009年以来の高水準」という声も聞かれる。
ゴールドマン・サックスのリポート。「民主党が選挙で大勝して両院を制すれば、S&P500は最初の1カ月で2%下げ。3カ月間では4%下げる可能性。一方、そうでない場合は最初の3カ月で6%上昇する公算」。やはり大統領選が変化点なのかもしれない。
金融庁の努力は株の相続税評価にも及んできている。不動産と比べて冷遇されている相続・贈与税評価上の株式。不動産のように小規模宅地の評価減80%みたいなもの要求した方がよいのかも知れない。
例えば500株までの持ち株は評価8割減。こうなる都低位ボロ株などは見向きもされず、皆値がさ株を買うようになるだろう。同じ500株でも30円の株の評価減は12000円。3万円の株なら1200万円。税評価による不公平なんて声も聞こえてきそうだが、株式市場隆盛の一助にはなろう。
日経と東証は年末をめどに「中小型株の指数」構成銘柄を決めるという。「投資魅力の高い200銘柄」で構成。選定基準はJPX400と一緒だというからすぐ出来よう。興味深いのは時価総額上位20%に銘柄を除外する点。年1回の入れ替えもあるという。
東証マザーズ指数先物の不人気を奪還できるかどうかが課題。
日経商品面では「鶏卵卸値2割高」の見出し。8月下旬に比べて2割高になってきたという。当然冬場に向かうという季節要因もあろう。もともと夏場に下落、9月頃から上昇する傾向にはある。前年同期比ではまだ10%超安い水準。これがさらに上昇すると「タマゴ高→株高」のアノマリーに通じよう。
日経平均株価は109円高の17446円と反発。4月22日以来の高値水準を回復した。TOPIXのリバランスが大引けに行われたことから東証一部の売買代金は3兆1330億円と拡大。三菱UFJ、オリックス、エプソン、JR九州が上昇。NTT、ファナック、花王が下落。
(2) 欧米動向
最近は米大統領選挙も霞んできてしまった。
NYで言われているのはクリントンバスケットとトランプバスケット。
最近ではクリントンバスケットの優位性が際立ってきたという。
各銘柄にどう差があるのかは東京からはなかなか理解しがたいが・・・。
《クリントンバスケット銘柄》
ユナイテッドヘルス(医療保険)
ヒューマナ(医療保険)
マケッソン(医薬・医療品)
エーイーコム(総合エンジニア)
クオンタ・サービシズ(インフラ)
エクソン・モービル(石油)
アルコア(非鉄)
ネクステラ・エナジー(電力・天然ガス)
クリー(電子部品)
ファーストソーラー(太陽光発電)
フェイスブック(SNS)
ネットフリックス(動画配信)
プルデンシャルファイナンシャル(保険)
シティグループ(金融)
ユニオン・パシフィック(鉄道)
《トランプバスケット銘柄》
J&J(日用品)
ファイザー(薬品)
メドトロニック(医療機器)
L3コミュニケーションズ(防衛機器)
ハリバートン(石油)
ダウ・ケミカル(化学)
デュークエナジー(電力)
フォード・モーター(自動車)
マーティン・マリエッタ・マテリアルズ(公共用石材)
ベライゾン・コミュニケーションズ(通信)
コムキャスト(CATV)
チャールズ・シュワブ(金融)
ウェルス・ファーゴ(金融)
デルタ・エア・ラインズ(航空)
興味深い指摘。
市場では「タイムワーナーの呪い」という噂がささやかれる。
同社のM&A案件が出ると、過熱相場が終わるというもの。
実際、過去にネット大手のAOLと統合した直後にITバブル崩壊。
さかのぼると、タイムとワーナーの統合後の1991年に米国は景気後退に突入。
今も米社債市場がバブルになっているという指摘も多く、米の景気拡大は7年目に及ぶ。
「二度あることは三度ある?」とも・・・。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち10指数が上昇。
上位1位ポーランド週間騰落率3.74% 2位日本1.52% 3位イタリア0.92% 4位ロシア0.59% 8位米国0.09%
下位25位フィリピン▲3.21% 24位豪州▲2.59% 23位香港▲1.80% 22位南アフリカ▲1.69% 21位スイス▲1.57%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
28日(金):米7〜9月GDP速報値、ギリシャ、トルコ休場
OPEC総会(〜29日)
週末:欧州が冬時間入り
31日(月):朝活、日銀金融政策決定会合、鉱工業生産、米個人所得、シカゴ購買部景気指数、ユーロ圏7〜9月GDP
1日(火):日銀展望レポート、黒田日銀総裁会見、新車販売台数、米FOMC(〜2日)ISM製造業景況指数、中国製造業PMI
2日(水):10月マネタリーベース、米ADP雇用レポート
3日(木):文化の日で休場、米ISM非製造業景況感、製造業受注、BOE金融政策委員会
4日(金):米雇用統計
【10月】12勝14敗(8位)
28日(金)大幅高の特異日
30日(日)EUがサマータイム終了
31日(月)日銀金融政策決定会合(〜1日)、展望リポート、新月、ハロウイン、新月
【11月】
1日 (火)米FOMC(〜2日)、IMFが人民元をSDR採用、変化日
3日 (木)文化の日で休場、憲法発布70周年
4日 (金)上げの特異日
6日 (日)アメリカがサマータイム終了
7日 (月)国連気候変動枠組み条約国会議(モロッコ〜18日)、変化日、下げの特異日
8日 (火)米大統領選挙・上下両院選
10日(木)サンパウロ国際自動車ショー(〜20日)
11日(金)ベテランズデーでNY為替市場休場
14日(月)7〜9月期GDP速報値、満月
17日(木)APEC閣僚会議(リマ〜18日)
18日(金)変化日
21日(月)海王星順行開始、大幅高の特異日
23日(水)勤労感謝の日で休場
24日(木)サンクスギビングデーでNY株式市場休場
25日(金)ブラックフライデー、変化日
28日(月)サイバーマンデー
29日(火)変化日、新月
4〜9月期決算発表が本格化。
最大の焦点は「円高の業績への影響度合い」と日経ヴェリタス。
主要企業では24日の日本電産(6594)から自動車や電機などの決算発表へ。
この騒ぎは11月中旬まで続く。
社数ベースで最初のヤマ場は31日。
2回目は11月11日独身の日になる見通し。
アナリストが業績予想を上方修正した比率から下方修正した比率引いた指数・
これを「リビジョン・インデックス(RI)」という。
20日時点で10.9%。
今年週次ベースで初めてプラスに転じた。
業績下方修正となっても「悪材料の出尽くしで株価にはポジティブな影響与えることもある」。
市場心理は移り気である。
「騰落レシオは間もなくピークアウトの公算」と大和のレポート。
↓
9〜10月の騰落レシオは120%前後で推移。
日銀のETF購入増額以降に騰落レシオの水準が切り上がった可能性もある。
日銀のETF買いが増えれば、なおさら騰落株線と株価指数は一致しやすくなるだろう。
10月25日頃にピークアウトすると見られる騰落レシオの水準とその後の相場展開は重要。
通常は140%の超過熱圏まで上昇した場合。
そこから最大1ヵ月程度の株価指数上昇が観測されることが多い。
しかし騰落レシオが10%程度、過熱圏が上方にシフトした印象。
今回は150%までは達しない公算が大きい。
「もういい加減に」というのが来週金曜からスタートする日テレの「秋のジブリ祭り」。
11月4日(金)雇用統計の日は「となりのトトロ」。
雇用統計は日本時間金曜の夜だから当然重なる。
11月11日(金)は「紅の豚」。
そして11月18日(金)は「猫の恩返し」。
とはいえ、となりのトトロは円高株安につながらなかったジブリ作品。
しかもリーマンショック直後は効いたアノマリーも最近は効かなくなってきている。
昨年8月、今年1月は効いたから今年はもういいだろうと考えたい。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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