10月3週
【推移】

17日(月):
週末のNY株式市場は小幅に反発。ただ週間ベースでは8月以来の2週続落。JPモルガンやシティなど金融大手の好調な決算を受けて金融セクターが上昇。NYダウの上昇寄与度の半分以上はゴールドマン・サックスの上昇だった。

9月の米小売売上高は前月比0.6%増で前月からプラスに転じた。PPIも前年同月比0.7%上昇し、2014年12月以来最も大きな伸び。
加えて中国のPPI、CPIが予想以上に上昇したことが債券売り・株買いの構図となった。

もっともFRBイエレン議長が講演で、経済の回復力に疑問を呈したことで上昇幅を縮小。「高圧経済をしばらく維持することによってグレートリセッションで打撃を受けた成長トレンドの一部を修復する」。なかなか理解しがたいコメント。結局緩和姿勢継続をほのめかしながら12月の利上げを準備という姿勢なのだろう。

週末、SQ、株高の特異日の東京株式は反発。ドル円は104円台になったが日経平均は17000円に届かなかった。SQ値は16741円を上回り「幻のSQ」は脱却。週間では3円の下落で週足では陰線。「16938円(7月21日)、16943円(8月12日)、17156円(9月5日)、10月11日17074円と17000円近辺に山が4つ並んだ。上値の重さが意識される」という指摘もある。ただ下値を切り上げており「エネルギー蓄積中」と見ることもできよう。

日経平均株価は43円高の1万6900円と続伸。朝方は買い先行。中国人民元安を嫌気して前引けはマイナス転換。後場は為替の伸び悩みを好感して持ち直しと方向感に欠ける展開。東証1部の売買代金は1兆6333億円。10月3日以来2週間ぶりの少なさだった。ソフトバンク、京セラ、日東電、TDK、信越化、メガバンクが上昇。ドトル日レスは年初来高値を更新。一方、ファーストリテ、KDDI、電通、塩野義、東電が下落

18日(火):
週明けのNYダウは51ドル安の18086ドルと反落。9月14日以来、約1カ月ぶりの安値水準となった。週明けの日経平均株価は43円高。長い目で見れば「5年(16014円)と25年(14528円)の移動平均がゴールデンクロス」との声。
バブル崩壊から25年を経過。ようやく修復時期が来たということなのだろうか。

10月4日株高の特異日。10月14日株高の特異日。いずれも今年は上昇した。となると次は10月20日(木)株高の特異日。次は10月28日(金)株高の特異日。
7月上昇→12月上昇→期待。10月上昇→翌年2月上昇のアノマリーもある。

日銀のETF買いはようやく14日に707億円の出動があった。この日の前場のTOPIXはマイナス0.12%。13日の前場はマイナス0.14%でETF買い見送り。この出動基準のあいまいさも気にかかる。

大引けの日経平均株価は63円高の16963円と3日続伸。朝方は売り先行の動き。為替の104円台を好感してプラスに転じた後はほぼ高値圏での終値となった。東証1部の売買代金は1兆7731億円と11日連続での2兆円割れ。アデランス、M&A、MrMax、パスコが上昇。船井電、戸田建、テクノプロが下落。新興市場も堅調展開。日経ジャスダック平均株価は4日続伸。東証マザーズ指数は続伸。

19日(水):
NY株式市場は反発。第3四半期決算を発表したS&P500採用銘柄は52社。そのうち81%で利益が市場予想平均を超えた。「市場予想の達成状況から投資家は5四半期ぶりの増益を見込んでいる」という声も聞こえ始めた。「企業決算を手掛かりに米国経済は緩やかなペースでの政策引き締めを受け入れられる十分な力強さがある」との声がある。

日経1面では「自社株買い最高4.3兆円」の見出し。設備投資ではなく、自社株買いにしか資金を使えない経営姿勢。ROEの向上を目指しているのだろう。しかしROEは分母の減少ではなく分子の増加を図るのが本筋。ここが相場の停滞モードのひとつの原因でもあろうか。

日経商品面の「野菜の高値長期化」とダブって見える「企業の自社株買い最高4.3兆円」のトップ見出し。共通しているのは「需給のタイト化」。もちろん野菜は消費の品、株は消費しない。しかし、理由はどうあれ市場に出回るものが少なくなれば価格が上昇して調整するのが本筋。このままいけば年間4.8兆円を吸収する可能性が高いという。率にして約1%。

みずほ証券が開発した30〜60分後のAIによる価格変動予測。注文金額の0.01%程度の運用成績向上に比べれば相当大きい率となる。「長期産業資金の安定的供給が損なわれる」なんてそもそも論も聞かれる。しかしもともと市場参加者はそんなことは考えていない。「国民金融資産の安定的成長」の一端としての短期売買中心。長期投資と言えばせいぜい短期投資が失敗した結果の塩漬け。だったら自社株買いが横行したって問題ないだろうと思う。

新発10年国債の商いが成立しなかった。昨年9月以来1年10ヶ月ぶりの不成立。マイナス金利で長期保有メリットはなく短期売買でも値幅が限定的で手が出せず。日に日に売買が細ってついには商い無し。市場の原理原則から行けば、マイナス金利が間違っているからこういうことが起こる。どこまで深掘りするかなんて議論は不毛そのもの。原点に返って間違いをただすようなコメントがどうして出てこないのだろうか。
逆にマイナス金利解除でもしれば債券には我先の売りが殺到。金利は上昇しインフレは自然に進む。脱デフレの旗印の中でのマイナス金利はどう考えても個人的に相いれない。この両者が共存できると考えるところに専門家の陥りやすい罠があるような気がする。10月20日株高の特異日を前にした4日続伸。

日経平均株価は35円高の16998円と4日続伸。中国の7〜9月期のGDPは前年同期比6.7%増で着地。市場予想をやや上回ったことから中国経済の下振れ不安が薄れ、投資家心理が改善。一時はメジャーSQ値17011円を上回る場面もあった。東証1部の売買代金は1兆6631億円と12日連続で2兆円割れ。三菱自、三菱UFJ、三井住友FG、Vテク、Jディスプレ、東エレクが上昇。トヨタ、ホンダ、ソフトバンク、村田製、デンソーが下落。

20日(木):
10月20日は東京ベースのブラックマンデー記念日。そして「株高の特異日」でもある。日経マーケット面では「日銀の限界見透かす市場」の見出し。「金利下限マイナス0.3%」とある。市場関係者やエコノミスト40人への日本経済研究センターの調査結果だという。6割はマイナス金利の深掘りを見込んでいるといる。その水準はマイナス0.2〜0.3%の水準。
しかし個別コメントを見ると「深掘りが実体経済にポジティブに聞くか見通しにくい」。「市場の急速な混乱がない限り日銀は動かない」。「次に深掘りするのは経済にかなり大きなショックがかかる場合」。
結局総論ではマイナス0.3%限界ながら各論では「深掘りなし」といった格好。だったら「マイナス金利の深掘りなし、ないしは現状維持」が結論なのだろう。というか、マイナス金利深掘りがあるかのごとくの議論に聞こえる。

マザーズ指数先物の薄商いの伸び悩みも登場した。なかなか浸透していない様子。その背景は先物のわかりにくさもあるだろう。投資家教育だけで事足りるとはとても思えない。そして一番大きいのは、個人投資家は個別株志向が強いこと。つまり必要なのは「わかりやすさ」なのだろう。
HFT・AIなど横文字が乱舞し「わかりやすさ」からはますます遠のく株式市場。頭でっかちになったツケが売買エネルギーの低下というしっぺ返しになっている気がする。

日経平均株価は5日続伸。9月5日高値17156円を上回った。2016年3月月中平均は16897円。9月月中平均は16737円。そして9月メジャーSQ値は17011円。52週移動平均が17077円。1月29日に日銀がマイナス金利を導入した時は17518円。ココを抜ければマイナス金利の功罪論も消えてくるかも知れない。4月25日高値は17613円。来週絶対期日を迎えるが期日が明けたのかどうかが一つの課題だろう。
そして気になってくるのが昨年末終値19033円。年足陽線基準は18450円。再来になるかどうかというところ。9月5日高値17156円を終値ベースで上回ったことで市場心理は勝手に一変。
東証1部売買代金も13日ぶりに2兆円を超えた。「もみ合いを続けながら蓄積されたエネルギーが上放れた。5月31日高値17251円を上回ることができれば4月25日高値17613円まで抵抗は少ない」と期待感が高まってきた。

イスラムのヒジュラ暦の新年、ユダヤ暦の正月後10日。株高アノマリーに沿った動きと言う指摘もある。日経平均株価は236円高の17235円と5日続伸。4月27日以来、約半年ぶりの高値水準を回復した。米大統領選のテレビ討論会で民主党のヒラリー・クリントン氏が優勢と伝わったことを好材料視。原油先物の上昇や自民党総裁任期延長の話も追い風。
東証1部の売買代金は2兆825億円と13日ぶりに2兆円を回復した。野村不HD、ファストリ、ソフトバンク、MMC、任天堂が上昇。一方、花王、第一三共、ニコン、スクリン、日電産が下落。

21日(金):
松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス10.295%。買い方はマイナス7.965%。2%の開きとなってきたし売り方の評価損率が2ケタになってきた。カラ売り比率36%。日経VIは18.46まで低下した。騰落レシオは131.09%と上昇。4月22日終値17572円を抜ければ2月12日と6月24日の14952円のW底からの脱却となる水準まできた。
ただ25日線(16746円)からのかい離がプラス2.9%。4%かい離の17415円が第一次限界だろうか。8%かい離の第二次限界の18085円はまだ遠い。歴史は繰り返すものなのか、霞が関に創造力が欠如しているのか。あるいは前例が好きなのか。

夏季五輪→万博→冬季五輪の流れ。1964年東京五輪→1970年大阪万博→1972年札幌五輪。高度成長期のメルクマールでもあった。今回も大阪万博招致が登場してきた。2000年東京五輪→2025年大阪万博→2016年札幌五輪。夢よもう一度なのかも知れない。
加えれば、80年代に活躍した企業群も登場し始めた。OLCは7%減益見通しから2%増益観測。背景は客単価の上昇。任天堂はポケモンGOが話題となりファミコンを再発売。今回は据え置き・携帯型融合の「スイッチ」をUiiU以来4年ぶりに発売。リオでマリオが登場したのはこの伏線でもあったのだろう。ミッキーとマリオの饗宴といった印象。
ここに13日に発売されたソニーのプレステVRも加わそうな気配。ゲーム雑誌「ファミ通」は16日までの4日間で国内販売台数約4.6万台と推計。

日経平均株価は50円安の17184円と6日ぶりの反落。ドル円が103円台になったことを嫌気したとの解釈。買ってもダメなら売ってみなの展開。今年タイの6日続伸は見果てぬ夢となった。週明け月曜に気分はまた変わっているかもしれない。東証1部の売買代金は2兆320億円と2日連続で2兆円超。三菱自、宇部興、三井住友、OLC、JT、オプティム、神栄が上昇。任天堂、トヨタ、ガンホー、野村、ソニーが下落。

(2) 欧米動向

「EU離脱をめぐるいかなる合意も議会による批准が必要となる公算が非常に大きい」という指摘が登場。
EU離脱に伴い欧州単一市場へのアクセスを失うハードブレグジットへの懸念が和らいだとされる。
もっともサウジアラビアによる大量の国債発行に備え米国債へのヘッジ売りも観測されている。
気になるのは欧州投資家の9月の売り越し。
1兆483億円は3月の1兆2355億円以来の水準。
これが欧州の投資家なのか、欧州経由のオイルマネーの売りなのか。
原油動向は戻っておりオイルではないように思えるが気にかかる。
単に裁定の裏返しの現物売りならば良いのだが。

(3)アジア・新興国動向

「中国の食の安全でブロックチェーン活用」の話。
IBMとウォルマートが参加するという。
ブロックチェーンを使い、生産から流通、消費に至るまでの食品の流れを把握する。
これにより生産者の情報やバッチ番号、工場・加工データ、賞味期限、保存温度、出荷データなどの情報を一括管理できる。
食のトレーサビリティーが改善し安全性の向上につながる。
こうしたデータ記録は、商品の保存・管理の改善を通じ、ウォルマートなどの小売店にとっても一助となる。
清華大学がブロックチェーンプロジェクトの学術パートナー兼アドバイザーとして参加するという。
ブロックチェーンはビッドコインだけでない。
FinTech(金融)、TransTech(流通)、ManuTech(製造)、
MediTech(医療)、GovTech(公共)など。
さまざまな領域での応用の可能性がある。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・
週末:衆院東京10区、福岡6区補欠選挙
24日(月):朝活スタート、貿易統計、シカゴ連銀活動指数
25日(火):JR九州上場、米CB消費者信頼感、コアロジック住宅価格指数、独IFO景況感
26日(水):企業向けサービス指数、米新築住宅販売、卸売在庫
27日(木):米耐久財受注、ドイツ銀決算
28日(金):失業率、家計調査、消費者物価、米7〜9月GDP速報値、ギリシャ、トルコ休場

「期初、円高を覚悟した経営者は、今年はコスト削減に努力している筈」という指摘。
15年度決算は減収ながら経常増益。
「販売額の減少をコスト削減で補った」との解釈。
この減収増益パターンは99年度、02年度、12年度もそうだった。
いずれも翌年度は経常増益となり株高加速の歴史だった。
この指摘は結構効いてくるかも知れない。
邪魔になるのは原油高だろうか。

日興アセットのレポートは「金利上昇時に株価が下落する、とは限らない」。
2000年以降の米長期金利上昇のケースを見ている。

(1)03年6月から04年6月
日本株プラス35%、日本債券マイナス4%、外国株プラス12%、外国債マイナス5%
米国金利変化幅1.68%、ドル円マイナス6%


(2)09年1月〜10年4月
日本株プラス17%、日本債券プラス2%、外国株プラス37%、外国債プラス6%
米国金利変化幅1.50%、ドル円プラス1%

(3)12年7月〜14年1月
日本株プラス86%、日本債プラス2%、外国株プラス89%、外国債プラス44%
米国金利変化幅1.58%、ドル円プラス34%

「単純にリターンを比較することはできない。
しかしいずれのケースにおいても、米国の長期金利が1.5〜1.7%程度上昇する中。
株式が上昇し債券が下落したのは3回のうち1回。
為替は円安米ドル高が3回のうち2回となった。
17年以降、世界的に良い金利上昇の流れが広がることを期待」という結論。

野村證券の調査チームが2017年の注目銘柄を選定したという。
タイトルは「変革する日本企業、十本の矢2017」。
(1)ミスミ、(2)日立化成、(3)ファーストリテ、(4)Jフロント、(5)みずほ、
(6)前田建、(7)セイコー、(8)アシックス、(9)滋賀銀、(10)郵船。
「17年に向けて業績の天井を打ち破るような構造改革がαの源泉につながること」。
これがこの銘柄群に期待されているという。
指数と「個」の連立時代が来たかもしれない。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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