04月3週
【推移】
11日(月):
「原油価格の持ち直しでエネルギー株が買われ相場を下支え。決算発表時期を前に投資家は慎重」という玉虫色の解釈。11日のアルコアを皮切りに決算発表は本格化する。S&P500構成銘柄の業績は3四半期連続で落ち込み7.6%減少の見通し。これが投資姿勢をやや慎重にしている面は否めない。
週間ベースではNYダウとS&P500が1.2%、NASDAQが1.3%の下落。S&P500の下落幅は2月上旬以来の大きさだった。原油先物はバレル39ドル台まで復調。在庫の減少とカナダから米国に原油を輸送するパイプラインの閉鎖が材料。増産凍結への思惑がどこまで効くかが課題の週。欧州とともにCPIの数字に神経質にはなっている。しかし所詮過去の数字の発表で通過することだけが大切。
中国GDPもどうせ良くはない。突発的事項でもない限りNY株式の大きな崩れは想定しにくいところ。NYダウは2月16日以降、右肩上がりの展開。25日移動平均線(週末で17410ドル)がサポートしている。市場人気は悪化していないという証拠になろうか。市場が忘れているのは大統領候補選挙真っただ中に株安を容認するものは少ないということ。
先週の日経平均株価は週間で342円下落は2週続落。一時15500円を割り込み、14年10月31日の日銀の追加金融緩和を実施する前の水準(15658円)を下回った。ここはアベクロ路線にとっては譲れない線だろう。ということで一応反発して終った週末だった。ただ「円安の宴は終わった」という声もある。「昨年11月の上昇局面で日経レバを買った向きの期日が5月にくるので警戒」という指摘もある。
日経平均株価は70円安の15751円と反落。TOTO、三菱マテが上昇。ダイキン、パソナが下落。
12日(火):
東証マザーズ指数が07年以来の高値水準。ライブドアショックが06年だったから、10年経ってようやく払しょくの感。中小型株は大型株の露払いという声もある。つまらなそうに見える東証1部市場のさきがけとなってくれるだろか。というか今年の夏には「東証マザーズ指数の先物取引」の開始。指数先物取引の開始前には原資産そのものが上げてきたのが歴史。そう考えると、夏場まで東証マザーズ指数任期はつづくのかも知れない。
日経平均株価は177円高の15928円と反発。鉄、トヨタが上昇。JSR、日ハムが下落。
13日(水):
IMFの支援悪材料?で株高。と考えた方がシックリする。月曜にブラックロックが日本株見通しをニュートラルに引き下げたことも悪材料。「世界の投資家と安部首相は離婚状態」とまで言われた。市場というのは不思議なところで、悪材料も好材料も「出尽くし」と受け入れる。相場が悪い時に与党が選挙で負ければ「出尽くし」。
株価が安値の時に減益が出ると「出尽くし」。株価が高値のときに増益が出ると「出尽くし」。本当は出尽くすことなんてないのに便利な言葉として使われている。だからニュースを額面通りに受け止め「大変だ」。あるいは「大きいニュースだ」なんてまじめに考えると寝首をかかれる。大きく見えるニュースも明日には消化され常識になる。だから妙に驚くこともないし、妙に焦る必要もない。
日経平均株価は452円高の16381円と続伸。国際帝石、津田駒が上昇。高島屋、パスコが下落。
14日(木):
水曜日経の神奈川・首都圏経済版では「再生・細胞医療最先端へ」の記事。川崎市殿町地区での「ライフ・イノベーションセンター」の完成を報じている。夏をめどに本格稼働する方向だが、これもバイオ関連の起爆剤だろう。木曜日経1面では「インフラにゼロ金利融資」の見出し。経済対策の柱にというサブ見出し。当面は「新幹線・都市鉄道整備・保育介護施設整備・奨学金」などに使われる方向。いずれにしてもインフラ整備も忘れてはならない存在。「追加経済対策」、「選挙対策」、「増税延期」、「伊勢志摩サミット」。スケジュール的には悪くない。
日経平均株価は177円高、452円高そして木曜は529円高の高値引け。3日間の上昇幅は1159円となった。3月1日〜4日の4日続伸は988円高だったからそれよりも大きい上昇となった。今年は4日続伸が最大なのでこれに挑戦というマインドだろう。上向きに転じた25日移動平均(16595円)を一気に抜いた。そしてまだ下向きの75日移動平均(16844円)も抜いてきた。
市場心理(25日)と需給(75日)面での不安は払しょくされ、あとは200移動平均(18399円)が表現する景気と業績に対する懸念を払しょくできるかどうかとなろう。日経平均株価は529円高の16911円と3日続伸。東証1部の売買代金は2丁6689億円と拡大。コマツ、イオンが上昇。小野薬、ローソンが下落。
15日(金):
新興市場のマザーズ市場での外国人の売買動向。
3月以降外国人投資家は買い越し。3月の月間買い越しは140億円。週間ベースでは毎週30億円台の買い越しだった。
4月第1週の売買は170億で円、3月月間を上回る規模での買い越し。「ETF組成に絡む買いの可能性」という指摘も聞かれるが・・・。
いずれにしても7月19日のマザーズ指数先物上場までの新興市場は目が離せない。というか、日経レバ(1570)に代表される指数主役の市場展開もほぼ2年。そろそろ飽きてくるタイミングでもあろうから、その意味では「木」や「草」に目が行こうか。
東証投資主体別売買動向で外国人は145億円の買い越し。なんと14週ぶりの買い越しとなった。個人は237億円の買い越しで2週連続。落ち着いてきた印象。4月SQ値15507円ははるか下に見えるようになった。
これは3月のSQ以降の動きと似ている。SQ値決定後は〇〇〇〇〇で5勝0敗。騰落レシオは115.01%。松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス9.379%。買い方はマイナス7.740%。空売り比率は35.9%と久々の水準まで低下。日経VIは26.11でNYの13%台と比べるとまだ高い。
日経平均採用銘柄のPERは15.36倍でEPSは1100円。G20や産油国会合を待つ理由から日経平均株価は63円安の16848円と反落。大成建設、新日本理化が上昇。ツガミ、アデランスが下落。
(2) 欧米動向
IMFが世界経済見通しを3.4%→3.2%に下方修正した。
米国16年2.4%、17年2.5%。
ユーロ圏16年1.5%、17年1.6%。
中国16年6.5%、17年6.2%。
これに対して日本は16年0.5%、17年マイナス0.1%。
背景は消費増税の影響でのマイナス。
財務相や日銀からの出向者が多いIMFの見通しは少し甘かろうから実態はもっと悪い。
それでも消費増税ですか?という気になってくる。
そして14日からのワシントンでのG20財務相・中央銀行総裁会議。
G20で何かが動くことは滅多にないので盲腸みたいなもの。
それでも麻生財務相は「必要な措置はG20の合意内容に沿って行える」。
世界の通貨安競争のバトルは少し行われそうな雰囲気は感じられる。
もう一つの課題はOECDと協調した「節税策防ぎの課税強化」。
これはジワジワトした株価インパクトになりそう。
そのOECDのグリア事務局長の考えは「消費増税の悪影響を財政出動で緩和する」。
あるいは「構造改革が日本の将来には絶対不可欠。
これに成功して成長が勢いづけば、税収も増える」。
そのための方策は「女性の労働参加率を引き上げ、高齢者が長く働けるようにする」。
財政出動で政府債務を悪化させえることが消費増税の見返りになるのだろうか。
あるいは既に高い女性の労働参加率やシニア雇用が本当に構造改革なのだろか。
現役世代の負担軽減などには見向きもしないことが、砂上の楼閣論に聞こえてならない。
(3)アジア・新興国動向
中国の1〜3月GDPは6.7%成長で着地。数字的には想定通りの展開だが、公共投資偏重型の経済に疑問の声も聞かれる。一方、カタールのドーハで開催された産油国の会合で増産凍結は見送られたことは悪材料視。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
15日(金):米鉱工業生産、NY連銀製造業、ミシガン大消費者信頼感、中国1〜3月GDP、鉱工業生産、小売売上高、他経済指標
週末:OPECと非加盟産油国会合(カタール)
18日(月):米NAHB住宅市場指数
19日(火):全国学力テスト、米住宅着工、独ZEW景況感
20日(水):貿易統計、コンビニ売上高、訪日客数、米中古住宅販売
21日(木):米CB景気先行指数、ECB理事会(ドラギ総裁会見)
22日(金):第3次産業活動指数
ひょっとすると・・・。
株式市場というのはリアルっぽさを保持しているバーチャルな世界かも知れない。
中国の景気、あるいはシェールガス・オイルなどの行方。
あるいはギリシャの財政動向や中東情勢など。
多くの人は事実を確かめることなく、報道や映像や活字だけで判断する。
実際に見にもいかないし聞くことも滅多にない。
確認することなく多数論理に従う格好。
あるいは他人の意見を疑うこともなく信じての行動。
お金という大切なものを投じる割にはその予測行動は驚くほど簡素な印象。
これは実によくない傾向ではなかろうか。
海外の世界は見聞コストも高いが、せめて国内の企業の状態くらいは電話でも聞ける筈。
さほどでないコストを惜しむべきではないだろう。
少なくとも疑って考える時間くらいは持っても良いような気がする。
皮相的な現象面やムード的心理だけにとらわれると減少に束縛されてしまうような気がする。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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