03月2週
【推移】
7日(月):
通過した2月の米雇用統計で非農業部門就業者数は前月比から24.2万人の増加。ただ、時給は25.35ドルとマイナス0.1%、平均週労働時間は34.6→34.4時間と減少。失業率は4.9%と変わらずだった。いずれにしても3月15〜16日のFOMCでの利上げの確率はほとんどないとの解釈。
前週の日経平均株価は週間で約826円上昇。3月第1週は過去7年連続上昇となった。週足では3週連続で陽線。ようやく逆転したのは松井証券経由の信用評価損益率速報。売り方はマイナス9.881%。買い方はマイナス9.788%。わずかな差ながら買い方の評価損の急速な回復と売り方の痛みの増加がうかがい知れる水準。本来ならばこの逆転は上昇加速につながる動き。
2月のSQ値は15156円ではるか下。ただメジャーSQとしては12月の18943円というたかい目標がそびえているがここに届くのはなかなか。とりあえずは1月SQ値17420円を上回るというのがささやかな目標だろう。
先週末の先物手口を見ると225先物でGSの11000枚買い越し、野村の16000枚売り越しが目立った。TOPIX先物ではソジェン(7000枚)、パリバ(4300枚)の買い越しに対してニューエッジ(9200枚)の買い越し。
日経VIは29%まで低下したが「荒れるSQ週」は久々に上に荒れて欲しいところ。3月11日(金)に勝手雲が白くねじてているのは好兆だろうか。マザーズ指数は5日続伸しておりフィンテックやバイオなど個別新興株の元気さが目立っている。
日経平均株価は103円安の16911円と反落。商船三井、東邦鉛が上昇。トヨタ、JTが下落。
8日(火):
NYダウは67ドル高の17073ドルと5日続伸。しかもS&P500は1月5日以来の200ポイント乗せ。年初からの下落率は一時10%を越えていましたが2月11日の1829ポイントが安値。そこから10%弱の上昇となり年初来高値2038ポイントも視野に入ってきた水準。2ヵ月ぶりにWTI原油先物がバレル37ドル台に乗せたことを好感との解釈も聞かれる。VIX(恐怖)指数は17.47ポイント。バルチック海運指数は17日続伸。
そもそもジム・ロジャーズやハリー・デントが唱えている「3.10大暴落」説などどこ吹く風という印象。NYの春は暖かそうな気配。中国の全時代が株主総会のようなものとすれば上海株の5日続伸はお化粧期間なんて声も聞かれる。
日経平均株価は128円安の16783円と続落。東急不、ピジョンが上昇。ソニー、スズキが下落。
9日(水):
株価は必ずしも材料に基づいて動くわけではない。どうしても売買の材料を解釈しなければならない市場関係者の憶測が必ず正しい訳でもない。簡単にいえば「買い疲れ」。不思議と数字を伴ったような材料を提示したがる習性から行くと「4%下落したWTI原油先物」とか「25.4%減少した中国の輸出」なんて声が欲しくなってくるのだろう。「買い疲れたから売り」「買っても上がらないので売り」なんて解釈でも問題はなかろう。
「10日暴落説があるが10日はECB理事会だから売り崩しづらいだろう。崩すとしたら11日。でも、来週は日銀金融政策決定会合、米FOMCがあり、崩しづらい筈。仕掛けるならそれらのイベントが終わったあと」と言う声も聞こえる。
日経朝刊1面トップも「アジア企業7年ぶりに減益」ととってつけたような記事。10年国債利回りはマイナス0.1%まで低下しておりこのアンワインドが起これば
株価に好材料ではあるが時期尚早か。
需給面では信用買い残は4週連続で減少し2兆4497億円と2013年4月以来の水準まで低下。売り残は6237億円と増加しており信用倍率は好転。
裁定買い残も1兆8000億円台で2012年11月以来の水準で重荷にならない。過去を振り返ってもあまり意味はないが、
SQ週の日経平均の高値と安値の差。
2月223.24円、1月1441.48円、12月790.76円。11月336.92円、10月568.93円、9月1354.90円。8月643.91円、7月1312.80円、6月528.62円。5月203.23円、4月764,71円、3月758.74円。
12月以降の過去3か月のSQ週以外の値幅は837円。昨年来のSQ週の平均値幅は866円。実はそんなに差がないことになる。昨年12月からの「月前半安」のアノマリーを打ち消したのが4か月ぶりの「週末・週初の連続高」と言う説。
あるいは3月1日初日のS&P500の上昇率2.38%が3月初日として過去最高だったとも。1950年以降3月のS&P500の平均騰落率はプラス1.2%。勝率65%の数字と10日暴落説の相克。何かを持ち出して打ち消そうという努力はアチコチにある。
日経平均株価は140円安の16642円と3日続落。NTT、イオンが上昇。住友鉱山、クミアイが下落。
10日(木):
3月1日終値は16085円だったのでいまのところ3月月足は陽線。実に4か月ぶり。日経平均の25日移動平均は16339円。75日線は17797円、200日線は18867円。一目均衡の雲は黒く下限は18014円でまだ雲の下。勝手雲は上限16385円なので3月2日から上抜けている。11日からは黒から白い雲にねじれて変化。
来週末には上限が16658円まで上昇するので形は悪くない。後付けのような報道が目立つ。一つは日経の「ノルウェー年金、日本国債4300億円売却」。昨年10〜12月に多額の日本国債を売却したという。それでも2兆7600億円持っているが9月末比13%減少。「低金利で投資妙味が減ったことで他国債に乗り換えた」との解釈。長期運用の視点では確かにそうだろう。しかしマイナス金利以降の日本国債の価格上昇を踏まえれば、短期的には「ヘタ」。もっともそんな短期で物事を考えずに機械的に売却したのだろう。
もうひとつは米資産運用会社ブラックロックが米ドル売り・円買いのポジションを縮小したとの報。最高投資責任者リーダ氏のコメントは「われわれは逆方向に転換し現在はドルに前向き」。2月にユーロ、円、ポンドの純持ち高を全て解消したというからすごい。ひょっとしてドル資金が必要だったの?と穿った見方もできないではない。あるいはポジショントークなのかも知れない。しかしプロのドル回帰の動きはなくはない筈。
AIがガンバている。10年先と言われていた囲碁のプロへの勝利。グーグル開発した人工知能の「アルファ碁」と世界トップ級のプロ韓国イ・セドル九段との5局勝負。初戦はアルファ碁が勝った。もはや学習するAI抜きに未来は語れなくなってきた。とともにマーケットテーマになることも考えられる。
日経平均株価は210円高の16852円と4日ぶりの反発。ただ商いは低調で東証1部の売買代金は2兆431億円と今年最低を記録した。三菱UFJ、高島屋が上昇。関電、マネパが下落。
11日(金):
「REIT海外勢買い活発」の見出しは日経朝刊。2月は1167億円で07年2月の1398億円以来過去2番目の買い越し額。マイナス金利と日本の不動産価格の安定性に注目したとの解釈。昨年末から6%上昇したREIT、11%下落した日経平均。この差は結構大きい。中小型株のようなボラを望まなければREITのジワジワさも結構心地良いかも知れない。
3月第1週の外国人は9週連続で売り越し、売越額は954億円。個人も2週連続で売り越し、売越額は1989億円。信託銀行は15週連続の買い越しで、買越額は2813億円。信託の連続買い越しは08年9月第3週〜12月第4週までの15週連続以来の長さ。空売り比率は38.2%。
日経VIは30.93といずれも落ち着いてきた。残念ながら為替と密接に連関している株価。「25日線への接近、そして上回ることがカギ」との声も聞かれる。
メジャーSQ値は16586.95円。
日経平均株価はこれを上回った水準で前日比86円高の16938円と続伸。SQで商いは膨らみ東証1部の売買代金は3兆833億円。鬼ゴム、ミサワが上昇。武田、日揮が下落。
(2) 欧米動向
アメリカでは雇用統計通過。
そして大統領選挙戦では強いトランプ氏へのワシントンの嫌悪感の台頭。
一朝一夕にはなかなか進まないのは株も政治も一緒のようである。
そして中国では全人代というお祭りみたいなものの開催。
李克強首相は2016年実質経済成長率の目標を15年の7%前後から6.5〜7%に引き下げると発表。
また16年〜20年の第13次5カ年計画で年平均6.5%以上とする成功目標を示した。
構造改革進める一方で、交通網整備に年2兆元(約24兆円)を投じインフラ投資で景気下支えする方向が打ち出された。
鉄鋼や石炭業といった利益を出せない「ゾンビ企業」を淘汰。
構造改革を徹底する方向も示された。
既定路線ではあるが・・・。
(3)アジア・新興国動向
原油価格が落ち着けば出てくるのが中国。
中国が落ち着けばまた「5月には「ギリシャ改革の見直し」などと欧州が材料視されるのだろう。
結論は永遠に止むことのない堂々巡り。
本来、株価はニュースを食べて成長するもの。
しかし株価がニュースを生むというパラドックスは実は正しいような気がする。
その中国の2月の中国輸出は25.4%減。
2009年5月以降で最大の落ち込みとなった。
輸入も13.8%減。
輸出は8カ月連続、輸入は16カ月連続での減少。
これで6.5%成長ができるのかどうかはやはり疑問ではある。
金融では債券市場への海外投資家の参加資格を大幅に拡大。
適格外国機関投資家(QFII)制度と人民元適格外国機関投資家(RQFII)制度から一歩進んだ。
興味深かったのは中国の王毅外相のコメント。
「中国が米国にとって代わる存在、あるいはもう一つの米国になろうとは考えていない。
米国は物事がどう展開するかを知る上で中国の5000年の歴史に目を向けるべき」。
米国にとってかわる存在になろうとしていないとコメントすることはそうなろうとしていることの裏返し。
人の発言の本意は個人も政治もきっと変わらない。
中国の不動産の話がバブッている。
どこかで聞いたような話。
中国の主要都市の北京・上海・広州・シンセンの土地で全米の半分が買えるという。
かつて東京23区の土地で全米、千代田区でカリフォルニア州が買えると言われた。
これら中国主要地域は、昨年7月は前年同月比4%の下落。
ところが今年1月には前年同月比20%超の上昇だという。
いつか来た道のような気もする。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
14日(月):日銀金融政策決定会合(〜15日)、機械受注、ギリシャ休場
15日(火):黒田日銀総裁会見、首都圏マンション販売、米FOMC(〜16日)、米小売・生産者物価、NY連銀製造業景気指数
16日(水):訪日外国人数、春闘集中回答日、米消費者物価、住宅着工件数、鉱工業生産、イエレンFRB議長会見
17日(木):貿易統計、BOE金融政策委員会
18日(金):BBレシオ、米ミシガン大学消費者信頼感
そろそろ気になってくるのが機関投資家の株価値洗いの基準ともいえる3月月中平均。
昨年3月は19197円(3月末19206円)。
2014年3月は14694円、2013年が12244円だった。
因みに昨年9月末の終値は17388円。
まずはここの復活。
そして昨年12月末の19033となるのだろうが病み上がりの足は遅いのだろうか。
せめて今年の年足陽線基準18450円(大発会終値)くらいは欲しいところ。
「ミザリーインデックス」(悲惨指数)というのが世の中にはある。
米経済学者のアーサー・オークン氏が考案した指標で、数字自体に理論的な意味はないという、
中身は簡単でインフレ率と失業率の合計。
実感しやすい物価の動向と就職のしやすさの両方を加味して国民の生活実感を把握しようとする指標だ。
一般的には悲惨指数が10%を超えると国民の経済政策に対する不満が高まるという。
因みに2015年は悲惨指数が一番低い(つまり一番悲惨出ない)のがタイ、次いでスイス。
日本は3位にランキングしている。
中国が7位。
アメリカが8位。
この結果からみれば国民の生活実感は日米中と悪くなく選挙で政権交代の可能性も低いという声も聞かれる。
一方で悲惨指数のトップはベネズエラついでアルゼンチン、南アフリカ、ギリシャ、ウクライナなど。
どんなもので指数化すればランキングが生じるから面白い。
まあ、指数とか指標とか統計なんて非作位的を装った恣意的数字に過ぎないが・・・。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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